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北欧神話の神一覧|家系図・相関図と物語の流れ

北欧神話に登場する神を120柱収録しています。 物語の流れに沿って読む順番を示し、神どうしのつながりは相関図でたどれます。 古エッダと新エッダで記述が分かれる箇所は、どちらか一方に決めず両方を出典つきで載せています。

北欧神話とは

北欧神話とは、キリスト教が入る前の北ヨーロッパで語られていた神々の物語です。デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・アイスランドに住んでいた人々が伝えました。

主神はオーディン。雷神トール、災いをもたらすロキ、豊穣のフレイとその妹フレイヤなどが登場します。

この神話をほかと分けるのは、終わりが決まっていることです。

神々は滅びる。そのことを、神々自身が知っている。

世界の終わりラグナロクでは、神々と巨人が戦って双方がほぼ全滅し、世界は焼け落ちて海に沈みます。オーディンは狼に呑まれ、トールは大蛇の毒で倒れます。

それを知りながら、神々は準備を続けます。オーディンは片目を捧げて知識を買い、戦死者を集め、来ると分かっている日に備える。それでも負けます。

もうひとつの特徴は、神々が不死ではないことです。女神イズンの持つ林檎を食べて若さを保っているだけで、その林檎が奪われたときには一斉に老いました。

強くもなく、不死でもなく、勝てないと知っている神々。 それが北欧神話です。

北欧神話は誰がいつ作ったのか|どこの国の神話か

北欧神話は特定の誰かが創作したものではありません。 北ヨーロッパの各地で口伝えに語られていた話が、長い時間をかけて重なったものです。

重要なのは、書き留められた時期です。

北欧がキリスト教化したのは10〜11世紀。アイスランドが公式にキリスト教を受け入れたのが西暦1000年です。そして神話が書物になったのは13世紀

信じられなくなってから、200年後に書かれました。

書いたのは、いずれもキリスト教徒です。新エッダの著者スノッリ・ストゥルルソンはアイスランドの有力者で、詩人が古い言い回しを理解できるようにという実用的な目的で神話を整理しました。

そのため、次の点に注意が必要です。

一つ。 記録者がキリスト教の枠組みで整理した可能性があります。「バルドルの復活」などにキリスト教の影響を見る説があります。

二つ。 失われた部分が多くあります。フレイヤの最期が書かれていないのは、記録が欠けたためかもしれません。

三つ。 それでも、エッダより古い証拠があります。 ゴットランド島の絵画石碑、イギリスのゴスフォース十字架、剣に刻まれたルーン文字。文字より前から、この物語は語られていました。

日本神話が国家の正統性を示すために編まれたのに対し、北欧神話は滅びた信仰の記録として残されました。この違いが、両者の性格を大きく分けています。

古エッダと新エッダの違い

北欧神話を記した本は主に二つあります。どちらも13世紀のアイスランドで書かれました。

重要なのは、書かれたのがキリスト教化のあとだという点です。神々が信じられなくなってから、記録として残されました。日本神話が国家事業として編まれたのとは、事情が大きく異なります。

古エッダ(こエッダ)13世紀の写本(成立はさらに古い)

詩の形で伝わる歌謡集です。「詩のエッダ」とも呼ばれます。

1643年にアイスランドで発見された「王の写本」に収められていました。作者は不明で、それぞれの詩が別々の時代に作られたと考えられています。

冒頭の「巫女の予言」が特に重要で、世界の始まりからラグナロクまでを一気に語ります。北欧神話の骨格は、この一篇でほぼ分かります。

ほかに、オーディンの処世訓を集めた「高き者の言葉」、ロキが神々の秘密を暴く「ロキの口論」、トールが花嫁に化ける「スリュムの歌」などが収められています。

新エッダ(しんエッダ)1220年頃

アイスランドの政治家で詩人のスノッリ・ストゥルルソンが書いた散文の書です。「スノッリのエッダ」「散文のエッダ」とも呼ばれます。

目的は詩人のための手引きでした。当時の詩には神話を踏まえた言い換え表現が多用されており、神話を知らないと詩が作れない。そこで神話を体系的にまとめたのです。

第一部ギュルヴィたぶらかし」が神話の本体で、王ギュルヴィが神々に質問し、答えが返るという形式をとります。

現在私たちが「北欧神話」として知っている筋書きの大部分は、この書に負っています。 ただしスノッリはキリスト教徒であり、整理しすぎたあるいは独自に解釈した部分があると指摘されています。

デンマーク人の事績(デンマークじんのじせき)12世紀末

デンマークの聖職者サクソ・グラマティクスラテン語で書いた年代記です。

エッダとは別系統の伝承を伝えており、内容がしばしば大きく食い違います。

最大の特徴は、神々が人間の英雄として描かれることです。バルドルとヘズの物語がその代表で、エッダでは「盲目の弟が騙されて兄を殺す」話ですが、この書では一人の女性を巡って正面から戦い、ヘズが勝つという別の話になっています。

どちらが古いかは決着していません。 本サイトでは、記述が分かれる箇所は両方を出典つきで併記しています。

もっとも分かりやすい違いは、バルドルの死です。

新エッダでは、ヘズは盲目の神で、ロキに枝を握らされ方向を教えられて投げます。悪意はまったくありません。

デンマーク人の事績では、ヘズは盲目でも神でもなく人間の王子で、バルドルと女性を争って正面から戦って勝ちます。

同じ名の登場人物が、被害者と勝者に分かれている。

もうひとつは、戦死者を先に選ぶのが誰かです。古エッダは「フレイヤが半分、オーディンが半分」とだけ記しますが、新エッダはフレイヤが先に選ぶと明記します。

こうした食い違いが起きるのは、北欧神話が書物にまとめられる前に、口伝えで各地に広まっていたためです。地域ごとに違う形で伝わり、それが別々に書き留められました。

北欧神話の9つの世界と世界樹ユグドラシル10件

北欧神話の世界は、世界樹ユグドラシルに支えられた9つの世界でできています。

ただし注意が必要です。9つすべてを名前で挙げた原典はありません。 古エッダは「私は9つの世界を知っている」と述べるだけで、一覧を示しません。現在よく見る9つの並びは、後世の研究者が原典に出てくる地名を整理して組み立てたものです。

以下は、その一般的な整理にもとづきます。

アースガルズ(Ásgarðr/神々の国)

アース神族が住む国。オーディンの館ヴァルハラがあります。地上とは虹の橋ビフレストでつながり、ヘイムダルが番人として守ります。

ミッドガルド(Miðgarðr/人間の世界)

人間が住む世界。名は「内側の囲い」の意味です。ユミルの睫毛で作った城壁に囲まれているとされます。

ヨトゥンヘイム(Jötunheimr/巨人の国)

巨人が住む国。神々はしばしばここへ出向き、しばしば襲われます。トールの戦いの多くはこの地で起きます。

ヴァナヘイム(Vanaheimr/ヴァン神族の国)

豊穣を司るヴァン神族の国。ニョルズはラグナロクのとき、ここへ帰るとされます。

アールヴヘイム(Álfheimr/妖精(エルフ)の国)

光の妖精アールヴが住む国。フレイが歯の生え祝いに与えられました。エルフという語はこのアールヴに由来します。

スヴァルトアールヴヘイム(Svartálfaheimr/黒い妖精・小人の国)

小人(ドヴェルグ)が住む地下の国。ミョルニル、グングニル、グレイプニルなど、神々の宝はすべてここで作られました。

ニヴルヘイム(Niflheimr/氷と霧の国)

世界が始まる前から北にあった氷の国。ここから流れた氷が炎に溶けて、最初の巨人ユミルが生まれました。

ムスペルヘイム(Múspellsheimr/炎の国)

南にある炎の国。炎の巨人スルトが守り、ラグナロクでは彼が世界を焼き尽くします。

ヘルヘイム(Helheimr/死者の国)

ロキの子ヘルが治める死者の国。戦って死ななかった者が来ます。罰を与える場所ではありません。

ユグドラシル(Yggdrasill/世界樹・世界の木)

9つの世界を貫いて立つ巨大な樹。三つの根がそれぞれ別の世界へ伸び、その根元に泉があります。

名は「ユッグ(オーディンの別名)の馬」の意で、オーディンがこの樹に九夜吊るされたことに由来するとされます。「吊るされる」を「馬に乗る」と言い換えた古い言い回しです。

梢には鷲、根元には竜ニーズヘッグ、幹をリスラタトスクが走り回って両者の悪口を伝え合います。

北欧神話のあらすじと有名な話をざっくり読む順番

北欧神話は、おおよそ次の八つの場面で進みます。上から順に読めば、始まりから終わりまで一続きで理解できます。

日本神話と違い、最初から結末が決まっているのがこの神話の骨格です。予言があり、それを避けようとした行動が、そのまま予言を実現させます。

世界が作られる ─ 巨人の死体から

何もない裂け目ギンヌンガガプの南に炎の国、北に氷の国がありました。氷が溶けた滴から、最初の存在ユミルが生まれます。

ユミルは眠りながら汗をかき、腋と足から巨人族を増やしました。同じころ、霜の石を舐めた牛から神々の祖先が現れます。

そしてオーディンとその兄弟が、ユミルを殺しました。

肉は大地、血は海、骨は山、歯は岩、髪は木、頭蓋骨は天空、脳は雲になります。世界のすべてが、殺された巨人の体です。

流れ出た血の洪水で霜の巨人は全滅し、一組だけが箱舟で助かりました。 その子孫が、以後ずっと神々と敵対します。

この場面に出てくる神: ユミルオーディン

二つの神族が戦う ─ そして人質を交換する

神々は一枚岩ではありませんでした。戦いと支配を担うアース神族と、豊穣と富を担うヴァン神族が戦争をします。

決着がつかず、和睦しました。条件は人質の交換です。

ヴァン神族からはニョルズ・フレイ・フレイヤ。アース神族からはヘーニルミーミル

しかしヘーニルはミーミルがいないと何も判断できず、騙されたと考えたヴァン神族はミーミルの首を斬って送り返しました。

オーディンはその首を薬草と呪文で保存し、以後ずっと相談役にします。

この和睦によって、豊穣の神々がアースガルズに加わりました。 当時もっとも篤く祀られていたのは、実はこのヴァン神族の神々です。

この場面に出てくる神: オーディンニョルズフレイフレイヤミーミル

オーディンが知識を買う ─ 目と、九夜

オーディンは全知の神ではありません。知識を、代価を払って集める神です。

まず世界樹の根元にあるミーミルの泉を訪れました。飲めば知恵が得られますが、対価が必要です。

オーディンは自らの目を、質草として泉に沈めた。

次にルーン文字を得るため、自分自身を世界樹に吊るしました。

我は風吹く木に九夜吊るされた。槍に貫かれ、我自身を我自身に捧げて。

食べ物も飲み物もなく、九夜のあとルーンを掴んで落ちました。

主神が、自分を犠牲にして知識を買っている。 北欧神話における知識は、必ず何かと引き換えです。

この場面に出てくる神: オーディンミーミル

神々の宝が作られる ─ ロキの悪戯の後始末

ロキが悪戯で、トールの妻シヴの黄金の髪をすべて切り落としました。

激怒したトールに脅されたロキは、小人の職人に黄金の髪を作らせます。そこで欲を出し、別の小人と首を賭けた勝負を持ちかけました。

小人たちは競って宝を作ります。生まれたのは──

トールの槌ミョルニル、オーディンの槍グングニル、フレイの船スキーズブラズニルと黄金の猪。

ロキは負けを恐れて虻に化け、職人を刺しました。そのためミョルニルの柄は短くなります。

それでも神々はミョルニルを最良と認め、ロキは負けました。首は言い逃れましたが、口を縫い合わされます。

神々の武装はすべて、この一件から生まれました。

この場面に出てくる神: ロキシヴトールフレイ

巨人と戦い続ける ─ トールの役目

アースガルズは常に巨人に狙われました。城壁の代金としてフレイヤと太陽と月を要求され、トールの槌を盗まれ、若返りの林檎を持つイズンをさらわれます。

イズンが消えたとき、神々は一斉に白髪になり老いました。 神々の若さは、この女神の林檎に依存していたのです。

取り返す際に巨人スィアチが殺され、その娘スカジが武装して単身乗り込んできます。神々は戦わず賠償で応じ、スカジは足だけを見て夫を選びました。

そしてトールは、世界を取り巻く大蛇ヨルムンガンドと繰り返し出会います。猫に化けた姿を持ち上げようとして足一本しか浮かせられず、釣り上げかけて糸を切られました。

決着は、終末の日まで持ち越されます。

この場面に出てくる神: トールヨルムンガンドスカジイズン

バルドルが死ぬ ─ 終わりの引き金

光の神バルドルが、自分の死ぬ夢を見ました。

フリッグは世界のあらゆるものを回り、「バルドルを傷つけない」と誓わせます。ただひとつ、宿り木だけを見落としました。

ロキが老女に化けてそれを聞き出し、宿り木の枝を折って、盲目のヘズに握らせます。方向を教え、投げさせました。

バルドルは倒れました。

死者の国の女王ヘルは、返還の条件を出します。「世界のあらゆるものが泣くなら返そう。」

世界中が泣きました。ただ一人、老女に化けたロキだけが泣きませんでした。

バルドルは戻りません。 ここから、終わりへの流れが止まらなくなります。

この場面に出てくる神: バルドルフリッグロキヘズヘル

ロキが縛られる ─ 内側の敵が外へ回る

神々の宴にロキが押しかけ、居並ぶ神々の秘密をひとつずつ暴きます。 古エッダ「ロキの口論」の場面です。

トールが現れて追い出されると、ロキは鮭に化けて滝に隠れましたが、網で捕らえられました。

神々はロキの子を殺してその腸で彼を岩に縛り、スカジが頭上に毒蛇を吊るします。 毒が顔に滴り続けました。

シギュンが器を掲げて毒を受け止めますが、捨てに行くあいだは毒が落ちます。ロキが身悶えすると大地が揺れました。

ロキの子であるフェンリル・ヨルムンガンド・ヘルも、それぞれ縛られ、海へ投げ込まれ、死者の国へ落とされていました。

巨人の血を引きながら内側にいた者が、完全に外側へ回りました。

この場面に出てくる神: ロキスカジフェンリルヨルムンガンドヘル

ラグナロク ─ 知っていて、それでも負ける

三年続く冬フィンブルの冬のあと、終わりが来ます。

ヘイムダルが角笛ギャラルホルンを吹き、全世界に知らせました。世界樹が震えます。

ロキは縛めを解き、死者の爪で作った船ナグルファルを率いて攻め寄せました。フェンリルは口を開き、下顎が地に上顎が天に届きます。ヨルムンガンドは身をよじり、海が陸を呑みました。

オーディンはフェンリルに呑まれます。ヴィーザルが顎を裂いて仇を討ちました。

トールはヨルムンガンドを倒し、その毒で九歩あゆんで倒れます。

フレイは剣を持たず、炎の巨人スルトに討たれます。 恋のために手放した剣が、なかったからです。

ヘイムダルとロキは互いを殺しました。

ヴァルハラに集めた四十三万の戦士も、結末を変えられませんでした。世界は焼かれ、海に沈みます。

そして──新しい大地が浮かび上がり、バルドルとヘズが戻ってきます。 生き残った人間の男女が、森から出てきます。

終わって、また始まります。

この場面に出てくる神: ヘイムダルオーディントールフレイフェンリルヴァルキュリャ

北欧神話の神一覧・名前と登場人物120柱

北欧神話の主神級の神 16柱

物語の骨格を作る神々です。まずここから覚えると全体がつかめます。

北欧神話の重要な神 74柱

主要な場面で動く神々です。

アウズンブラ

AUDHUMLA 大地 原初の神

アスクとエムブラ

ASK EMBLA 大地 人間

アスラウグ

ASLAUG 英雄

アングルボザ

ANGRBODA 冥界 巨人

アンドヴァリ

ANDVARI ドヴェルグ

アールヴァクとアルスヴィズ

ARVAKR 太陽 神獣

ウル

ULL アース神族

ウルズ

URD 大地 巨人

ウートガルザ・ロキ

UTGARDA LOKI 大地 巨人

エルフ

ELF 大地 精霊

エーギル

AEGIR 巨人

ギュルヴィ

GYLFI 大地 人間

クヴァシル

KVASIR アース神族

グラニ

GRANI 神獣

グリンブルスティ

GULLINBURSTI 大地 神獣

ゲフィオン

GEFJON 大地 アース神族

ゲリとフレキ

GERI FREKI 神獣

ゲルズ

GERD 大地 巨人

シギュン

SIGYN 大地 アース神族

シグムンド

SIGMUND 英雄

シグルーン

SIGRUN ワルキューレ

スィアチ

THJAZI 大地 巨人

スキンファクシとフリームファクシ

SKINFAXI 太陽 神獣

スキールニル

SKIRNIR 大地 人間

スクルド

SKULD 巨人

スコル

SKOLL 太陽 巨人

スリュム

THRYM 大地 巨人

スルーズ

THRUD アース神族

スヴァジルファリ

SVADILFARI 大地 神獣

スヴィプダグ

SVIPDAG 英雄

セーフリームニル

SAEHRIMNIR 大地 神獣

ソール

SOL 太陽 アース神族

タングリスニとタングニョースト

TANNGRISNIR 神獣

ダグ

DAG 太陽 アース神族

テュール

TYR アース神族

ディース

DIS 大地 精霊

トムテ

TOMTE 大地 精霊

トロール

TROLL 大地 精霊

ドラウグ

DRAUG 冥界 精霊

ナンナ

NANNA 大地 アース神族

ノッケン

NOKKEN 精霊

ノート

NOTT 巨人

ハティ

HATI 巨人

フェンリル

FENRIR 巨人

フュルギャ

FYLGJA 冥界 精霊

フリッグ

FRIGG 大地 アース神族

フルングニル

HRUNGNIR 大地 巨人

フレイ

FREYR 大地 ヴァン神族

フレイヤ

FREYJA 大地 ヴァン神族

フレースヴェルグ

HRAESVELGR 大地 巨人

ブラギ

BRAGI アース神族

ブロックとエイトリ

BROKK EITRI ドヴェルグ

ヘイズルーン

HEIDRUN 大地 神獣

ヘイムダル

HEIMDALL 太陽 アース神族

ヘル

HEL 冥界 巨人

ヘルモーズ

HERMOD 冥界 アース神族

マグニ

MAGNI アース神族

マーニ

MANI アース神族

ユミル

YMIR 大地 巨人

ヨルズ

JORD 大地 アース神族

ヨルムンガンド

JORMUNGANDR 巨人

ラグナル・ロズブローク

RAGNAR LODBROK 英雄

ラタトスク

RATATOSKR 大地 神獣

ラーン

RAN 巨人

リーヴとリーヴスラシル

LIF 大地 人間

レギン

REGIN ドヴェルグ

ロギ

LOGI 巨人

ヴァーリ

VALI アース神族

ヴィリとヴェー

VILI VE 大地 アース神族

ヴィーザル

VIDAR アース神族

ヴェルザンディ

VERDANDI 大地 巨人

ヴェルンド

VOLUND 英雄

ヴォルヴァ

VOLVA 冥界 人間

山の巨人

BERGRISI 大地 巨人

北欧神話の関連する神 30柱

特定の場面に現れる神々です。

北欧神話の家系図・相関図(わかりやすい系譜)

神を押すと、その神につながる線だけが残ります。山吹色の破線は本によって話がちがう箇所です。 この図には、物語の筋の中心になる20柱を置いています。 収録している120柱それぞれの相関図は、各神のページにあります。

北欧神話の最高神・最初の神・最強の神・12神

北欧神話の最高神は誰か

オーディンです。アース神族の主神で、戦・詩・魔術・死者を司ります。

ただしもとはテュールが最高神だったとする説が有力です。テュール(Týr)の名はギリシャのゼウス、ローマのユピテルと同じ語源にさかのぼり、古ノルド語で「神」そのものを意味します。途中で主神の座が入れ替わったと考えられています。

また、実際にもっとも祀られていたのはトールとフレイでした。物語の主役と、信仰の対象は一致しません。

この神を見る: オーディン

北欧神話で最初に生まれたのは誰か

ユミルです。炎の国と氷の国のあいだで氷が溶け、その滴から生まれました。神ではなく巨人です。

オーディンたちに殺され、その死体から世界が作られました。肉が大地、血が海、骨が山、頭蓋骨が天空、脳が雲です。

神々より先に、巨人がいた。 これが北欧神話の出発点です。

この神を見る: ユミル

北欧神話の巨人一覧|代表的な巨人は誰か

ユミル(原初の巨人・世界の材料)、スルト(炎の巨人・世界を焼く)、スカジ(雪山と狩りの女神)、スィアチ(イズンをさらった鷲の巨人)、スリュム(トールの槌を盗んだ王)、ヒュミル(大釜を持つ巨人)、ウートガルザ・ロキ(幻でトールを負かした王)などです。

ロキとその子フェンリル・ヨルムンガンド・ヘルも血筋は巨人です。

重要なのは、巨人が単なる敵ではないことです。オーディンの母は巨人の娘、トールの母も巨人。神々自身が巨人の血を引いています。

この神を見る: ユミルスカジフェンリル

北欧神話で最強は誰か

腕力ならトールです。新エッダは「彼はすべての神々と人間のなかでもっとも強い」と明記します。力帯を締めれば力が倍加し、槌ミョルニルは投げれば必ず手に戻ります。

ただしフェンリルは、二度まで自力で鎖を引きちぎり、ラグナロクで主神オーディンを呑み込みます。神々の側で誰も止められなかったという点では、こちらが上です。

そして炎の巨人スルトが、最後に世界そのものを焼き尽くします。

この神を見る: トールフェンリル

北欧神話でいちばん祀られていたのは誰か

トールとフレイです。

地名の分布がそれを示しています。トールの名を含む地名は北欧全域に、フレイの名を含む地名はスウェーデンを中心に、それぞれ数十例以上残っています。ミョルニルを模した護符も大量に出土しました。

11世紀の記録では、スウェーデンのウプサラ神殿に三体の像が並び、中央がトール、両脇がオーディンとフレイだったとされます。

主神オーディンは中央ではありませんでした。 農民と船乗りにとって切実だったのは、雷と実りの神です。

この神を見る: トールフレイ

北欧神話の女神一覧と女神の名前7柱

北欧神話の女神は、役割がはっきり分かれています。 運命を知る女神、戦場で死者を選ぶ女神、神々の若さを預かる女神、雪山で狩りをする女神。

注目すべきは、受け身の女神が少ないことです。フリッグはオーディンを出し抜き、フレイヤは首飾りを対価を払って手に入れ、スカジは武装して単身乗り込みました。

北欧神話の神器と武器一覧12点

北欧神話には、物語を動かす特別な道具がいくつも登場します。とくに重要なのは、その大半が小人の手で作られたことです。神々は自分で作れません。

しかも、そのきっかけはロキの悪戯の後始末でした。

ミョルニル(Mjölnir/トールの槌)

投げれば必ず手に戻る槌。ロキの妨害で柄が短くなった。ミョルニルを模した護符が北欧各地から大量に出土しており、実際に身につけられていたことが分かる。

グングニル(Gungnir/オーディンの槍)

狙ったものを外さない槍。戦いの前にこの槍を敵陣へ投げることで、その軍勢をオーディンに捧げる作法があった。

グレイプニル(Gleipnir)

猫の足音・女の髭・山の根・熊の腱・魚の息・鳥の唾で作られた紐。存在しないものでできているため、決して切れない。

ブリーシンガメン(Brísingamen)

黄金の首飾り。四人の小人が作り、それぞれと一夜を過ごすことを条件に譲り受けた。ロキに盗まれ、ヘイムダルが取り返した。

スキーズブラズニル(Skíðblaðnir)

帆を上げれば必ず順風が吹く船。神々全員が乗れる大きさでありながら、たたんで袋に入る。

グリンブルスティ(Gullinbursti)

黄金の猪。毛が光り、走れば夜も闇も明るく照らす。馬より速く空も海も駆ける。

ギャラルホルン(Gjallarhorn)

吹けば全世界に音が届く角笛。ラグナロクの始まりを告げるためだけに存在する。

ドラウプニル(Draupnir)

九夜ごとに同じ重さの腕輪を八個生み出す黄金の腕輪。バルドルの火葬の際、遺体とともに焼かれた。

ユグドラシル(Yggdrasill/世界樹・世界の木)

世界を貫いて立つ巨大な樹。三つの根がそれぞれ別の世界へ伸びる。オーディンはこの樹に九夜吊るされてルーンを得た。

イズンの林檎(epli)

神々の若さを保つ果実。北欧の神々は不死ではなく、これを食べて老いを防いでいる。奪われたとき神々は一斉に白髪になった。

関わる神: イズン

グラム(Gramr/英雄シグルズの剣)

オーディンが樹に突き立て、ただ一人シグムンドだけが抜けた剣。折れたのち鍛え直され、その子シグルズが竜ファーヴニルを殺した。北欧神話でもっとも名高い剣であり、英雄譚の中心にある。

レーヴァテイン(Lævateinn/ロキが作った剣)

古エッダに一度だけ現れる武器で、ロキが作ったとされる。写本の読み方によって解釈が分かれ、実体がはっきりしない。

北欧神話に登場する動物・怪物・幻獣一覧14件

北欧神話には神以外の存在も多く登場します。神々に敵対する怪物、乗り物となる獣、そして世界の構造を支える生き物です。

特徴的なのは、怪物の多くがロキの子であることと、最強の敵が獣の姿をしていることです。

フェンリル(Fenrir/巨大な狼)

ロキの子である巨大な狼。神々に育てられ、騙されて紐で縛られた。ラグナロクで解放され、オーディンを呑み込む。

ヨルムンガンド(Jörmungandr/世界を取り巻く蛇)

ロキの子である大蛇。海に投げ込まれ、世界を取り巻いて自らの尾を咥えるほどに育った。トールと相討ちになる。

スレイプニル(Sleipnir/八本足の馬)

オーディンの八本足の馬。ロキが雌馬に化けて産んだ。空も海も、死者の国へも行ける。

フギンとムニン(Huginn ok Muninn/二羽の鴉・カラス(鳥))

オーディンの二羽の鴉。「思考」と「記憶」の意。毎朝世界を飛び回り、見聞きしたことを主神の耳に告げる。

ゲリとフレキ(Geri ok Freki/二頭の狼)

オーディンの二頭の狼。ヴァルハラで主神の食事を与えられる。オーディン自身は葡萄酒だけで足りるとされる。

ニーズヘッグ(Níðhöggr/竜・ドラゴン)

世界樹の根をかじり続ける竜。ラグナロクのあとも生き残り、死者を運んで飛ぶ姿が語られる。

ラタトスク(Ratatoskr/世界樹を走るリス)

世界樹を上下に走り回るリス。梢の鷲と根元の竜のあいだで悪口を伝え合い、争わせている。

アウズフムラ(Auðumbla/原初の雌牛)

世界の始まりに生じた雌牛。ユミルはその乳を飲み、牛が霜の石を舐めたことで神々の祖先が現れた。

スコルとハティ(Sköll ok Hati/太陽と月を追う狼)

太陽と月を追いかける二頭の狼。ラグナロクの日についに追いつき、呑み込む。

ガルム(Garmr/死者の国の番犬)

死者の国の入り口を守る犬。ラグナロクでテュールと相討ちになる。

フレイヤの猫(kettir/車を引く二匹の猫)

フレイヤの車を引く二匹の猫。新エッダに記されるが、名前も種類も書かれていない。北欧神話に登場する数少ない猫である。

エイクスュルニル(Eikþyrnir/ヴァルハラの屋根に立つ鹿)

ヴァルハラの屋根で世界樹の葉を食む鹿。その角から滴る水がすべての川の源になるとされる。同じ屋根の山羊ヘイズルーンの乳からは、戦士たちの蜜酒が作られる。

スルト(Surtr/炎の巨人)

炎の国ムスペルヘイムを守る巨人。太陽より輝く剣を持ち、ラグナロクでフレイを討つ。世界を焼き尽くすのはこの巨人の炎である。神々の敵のなかで、最後まで生き残る側にいる。

アールヴ(Álfar/妖精・エルフ)

光の妖精。アールヴヘイムに住み、フレイが治める。英語の elf(エルフ)はこの語に由来する。地下に住むドヴェルグ(小人)とはしばしば混同されるが、原典では別の存在として扱われる。

北欧神話の神を属性でさがす

「雷神」「海の神」「太陽神」のように、司るものから神を探すこともできます。

北欧神話では、アース神族が戦いと支配、ヴァン神族が豊穣と富という分担がはっきりしています。属性を見れば、その神がどちらの出身かもおおよそ分かります。

なお「氷の神」にあたる神はいません。氷はニヴルヘイムという場所として扱われ、雪山を司るのは巨人の女神スカジです。

北欧神話の海の神:

北欧神話の芸能の神:

北欧神話ゆかりの街・ゆかりの地と、いま行ける場所7件

北欧神話には参拝できる神社がありません。 信仰そのものが千年前に途切れているためです。

それでも、神々の名が地名として残った街があり、いまも訪ねられます。神殿は残っていませんが、墳丘・石碑・博物館が現地にあります。

以下は、神話とのつながりが確認できる街です。

オーデンセ(Odense)

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オーデンセの場所: デンマーク フュン島

オーデンセと神話のつながり: 主神オーディンの名がそのまま街の名になった

街の名は古デンマーク語のOdins vé、「オーディンの聖所」を意味します。vé は「聖なる場所・神域」を指す語です。

記録に現れるのは988年で、神聖ローマ皇帝オットー3世の書状に登場します。主神の名を負った街が、キリスト教の司教座になったという経緯を持ちます。

現在はアンデルセンの生地として知られますが、街の名そのものが北欧神話の遺産です。

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ガムラ・ウプサラ(Gamla Uppsala)

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ガムラ・ウプサラの場所: スウェーデン ウプサラ市

ガムラ・ウプサラと神話のつながり: オーディン・トール・フレイの三神像があった神殿の跡

11世紀のドイツ人聖職者アダム・フォン・ブレーメンが記録した、北欧最大の神殿があった場所です。三体の像が並び、中央がトールだったと記されます。

現在は巨大な王墳が三基残り、博物館(Gamla Uppsala museum)が併設されています。発掘で大規模な木造建築の跡が確認されています。

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レイクホルト(Reykholt)

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レイクホルトの場所: アイスランド西部ボルガルフィヨルズル

レイクホルトと神話のつながり: 新エッダを書いたスノッリ・ストゥルルソンの居館

スノッリ・ストゥルルソンが1206年から1241年に殺されるまで暮らした地です。新エッダはここで書かれました。

現在は研究施設スノッラストヴァ(1995年設立)が置かれ、発掘で中世の建物跡と、スノッリが殺された階段が見つかっています。

いま私たちが読める北欧神話は、この場所から出ました。

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トースハウン(Tórshavn)

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トースハウンの場所: フェロー諸島(デンマーク自治領)

トースハウンと神話のつながり: 「トールの港」を意味する首都名

フェロー諸島の首都で、名は「トールの港」を意味します。雷神の名を持つ首都は世界にここだけです。

ヴァイキング時代からの集会地で、現在も政庁が置かれています。

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イェリング(Jelling)

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イェリングの場所: デンマーク ユトランド半島

イェリングと神話のつながり: 北欧の神々への信仰が終わった地点を示す石碑

デンマーク王ハーラル青歯王が建てたルーン石碑があり、「デンマーク人をキリスト教徒とした」と刻まれています。

神話の場所ではありませんが、この信仰がいつ終わったかを示す記念物です。世界遺産に登録されています。

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ヴィスビュー(Visby)

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ヴィスビューの場所: スウェーデン ゴットランド島

ヴィスビューと神話のつながり: 文字より古い神話の図像を刻んだ絵画石碑が集まる

ゴットランド島には絵画石碑が数百基残り、その多くがヴィスビューのゴットランド博物館に収蔵されています。

八本足の馬に乗った死者を、角杯を持つ女性が迎える場面が繰り返し彫られています。エッダが書かれる数百年前の、もっとも古い死生観の記録です。

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ゴスフォース(Gosforth)

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ゴスフォースの場所: イギリス カンブリア州

ゴスフォースと神話のつながり: キリストの磔刑とラグナロクを同じ石に刻んだ十字架

10世紀の石十字架に、ヴィーザルが狼の顎を裂く場面縛られたロキとシギュンが刻まれています。

ヴァイキングの入植者がキリスト教へ移る過程で、二つの神話を並べて彫った遺物です。屋外で自由に見学できます。

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北欧神話の神の名前の読み方と原語表記

北欧神話の神の名は、古ノルド語という言語で伝わっています。ヴァイキング時代の北欧で話されていた言葉で、現在のアイスランド語にもっとも近く残っています。

日本語の表記が揺れるのは、この古ノルド語の音を写す方法が定まっていないためです。どれが間違いということはありません。

北欧神話は何語で書かれたか: 古ノルド語です。古エッダ・新エッダともこの言語で、13世紀のアイスランドで書き留められました。デンマーク人の事績だけはラテン語です。

トール/ソー/ソール: 原語は Þórr。Þ は英語の th に近い音のため、日本語では「トール」「ソー」の両方が使われます。英語読みが Thor(ソー)です。

オーディン/ヴォーダン: 原語は Óðinn。ドイツ語圏では Wotan(ヴォータン)、古英語では Woden(ウォーデン)。Wednesday の語源です。

ヴァルキュリャ/ワルキューレ/ヴァルキリー: 原語は Valkyrja。ワルキューレはドイツ語形、ヴァルキリーは英語形です。意味は「戦死者を選ぶ者」。

アースガルズ/アスガルド: 原語は Ásgarðr。ð は th に近い音のため「ズ」「ド」で揺れます。英語形が Asgard(アスガルド)です。

ズ/ドの揺れ: 古ノルド語の ð を「ズ」と写すか「ド」と写すかの違いです。ニョルズ/ニョルド、ミッドガルド/ミズガルズなど、同じ神・同じ場所を指します。

北欧神話が登場するアニメ・ゲーム・漫画・映画

北欧神話は、現代の創作でもっとも使われている神話のひとつです。名前だけ借りたものから、筋書きごと下敷きにしたものまであります。

ここでは、原典との関係がはっきりしている作品に絞って挙げます。

北欧神話が登場するアニメ・漫画

進撃の巨人

「始祖のユミル」は、北欧神話の原初の巨人ユミルと同じ名です。巨人の体から世界ができる、人間の世界が壁に囲まれている(ミッドガルドは「内側の囲い」の意)など、共通する要素が読者のあいだでしばしば指摘されます。

ヴィンランド・サガ

ヴァイキング時代を正面から描いた作品です。神々そのものより、ヴァルハラへ行くために戦うという当時の死生観が物語の軸になっています。

魔探偵ロキ

ロキを主人公に据えた日本の漫画作品です。

ワンピース

巨人の戦士の国として「エルバフ」が登場します。北欧の巨人伝承を思わせる設定として語られることが多い一方、作中で北欧神話に由来すると明言されてはいません。

北欧神話が登場するゲーム

God of War(2018)/ラグナロク

北欧神話を舞台にした作品で、原典への忠実さが高く評価されています。首だけのミーミル、世界を取り巻くヨルムンガンドなど、原典の設定がそのまま生かされています。

Assassin's Creed Valhalla

ヴァイキング時代のイングランドが舞台で、神話パートが挿入されます。

ヴァルキリープロファイル

戦死者を選んでヴァルハラへ送るという原典の役割を、そのままゲームの仕組みにしています。

女神転生シリーズ

北欧の神々が悪魔・神霊として多数登場します。

ファイナルファンタジーシリーズ

オーディン、フェンリル、ラグナロク、グングニルなどの名が召喚獣・武器として繰り返し使われています。

北欧神話が登場する映画・音楽

マイティ・ソー(マーベル)

トール、ロキ、オーディン、ヘイムダルが登場します。ロキがトールの義弟という設定は原典と異なりますが、現代でもっとも北欧神話を広めた作品です。

ワーグナー「ニーベルングの指環」

四部作の楽劇。ヴォータン(オーディン)、ブリュンヒルデ(ヴァルキュリャ)が登場します。「ワルキューレの騎行」は北欧神話由来の音楽としてもっとも有名です。

終末のワルキューレ

ブリュンヒルドを中心に据えた作品です。

北欧神話で書物ごとに記述が分かれるところ3件

戦死者を先に選ぶのは、オーディンかフレイヤか

古エッダ13世紀の写本

グリームニルの言葉 第14節

  • オーディン ─ 戦死者を半分ずつ取る ─ フレイヤ

古エッダは「フレイヤは戦場へ赴くたび、殺された者の半分を得る。残る半分はオーディンのものである」と記す。取り分が半分ずつであることだけを述べ、どちらが先に選ぶかには触れていない。

新エッダ1220年頃

ギュルヴィたぶらかし 第24章

  • フレイヤ ─ フレイヤが先に選ぶ ─ オーディン

新エッダは「彼女は戦場へ馬を進め、半分を選び取る。オーディンが残りを取る」と記す。選ぶ順序が明示されており、主神より先に選ぶことになる。愛の女神とされるフレイヤが、戦場の分配で優先権を持つ点が大きく異なる。

ヘズは騙されて兄バルドルを殺したのか、恋を争って討ったのか

新エッダ1220年頃

ギュルヴィたぶらかし 第49章

  • ヘズ ─ 宿り木で射る ─ バルドル

ヘズは盲目の神であり、ロキに枝を握らされ、方向を教えられて投げた。殺意はなく、何を投げたかも知らなかったとされる。

デンマーク人の事績12世紀末

第3巻

  • バルドル ─ 恋を争って討つ ─ ヘズ

デンマークの年代記『デンマーク人の事績』では、ヘズは盲目ではなく人間の英雄であり、バルドルとナンナという女性を巡って正面から戦い、勝って殺したとされる。エッダとはまったく別の話になっている。

記述が分かれるところ

新エッダ1220年頃

ギュルヴィたぶらかし 第51章

  • ヴィーザル ─ 強い靴で顎を引き裂く ─ フェンリル

新エッダと『ヴァフスルーズニルの言葉』第53節は、強い靴で下顎を踏みつけ、上顎をつかんで引き裂いたと記す。靴は人が靴を作るときに切り落とした三角形の革を集めて作られたものだとされる。

古エッダ13世紀の写本

巫女の予言

  • ヴィーザル ─ 剣を心臓に突き刺す ─ フェンリル

古エッダ『巫女の予言』では、ヴィーザルは剣を狼の心臓に突き刺したとされる。踏み裂くのか刺すのか、書物によって倒し方が違う。

北欧神話のおすすめの本・漫画(マンガ)・絵本

北欧神話を学ぶ本は、目的によって選ぶべきものが変わります。原典にあたりたいのか、筋書きを知りたいのか、子どもと読みたいのか。

日本神話と違い、原典が翻訳で読めるのが北欧神話の利点です。分量も多くないため、いきなり原典から入っても読み通せます。

原典を読む(入門)

『エッダ ─ 古代北欧歌謡集』(谷口幸男訳・新潮社)

古エッダの日本語訳です。詩の形のまま訳されており、原典の手ざわりが分かります。「巫女の予言」だけでも読む価値があります。

『「エッダ」と「サガ」』(谷口幸男・新潮社)

新エッダを含む北欧文学全体の入門書です。作品ごとの位置づけが整理されています。

筋書きを通して知る

『北欧神話』(ケヴィン・クロスリー=ホランド)

原典に忠実でありながら物語として読める形にまとめられています。出典の注も充実しており、最初の一冊に適しています。

『北欧神話物語』(キーヴィン・クロスリイ‐ホランド)

同じ著者による物語版です。全32話に整理されており、順に読めば全体像がつかめます。

図解・事典で調べる

『図説 北欧神話大全』

神・場所・道具を図版つきで引ける形式です。名前は聞いたことがあるが誰か分からない、というときに役立ちます。

『北欧神話事典』

項目ごとに出典が示されており、どの書物に基づく記述かを確認できます。

子どもと読む

『はじめての北欧神話』

挿絵つきで主要な場面を追えます。バルドルの死やフェンリルの拘束など、印象的な話が選ばれています。

漫画版の北欧神話

複数の出版社から出ています。人物の関係が視覚的に分かるため、家系図を覚えるのに向いています。

どれか一冊だけ選ぶなら、クロスリー=ホランドの『北欧神話』をおすすめします。 原典に忠実でありながら物語として読め、しかも出典が確認できます。

そのうえで、古エッダの「巫女の予言」だけは原典で読んでみてください。 世界の始まりから終わりまでが、数ページで語り切られます。この神話の性格が、そこに凝縮されています。

北欧神話についてよくある質問

北欧神話とは何ですか。

キリスト教が入る前の北ヨーロッパ(デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・アイスランド)で語られていた神々の物語です。主神オーディンをはじめとする神々が、決まった滅びに向かって進む点が特徴です。

北欧神話の神様は何柱いますか。

正確な数は決まっていません。新エッダは主要な神を十二柱前後としますが、書物によって挙げ方が違います。本サイトでは巨人や怪物を含めて主要な20柱を収録しています。

ラグナロクとは何ですか。

北欧神話の終末です。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅します。オーディンは狼フェンリルに呑まれ、トールは大蛇ヨルムンガンドと相討ちになり、世界は焼け落ちて海に沈みます。そののち新しい大地が浮かび上がります。

北欧神話の神様は不死ではないのですか。

不死ではありません。女神イズンが持つ林檎を食べて若さを保っているだけです。イズンがさらわれたとき、神々は一斉に白髪になり老いさらばえました。

アース神族とヴァン神族の違いは何ですか。

アース神族はオーディンを主神とする戦いと支配の神々、ヴァン神族は豊穣と富の神々です。かつて戦争をして和睦し、ニョルズ・フレイ・フレイヤが人質としてアースガルズへ渡りました。

北欧神話でいちばん強いのは誰ですか。

腕力ではトールです。新エッダは「すべての神々と人間のなかでもっとも強い」と明記します。ただしフェンリルは二度まで自力で鎖を破り、オーディンを呑み込みます。

ロキは神ですか、巨人ですか。

血筋は巨人です。オーディンと義兄弟の契りを結んだためアース神族に数えられますが、出自は最後まで巨人のままです。バルドルの死を仕組んだあと縛られ、ラグナロクでは巨人の側につきます。

曜日の名前は北欧神話に由来するのですか。

英語の火曜から金曜が該当します。Tuesday はテュール、Wednesday はオーディン(古英語ウォーデン)、Thursday はトール、Friday はフリッグの名に由来します。

北欧神話はどの本に書かれていますか。

主に古エッダ(詩の歌謡集)と新エッダ(1220年頃、スノッリ・ストゥルルソン著)です。ほかにデンマーク人の事績があり、こちらは別系統の伝承を伝えます。いずれも13世紀前後のもので、キリスト教化のあとに書かれました。

北欧神話と日本神話の違いは何ですか。

もっとも大きな違いは結末です。日本神話は天孫降臨から皇統へつながる形で終わりますが、北欧神話は世界が滅びます。しかも神々自身が滅びを知りながら備え、それでも負けます。また日本神話は国家事業として編まれ、北欧神話は信仰が失われたあとに記録された点も異なります。

ヴァルハラとは何ですか。

オーディンの館で「戦死者の館」を意味します。ヴァルキュリャに選ばれた戦死者が迎えられ、毎日戦って死に、毎晩よみがえって宴を開きます。すべてラグナロクに備えるためです。

北欧神話はどこの国の神話ですか。

デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・アイスランドを中心とする北ヨーロッパです。ただし書き留められたのはほぼアイスランドで、古エッダ・新エッダとも13世紀のアイスランドの写本によって伝わりました。

北欧神話の12神とは誰ですか。

新エッダは主要な男神を12柱と数えますが、挙げ方は箇所によって揺れます。オーディン・トール・バルドル・テュール・ヘイムダル・ヘズ・ブラギ・ニョルズ・フレイ・ヴィーザル・ヴァーリ・ウルなどが挙げられます。女神は別に数えられ、こちらも12柱前後とされます。「決まった12人の名簿」は原典に存在しません。

北欧神話の9つの世界とは何ですか。

世界樹ユグドラシルに支えられた9つの世界です。ただし9つすべてを名前で挙げた原典はありません。古エッダは「9つの世界を知っている」と述べるだけで、現在よく見る一覧は後世の研究者が原典の地名を整理したものです。

北欧神話ゆかりの街はどこですか。

デンマークのオーデンセ(Odins vé=オーディンの聖所)、スウェーデンのガムラ・ウプサラ(神殿跡と王墳)、アイスランドのレイクホルト(新エッダが書かれた地)、フェロー諸島のトースハウン(トールの港)などです。日本国内に北欧神話ゆかりの地はありません。

北欧神話にエルフや妖精は出てきますか。

出てきます。アールヴという存在で、光の妖精が住むアールヴヘイムはフレイが治めます。英語の elf(エルフ)はこのアールヴに由来します。地下の小人ドヴェルグは別の存在で、神々の宝を作りました。

ノルンとは何ですか。

運命を司る三姉妹です。ウルズ(過去)・ヴェルザンディ(現在)・スクルド(未来)の名で知られ、世界樹の根元の泉のそばで人の運命を定めるとされます。神々の運命も、この三女神が決めたものです。

北欧神話とギリシャ神話の違いは何ですか。

もっとも大きな違いは、神々が不死かどうかと、世界が終わるかどうかです。ギリシャの神々は生まれつき不死で世界も続きますが、北欧の神々は林檎で若さを保つだけで、しかも自分たちが滅びることを知っています。

北欧神話の九つの世界の名前を教えてください。

一般に、アースガルズ・ミッドガルド・ヨトゥンヘイム・ヴァナヘイム・アールヴヘイム・スヴァルトアールヴヘイム・ニヴルヘイム・ムスペルヘイム・ヘルヘイムの九つを挙げます。ただしこの並びは後世の整理で、原典に一覧はありません。

北欧神話のワルキューレ一覧はありますか。

原典に完全な名簿はありません。古エッダ「グリームニルの言葉」に13名、「巫女の予言」に6名の名が挙がりますが、書物ごとに顔ぶれが違います。もっとも有名なのはブリュンヒルドです。

北欧神話に氷の神はいますか。

いません。氷はニヴルヘイムという場所として扱われます。雪山を司るのは巨人の女神スカジで、原初の巨人ユミルも氷が溶けた滴から生まれました。氷は神ではなく、世界の材料として扱われています。

ウルとはどんな神ですか。

弓とスキーの名手で、決闘のときに祈られる神です。シヴの息子ですが、新エッダはトールの継子と記し、実の父は不明です。地名には多く残っており、かつては重要な神だったと考えられています。

北欧神話のタトゥーによく使われる文様は本物ですか。

注意が必要です。よく使われるヴェグヴィーシル(道しるべ)は、1860年前後にアイスランドで編まれた「フルド写本」が初出で、ヴァイキング時代から約千年後のものです。北欧神話やヴァイキングの文様ではありません。ヴァイキング時代から確実にあるのは、ミョルニルを模した護符とルーン文字です。

北欧神話の基本用語

ラグナロク(Ragnarök)

北欧神話の終末。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅して世界が焼け落ち、海に沈む。そののち新しい大地が浮かび上がる。

新エッダ(しんエッダ)

1220年頃にアイスランドのスノッリ・ストゥルルソンが著した散文の書。神話を体系的に整理しており、現在の北欧神話の理解はこの書に多くを負う。

古エッダ(こエッダ)

詩の形で伝わる北欧神話の歌謡集。13世紀の写本に収められたが、成立はさらに古い。作者は不明。

ユグドラシル(Yggdrasill)

世界を貫いて立つ巨大な樹。三つの根がそれぞれ別の世界へ伸び、その根元に泉がある。

アース神族(あーすしんぞく)

オーディンを主神とする神々の一族。戦いと支配を担う。アースガルズに住む。

ヴァルハラ(Valhöll)

オーディンの館。「戦死者の館」の意。選ばれた戦士が毎日戦い毎晩よみがえって、ラグナロクに備える。

ビフレスト(Bifröst)

地上と神々の国をつなぐ虹の橋。赤い部分は炎で、ヘイムダルが番人として守る。

ヴァン神族(ヴぁんしんぞく)

豊穣と富を担う神々の一族。アース神族と戦って和睦し、ニョルズ・フレイ・フレイヤが人質としてアースガルズへ渡った。

グレイプニル(Gleipnir)

フェンリルを縛った魔法の紐。猫の足音・女の髭・山の根・熊の腱・魚の息・鳥の唾という、この世に存在しない六つのもので作られている。

ミョルニル(Mjölnir)

トールの槌。投げれば必ず手に戻る。小人が作ったが、ロキの妨害で柄が短くなった。

ヌン(Nun/原初の水)

世界が始まる前からある、暗く動かない水。ここから原初の丘が現れて創造が始まり、世界が終わるときはすべてここへ戻る。

アースガルズ(Ásgarðr)

アース神族が住む神々の国。虹の橋ビフレストで地上とつながる。

ギャラルホルン(Gjallarhorn)

ヘイムダルが持つ角笛。吹けば全世界に音が届き、ラグナロクの始まりを告げる。