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北欧神話

マーニとは何の神様か|家系図・物語

Máni  / マーニ

アース神族

月の神。ソールの弟。地上から子を二人さらい、月に連れていった。

マーニとは何の神様か

マーニはひとことで言えば月そのものの神です。月の運行と満ち欠けを司り、太陽の女神ソールの弟にあたります。

生まれは姉と同じです。ムンディルファリという男が、自分の二人の子があまりに美しいことから、娘にソール(太陽)、息子にマーニ(月)と名づけました。神々はこれを驕りとみて怒り、二人を捕らえて天を渡らせます。

姉と同じく、この神も追われています。追うのは狼ハティ。月食は、その狼が月を捕らえたために起こると考えられました。

この神には、地上から見える姿があります。ヒューキビルという二人の子を月へ連れ去り、その姿は今も地上から見えるとされます。月の模様の由来を語る話です。

ラグナロクでは狼に捕らえられ、大きな損害を受けるとされます。

マーニの名前の表記と読み方

古ノルド語では Máni(マーニ)。そのまま「」を意味する語です。日本語ではマニとも書かれます。

英語の月にあたる語や、ドイツ語の月にあたる語と同じ語根にさかのぼります。北欧諸語で月曜日は「月の日」を意味する語であり、この名がそのまま曜日に残っています。

姉のソールも同じ作りです。天体の名がそのまま神の名になっており、名と実体が分かれていません。他の神が「知識のために片目を捧げた者」のような働きの名を持つのとは対照的です。

北欧神話では、月は男性、太陽は女性です。多くの神話と逆になっており、ゲルマン語圏に共通する特徴とされます。

Máni(マーニ)

古ノルド語の表記。そのまま「月」を意味する。日本語ではマニとも書かれる。

Mundilfari(ムンディルファリ)

この神と姉ソールの父の名。二人に天体の名を付けたことで神々の怒りを買った。

Hjúki ok Bil(ヒューキとビル)

この神が地上から月へ連れ去った二人の子の名。

マーニの物語

  1. 天体の名を付けた罰
  2. ヒューキとビル ─ 月の模様の由来
  3. 追われ続ける ─ ハティの追跡
  4. 封印としての月 ─ 大地を照らさない天体

天体の名を付けた罰

新エッダギュルヴィたぶらかし』第11章から第12章に、この神の由来が記されています。

ムンディルファリという男に、二人の子がいました。あまりに美しかったので、父は娘に太陽の名、息子に月の名を与えました。

神々はこれに怒りました。人の子に天体の名を付けることが、越えてはならない線だと見なされたのです。

罰として二人は捕らえられ、天を渡らされます。姉は太陽の運行を、弟は月の運行と満ち欠けを司ることになりました。

名を付けた罰が、その名のとおりになることでした。 父の驕りの代償を、子が世界の終わりまで払い続けます。北欧神話には、こうした皮肉のきいた処分がしばしば出てきます。

ヒューキとビル ─ 月の模様の由来

この神には、地上から見えるとされる姿があります。

ある夜、この神は二人の子が働いているのを見つけました。ヒューキビルといいます。肩に天秤棒をかつぎ、セーグという桶を運んでいました。ヴィズフィンルという男の子供たちです。

この神は、二人をそのまま地上から月へ連れ去りました。

理由は書かれていません。夜に水を汲んでいたからとも、その働く姿が気に入ったからとも読まれます。

大事なのはその後です。

彼らが月に付き添う姿は、地上からも見える。

月の表面の模様が、この二人だとされています。 月に人影を見る話は世界各地にありますが、北欧では桶をかつぐ二人の子として語られました。

この二人が、後の童謡に出てくる丘へ水を汲みにいく子供たちのもとになったという説もあります。

追われ続ける ─ ハティの追跡

この神も、休みなく走っています。

新エッダは理由をはっきり書きます。

月は常にハティという狼に追いかけられているため、急いで運行しなければならない。

月の速さは、恐怖の速さです。 満ち欠けを司る神が、自分の意志ではなく、追われているから動いています。

姉のソールも同じで、追う狼がスコルに変わるだけです。北欧神話では、空の運行そのものが追跡の結果として語られます。

月食は、その狼が月を捕らえた姿だと考えられました。日食と同じ組み立てです。

なお、この狼と同一視されることのあるマーナガルムは「月の犬」の意で、月を捕らえて天と空に血を塗るとされます。捕らえる者が二頭いるのか一頭なのかは、決着していません。

封印としての月 ─ 大地を照らさない天体

北欧神話の天体には、意外な性質があります。

太陽も月も、大地を照らしていません。 『グリームニルの言葉』第38節によれば、大地と太陽のあいだにはスヴェルという楯が立ち、太陽の熱を遮っています。地上を照らすのは、夜の女神ノートとその夫デリングの子である昼の神ダグです。

では、太陽と月は何をしているのか。

ひとつの読み方は、封印としての役目です。ラグナロクではすべての封印、足枷、縛めが消し飛びます。フェンリルが足枷につながれているのと同じように、太陽と月が天を巡り続けること自体が、世界を留めているという読みです。

二人が呑まれ、捕らえられたとき、世界を縛っていたものが解けます。光が消えることと、縛めが解けることが、同じ出来事として書かれています。

マーニの家系図と家族

マーニのきょうだい: ソール姉弟

ふつうのつながり きょうだい 敵対・国ゆずり 本によって話がちがう

マーニの性格と人物像

マーニは、選ばなかった神です。

自分から月になったのではありません。父が名を付け、神々が怒り、罰として空に上げられました。姉と同じ境遇です。

不平は伝わっていません。逃げ切ろうとも、狼と戦おうともしません。ただ決まった道を走ります。

ただし、姉と違う一点があります。この神は、地上から二人の子を連れ去りました。 罰として空にいる者が、自分と同じように誰かを地上から引き上げています。

この一件は、どう読むかで印象が変わります。気まぐれな連れ去りとも、供として選んだとも読めます。空にひとりでいる時間の長さを思うと、後者に傾きたくもなります。

月の模様として、その二人が今も見えるとされている。北欧神話でもっとも静かな場面のひとつです。

マーニゆかりの地と遺跡

この神を祀った建物は見つかっていません。 北欧神話の神には現役の信仰が無く、社そのものがほとんど残っていないためです。

名を含む地名の報告も、いまのところ確かめられていません。太陽と月の神は、トールフレイのように土地の名として残る形の信仰ではなかったと考えられます。

残ったのは言葉のほうです。北欧諸語で月曜日は「月の日」を意味する語であり、いまも使われています。

マーニが現代に残した痕跡

この神の名は、曜日と天文の名づけ、そして月を見上げたときの語りに残りました。

「月の日」としての月曜日: 北欧諸語で月曜日は月を意味する語から作られている。ゲルマン語圏に共通する数え方で、月を人格として扱った古い層の名残とされる。

土星の衛星ムンディルファリ: 土星の第25衛星。北欧群に属する不規則衛星で、2000年に発見され、2003年にこの神と姉ソールの父の名が与えられた。

月の模様の言い伝え: 桶をかついだ二人の子を月へ連れ去り、その姿が地上から見えるという話。月に人影を見る言い伝えの北欧版にあたる。

マーニが司るもの

月の運行と満ち欠けを司る神とされる。

月の満ち欠けが日を数える手がかりとされてきた。

時を知る

満ち欠けの周期が、季節と月日の区切りに使われた。

マーニについてよくある質問

マーニは何の神ですか。

北欧神話の月の神です。月の運行と満ち欠けを司ります。太陽の女神ソールの弟にあたります。

なぜマーニは急いで空を渡るのですか。

狼ハティに追われ続けているためです。月食は、その狼が月を捕らえたために起こると考えられました。

ヒューキとビルとは誰ですか。

天秤棒で桶を運んでいたところをマーニに月へ連れ去られた二人の子です。月に付き添う姿が地上からも見えるとされ、月の模様の由来として語られます。

北欧神話では月が男性なのですか。

そうです。月が男神、太陽が女神です。多くの神話と逆になっており、ゲルマン語圏に共通する特徴とされます。

マーニと併せて覚えたい言葉・用語

ラグナロク(Ragnarök)

北欧神話の終末。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅して世界が焼け落ち、海に沈む。そののち新しい大地が浮かび上がる。

新エッダ(しんエッダ)

1220年頃にアイスランドのスノッリ・ストゥルルソンが著した散文の書。神話を体系的に整理しており、現在の北欧神話の理解はこの書に多くを負う。