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北欧神話

グラニとは何の神様か|家系図・物語・ゆかりの地

Grani  / グラニ

神獣

灰色の毛並みの牡馬。八本足の名馬の血を引く、竜殺しの相棒。

グラニとは何の神様か

グラニはひとことで言えば英雄の相棒です。竜殺しの英雄シグルズが乗った、灰色の毛並みの牡馬です。

血筋がただものではありません。オーディンの駿馬スレイプニルの血を引くとされます。 八本足の名馬の子、あるいは孫にあたるわけです。

選ばれ方は伝えによって違います。『ヴォルスンガ・サガ』では、道で行き会った老人の忠告に従って選びました。老人はオーディンでした。一方、古エッダレギンの歌』では、シグルズが自分の判断で選んだとされています。

ファフニールを討ちに行くときも、黄金を運び出すときも、この馬が一緒でした。スウェーデンのラムスンドの岩絵には、宝を積んだ馬が竜殺しの場面と並べて彫られています。

主が死んだあとの行方は、伝えによって違います。 火葬の炎に加わったとする語り方もあります。

グラニの名前の表記と読み方

古ノルド語では Grani。日本語ではグラニ、グラネと書かれます。

語源には諸説あり、「口髭のある者」に通じるとする説があります。馬の口元の毛を指した呼び名だという読み方です。ただし決着はしておらず、単に古い馬の名だったとする見方もあります。

ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』では Grane(グラーネ)として登場しますが、乗り手が入れ替わっています。 楽劇でこの馬に乗るのはブリュンヒルデで、最後に炎の中へ馬を進めるのも彼女です。原典ではシグルズの馬です。

Grani(グラニ)

古ノルド語の表記。「口髭のある者」に通じる語とする説がある。

Grane(グラーネ)

ドイツ語圏での綴り。ワーグナーの楽劇ではブリュンヒルデの馬の名になる。

Sleipnir(スレイプニル)

この馬が血を引くとされる、オーディンの八本足の馬。

グラニの物語

  1. 馬を選ぶ ─ 老人の助言
  2. 竜のもとへ ─ 動かない馬
  3. ラムスンドの岩絵 ─ 石に彫られた馬
  4. 主が死んだあと ─ 分かれる結末

馬を選ぶ ─ 老人の助言

シグルズが馬を得る場面は、伝えによって書き方が違います。

『ヴォルスンガ・サガ』では、養父レギンに「義父の馬から好きなものを選べ」と言われました。王の許しを得て馬群へ向かう道で、シグルズは長い髭の老人に出会います。

老人は、馬を川へ追い込めと教えました。流れに逆らって渡りきった一頭が残ります。それがグラニでした。老人は正体を明かさずに去ります。オーディンでした。

一方、古エッダ『レギンの歌』では、シグルズが自分の判断でこの馬を選んだとされています。

同じ場面で、神が助けたか、助けなかったかが分かれています。 どちらを取るかで、この英雄の性格の読み方が変わってきます。

竜のもとへ ─ 動かない馬

グラニは、ふつうの馬ではありません。

ファフニールを討ちに向かうとき、シグルズは荒野を進みました。この馬は、ほかの馬が怯えて進めない場所でも歩みを止めなかったと語られます。

竜を討ったあと、シグルズは洞窟から莫大な黄金を運び出しました。運んだのはグラニです。

黄金を積み終えて、彼は馬に乗った。

馬に積みきれないほどの宝を、この一頭が運びました。 岩絵に彫られているのも、この場面です。

そしてその黄金には、小人アンドヴァリの呪いがかかっていました。持ち主を必ず滅ぼす、という呪いです。運ばれていったのは、宝であり、災いでした。

ラムスンドの岩絵 ─ 石に彫られた馬

スウェーデンのセーデルマンランド県に、ラムスンドの岩絵があります。十一世紀のもので、シグルズ伝説を刻んだ最古級の遺物です。

竜の胴をルーン銘の帯として彫り、それを下から剣で刺す人物、指を口に入れる人物、木にとまる鳥、鍛冶の道具、そして宝を積んだ馬が並びます。

物語の順序が、そのまま一枚の岩に彫られています。 エッダの写本より二百年ほど古いものです。

馬は木につながれた姿で彫られています。竜を討った主を待っている場面と読まれます。

文字で書かれるより先に、この馬は石に彫られていました。 伝説が広く知られていたことを示す資料です。

主が死んだあと ─ 分かれる結末

シグルズは、欺きが露見した末に殺されます。

そのあとグラニがどうなったかは、伝えによって違います。北欧の伝えのひとつでは、主の火葬の薪に加えられたとされます。ブリュンヒルドが後を追って身を投じた、その同じ炎です。

別の語り方では、馬の行方には触れません。

英雄の死とともに馬も終わる、という筋立ては、北欧に限らず広く見られます。 乗り手と馬を一組の存在として扱う考え方です。

ワーグナーの楽劇では、この馬に乗るのはブリュンヒルデに変わり、最後に燃える薪へ馬を進めるのも彼女です。乗り手は入れ替わりましたが、炎で終わる筋だけは受け継がれました。

グラニの家系図と家族

グラニの親: スレイプニルその血を引く馬

グラニの性格と人物像

グラニは、主より寡黙な相棒です。

言葉を話さず、特別な能力を見せることもありません。八本足でもなければ、空を駆けもしない。ただ、怯えないだけです。

怯えないという一点だけで、この馬は物語に残りました。 ほかの馬が進めない場所を歩き、竜のいる荒野へ入り、積みきれないほどの黄金を運びます。

そして、その黄金が主を滅ぼします。馬は何も知りません。

北欧の英雄物語では、乗り物や武器が持ち主と同じ運命をたどります。剣グラムは折れて鍛え直され、馬は主とともに炎に入りました。

道具ではなく、共に終わるもの。 この神話の馬の扱われ方が、よく出ています。

グラニゆかりの地と遺跡

グラニを祀った場所はありません。 神ではなく、英雄の馬だからです。

かわりに残ったのが、石に彫られた図です。シグルズ伝説を刻んだ岩絵や石碑には、宝を積んだ馬がしばしば描かれます。ラムスンドの岩絵がその代表です。

よく似た図を持つ石はほかにもありますが、彫られた馬がこの一頭だと確かめられるものは限られます。 ここでは所在地を確かめられたものだけを挙げています。

ラムスンドの岩絵(Ramsundsristningen)

十一世紀。シグルズ伝説を刻んだ最古級の遺物

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ラムスンドの岩絵の住所: スウェーデン セーデルマンランド県エスキルストゥーナ市イェーデル教区ラムスンデット

ラムスンドの岩絵に残るもの: 岩に彫られたルーン銘と線刻画

竜の胴をルーン銘の帯として彫り、下から剣で刺す人物、指を口に入れる人物、木にとまる鳥、鍛冶の道具、そして宝を積んだ馬が並びます。

馬は木につながれた姿で彫られており、竜を討った主を待っている場面と読まれます。 エッダの写本より二百年ほど古く、この伝説が文字より先に広まっていたことを示す資料です。

スウェーデン国立文化財庁の遺跡台帳に登録されている。屋外の岩で、いまも見学できる。

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グラニが現代に残した痕跡

この馬の名は、石に彫られた図と、ドイツ語圏の楽劇に残りました。

ラムスンドの岩絵の馬: スウェーデンに残る十一世紀の岩絵に、宝を積んだ馬が木につながれた姿で彫られている。

ワーグナーのグラーネ: 楽劇『ニーベルングの指環』では、この名の馬に乗るのはブリュンヒルデである。原典とは乗り手が入れ替わっている。

スレイプニルの血: オーディンの八本足の馬の血を引くとされる。北欧神話の名馬は、たどるとほとんどが一頭の巨人の馬につながる。

グラニが司るもの

勝利

竜を討ちに向かう英雄を乗せ、その旅を最後まで共にした。

洞窟から運び出された莫大な黄金を、一頭で運んだと語られる。

勇気

ほかの馬が怯えて進めない場所でも、歩みを止めなかったとされる。

グラニについてよくある質問

グラニとは何ですか。

英雄シグルズが乗った灰色の牡馬です。オーディンの駿馬スレイプニルの血を引くとされます。

どうやって選ばれたのですか。

伝えによって違います。『ヴォルスンガ・サガ』では老人に姿を変えたオーディンの助言で選び、古エッダ『レギンの歌』ではシグルズ自身の判断で選んだとされます。

ワーグナーのグラーネと同じですか。

同じ名ですが、乗り手が入れ替わっています。楽劇でこの馬に乗るのはブリュンヒルデで、最後に燃える薪へ馬を進めるのも彼女です。

シグルズの死後どうなりましたか。

伝えによって違います。主の火葬の薪に加えられたとする語り方があり、行方に触れない伝えもあります。

グラニと併せて覚えたい言葉・用語

古エッダ(こエッダ)

詩の形で伝わる北欧神話の歌謡集。13世紀の写本に収められたが、成立はさらに古い。作者は不明。