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北欧神話

ヴェズルフェルニルとは何の神様か|家系図・物語

Veðrfölnir  / ヴェズルフェルニル

大地 神獣

世界樹の鷲の眉間にとまる鷹。名は「風を打ち消すもの」。

ヴェズルフェルニルとは何の神様か

ヴェズルフェルニルはひとことで言えば鷲の眉間の鷹です。名は「風を打ち消すもの」を意味します。

新エッダギュルヴィたぶらかし』が記すのは、次の一点だけです。世界樹の枝に一羽の鷲がとまっており、その鷲の眉間に、一羽の鷹がとまっている。 その鷹の名がヴェズルフェルニルである、と。

何をするのかは書かれていません。力も、来歴も、終末での役目も伝わっていません。北欧神話でもっとも記述の少ない名前のひとつです。

それでいて、世界樹を描くときにはほぼ必ず添えられます。根の竜、幹のリス、枝の鷲、そして鷲の眉間の鷹。この並びが、世界樹の姿を決めています。

なお、とまっている相手の鷲の名は明かされていません。風を起こす鷲フレースヴェルグと同じものだとする見方があります。

ヴェズルフェルニルの名前の表記と読み方

古ノルド語では Veðrfölnir(ヴェズルフェルニル)。日本語ではヴェドフォルニルとも書かれます。

名は「風を打ち消すもの」と解されます。前半が「風」「天候」を、後半が「色あせる」「弱まる」に通じる語だとされます。

この名は、とまっている相手を考えると意味が通ります。世界のあらゆる風は、天の北の果てにいる鷲が翼を広げることで起こる、と歌われているからです。 風を起こす鷲の額に、風を鎮める鷹がとまっている。

ただし、原典がその対比を意図して書いたと断定はできません。鷲の名を明かしていない以上、この読みも推測にとどまります。

Veðrfölnir(ヴェズルフェルニル)

古ノルド語の表記。「風を打ち消すもの」を意味するとされる。

Vedfolnir(ヴェドフォルニル)

特殊な字を使わない綴り。日本語ではこの形でも書かれる。

Hræsvelgr(フレースヴェルグ)

この鷹がとまっている鷲と同一視されることのある巨人の名。「死体を飲みこむ者」の意。

ヴェズルフェルニルの物語

  1. 世界樹の住人たち ─ その中の一羽
  2. どの鷲なのか ─ 名前のない相手
  3. なぜ記録が少ないのか
  4. 写本の挿絵 ─ 描かれた鷹

世界樹の住人たち ─ その中の一羽

世界樹ユグドラシルには、多くの生きものが住んでいます。

根を齧る竜ニーズヘッグ。葉を食う四頭の牡鹿。幹を上下して悪口を運ぶリスラタトスク。頂で光を放つ雄鶏ヴィゾーヴニル

そして、枝にとまる一羽の鷲がいます。この鷲は竜と仲が悪く、リスがその悪口を運んでいます。

この鷹は、その鷲の眉間にとまっています。世界樹の記述のなかで、生きものの上にとまっている生きものは、この鷹だけです。

木があり、鷲がおり、その額に鷹がいる。入れ子になった構図が、世界樹の絵をいっそう独特なものにしています。

どの鷲なのか ─ 名前のない相手

この鷹をめぐる最大の謎は、本人ではなく相手のほうです。

『ギュルヴィたぶらかし』は、鷲の名を書いていません。トネリコの枝に一羽の鷲がとまっている、とだけ記します。トネリコは、ユグドラシルのことだとされます。

有力なのが、フレースヴェルグと同じものとする見方です。この鷲の姿をした巨人は、天の北の果てにいて、飛び立とうとして翼を広げるたびに世界の風が起こると歌われます。

風を起こす鷲と、風を打ち消す鷹。 名の意味だけを並べると、たしかに対になります。

ただし『ギュルヴィたぶらかし』は、この二羽を結びつけていません。同じ鷲と読むかどうかは、いまも見方が分かれています。

なぜ記録が少ないのか

この鷹について語る原典は、事実上ひとつだけです。

しかもその記述は、世界樹の住人を数え上げる場面の一行にすぎません。名前と、居場所だけ。 働きも、性格も、終末での役目も書かれていません。

理由として考えられるのは、この鷹が説明のための存在だったという可能性です。世界樹の各所に生きものを配していく描写のなかで、鷲の額という細部を埋めるために置かれた。

もうひとつ、失われた詩があった可能性もあります。エッダに収められた詩は、伝わっていた歌のごく一部です。語られていたのに書き残されなかった、という説明も否定できません。

どちらにせよ、確かめられるのは一行だけです。無いものを補って書くわけにはいきません。

写本の挿絵 ─ 描かれた鷹

この鷹の名は、絵としても残っています。

十七世紀のアイスランドの写本には、北欧神話を描いた挿絵が多数収められています。そのうち世界樹を描いた図に、この鷹の名が書きこまれているものが知られています。

重要なのは、時代です。十七世紀といえば、北欧の古い信仰が絶えてから数百年が経っています。それでも書き写す人々は、鷲の額の鷹という細部を落としませんでした。

一行しか記述の無い存在が、世界樹の図に欠かせない部品として扱われ続けた。世界樹の姿を思い描く型が、それだけ固まっていたということになります。

現代の図解でも、この鷹はたいてい描かれています。

ヴェズルフェルニルの家系図と家族

ヴェズルフェルニルのきょうだい: ヴィゾーヴニル世界樹の高みにとまる鳥どうし

ふつうのつながり きょうだい 敵対・国ゆずり 本によって話がちがう

ヴェズルフェルニルの性格と人物像

ヴェズルフェルニルは、何もしない存在です。

飛びません。狩りもしません。誰とも話さず、争いもしません。伝わっているのは、鷲の眉間にとまっているという一点だけです。

それでいて、いなくならないのが不思議なところです。 世界樹を描くとき、この鷹はほぼ必ず添えられます。一行しか記述が無いのに、千年近く落とされずに残りました。

リスラタトスクが悪口を運び、竜と鷲を仲違いさせているのと比べると、対照的です。同じ木に住みながら、片方は騒ぎを起こし、片方は微動だにしません。

名が「風を打ち消すもの」であることを、性格として読むこともできます。騒ぎを鎮める側にいる鳥。 ただし、そう書かれているわけではありません。

わからないことが多い、というのがこの鷹のいちばん正確な説明です。

ヴェズルフェルニルゆかりの地と遺跡

この鷹を祀った場所は見つかっていません。 社も祭りも、地名も伝わっていません。

ゆかりの場所を挙げるとすれば、住まいである世界樹ユグドラシルですが、これは神話の中の木であり、実在の場所とは結びつけられていません。

残っているのは、十七世紀のアイスランドの写本に描かれた世界樹の挿絵です。所蔵の状況について一次資料で確かめられていないため、欄には挙げていません。

ヴェズルフェルニルが現代に残した痕跡

この鷹の名は、写本の挿絵と、世界樹の図像の型のなかに残りました。

写本の挿絵: 十七世紀のアイスランドの写本に描かれた世界樹の図に、この鷹の名が書きこまれている。古い信仰が絶えた後も細部が伝えられた例とされる。

世界樹の図像: 世界樹を描くときの定型。根の竜、幹のリス、枝の鷲、鷲の額の鷹、頂の鶏という並びで描かれることが多い。

鷲との同一視の議論: この鷹がとまる鷲の名が原典で明かされていないため、風を起こす鷲フレースヴェルグと同じものかどうかが議論され続けている。

ヴェズルフェルニルが司るもの

名は「風を打ち消すもの」を意味するとされる。

先を見通すこと

世界樹のもっとも高い場所から見下ろす鷲の額にとまる姿による。

ヴェズルフェルニルについてよくある質問

ヴェズルフェルニルとは何ですか。

北欧神話に出てくる鷹です。世界樹の枝にとまる鷲の眉間にとまっているとされ、名は「風を打ち消すもの」を意味します。

ヴェズルフェルニルは何をするのですか。

書かれていません。とまっているという記述だけが伝わっており、働きも力も終末での役目も原典には見当たりません。

ヴェズルフェルニルがとまっている鷲は誰ですか。

名は明かされていません。風を起こす鷲フレースヴェルグと同一視されることがありますが、原典が両者を結びつけているわけではありません。

なぜ記録がこれほど少ないのですか。

確かめられるのは、世界樹の住人を数え上げる場面の一行だけだからです。説明のために置かれた存在だったとも、語られていた詩が書き残されなかったとも考えられます。

ヴェズルフェルニルと併せて覚えたい言葉・用語

新エッダ(しんエッダ)

1220年頃にアイスランドのスノッリ・ストゥルルソンが著した散文の書。神話を体系的に整理しており、現在の北欧神話の理解はこの書に多くを負う。

ユグドラシル(Yggdrasill)

世界を貫いて立つ巨大な樹。三つの根がそれぞれ別の世界へ伸び、その根元に泉がある。