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中国神話

女媧とは何の神様か|家系図・物語

女媧  / ジョカ

大地 三皇

泥から人を作り、崩れた天を五色の石で繕った女神。伏羲と対で描かれる。

女媧とは何の神様か

女媧はひとことで言えば作って、直す神です。

中国神話で、人を作った神壊れた世界を繕った神の両方を一柱で担うのは、この女神だけです。

姿は蛇身人首伏羲とは兄妹であり夫婦でもあるとされ、二柱が蛇の尾をからめた図が、漢代の石室に数多く刻まれました。

人を作る場面はこう伝えられます。黄土をこねて、はじめはていねいに形を作った。しかし間に合わなくなり、

縄を泥に浸して振り、飛び散った泥から人ができた。

天を繕う場面はさらに大きな話です。天を支える柱が折れ、火と水が止まらなくなったとき、五色の石を練って天を補い、大亀の足を柱の代わりに立てました。

壊れたものを直す神は、世界の神話を見渡してもそう多くありません。 女媧はその数少ない一柱です。

女媧の漢字表記と読み方

日本語ではじょかと読みます。

「媧」の字は、この女神を表すためにほぼ専用で使われる字です。名前のために字が用意されたとも言える珍しい例にあたります。

民間の廟では女媧娘娘と呼ばれます。「娘娘」は女の神への敬称で、媽祖を「天上聖母」と呼ぶのと同じ働きをします。

性別については、古くから議論がありました。 『世本』のように男性とする記述もあり、「本来は男だった」とする説が長く唱えられてきました。ただし墓の壁画や石棺の発見、口伝えの採集が進んだ結果、女神として存在していたとする見方が主流になっています。

女媧(じょか)

一般的な表記。「媧」の字はこの女神以外にはほとんど使われない。

女媧娘娘(じょかにゃんにゃん)

民間の信仰での呼び方。「娘娘」は女神への敬称にあたる。

女希氏(じょきし)

古い書物に見える呼び名の一つ。

女媧の物語

  1. 泥から人を作る ─ ていねいな人と、飛び散った人
  2. 五色の石で天を補う ─ 世界が壊れた日
  3. 伏羲と並ぶ ─ 石に刻まれた二柱
  4. のちの世で ─ 驪山老母と重ねられる

泥から人を作る ─ ていねいな人と、飛び散った人

『淮南子』は、人をつくった存在として女媧を挙げています。『楚辞』の「天問」にも、

女媧より前に人はいなかった。では女媧は誰が作ったのか。

という問いが記されています。人の始まりを担う神として、古くから見られていたことがわかります。

後漢の『風俗通義』は、作り方を二段階で伝えます。

はじめは黄土をこねて、ていねいに一人ずつ作った。 数が要るようになると、縄を泥に浸して振り、飛沫から人を作った。

そして、手で作った者が貴い人になり、飛沫から生まれた者が凡庸な人になったと続けます。

これは神話が身分の違いを説明しようとした跡です。 後の時代の社会の形が、そのまま作り方の違いに置き換えられています。神話をそのまま受け取るのではなく、いつ誰がそう語ったかを見ると、こうした層が見えてきます。

五色の石で天を補う ─ 世界が壊れた日

『淮南子』覧冥訓が伝える、女媧の最大の物語です。

古の時、不周山が折れて、天を支える四本の柱が傾いた。 天はずれ、大地は割れ、すべてを載せていられなくなった。 火は消えず、水は引かず、猛獣が人を襲った。

女媧が行ったことは四つです。

五色の石を練って、天の破れを補った。 大亀の足を切って、四方の柱の代わりに立てた。 黒い竜を退治して、大地を鎮めた。 芦を焼いた灰で、洪水をせき止めた。

世界が壊れたとき、直したのは新しい神ではなく、人を作ったのと同じ神でした。

なぜ不周山が折れたのかは、この記述には書かれていません。別の書物では、共工が顓頊と争って敗れ、怒って不周山に頭をぶつけて折ったと語られます。原因を語る神話と、修理を語る神話が、別々に伝わってきたことになります。

伏羲と並ぶ ─ 石に刻まれた二柱

女媧の姿がもっとも多く残っているのは、書物ではなくです。

山東省の武氏祠をはじめとする漢代の石室には、下半身が蛇になった女媧と伏羲が、尾をからめ合った姿が繰り返し刻まれています。手には、それぞれ規(コンパス)と矩(さしがね)を持つ図が知られます。

円を描く道具と、直角を測る道具。

二柱で、丸と四角の両方をそろえる。 天は丸く地は四角いとする当時の考え方に、そのまま重なります。

口伝えの世界では、二柱は大洪水を生き延びた兄妹として語られます。瓢箪の舟に隠れて助かり、結ばれて人類の祖になった。苗族やチワン族に伝わり、東南アジアや沖縄にも似た話が残ります。

書物の女媧は「作る神」、石の女媧は「対の片方」、口伝えの女媧は「生き残った妹」です。 同じ名で、三つの違う姿が伝わってきました。

のちの世で ─ 驪山老母と重ねられる

女媧は、時代が下るにつれて他の女神と重ねられていきました。

よく知られるのが驪山老母との関係です。同じ神とする説、別の神とする説、驪山老母が女媧を受け継いだとする説があり、決着していません。

道教に取り込まれたあとは、仏教との習合の中でも語られました。日本で十四世紀に編まれた神道の論集『諸神本懐集』には、女媧の本地を宝吉祥菩薩とする唐代の説が収められています。伏羲の本地は宝応声菩薩とされました。

中国の神が、日本の書物の中で、仏の姿に置き換えられている。

民間の宗教では、伏羲と女媧の組み合わせが世の初めの男女として扱われ、経典に名が記されました。

人を作った神が、そのまま「最初の夫婦」に読み替えられていく。 神話が信仰として使われ続けた跡が、ここに残っています。

女媧の家系図と家族

女媧のきょうだい: 伏羲兄妹とされる

女媧の妻・夫: 伏羲夫婦ともされる

ふつうのつながり きょうだい 敵対・国ゆずり 本によって話がちがう

女媧の性格と人物像

女媧を語るとき、いちばん見落とされるのは「後始末をする神」だという点です。

天が壊れた原因を作ったのは女媧ではありません。共工が不周山に頭をぶつけたとする話でも、女媧はその場にいません。壊した者と直した者が別なのです。

直し方も独特です。新しい天を作り直したのではなく、穴を石で埋め、折れた柱を亀の足で代用した。あり合わせのもので繕っています。

人の作り方も同じです。ていねいに作っていたが、間に合わなくなって縄を振った。完璧を目指していません。

足りないところを、あるもので埋める。

この手つきが、女媧という神の一貫した性格です。

笙簧という楽器を作ったとも、婚姻の制度を定めたとも伝えられます。どれも「無いところに、形を与える」働きです。創造の神でありながら、その仕事はいつも修繕に似ています。

女媧ゆかりの地と遺跡

女媧を祀る廟の住所を、一次情報で確かめられませんでした。 そのため、この欄には何も入れていません。

中国には女媧を祀る施設が実在します。河北省渉県の媧皇宮がよく知られ、山西省や甘粛省にも女媧廟が伝わります。ただし、それぞれの公式の案内や地方政府の記載を確かめられなかったため、住所を書くことは控えます。

廟が無いのではなく、住所を確かめられなかった、というのが正確なところです。

姿を見られる場所としては、山東省の武氏祠の画像石が知られています。ここは女媧を祀る施設ではなく、後漢時代の墓の石室です。

女媧が現代に残した痕跡

女媧の名は、修繕をたとえる言葉として残りました。

補天: 天を補う、の意。転じて、大きく損なわれたものを立て直すことのたとえに使われる。

五色の石: 『紅楼夢』は、女媧が天を補ったときに余った石が主人公になる、という筋立てで始まる。

規と矩: 女媧が矩(さしがね)、伏羲が規(コンパス)を持つ図像。「規矩」は決まりごとを意味する語として現代語に残る。

媧皇: 女媧を指す尊称。中国各地の地名や廟の名に用いられている。

女媧のご利益

縁結び

婚姻の制度を定めたとされ、伏羲と対で縁の神とされる。

子授け

人を作った神として、子を授ける願いを受けるとされる。

家内安全

崩れた天を繕った神として、家を保つ願いを受ける。

災難除け

洪水と火を鎮めた話から、災いを退ける神とされる。

女媧が登場するゲーム・アニメ

創作では、原作小説『封神演義』の冒頭が繰り返し使われます。 殷の紂王が女媧の廟に参り、その像の美しさに不遜な詩を書き付けた。怒った女媧が妲己を送り込み、殷が傾いていく──という筋書きです。

人を作った神という側面より、怒って王朝を滅ぼす神として描かれることが多いのが実情です。

女媧が登場するゲーム

女神転生シリーズ

中国神話の女神として登場します。人を作った神という性格が扱われます。

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無双シリーズ

神話を題材にした作品で、伏羲と対の存在として登場することがあります。

女媧が登場するアニメ・漫画

封神演義(漫画・アニメ)

原作小説では、紂王が女媧の廟で不遜な詩を書いたことが物語の発端になります。以後は呂尚(姜子牙)と哪吒が物語を進めますが、女媧も要所で姿を見せます。

西遊記を下敷きにした作品群

孫悟空を生んだ石を「女媧が天を補ったときの余り」とする筋立てが、しばしば用いられます。

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女媧についてよくある質問

女媧は何の神様ですか。

人を作った女神であり、崩れた天を繕った女神でもあります。三皇の一柱に挙げる説もあります。婚姻の制度を定めた神、笙簧という楽器を作った神ともされます。

女媧はどうやって人を作ったのですか。

黄土をこねて形を作ったと伝えられます。数が要るようになると、縄を泥に浸して振り、飛び散った泥から人ができたとされます。『風俗通義』はこの二通りの作り方を、後の身分の違いの説明に結び付けています。

五色の石で天を補うとはどういう話ですか。

『淮南子』覧冥訓の話です。天を支える柱が折れて空に破れができ、火と水が止まらなくなったとき、女媧が五色の石を練って破れを補い、大亀の足を柱の代わりに立て、芦の灰で洪水を抑えたとされます。

女媧は女神ですか、男神ですか。

女神とする見方が主流です。ただし『世本』のように男性とする記述もあり、「本来は男だった」とする説が長く唱えられてきました。墓の壁画や石棺の発見と、口伝えの採集が進んだ結果、女神とする説が支持されるようになりました。

女媧と伏羲はどういう関係ですか。

兄妹であり夫婦でもあるとされます。漢代の石室には、二柱が蛇の尾をからめた姿が刻まれ、それぞれが矩とコンパスを持つ図が知られます。大洪水を二人だけが生き延びたという話も広く伝わっています。