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北欧神話

ファフニールとは何の神様か|家系図・物語・ゆかりの地

Fáfnir  / ファフニール

冥界 巨人

黄金を守るために竜へ変じた者。名は「抱きこむもの」。

ファフニールとは何の神様か

ファフニールはひとことで言えば財に呑まれた者です。名は「抱きこむもの」を意味し、黄金を抱えこむ姿から来ています。

もとは竜ではありませんでした。原典は小人、または人間として語ります。父フレイズマル、兄弟にレギンとオトがいました。

ロキがカワウソに化けていたオトを誤って殺し、その賠償として小人アンドヴァリから奪った黄金が、この一族へ渡ります。その黄金には、持ち主を必ず滅ぼすという呪いがかけられていました。

ファフニールは父を殺して黄金を独占し、荒野の穴に籠りました。そして恐怖の兜をかぶり、毒を吐く竜になります。

討ったのは弟レギンの養い子、英雄シグルズでした。

ファフニールの名前の表記と読み方

古ノルド語では Fáfnir。日本語ではファフニール、ファフナー、ファーヴニル、ファーフニルなど、表記が多く分かれています。

ファフニールが広く使われていますが、古ノルド語の音にもっとも近いのは「ファーヴニル」とされます。 ワーグナーの楽劇を通じて広まった「ファフナー」も根強く残っています。

名の意味は「抱きこむもの」。何を抱きこんだのかが、そのまま名になっているわけです。

Fáfnir(ファーヴニル)

古ノルド語の表記。古ノルド語の音にもっとも近いのはこの読みとされる。

Fafner(ファフナー)

英語・現代ドイツ語式の読み。ワーグナーの楽劇でもこの形。

Ægishjálmr(エーギスヒャールム)

「恐怖の兜」。この竜が身につけ、見る者を怯えさせた宝。

ファフニールの物語

  1. カワウソの賠償 ─ 呪いが家に入る
  2. 父を殺し、竜になる
  3. 穴に潜む ─ 討ち方
  4. 心臓と、鳥の声

カワウソの賠償 ─ 呪いが家に入る

オーディン、ロキ、ヘーニルの三神が旅の途中、川辺で魚を食べるカワウソを見つけ、ロキが石を投げて殺しました。

そのカワウソは、実はフレイズマルの息子オトが姿を変えたものでした。

三神は捕らえられ、賠償としてカワウソの皮を覆い尽くすだけの黄金を求められます。ロキは小人アンドヴァリを捕らえ、その財宝と指輪アンドヴァラナウトを奪いました。

アンドヴァリは指輪に呪いをかけます。

この指輪を持つ者は、みな滅びるがよい。

黄金は皮を覆いましたが、髭が一本はみ出し、指輪でそこを隠しました。 呪いは、その一本の髭から一族へ入りこみます。

父を殺し、竜になる

黄金を手にした父フレイズマルは、息子たちに何も分けませんでした。

ファフニールは父を殺して黄金を独占します。そして弟レギンにも分けず、財宝を担いでグニタヘイズの荒野へ移り、穴を掘って籠りました。

『ファフニールの言葉』は、この変化をこう語ります。

恐怖の兜をかぶり、毒を吹きながら這い回った。誰ひとり近づく者はいなかった。

竜になった、というより、竜のようになった。 姿が変わったのか、恐ろしさがそう見せたのか、原典ははっきり書きません。財を独り占めした者が人でなくなるという筋だけが、まっすぐ通っています。

穴に潜む ─ 討ち方

レギンは、養い子であるシグルズに兄を討たせようとします。折れた剣を打ち直し、剣グラムを与えました。

竜は堅い鱗に覆われ、正面からは倒せません。そこへ、道で会った長い髭の老人が助言します。

竜が水を飲みに通る道に穴を掘り、そこに潜んで、上を通る腹を下から刺せ。

老人はオーディンでした。シグルズはそのとおりにして、心臓の下を貫きます。

死にぎわ、ファフニールは自分を討った若者に問いかけ、そして忠告します。

あの光る黄金は、おまえの死をもたらすだろう。

討たれた竜が、討った者の未来を告げる。 この場面は北欧神話でもっとも印象の深い対話とされます。

心臓と、鳥の声

レギンは兄の心臓を取り出し、焼くようシグルズに命じました。

焼け具合をみようと指で触れ、熱さに思わずその指を口へ入れます。竜の血が舌に触れた瞬間、シジュウカラのさえずりが言葉として聞こえました。

あの男は、おまえの首を狙っている。先に討て。

シグルズはレギンを討ち、心臓を食べ、黄金を馬グラニに積んで去りました。

この一連の場面は、スウェーデンやイギリスの石彫に繰り返し彫られています。 とくにラムスンドの岩絵は、竜の胴をルーン銘の帯にして、刺す場面・指をなめる場面・鳥・馬を一枚に収めています。

ファフニールの家系図と家族

ファフニールのきょうだい: レギン

ファフニールの性格と人物像

ファフニールは、悪として生まれた存在ではありません。

最初は賠償を求めるまっとうな遺族の一人でした。父が黄金を分けなかったことに怒り、殺し、独占し、そして誰も近づけない荒野へ籠ります。

兄弟にも分けなかった。

この一行に、この存在のすべてが入っています。得たものを、誰とも分けられなくなる。 竜になるのは結果であって、原因ではありません。

注目すべきは、死にぎわの言葉が呪いではなく忠告だったことです。おまえも同じ道をたどると告げている。そしてシグルズは、まさにそのとおりに滅びます。

西洋の竜が黄金の上に眠る姿は、この一頭から始まったといわれます。

原典がこの存在を小人(ドワーフ)とも人間とも書くのは、姿かたちより「抱えこんだこと」のほうを語りたかったからでしょう。

ファフニールゆかりの地と遺跡

ファフニールを祀った場所はありません。 竜は祀る相手ではありません。

かわりに、討たれる場面を彫った石が各地に残りました。スウェーデンのラムスンドの岩絵とゲークの石、イギリスのマン島とヨークシャーの石十字、ノルウェーの木造教会の扉。キリスト教が広まったあとの遺物にまで、この竜は彫られ続けています。

ラムスンドの岩絵(Ramsundsristningen)

十一世紀。竜殺しを彫った最古級の遺物

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ラムスンドの岩絵の住所: スウェーデン セーデルマンランド県エスキルストゥーナ市イェーデル教区ラムスンデット

ラムスンドの岩絵に残るもの: 岩に彫られたルーン銘と線刻画

竜の胴そのものがルーン銘の帯になっており、その下から剣で刺す人物が彫られています。

そばには、指を口に入れる人物、木にとまる鳥、首を落とされた鍛冶、馬が並びます。一枚の岩に、物語の順序がそのまま彫られています。

スウェーデン国立文化財庁の遺跡台帳に登録されている。屋外の岩で、いまも見学できる。

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ファフニールが現代に残した痕跡

この竜は、西洋のドラゴン像そのものに大きな跡を残しました。

宝を守る竜という型: トールキンの『ホビットの冒険』に出るスマウグは、この竜を下敷きにしていると作者自身が述べている。

ワーグナー『ジークフリート』: 楽劇の第二幕で巨人ファフナーが竜に変じ、指輪を守って眠る。舞台で竜をどう出すかは上演史の難題であり続けている。

恐怖の兜の意匠: この竜が身につけた「エーギスヒャールム」の名は、後代アイスランドの魔術書で、放射状の護符の名として使われた。

ファフニールが司るもの

莫大な黄金を抱えこんだ者として語られる。ただしその富には呪いがかかっていた。

毒を吐きながら這い回ったとされる。

守護

財宝を誰にも渡さず守り続けた。宝を守る竜という形の出発点になった。

ファフニールについてよくある質問

ファフニールはもともと竜だったのですか。

違います。原典では小人または人間として語られ、黄金を独占したのちに竜へ姿を変えたとされます。

ファフニールを倒したのは誰ですか。

英雄シグルズです。竜が水を飲みに通る道に穴を掘って潜み、上を通る腹を下から剣グラムで刺しました。

ファフニールの黄金はどうなりましたか。

小人アンドヴァリの呪いがかかったまま、シグルズ、ブリュンヒルド、グンナルへと持ち主を変え、そのたびに死をもたらしました。

ファフニールとファフナーはどちらが正しい読みですか。

古ノルド語の音にもっとも近いのは「ファーヴニル」とされます。ファフナーは英語と現代ドイツ語の読みで、ワーグナーの楽劇を通じて広まりました。