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北欧神話

グルファクシとは何の神様か|家系図・物語

Gullfaxi  / グルファクシ

神獣

巨人がもっとも誇った馬。主を失い、雷神の子のものになった。

グルファクシとは何の神様か

グルファクシはひとことで言えば主を破滅させた名馬です。古ノルド語で「金のたてがみ」を意味します。

持ち主は巨人フルングニルでした。主神オーディンが八本足の馬スレイプニルに乗って巨人の国を訪れ、「これほどの馬は巨人の国にはいないだろう」と言ったとき、フルングニルは「自分はもっと歩幅の広い馬を持っている」と言い返します。

そこから競走が始まりました。夢中で追ううちに、フルングニルはアースガルズの門をくぐってしまいます。 神々の国へ入りこんだ巨人は、酒に酔って暴言を吐き、雷神トールとの決闘を約束させられました。

決闘で主は倒れます。そして馬は、トールの子マグニの褒美になりました。速さを誇ったことが、そのまま主の最期につながったという筋書きです。

馬そのものについて語られる場面は多くありません。それでも名が残ったのは、この一頭が神と巨人を引き合わせてしまったからです。

グルファクシの名前の表記と読み方

古ノルド語では Gullfaxi(グルファクシ)。前半の「グル」が黄金、後半の「ファクシ」がたてがみを指し、そのまま「金のたてがみ」と読めます。

北欧神話の馬には、この「ファクシ」で終わる名が並びます。昼の神ダグの馬スキンファクシ(光のたてがみ)、夜の女神ノートの馬フリームファクシ(霜のたてがみ)。馬は、たてがみの色や輝きで呼び分けられていました。

近代アイスランドの民話にも同じ名の馬が出てきます。そちらは現代の発音でグトルファフシと書かれ、似た名の馬が登場する類話がいくつも知られています。神話の馬の名が、そのまま昔話に生き延びた例です。

Gullfaxi(グルファクシ)

古ノルド語の表記。「金のたてがみ」を意味する。

Gullfaxi(グトルファフシ)

近代アイスランドの民話に出る同名の馬。現代の発音に近い書き方。

Skinfaxi(スキンファクシ)

「光のたてがみ」。昼の神ダグの馬の名で、同じ「たてがみ」の語を持つ。

グルファクシの物語

  1. 競走 ─ 誇りが門をくぐらせる
  2. 決闘 ─ 石の心臓が砕ける
  3. 褒美 ─ 生後三日の子へ渡る

競走 ─ 誇りが門をくぐらせる

ことの起こりは、主神オーディンの一言でした。

スレイプニルに乗って巨人の国ヨトゥンヘイムへ行ったオーディンは、フルングニルに馬を褒められると、これほどの馬は巨人の国にはいないだろうと応じます。

フルングニルは黙っていませんでした。自分はもっと歩幅の広い馬を持っていると言い、グルファクシに跨って追いかけます。

二頭は競り合いました。そして追ううちに、巨人は神々の国アースガルズの門をくぐってしまいます。

招かれていない者が、自分の脚で敵地へ入った。 馬の速さがそのまま招いた事態でした。

決闘 ─ 石の心臓が砕ける

客としてもてなされたフルングニルは、フレイヤの酌で大量に飲み、酔って神々を罵り始めました。呼ばれたトールはすぐにも打ち倒そうとします。

ところがフルングニルは武器を持っていませんでした。非武装の相手を討つのは卑怯だと咎め、後日の決闘を約束させて、その場をしのぎます。

決闘の場はアースガルズとヨトゥンヘイムの境。頭も心臓も石でできた巨人は、砥石を担いで現れました。

投げられた槌ミョルニルと砥石は空中でぶつかります。砥石は砕け、槌はそのまま飛んで巨人の頭蓋を打ち砕きました。

主を失ったグルファクシは、そこに残されました。

褒美 ─ 生後三日の子へ渡る

倒れた巨人の脚は、トールの上に落ちました。神々が総出でも動かせません。

そこへ駆けつけたのが、生まれて三日目の子マグニでした。母は女巨人ヤールンサクサ。この子は父の上の脚をあっさりどかし、こう言ったと伝えられます。

こんな巨人なら、僕が拳骨でやっつけたのに。

トールは喜び、褒美としてグルファクシをマグニに与えました。

ただしオーディンは苦言を呈します。父である自分ではなく、巨人の女が産んだ子に名馬を与えるのはよくない、と。

神々のあいだにも、血筋をめぐる線引きがあったことがのぞく場面です。

グルファクシの家系図と家族

グルファクシの性格と人物像

グルファクシは、性格を語られない馬です。

神話の馬には、それぞれ役目があります。スレイプニルは主神を乗せて死者の国まで下り、スキンファクシは光を放って地上を照らす。この馬にはそれがありません。

代わりにあるのは、持ち主の誇りを映す鏡という役どころです。フルングニルはこの馬を自慢したせいで競走に走り、敵地に入りこみ、決闘を約束し、死にました。

馬は何も間違えていません。 速く走っただけです。それでも物語のなかでは、この一頭がすべての引き金になっています。

そして主の死後、何ごともなかったように次の持ち主のもとへ渡ります。感情も忠誠も描かれない。道具として最後まで扱われた馬でした。

グルファクシゆかりの地と遺跡

この馬を祀った場所は見つかっていません。 遺跡も、地名も、伝わっていません。

ただし北欧の絵画石碑には、馬に乗る人物を刻んだものが数多く残されています。スウェーデン・ゴットランド島の石碑群がその代表で、馬が神話のなかで果たしていた重みを、文字より古い形で伝えています。 そのうちのどれかがこの馬だと言える資料は、いまのところありません。

グルファクシが現代に残した痕跡

この馬の名は、物語のなかと、後の世の昔話のなかに残りました。

砥石の採石場: 決闘で砕けたフルングニルの砥石の破片は各地に散り、砥石の採石場になったと『詩語法』は伝える。馬の主が残した痕跡として語られる。

民話の名馬: 近代アイスランドの民話『名馬グトルファフシと名剣グンフィエズル』に同じ名の馬が出る。似た名の馬が登場する類話もいくつか知られている。

「たてがみ」で終わる馬の名: スキンファクシ(光のたてがみ)、フリームファクシ(霜のたてがみ)と同じ形の名。北欧では馬をたてがみで呼び分ける言い方があった。

グルファクシが司るもの

勝利

競走に負けなかった馬として語られる。

歩幅の広さと速さを誇られた馬であることによる。

グルファクシについてよくある質問

グルファクシは誰の馬ですか。

もとは巨人フルングニルの馬です。決闘でフルングニルが討たれたあと、雷神トールの子マグニに褒美として与えられました。

スレイプニルとどちらが速いのですか。

原典は勝敗をはっきり書いていません。フルングニルは自分の馬のほうが歩幅が広いと言い張り、追ううちにアースガルズの門をくぐってしまったと伝えられます。

なぜオーディンは馬を与えることに反対したのですか。

受け取ったマグニの母が女巨人ヤールンサクサだったためです。父である自分ではなく巨人の女が産んだ子に名馬を与えるのはよくない、と苦言を呈したと『詩語法』は伝えます。

名前の意味は何ですか。

「金のたてがみ」です。前半が黄金、後半がたてがみを指します。

グルファクシと併せて覚えたい言葉・用語

アースガルズ(Ásgarðr)

アース神族が住む神々の国。虹の橋ビフレストで地上とつながる。

ミョルニル(Mjölnir)

トールの槌。投げれば必ず手に戻る。小人が作ったが、ロキの妨害で柄が短くなった。