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北欧神話

スキンファクシとフリームファクシとは何の神様か|家系図・物語

Skinfaxi ok Hrímfaxi  / スキンファクシとフリームファクシ

太陽 神獣

昼と夜の車を引く二頭の馬。たてがみが光を配り、泡が露になる。

スキンファクシとフリームファクシとは何の神様か

スキンファクシとフリームファクシはひとことで言えば昼と夜を運ぶ馬です。名はそれぞれ「光のたてがみ」「霜のたてがみ」を意味します。

スキンファクシは昼の神ダグの馬、フリームファクシは夜の女神ノートの馬です。二頭は別々の車を引き、順に天を渡ります。

描かれ方が対になっています。片方はたてがみの光で地上を照らし、もう片方は口の泡で地上を濡らします。 昼が光を配り、夜が露を落とす。同じ形の説明が、正反対の中身で二度なされています。

この一組を置くことで、北欧神話は昼と夜を運ばれてくるものとして語りました。自然に明るくなるのではなく、馬が引いてくるのです。

スキンファクシとフリームファクシの名前の表記と読み方

二頭の名は、どちらも「ファクシ(faxi)=たてがみ」を含みます。スキン(skin)は「輝き」、フリーム(hrím)は「霜」。たてがみが何でできているかで、二頭は呼び分けられています。

北欧神話では、名馬の名にこの語がよく使われました。巨人フルングニルの馬グルファクシは「金のたてがみ」です。たてがみは馬の見どころであり、名づけの中心でした。

新エッダ『詩語法』は、それぞれに別名があると記します。スキンファクシはグラズ、フリームファクシはフィヨルズヴァルトニル。日本語での紹介は少ないのですが、原典に残された呼び名です。

Skinfaxi(スキンファクシ)

古ノルド語の表記。「光のたてがみ」「輝くたてがみ」を意味する。

Hrímfaxi(フリームファクシ)

古ノルド語の表記。「霜のたてがみ」を意味する。

Fjörsvartnir(フィヨルズヴァルトニル)

『詩語法』が伝えるフリームファクシの別名。

スキンファクシとフリームファクシの物語

  1. スキンファクシ ─ たてがみが光を配る
  2. フリームファクシ ─ 泡が露になる
  3. 青銅器時代からの信仰
  4. 名前だけの脇役が、いちばん覚えられる

スキンファクシ ─ たてがみが光を配る

スキンファクシは、昼の神ダグの車を引きます。

毎日この馬が空を渡り、そのたてがみの発する光が、空と地上を照らします。 太陽そのものではありません。馬の毛が光っているのです。

太陽の車を引くアールヴァクとアルスヴィズは別の一組で、御者も女神ソールと別人です。北欧神話には、空を渡る車が二台ならんで走っていることになります。

重複しているように見えますが、担当が違います。太陽の車は太陽を運び、ダグの車は昼という時間そのものを運ぶ。光源と、明るい時間帯が、別々に人格化されています。

フリームファクシ ─ 泡が露になる

フリームファクシは、夜の女神ノートの車を引きます。

定められているのは十二時間ごとに大地の上を通ることです。走るあいだ、馬銜(はみ)から泡が滴り落ちて地を湿らせます。

それが、朝に谷にたまっている露だとされます。 夜が通り過ぎた跡として、露が説明されているのです。

名の「霜のたてがみ」も、同じ発想から来ています。この馬が通ったところに霜が降りる。誰でも朝に見ているものが、神話のなかにきちんと居場所を持っている。北欧神話には、こういう身近な説明がよく残っています。

青銅器時代からの信仰

空を渡る馬という発想は、エッダが書かれるずっと前からありました。

北欧の青銅器時代の遺物に、馬が円盤を引く形の太陽の車が見つかっています。文字の記録より千年以上古いものです。

研究者は、一頭に引かれる太陽が、東から西へは表を、戻るときは裏を見せて運ばれると考えられていたのではないかと述べています。行きと帰りで、明るい面と暗い面が入れ替わる。

スキンファクシとフリームファクシの一組は、この古い考え方を二頭に分けたものだとみられています。昼の馬と夜の馬は、もとは一頭だったのかもしれません。

名前だけの脇役が、いちばん覚えられる

この二頭には物語がありません。争いも、旅も、最期もありません。

それでも北欧神話の紹介で必ず名が挙がるのは、説明が具体的だからです。たてがみが光る。泡が露になる。読んだ人が、翌朝それを思い出せます。

神々の大きな物語は、覚えるのに系図が要ります。この二頭は、系図を知らなくてもわかります。

古エッダ『ヴァフスルーズニルの言葉』第12節と第14節は、知恵くらべの問いとしてこの二頭の名を扱いました。当時の人にとっても、真っ先に問われる基本の知識だったことがわかります。

スキンファクシとフリームファクシの家系図と家族

ふつうのつながり きょうだい 敵対・国ゆずり 本によって話がちがう

スキンファクシとフリームファクシの性格と人物像

この二頭に、性格は与えられていません。走ること以外の描写がないからです。

しかし役の分け方には、はっきりした考え方が出ています。昼の馬は与え、夜の馬は残す。 光を配るのと、湿り気を落とすのと。どちらも地上に何かを届けています。

北欧神話の夜は、恐ろしいものとして描かれていません。夜の女神ノートは巨人の娘ですが、悪意はなく、決められた刻みで通るだけです。その馬も同じです。

毎日必ず来て、必ず去る。この確かさこそが、二頭に与えられた性格だといえます。 神々が滅びる物語のなかで、昼と夜だけは終わりまで狂いません。

スキンファクシとフリームファクシゆかりの地と遺跡

この二頭を祀った場所は見つかっていません。 馬そのものに社が建てられた記録はありません。

ただし空を渡る馬への信仰は、出土品によって確かめられています。北欧の青銅器時代の遺跡からは、馬が円盤を引く形の太陽の車が見つかっており、この二頭の話がずっと古い信仰の名残であることを示す資料とされています。

スキンファクシとフリームファクシが現代に残した痕跡

二頭の名は、書物と、名づけの慣習のなかに残りました。

「ファクシ」を含む馬の名: 「たてがみ」を意味する語。巨人フルングニルの馬グルファクシ(金のたてがみ)など、北欧の名馬の名に繰り返し使われた。

別名グラズとフィヨルズヴァルトニル: 『詩語法』が伝える二頭の別名。スキンファクシがグラズ、フリームファクシがフィヨルズヴァルトニルにあたる。

太陽の車(青銅器時代): 馬が円盤を引く形の出土品。文字の記録より千年以上古く、空を渡る馬への信仰が古くからあったことを示す。

スキンファクシとフリームファクシが司るもの

馬の守り

昼と夜の車を引く二頭として、北欧の馬にまつわる信仰と結びついて語られてきた。

スキンファクシのたてがみの光が、空と地上を照らすとされることによる。

フリームファクシの馬銜から滴る泡が、地上を湿らせて朝の露になるとされる。

スキンファクシとフリームファクシについてよくある質問

スキンファクシとフリームファクシは誰の馬ですか。

スキンファクシは昼の神ダグの馬、フリームファクシは夜の女神ノートの馬です。

名前の意味は何ですか。

スキンファクシは「光のたてがみ」、フリームファクシは「霜のたてがみ」を意味します。どちらも「ファクシ」がたてがみを指します。

朝露はなぜこの馬と関係があるのですか。

フリームファクシの馬銜から滴り落ちる泡が大地を湿らせ、それが谷にたまる朝の露になるとされるためです。

太陽の車を引く馬とは別ですか。

別の一組です。太陽の車を引くのはアールヴァクとアルスヴィズで、御者は女神ソールです。ダグとノートの車は、昼と夜という時間そのものを運びます。

スキンファクシとフリームファクシと併せて覚えたい言葉・用語

新エッダ(しんエッダ)

1220年頃にアイスランドのスノッリ・ストゥルルソンが著した散文の書。神話を体系的に整理しており、現在の北欧神話の理解はこの書に多くを負う。

古エッダ(こエッダ)

詩の形で伝わる北欧神話の歌謡集。13世紀の写本に収められたが、成立はさらに古い。作者は不明。