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北欧神話

ドワーフ(ドヴェルグ)とは何の神様か|家系図・物語

Dvergr  / ドヴェルグ

ドヴェルグ

神々の宝をすべて作った鍛冶の一族。古ノルド語ではドヴェルグ。

ドワーフとは何の神様か

ドワーフはひとことで言えば神々の道具をつくった一族です。古ノルド語ではドヴェルグ(dvergr)といいます。

この一族の役割は決定的です。北欧神話に出てくる神々の宝物は、ひとつ残らずドヴェルグが鍛えました。 トールの槌ミョルニルオーディンの槍グングニルと腕輪ドラウプニル、フレイの船スキーズブラズニルと猪グリンブルスティシヴの黄金の髪。

作ったのはイーヴァルディの息子たちと、ブロックとエイトリの兄弟です。どちらもロキの持ちかけた賭けから生まれた仕事でした。

生まれ方も語られます。巨人ユミルの死体に湧いた蛆が、神々によって人の姿と知恵を与えられたものだとされます。神々の宝が、死体から湧いた者の手から出ている。 北欧神話らしい筋です。

ドワーフの名前の表記と読み方

古ノルド語では dvergr(ドヴェルグ)。英語の dwarf、ドイツ語の Zwerg と同じ語根です。

日本語では小人、矮人、侏儒などと訳されてきましたが、背丈についての記述は、実は原典にほとんどありません。 小さいという特徴は、後の時代に固まったものです。

原典が繰り返し書くのは腕前のほうです。地の下、または岩の中に住み、鍛冶と細工に並ぶ者がいない。背丈ではなく、手の技で語られる一族でした。

Dvergr(ドヴェルグ)

古ノルド語の単数形。複数形は dvergar(ドヴェルガル)。

Dwarf(ドワーフ)

英語の綴り。日本語ではこちらが広く使われている。

Zwerg(ツヴェルク)

ドイツ語の綴り。同じ語根から出ている。

ドワーフの物語

  1. 首を賭けた勝負
  2. 死体から湧く ─ 生まれ方
  3. 四方を支える四人

首を賭けた勝負

ロキがトールの妻シヴの黄金の髪を切り落としたとき、骨を砕くと脅されました。

償いのため、ロキはイーヴァルディの息子たちに髪を作らせます。彼らは頼まれてもいない船スキーズブラズニルと槍グングニルまで添えました。

出来映えに調子づいたロキは、別の兄弟ブロックとエイトリに持ちかけます。

これに勝る宝が作れたら、おれの首をやろう。

兄弟は猪グリンブルスティ、腕輪ドラウプニル、槌ミョルニルを鍛えました。ロキは虻に化けてブロックを刺し、鞴の手を止めさせます。そのためミョルニルの柄は短くなりました。

神々はミョルニルを最良と認めます。ロキは「首はやるが、頸はやると言っていない」と言い逃れ、口を縫い合わされました。

死体から湧く ─ 生まれ方

新エッダは、この一族の生まれ方をこう記します。

彼らは初め、ユミルの肉のなかで蛆として生まれた。

そして神々の決定によって、人の知恵と姿を与えられ、土と岩のなかに住むことになりました。

古エッダ『巫女の予言』には、ドヴェルグの名を延々と並べる一節があります。研究者はこの部分を「小人の名寄せ」と呼びます。

ノルズリとスズリ、アウストリとヴェストリ、アルソルヴとドヴァリン。

トールキンが『ホビットの冒険』で使った小人の名の多くは、この名簿からそのまま採られています。 ガンダルフの名もここに出てきます。

四方を支える四人

神々がユミルを殺し、その頭蓋骨で天を作ったとき、四隅を支える役を負わされたのがノルズリ、スズリ、アウストリ、ヴェストリでした。それぞれ北・南・東・西を意味します。

新エッダ『ギュルヴィたぶらかし』第8章の記述です。

このため詩の言い換えでは、「小人が支える重荷」といえば天のことを指します。

世界の屋根を四人の職人が支えている。 神々ではなく、地の下の一族が空を支えているという配置に、この神話の価値の置き方が出ています。

ドワーフの家系図と家族

ドワーフの子・子孫: ユミルユミルの死体から生まれたブロックとエイトリこの一族の職人アンドヴァリこの一族の一人

ドワーフの性格と人物像

ドヴェルグは、取引をする一族です。

神々に忠実なのではありません。頼まれれば作り、賭けを持ちかけられれば受け、勝てば代価を求めます。ブロックはロキの首をきちんと請求しました。

一方で、強欲さも隠されません。 アンドヴァリは奪われた指輪に呪いをかけ、フィアラルとガラールは賢者クヴァシルを殺してその血を酒に変えました。

神々の宝も、英雄の破滅も、この一族の手から出ています。 作る力と、その力を金銭で扱う態度が、同じ一族に同居しています。

北欧神話には、善玉と悪玉の区別がありません。この一族はその好例です。

なお古エッダでは、エルフ(アールヴ)とドヴェルグは最初から別々に数えられています。

ドワーフゆかりの地と遺跡

ドヴェルグを祀った場所はありません。 供物を受ける相手ではなく、取引の相手でした。

ただし岩そのものが結びつけられています。北欧には、小人が住むとされる岩に供物を置く習わしが各地に記録されており、アイスランドでは工事の際にそうした岩を避ける例が現代も報告されています。ただし、それらの岩は個々の言い伝えによるもので、特定の位置を一次資料で確かめることはできませんでした。

ドワーフが現代に残した痕跡

この一族の名は、現代のファンタジー作品の土台になりました。

トールキンの小人の名: 『ホビットの冒険』のトーリン、ドワリン、バーリンなどの名は、『巫女の予言』の小人の名簿から採られている。

ガンダルフ: 同じ名簿に Gandálfr(杖のアールヴ)として出てくる。トールキンはこの名を魔法使いに与えた。

英語の dwarf: 同じ語根の語で、ゲルマン語圏に共通していた。ドイツ語の Zwerg も同系である。

ドワーフが司るもの

ものづくり

神々の宝物をすべて鍛えた一族とされる。

刀剣

槌ミョルニル、槍グングニル、剣グラムなど、神話の武器はこの一族の手による。

地の下の黄金と宝石を蓄えているとされた。

ドワーフについてよくある質問

ドワーフは北欧神話に出てきますか。

出てきます。古ノルド語ではドヴェルグと呼ばれ、神々の宝物をすべて鍛えた一族として語られます。

ドワーフは背が低いのですか。

原典に背丈の記述はほとんどありません。小さいという特徴は後の時代に固まったもので、原典が語るのは鍛冶と細工の腕前です。

ドワーフはどうやって生まれたのですか。

新エッダによれば、巨人ユミルの死体に湧いた蛆が、神々によって人の姿と知恵を与えられたものとされます。

ドワーフとエルフは同じですか。

古エッダでは別々に数えられます。ただし新エッダの「闇のアールヴ」の説明が小人の説明とほぼ同じため、区分そのものを疑う見方があります。

ドワーフと併せて覚えたい言葉・用語

ミョルニル(Mjölnir)

トールの槌。投げれば必ず手に戻る。小人が作ったが、ロキの妨害で柄が短くなった。

新エッダ(しんエッダ)

1220年頃にアイスランドのスノッリ・ストゥルルソンが著した散文の書。神話を体系的に整理しており、現在の北欧神話の理解はこの書に多くを負う。

古エッダ(こエッダ)

詩の形で伝わる北欧神話の歌謡集。13世紀の写本に収められたが、成立はさらに古い。作者は不明。