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北欧神話

ダグとは何の神様か|家系図・物語

Dagr  / ダグ

太陽 アース神族

昼そのものである神。馬のたてがみの光が、地上を照らしている。

ダグとは何の神様か

ダグはひとことで言えば昼という時間そのものの神です。名がそのまま「昼」を意味します。

母は夜の女神ノート、父はアース神族デリング。母は生まれつき髪も姿も黒く暗いとされますが、この子は父に似て明るく美しかったと語られます。

主神オーディンは母子を呼び、それぞれに馬車を与えて、世界を巡り続けるよう命じました。こうして昼と夜ができあがります。

引くのは馬スキンファクシ。名は「光のたてがみ」を意味し、そのたてがみが放つ光が地上を照らしているとされます。

太陽の女神ソールがいるのに、昼の神が別にいる。北欧神話は、光そのものと、昼という時間を、別々の神に分けています。

ダグの名前の表記と読み方

古ノルド語では Dagr(ダグ)。これは固有名詞であると同時に、「昼」「日」を意味する普通の言葉でもあります。

この語は、いまも北欧の言葉に生きています。スウェーデン語とデンマーク語で日や昼を指す語は、この形をほとんどそのまま受け継いでいます。

ルーン文字にも残りました。ダガズという名のルーンがあり、名は昼を意味する語に由来します。神の名がそのまま文字の名になっている例です。

父の名デリングは「曙光」を意味します。夜の女神ノートと曙光の神が出会って昼が生まれる、という並びになっており、この配列自体が夜明けの説明になっているという読み方があります。

Dagr(ダグ)

古ノルド語の表記。「昼」「日」を意味する普通名詞でもある。

Skinfaxi(スキンファクシ)

この神の馬の名。「光のたてがみ」を意味する。

Dellingr(デリング)

父の名。「曙光」を意味するアース神族の男神。

ダグの物語

  1. 夜と昼の家系 ─ 三度の結婚
  2. 馬車を与えられる ─ 昼と夜ができる
  3. スキンファクシ ─ たてがみが照らす
  4. ソールとの違い ─ 光と時間を分ける

夜と昼の家系 ─ 三度の結婚

この神を語るには、母ノートから始める必要があります。

母はヨトゥンヘイムに住むナルヴィという巨人の娘で、髪も姿も生まれつき黒く暗いとされました。

三度結婚しています。最初の夫ナグルファリとの間に息子アウズ。次の夫アンナルとの間に娘ヨルズ。ヨルズは大地の女神で、雷神トールの母にあたります。

そして三度目の夫が、アース神族のデリングでした。この夫との間に生まれたのが、ダグです。

母は暗く、末の子だけが明るい。 詩はその対比をはっきり書きます。

夜が三度嫁いで、最後に昼を産んだ。 家系そのものが、時間の流れの説明になっています。

馬車を与えられる ─ 昼と夜ができる

ギュルヴィたぶらかし』第10章は、こう伝えます。

オーディンは母ノートと子ダグを呼び、それぞれに馬車を与えました。 そして、世界を巡り続けるよう命じます。

二人は十二時間ごとに、交互に大地の上を通るよう定められました。

こうして、昼と夜ができあがります。

ここで大事なのは、昼と夜が最初からあったのではないという点です。神の命令によって、後から作られています。

北欧神話は、世界の細部をひとつずつ組み立てていきます。巨人の体から大地を作り、火花を集めて星を置き、母子に馬車を与えて時間を回す。すべてが誰かの手による仕事として語られます。

スキンファクシ ─ たてがみが照らす

この神の馬はスキンファクシ。「光のたてがみ」を意味します。

地上を照らしているのは、この馬のたてがみが放つ光だとされます。

母ノートの馬はフリームファクシ、「霜のたてがみ」です。こちらは馬銜(はみ)から滴り落ちる泡が大地を濡らし、それが谷の露になると語られます。

昼の光も、朝の露も、走る馬から出ています。

自然現象を、走る獣の体から説明する。 北欧神話が繰り返し使う手つきです。風は鷲が翼を広げるから吹き、地震はロキが身悶えするから起きる。

どれも、目に見える出来事に体を与えています。「なぜ」ではなく「誰の体から」で説明するのが、この神話の説明の仕方でした。

ソールとの違い ─ 光と時間を分ける

北欧神話には、太陽の女神ソールもいます。

ソールは太陽そのものを運ぶ女神で、狼スコルに追われながら空を駆けます。ラグナロクの日には呑まれてしまいます。

一方この神が司るのは、昼という時間です。

光を運ぶ者と、昼を回す者が別々に立てられている。 一見すると重複ですが、役目は違います。

他の神話でも似た分業は見られます。ただ北欧の場合、両方に馬と車が与えられ、両方が追われたり定められたりしている点が独特です。

空を巡るものは、すべて誰かの仕事として説明されます。太陽も、月も、昼も、夜も。空が休みなく動いていることの説明が、この神話ではとても丁寧に行われています。

ダグの家系図と家族

ダグの性格と人物像

ダグは、役目だけの神です。

台詞がありません。誰かと争うことも、旅に出ることもない。ただ十二時間ごとに天を巡ります。

それでもこの神が印象に残るのは、明るく美しかったという一行があるからです。

母は暗い。異父の兄姉も、それぞれ別の性格を持つ。そのなかで末の子だけが、父に似て明るい。親から子へ、暗さから明るさへ移る一段が、家系の形で示されています。

そして、この神は追われていません。 太陽のソールも月のマーニも狼に追われ、終末の日に呑まれます。昼の神にそうした記述はありません。

光は失われるが、昼という時間は誰にも奪われない。 そう読むこともできます。原典がそこまで書いているわけではありませんが、比べてみると目に留まる違いです。

ダグゆかりの地と遺跡

この神を祀った社や神殿は見つかっていません。 北欧神話には現役の信仰がなく、建物もほとんど残っていないためです。

名を含む地名も確認できていません。ただしこの神の名は、昼や日を意味する普通の言葉として北欧の言語に生き続けており、祀られる代わりに日常の言葉として残ったという言い方はできます。ルーン文字ダガズの名も、同じ語に由来します。

ダグが現代に残した痕跡

この神の名は、北欧の言葉と、ルーン文字のなかに残っています。

ルーン文字ダガズ: 昼や日を意味する語に由来するルーン文字の名。ルーンの名には自然や神にちなむものが多く、これもその一つ。

北欧の言葉に残る「昼」: スウェーデン語やデンマーク語で日や昼を指す語は、この神の名の形をほとんどそのまま受け継いでいる。

スキンファクシとフリームファクシ: 昼の馬と夜の馬。前者のたてがみの光が地上を照らし、後者の馬銜から落ちる泡が谷の露になるとされる。

ダグが司るもの

馬のたてがみが放つ光で地上を照らすとされる。

始まり

夜が明けて一日が始まることを司る神とされる。

ダグについてよくある質問

ダグは何の神様ですか。

昼という時間そのものを司る神です。名がそのまま「昼」を意味し、馬車で天を巡ることで昼が訪れるとされます。

ダグの両親は誰ですか。

母は夜の女神ノート、父はアース神族のデリングです。デリングの名は「曙光」を意味します。

太陽の女神ソールとどう違うのですか。

ソールは太陽そのものを運ぶ女神で、こちらは昼という時間を司ります。光を運ぶ者と、昼を回す者が別々に立てられています。

『ヘルギの歌』に出るダグは同じ人物ですか。

別人です。古エッダ『フンディング殺しのヘルギの歌 その二』に出るダグは人間の英雄で、シグルーンの弟にあたります。

ダグと併せて覚えたい言葉・用語

アース神族(あーすしんぞく)

オーディンを主神とする神々の一族。戦いと支配を担う。アースガルズに住む。

ラグナロク(Ragnarök)

北欧神話の終末。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅して世界が焼け落ち、海に沈む。そののち新しい大地が浮かび上がる。