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北欧神話

アールヴァクとアルスヴィズとは何の神様か|家系図・物語

Árvakr ok Alsviðr  / アールヴァクとアルスヴィズ

太陽 神獣

太陽の車を引く二頭の馬。肩の下にふいごを付けられている。

アールヴァクとアルスヴィズとは何の神様か

アールヴァクとアルスヴィズはひとことで言えば太陽を運ぶ馬です。太陽の車を引く二頭で、御者は女神ソールがつとめます。

名がそれぞれの役を示しています。アールヴァクは「早起き」、アルスヴィズは「快速」あるいは「あらゆる求めに応える者」。朝いちばんに起き、速く走る。それだけを求められた二頭です。

特徴的なのは、体を冷やす仕掛けです。アース神族は、この二頭の肩の下に鉄のふいごを取り付けました。 走り続けて熱を持つからです。神話の馬に、冷却の装置が付いています。

なぜそこまで急ぐのか。狼スコルが太陽を追っているからです。追いつかれたとき、世界は終わります。この二頭が走っているあいだだけ、世界は続きます。

アールヴァクとアルスヴィズの名前の表記と読み方

アールヴァク(Árvakr)は「早起き」。ár は「早い」、vakr は「目覚めている」にあたる語で、そのまま組み合わさっています。

アルスヴィズ(Alsviðr)のほうは解釈が分かれます。「快速」とする読み、「あらゆる力の求めに応える者」とする読み、形容詞として「賢い」とする読みが並んで紹介されます。どれが正しいかは決着していません。

日本語ではアルヴァク、アルスヴィド、アルスヴィンなどとも書かれます。表記が揺れるのは、古ノルド語の ð(エズ)という文字をどう写すかが定まっていないためです。

Árvakr(アールヴァク)

古ノルド語の表記。「早起き」を意味する。

Alsviðr(アルスヴィズ)

古ノルド語の表記。「快速」「あらゆる力の求めに応える者」、また形容詞として「賢い」と解される。

Svalinn(スヴェル)

太陽の前に立てられた楯の名。二頭とともに語られる。

アールヴァクとアルスヴィズの物語

  1. 肩の下のふいご ─ 神々が付けた冷却装置
  2. 追われている ─ 狼スコル
  3. 楯スヴェル ─ 太陽の前に立つもの
  4. 空を渡る馬 ─ 出土品が示すこと

肩の下のふいご ─ 神々が付けた冷却装置

新エッダギュルヴィたぶらかし』第11章に、この二頭の描写があります。

太陽の車を引くのは女神ソール。その車を牽くのがアールヴァクとアルスヴィズです。二頭は昼のあいだ休みなく走り続けます。

問題は熱でした。そこでアース神族は、二頭の体を冷ますために、肩の下へ鉄で作ったふいごを取り付けました。 走るたびにふいごが動いて風が送られる仕組みです。

神話がこういう細かい工夫を書き留めるのは珍しいことです。太陽が熱いという当たり前の事実を、馬の側から説明しています。

追われている ─ 狼スコル

同じ『ギュルヴィたぶらかし』の第12章は、もっと大事なことを述べます。

なぜ太陽は急いで運行しているのか。 答えは、狼に追われているからです。追っているのはスコルという狼で、太陽のすぐ後ろに迫っています。

古エッダ『グリームニルの言葉』第39節は、スコルが鉄の森に太陽が沈むまで追いかけると歌います。

逃げ切れているのではなく、まだ追いつかれていないだけです。 毎日の日の出と日の入りが、そのまま終末までの猶予として語られています。この二頭は、世界の時間そのものを引いています。

楯スヴェル ─ 太陽の前に立つもの

古エッダ『グリームニルの言葉』第37節によれば、二頭はヴァルハラから太陽を牽いていきます。

続く第38節に、もう一つの仕掛けが出てきます。太陽の前にはスヴェルという楯が立てられている、というのです。

この楯が果たしているのは遮熱です。もし楯が滑り落ちれば、山も海も燃え上がるとされます。

熱を送り出す太陽と、それを受け止める楯と、体を冷やされながら走る馬。この神話は、太陽の運行を機械のように組み立てています。 誰かが見張り、誰かが冷やし、誰かが遮っていないと壊れる仕組みです。

空を渡る馬 ─ 出土品が示すこと

太陽を馬が引くという発想は、エッダが書かれるよりずっと古いものです。

北欧の青銅器時代の遺物に、馬が円盤を引く形の太陽の車が見つかっています。文字の記録が始まる千年以上前のものです。

つまりこの二頭の話は、十三世紀の書き手が思いついたものではありません。 長く続いた信仰が、名前を与えられてエッダに入ったと考えられます。

昼と夜の車を引くスキンファクシとフリームファクシも、同じ発想から出たものとされます。北欧では、光は自然に差すものではなく、運ばれてくるものでした。

アールヴァクとアルスヴィズの家系図と家族

ふつうのつながり きょうだい 敵対・国ゆずり 本によって話がちがう

アールヴァクとアルスヴィズの性格と人物像

この二頭に、性格は与えられていません。走ること以外に何もしません。

それでも印象に残るのは、置かれている条件のためです。休めない。冷やされないと持たない。後ろから狼が追ってくる。この二頭には、逃げ切るという選択肢がありません。

北欧神話には、運命から逃れられない存在が数多く出てきます。オーディンは自分が狼に呑まれると知っており、フレイは剣を手放したまま終末を迎えます。この二頭も同じ位置にいます。

ただ一つ違うのは、世界のほうが二頭に頼っていることです。走るのをやめれば、その日のうちに昼が来なくなります。名前が「早起き」と「快速」であることの意味は、そこにあります。

アールヴァクとアルスヴィズゆかりの地と遺跡

この二頭を祀った場所は見つかっていません。 馬そのものに社が建てられた記録はありません。

ただし空を渡る馬への信仰そのものは、出土品によって確かめられています。北欧の青銅器時代の遺跡からは、馬が太陽の円盤を引く形の太陽の車が見つかっており、この二頭の話がずっと古い信仰の名残であることを示す資料とされています。

アールヴァクとアルスヴィズが現代に残した痕跡

二頭の名は、書物のなかと、青銅器時代の出土品を通して伝わっています。

太陽の車(青銅器時代): 馬が太陽の円盤を引く形の出土品。文字の記録より千年以上古く、空を渡る馬への信仰があったことを示す。

楯スヴェル: 太陽の前に立てられた楯の名。滑り落ちれば山と海が燃え上がるとされ、二頭とともに『グリームニルの言葉』に歌われる。

肩の下のふいご: 走り続ける二頭の体を冷ますためにアース神族が取り付けたとされる装置。神話の中でも例の少ない仕掛けの描写。

アールヴァクとアルスヴィズが司るもの

馬の守り

太陽の車を引く二頭として、北欧の馬にまつわる信仰と結びついて語られてきた。

太陽を運ぶ役を担い、昼が来ることそのものを支える存在とされる。

警戒

狼スコルに追われ、休まず走り続けるという役どころによる。

アールヴァクとアルスヴィズについてよくある質問

アールヴァクとアルスヴィズは何をする馬ですか。

太陽の車を引く二頭です。御者は太陽の女神ソールがつとめます。

名前の意味は何ですか。

アールヴァクは「早起き」、アルスヴィズは「快速」または「あらゆる求めに応える者」と解されます。「賢い」とする読みもあります。

なぜ肩にふいごが付いているのですか。

走り続けて体が熱を持つためです。アース神族が二頭を冷ますために鉄のふいごを取り付けたと『ギュルヴィたぶらかし』第11章に記されています。

なぜ太陽は急いでいるのですか。

狼スコルに追われているからです。追いつかれたときが世界の終わりにあたります。

アールヴァクとアルスヴィズと併せて覚えたい言葉・用語

アース神族(あーすしんぞく)

オーディンを主神とする神々の一族。戦いと支配を担う。アースガルズに住む。

新エッダ(しんエッダ)

1220年頃にアイスランドのスノッリ・ストゥルルソンが著した散文の書。神話を体系的に整理しており、現在の北欧神話の理解はこの書に多くを負う。

古エッダ(こエッダ)

詩の形で伝わる北欧神話の歌謡集。13世紀の写本に収められたが、成立はさらに古い。作者は不明。

ヴァルハラ(Valhöll)

オーディンの館。「戦死者の館」の意。選ばれた戦士が毎日戦い毎晩よみがえって、ラグナロクに備える。