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北欧神話

ブロックとエイトリとは何の神様か|家系図・物語

Brokkr ok Eitri  / ブロックとエイトリ

ドヴェルグ

ミョルニルを鍛えた小人の兄弟。虻に刺されても手を止めなかった。

ブロックとエイトリとは何の神様か

ブロックとエイトリはひとことで言えばミョルニルを鍛えた兄弟です。ドヴェルグ、つまり小人の一族に属する鍛冶職人でした。

事の起こりはロキの軽口です。先に別の小人たちが作った三つの宝の出来に調子づき、「これに勝る宝を作れるか、作れたら自分の首をやる」と賭けを持ちかけました。

兄弟は引き受けます。炉を仕切ったのがエイトリ、ふいごを踏んだのがブロックでした。言いつけはただ一つ、何があっても手を休めるな。 この一言だけで、物語の全部が動きます。

生まれたのは黄金の猪、腕輪、そして槌。神々が持つ最強の武器は、虻に刺されながらふいごを踏み続けた小人の忍耐から出ています。

ブロックとエイトリの名前の表記と読み方

ブロック(Brokkr)はブロックルとも書かれます。エイトリ(Eitri)にはシンドリ(Sindri)という別名があり、書物によってどちらの名で呼ぶかが変わります。

混乱のもとになるのがこの点です。同じ人物が二つの名を持ち、しかも兄弟のどちらがどちらかも、紹介によって入れ替わることがあります。 日本語の紹介で「シンドリ兄弟」と書かれていれば、それはエイトリのことです。

二人が属するドヴェルグは、日本語では小人・矮人と訳されます。この神話では、神々の宝をひとつ残らず作った一族です。

Brokkr(ブロック)

古ノルド語の表記。ブロックルとも書かれる。ふいごを踏んだ弟にあたる。

Eitri(エイトリ)

古ノルド語の表記。炉を仕切った兄にあたる。

Sindri(シンドリ)

エイトリの別名。書物によってはこちらの名で呼ばれる。

ブロックとエイトリの物語

  1. 賭けの発端 ─ 切られた髪から
  2. 虻 ─ 三度の妨害
  3. 判定 ─ 六つの宝を並べて
  4. 縫い合わされた口 ─ 賭けの決着

賭けの発端 ─ 切られた髪から

話はさらに前から始まります。ロキがトールの妻シヴの髪を丸刈りにしたのです。

骨を砕くと脅されたロキは、償いのため小人イーヴァルディの息子たちのもとへ走ります。頼んだのは黄金のかつら一つだけでしたが、息子たちは気を利かせて、船スキーズブラズニルと槍グングニルも作り上げました。

三つの見事な宝を手にして、ロキは調子に乗ります。ブロックとエイトリの兄弟に向かって、「これに勝る宝を作れたら、自分の頭をやる」と賭けを持ちかけました。

兄弟は受けました。この一言がなければ、ミョルニルは生まれていません。

虻 ─ 三度の妨害

エイトリは炉に材料を入れ、ブロックに言いつけて出て行きました。何があってもふいごを動かす手を休めるな。

ロキは虻に化けて現れます。一度目、ブロックの手を刺しました。ブロックは踏み続け、黄金の猪グリンブルスティができます。二度目、首を刺しました。耐えて、腕輪ドラウプニルができます。

三度目はまぶたのあいだでした。血が目に流れこみ、前が見えなくなります。ブロックはついに手を離し、血を払いました。

そのわずかな間に炉の火が弱まり、鍛えていた槌の柄が短くなりました。世界最強の武器に残った、唯一の欠点です。

判定 ─ 六つの宝を並べて

ブロックは宝を携え、ロキとともに神々の前に立ちました。判定を下すのはオーディン、トール、フレイの三柱です。

並べられたのは六つ。イーヴァルディの息子たちが作った黄金のかつら、船スキーズブラズニル、槍グングニル。兄弟が作った猪グリンブルスティ、腕輪ドラウプニル、槌ミョルニル

神々は迷いませんでした。柄が短くなった槌こそ、六つのうち最上である。 巨人から神々を守るには、これに勝るものはないという理由でした。

傷のある品が一等になる。 完全であることより、役に立つことを取ったこの判定は、北欧神話の性格をよく表しています。

縫い合わされた口 ─ 賭けの決着

勝ったブロックは、約束どおりロキの頭を求めました。

ロキは言い逃れます。頭はやると言ったが、首をやるとは言っていない。 頭を取るには首を切らねばなりませんが、首は賭けの対象ではない、という理屈です。

神々はこの屁理屈を退けられませんでした。そこでブロックは、別のやり方を選びます。ロキの口を、ヴァルダリという革紐で縫い合わせました。

言葉で逃げた者の口を縫う。物言いに対する報いとして、これほど整った決着はありません。

神々の宝がそろい、ロキが最初の罰を受ける。 北欧神話の道具立ては、この一場面でほぼ出そろいます。

ブロックとエイトリの家系図と家族

ブロックとエイトリの親: ドワーフこの一族の職人

ブロックとエイトリの性格と人物像

ブロックとエイトリは、耐えた者たちです。

この兄弟に策略はありません。むしろ全部を仕掛けたのはロキのほうです。賭けを持ちかけ、虻に化けて刺し、負けたら屁理屈で逃げました。

兄弟がしたのは、言いつけを守り、刺されても手を止めないことだけでした。それでミョルニルが生まれています。

注目したいのは、ブロックが三度目に手を止めたことです。完璧ではありません。だからこそ槌の柄は短いままで、その欠点が語り継がれています。

やり遂げたのに、失敗の跡が残る。 北欧神話でいちばん優れた品には、いちばんわかりやすい傷が付いています。この兄弟の手の跡です。

ブロックとエイトリゆかりの地と遺跡

この兄弟を祀った場所は見つかっていません。 小人の一族であり、信仰の対象になった記録は残っていません。

ただし、二人が鍛えたミョルニルについては話が別です。槌をかたどった護符が北欧の広い範囲から出土しており、身につける守りとして実際に用いられていました。作り手ではなく、作られた物のほうが祀られたといえます。

ブロックとエイトリが現代に残した痕跡

この兄弟の仕事は、神々の持ち物としていまも語られ続けています。

槌ミョルニル: 兄弟が最後に鍛えた槌。柄が短いのは、ブロックが虻に刺されて手を止めたためとされる。槌をかたどった護符が北欧各地から出土している。

腕輪ドラウプニル: 九夜ごとに同じ重さの腕輪を八つ滴らせる宝。オーディンのものとなり、バルドルの火葬でともに焼かれた。

猪グリンブルスティ: 黄金の猪。どんな馬より速く空も海も駆け、毛皮の輝きで暗闇でも道に困らないとされる。のちに豊穣神フレイの乗り物となった。

ブロックとエイトリが司るもの

鍛冶

神々の宝を鍛えた小人の兄弟として語られることによる。

ものづくり

猪グリンブルスティ、腕輪ドラウプニル、槌ミョルニルを作り上げた腕による。

約束を守ること

「手を休めるな」という言いつけを刺されながら守り抜いたことによる。

ブロックとエイトリについてよくある質問

ブロックとエイトリは何を作りましたか。

黄金の猪グリンブルスティ、腕輪ドラウプニル、そして槌ミョルニルの三つです。

ミョルニルの柄が短いのはなぜですか。

鍛えている最中、虻に化けたロキがブロックのまぶたを刺し、血で前が見えなくなって一瞬だけふいごの手を止めたためです。

エイトリとシンドリは同じ人物ですか。

同じです。エイトリにはシンドリという別名があり、書物によってどちらの名で呼ぶかが変わります。

賭けに負けたロキはどうなりましたか。

「頭はやると言ったが、首をやるとは言っていない」と言い逃れました。そのためブロックはロキの口をヴァルダリという革紐で縫い合わせています。

ブロックとエイトリと併せて覚えたい言葉・用語

ミョルニル(Mjölnir)

トールの槌。投げれば必ず手に戻る。小人が作ったが、ロキの妨害で柄が短くなった。