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北欧神話

ウルとは何の神様か|家系図・物語

Ullr  / ウル

アース神族

狩り・弓・スキーの神。物語は乏しいのに、地名だけが異様に多い。

ウルとは何の神様か

ウルはひとことで言えば地名だけが残った神です。シヴの子で、トールの義理の子にあたり、狩猟・弓術・スキー・決闘を司ります。

住まいはユーダリル(イチイの谷)。イチイは弓とスキーの材料であり、この神の名は道具そのものと結びついています。

注目すべきはここからです。エッダに語られる物語はほとんどありません。それなのに、スウェーデンとノルウェーには、この神の名を含む地名が驚くほど多く残っています。

しかも「耕地」「牧草地」を意味する語と組み合わさった形が目立ちます。狩りの神というより、土地と実りに関わる神だったことを示します。もとはもっと高い位の天空神だったと推定されています。

名は「光輝」の意とされます。誓いを立てるときに名が呼ばれ、腕輪にかけて誓ったという言い回しも残っています。

ウルの名前の表記と読み方

古ノルド語では Ullr(ウル)。日本語ではウッル、ウッルルとも書かれます。

名は「光輝」を意味するとされます。ゲルマン語の古い層にさかのぼる語で、同じ語根の語がゴート語にも見つかっています。この神の名が古いこと自体が、かつての位の高さを示すと考えられています。

『デンマーク人の事績』ではオレルスという形で現れます。デンマークの年代記作者サクソは、北欧の神々をラテン語風の名に置き換えて記録しました。同じ神が別の綴りで残っているため、両方を突き合わせて読む必要があります。

スカルド詩では「スキーのアース」「弓のアース」「狩のアース」「楯のアース」といった言い換えが使われました。

Ullr(ウル)

古ノルド語の表記。「光輝」を意味するとされる。ウッル、ウッルルとも書かれる。

Ýdalir(ユーダリル)

この神が住む谷の名。「イチイの谷」を意味する。イチイは弓とスキーの材料。

Ollerus(オレルス)

『デンマーク人の事績』での名。呪文を刻んだ骨を船にして海を渡る魔術師として描かれる。

ウルの物語

  1. イチイの谷 ─ 弓とスキーの材料
  2. 地名の多さ ─ 物語より確かな証拠
  3. 誓いの神 ─ 腕輪にかけて
  4. オレルスの十年 ─ 主神の座に就く

イチイの谷 ─ 弓とスキーの材料

この神の住まいはユーダリル、「イチイの谷」といいます。

イチイは、北欧で弓を作るのに使われた木です。粘りがあってしなり、折れにくい。同時に、スキーの板の材料でもありました。

つまりこの神は、自分の司る二つの道具の材料が生える谷に住んでいることになります。 住所がそのまま職能の説明になっている、めずらしい例です。

イチイはルーン文字の一つ、エイワズで表される木でもあります。北欧では墓地に植えられ、長寿と死の両方に結びつけられました。

狩りと弓とスキー。いずれも雪の上で生きるための技です。この神は、北の冬をどう渡るかという実際の知恵と結びついていました。

地名の多さ ─ 物語より確かな証拠

この神をめぐって、もっとも重い証拠は物語ではありません。地名です。

スウェーデンのウップランド地方を中心とする一帯と、ノルウェー南東部に、この神の名を含む地名が多数残っています。エッダにほとんど登場しない神としては、異例の数です。

さらに大事なのは、その組み合わせ方です。地名には「耕地」や「牧草地」を意味する語と結びついた形が見られます。

狩りの神の名が、畑と牧草地の名に付いている。 ここから、もとは狩猟や決闘にとどまらない、もっと広い働きを持つ神だったと考えられています。豊穣に関わる、より高い位の天空神だったという推定です。

物語が残らなくても、土地の名は残ります。人が実際に祈った跡は、そちらのほうに出ます。

誓いの神 ─ 腕輪にかけて

この神の位の高さを示す言い回しが、いくつか伝わっています。

ひとつは「ウルとあらゆる神々の恩寵を受ける」という表現です。神々を代表する位置にこの名が置かれています。

もうひとつは、誓いの場面です。

南の太陽や勝利の神の岩と寝室と、ウルの腕輪にかけてしばしば誓った通りに

腕輪にかけて誓うというのは、北欧で実際に行われていた作法です。神殿に置かれた腕輪に手を触れ、その上で約束を立てました。その腕輪がこの神のものとして語られていることは、法と誓いに関わる神格だったことを示します。

物語は乏しくても、人々の暮らしのいちばん重い場面に、この名は出てきます。

オレルスの十年 ─ 主神の座に就く

『デンマーク人の事績』には、まったく別の顔が記録されています。

そこでこの神はオレルスと呼ばれ、呪文を刻んだ骨を船にして海を渡る魔術師として描かれます。

話はこうです。オーティヌス(オーディン)が謀って王女リンドを孕ませたことを恥と考えた神々は、オーティヌスを追放しました。そしてその名と地位を、オレルスに引き継がせます。

オレルスは十年のあいだ主神の座にありました。しかしオーティヌスが賄賂によって地位を買い戻し、追われます。スウェーデンに退いたのち、デンマーク人に殺されたと記されます。

エッダの穏やかな狩りの神とは、まるで別人です。それでも共通するのは、一時は主神の座に届く格を持っていたという点です。エッダで小さく扱われていることのほうが、後の整理の結果かもしれません。

ウルの家系図と家族

ウルの親: シヴトール義理の親子

ウルの性格と人物像

ウルは、削られた神です。

残っている物語は、ほとんどありません。台詞も、事績も、最期も伝わっていません。ラグナロクで何をしたのかさえ書かれていません。

それなのに、地名は多い。誓いには名が呼ばれる。神々を代表する言い回しにも使われる。残されたものと語られたものが、これほど食い違う神はほかにいません。

この落差の説明として広く受け入れられているのが、古い層の神という見方です。かつて広く祀られていたが、オーディンやトールを中心に神話が整えられていく過程で、役どころが縮んでいった。地名だけが動かせずに残った。

自分と同じく弓とスキーを得意とする女巨人スカジと出会い、彼女の父が遺した館トリムヘイムでともに暮らしたという伝承もあります。雪の上で生きる者どうしという取り合わせです。

ウルゆかりの地と遺跡

この神を祀った建物は残っていませんが、名を刻んだ土地は各地にあります。 神殿そのものが北欧にほとんど残っていないため、欄には社名を挙げていません。

確かなのは、スウェーデンのウップランド地方を中心とする一帯と、ノルウェー南東部に、この神の名を含む地名が多数あることです。「耕地」「牧草地」を意味する語と結びついた形が見られ、豊穣との関わりを示すと考えられています。

ただし、一つひとつの地名がこの神に由来すると確かめる作業は簡単ではありません。似た音の普通名詞と紛れやすいためです。個別の地名の断定は避けています。

ウルが現代に残した痕跡

この神の名は、土地の名と、詩の言い換えのなかに残りました。

北欧の地名: スウェーデンのウップランド地方を中心とする一帯と、ノルウェー南東部に、この神の名を含む地名が多く残る。「耕地」「牧草地」を意味する語との複合形が目立つ。

ケニング「スキーのアース」: スカルド詩でこの神を指す言い換え。ほかに「弓のアース」「狩のアース」「楯のアース」がある。楯を指す言い換えに「ウルの船」があったとも伝えられる。

腕輪にかけた誓い: この神の腕輪にかけて誓うという言い回し。腕輪に手を触れて約束を立てる作法は、北欧で実際に行われていた。

ウルが司るもの

狩り

狩猟と弓術を司る神とされる。

住まいユーダリルはイチイの谷であり、イチイは弓の材料である。

雪山

スキーの神とされ、雪の上を行く技と結びつけられた。

ウルについてよくある質問

ウルは何の神ですか。

狩猟・弓術・スキー・決闘を司る神です。名は「光輝」を意味するとされ、住まいはイチイの谷ユーダリルです。

ウルの親は誰ですか。

母はシヴです。シヴが雷神トールの妻であるため、ウルはトールの義理の子にあたります。実の父については伝わっていません。

なぜウルは物語が少ないのに重要とされるのですか。

名を含む地名がスウェーデンとノルウェーに多数残っており、誓いの場面でも名が呼ばれるためです。かつては高い位の天空神で、後に役どころが縮んだと推定されています。

ウルとスカジの関係は何ですか。

ともに弓とスキーを得意とすることから、二人が出会い、スカジの父が遺した館トリムヘイムでともに暮らしたという伝承が残されています。

『デンマーク人の事績』のオレルスとは誰ですか。

ウルにあたる人物です。追放されたオーディンに代わって十年間その地位に就いたと記されますが、オーディンが賄賂で地位を買い戻したため追われたとされます。

ウルと併せて覚えたい言葉・用語

ラグナロク(Ragnarök)

北欧神話の終末。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅して世界が焼け落ち、海に沈む。そののち新しい大地が浮かび上がる。