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冥界の神一覧|日本・ギリシャ・エジプト・北欧をくらべる

死んだあと、人はどこへ行くのか。この問いへの答えが、神話によってはっきり違います。

裁きがあるのは、エジプトだけ。

日本の黄泉にも、ギリシャの冥府にも、北欧のヘルヘイムにも、生前の行いを裁く仕組みがありません。ただ死んだ者が行く場所です。

このページでは、収録している冥界の神を横に並べて比べます。

冥界の神とは

死者の国を治める神、または死者を導く神です。

注意すべき点が二つあります。

冥界は地獄ではありません。

地獄は「悪い者が罰を受ける場所」ですが、神話の冥界の多くは善悪と関係なく、死んだ者が行く場所です。仏教やキリスト教の地獄観と混ざりやすいところです。

冥界の神は、悪い神ではありません。

ハデスオシリスも、恐ろしくはありますが公正な王として描かれます。悪魔的に描くのは後世の創作です。

日本の冥界の神|黄泉の国とイザナミ 1柱

日本神話の死者の国は黄泉の国です。治めるのはイザナミ

火の神を生んだ火傷で死に、地下へ去りました。夫イザナギが迎えに行きますが、

すでに黄泉の食べ物を口にしていたため、戻れなかった。

これを黄泉戸喫(よもつへぐい)といいます。その地のものを食べると、その地の者になる。世界各地の神話に共通する考え方です。

黄泉には裁きも、罰もありません。良い者も悪い者も、同じ場所へ行きます。

出口は黄泉比良坂。古事記は「今の出雲国の伊賦夜坂」と、実在の地名で記しています。

ギリシャの冥界の神|ハデスとペルセポネ 2柱

ハデスが治めます。ゼウスポセイドンの兄弟で、くじ引きで冥界を引き当てました

悪魔ではありません。 ギリシャ神話でハデスが人を苦しめる場面はほとんどなく、規則どおりに死者を受け入れる王です。この神が怒るのは、死者を連れ戻そうとする者に対してだけです。

死者の大半が行くのはアスポデロスの野。善でも悪でもなかった者が、影のように過ごします。

英雄はエリュシオンへ、神に逆らった者はタルタロスへ。

裁きがあるように見えて、対象はごく一部です。

ペルセポネが地下にいるあいだ、地上は実りません。季節の由来がこの神話です

エジプトの冥界の神|オシリスとアヌビス 4柱

エジプトだけが、全員を裁きます

死者は「二つの真理の広間」へ進み、

心臓を天秤に載せ、マアトの羽根と釣り合うかを見る。

天秤を扱うのがアヌビス、記録するのがトート、奥に座って判定するのがオシリスです。

釣り合えば来世へ。釣り合わなければ、アメミットが心臓を食い、

存在そのものが消える。

これを二度目の死といい、エジプト人が最も恐れた事態でした。墓も供物も、この二度目の死を避けるための備えです。

問われるのは信仰ではなく行為です。「私は量りをごまかしていない」「私は水路の水を止めていない」と、四十二柱の神々の前で一つずつ申し立てます。

北欧の冥界の神|ヘルとヘルヘイム 2柱

ヘルが治めます。ロキの娘で、体の半分が生者、半分が死者という姿で描かれます。

行き先が死に方で決まるのが北欧の特徴です。

戦って死んだ者はヴァルハラへ。病や老いで死んだ者はヘルヘイムへ。

生前の善悪ではなく、どう死んだかで分かれます。畳の上で死ぬことが、ここでは望ましくない結末になります。

光の神バルドルが死んだとき、神々が返還を願うと、ヘルはこう答えました。

世界のすべてが泣くなら、返そう。

一人だけ泣かない者がいて、バルドルは戻れませんでした。

死後に裁きがあるのはエジプトだけ

並べると、はっきりします。

神話冥界裁き行き先の分かれ方
日本黄泉の国なし全員が同じ場所
ギリシャ冥府(ハデス)一部だけ英雄と反逆者だけ別
北欧ヘルヘイムなし死に方で分かれる
エジプトドゥアトあり生前の行為で分かれる

エジプトだけが、生き方を問う仕組みを持っています。

理由として、エジプトが来世を現世の続きと考えていた点が挙げられます。来世(アアルの野)はエジプトそのものの理想版で、そこでも農作業をします。だから代わりに働く人形(シャブティ)を墓に納めました。

来世が具体的だから、そこへ行く資格も具体的になる。

他の神話の冥界は、行った先で何をするかがほとんど語られません。書かれていないから、資格を問う必要もなかった、という見方ができます。

冥界の神についてよくある質問

冥界の神は悪い神ですか。

違います。ハデスもオシリスも、規則どおりに死者を受け入れる公正な王として描かれます。冥界の神を悪魔的に描くのは、後世の創作やキリスト教の地獄観の影響です。

冥界と地獄は同じですか。

違います。地獄は悪い者が罰を受ける場所ですが、神話の冥界の多くは善悪と関係なく死んだ者が行く場所です。裁きがあるのはエジプトだけで、ギリシャも一部の例外を除けば全員が同じ場所へ行きます。

日本の冥界の神は誰ですか。

イザナミです。火の神カグツチを生んだ火傷で死に、黄泉の国へ去りました。黄泉には裁きも罰もなく、誰もが同じ場所へ行きます。

なぜエジプトだけ死後の裁きがあるのですか。

来世を現世の続きと考えていたためとされます。来世(アアルの野)はエジプトの理想版で、そこでも農作業をします。行った先が具体的だから、行く資格も具体的になったと解されます。

北欧では死ぬと必ずヘルヘイムに行くのですか。

違います。戦って死んだ者はヴァルハラへ、病や老いで死んだ者はヘルヘイムへ行きます。生前の善悪ではなく、どう死んだかで分かれるのが北欧の特徴です。

エジプトの冥界で心臓を量るのはなぜですか。

エジプトでは心臓が思考と記憶の場所と考えられていました。頭ではなく心臓に生涯の行いが蓄えられるため、これを真理の女神マアトの羽根と量り比べます。

冥界の神の一覧(収録しているすべての神々) 71柱

本文で取り上げなかったものも含めて、この属性に属する神々をすべて並べています。名前を押すと個別ページへ移ります。

アケロン

ACHERON 冥界 ギリシャ神話

アトロポス

ATROPOS 冥界 ギリシャ神話

アナンケ

ANANKE 冥界 ギリシャ神話
主神級

アヌビス

ANUBIS 冥界 エジプト神話

アパテ

APATE 冥界 ギリシャ神話

アペプ

APEP 冥界 エジプト神話

アメミット

AMMIT 冥界 エジプト神話

アングルボザ

ANGRBODA 冥界 北欧神話

アンゲローナ

ANGERONA 冥界 ローマ神話

アンプト

ANPUT 冥界 エジプト神話
主神級

イザナミ

IZANAMI 冥界 日本神話

ウェーヨウィス

VEIOVIS 冥界 ローマ神話

エウリュディケ

EURYDICE 冥界 ギリシャ神話

エキドナ

ECHIDNA 冥界 ギリシャ神話

エリニュス

ERINYES 冥界 ギリシャ神話

エレボス

EREBUS 冥界 ギリシャ神話

オオマガツヒ

OMAGATSUHI 冥界 日本神話
主神級

オシリス

OSIRIS 冥界 エジプト神話

オネイロス

ONEIROS 冥界 ギリシャ神話

オルクス

ORCUS 冥界 ローマ神話
主神級

カロン

CHARON 冥界 ギリシャ神話
主神級

ガルム

GARM 冥界 北欧神話

クマノクスビ

KUMANOKUSUBI 冥界 日本神話

クロト

CLOTHO 冥界 ギリシャ神話

ケール

KERES 冥界 ギリシャ神話

コトサカノオ

KOTOSAKANOO 冥界 日本神話

シャイ

SHAI 冥界 エジプト神話

ステュクス

STYX 冥界 ギリシャ神話

セケル

SEKER 冥界 エジプト神話

セルケト

SERQET 冥界 エジプト神話

ソーラーヌス

SORANUS 冥界 ローマ神話
主神級

タナトス

THANATOS 冥界 ギリシャ神話

タルタロス

TARTARUS 冥界 ギリシャ神話

デキマ

DECIMA 冥界 ローマ神話

ドラウグ

DRAUG 冥界 北欧神話

ナリ

NARI 冥界 北欧神話

ニュクス

NYX 冥界 ギリシャ神話
主神級

ニーズヘッグ

NIDHOGG 冥界 北欧神話

ネフティス

NEPHTHYS 冥界 エジプト神話

ノーナ

NONA 冥界 ローマ神話
主神級

ハデス

HADES 冥界 ギリシャ神話

ハヤサスラヒメ

HAYASASURAHIME 冥界 日本神話

ハヤタマノオ

HAYATAMANOO 冥界 日本神話
主神級

パルカ

PARCAE 冥界 ローマ神話

ヒュプノス

HYPNOS 冥界 ギリシャ神話

ビンボウガミ

BINBOGAMI 冥界 日本神話
主神級

ファフニール

FAFNIR 冥界 北欧神話

フェブルウス

FEBRUUS 冥界 ローマ神話

フュルギャ

FYLGJA 冥界 北欧神話

プロセルピナ

PROSERPINA 冥界 ローマ神話
主神級

ヘカテー

HECATE 冥界 ギリシャ神話

ヘズ

HODR 冥界 北欧神話

ヘル

HEL 冥界 北欧神話

ヘルモーズ

HERMOD 冥界 北欧神話

ペルセポネ

PERSEPHONE 冥界 ギリシャ神話

マーナガルム

MANAGARM 冥界 北欧神話

メジェド

MEDJED 冥界 エジプト神話

メノイティオス

MENOETIUS 冥界 ギリシャ神話

メリノエ

MELINOE 冥界 ギリシャ神話

メルセゲル

MERETSEGER 冥界 エジプト神話

メンテ

MINTHE 冥界 ギリシャ神話

ヤソマガツヒ

YASOMAGATSUHI 冥界 日本神話

ヨモツシコメ

YOMOTSUSHIKOME 冥界 日本神話

ラウェルナ

LAVERNA 冥界 ローマ神話

ラケシス

LACHESIS 冥界 ギリシャ神話

ラールンダ

LARUNDA 冥界 ローマ神話

リビティーナ

LIBITINA 冥界 ローマ神話

レテ

LETHE 冥界 ギリシャ神話

ヴォルヴァ

VOLVA 冥界 北欧神話

天探女

AMENOSAGUME 冥界 日本神話

天津甕星

AMATSUMIKABOSHI 冥界 日本神話

ほかの属性で見る

このページに出てきた言葉

黄泉の国(よみのくに)

死者が行く地下の国。イザナミが去った先。

二度目の死(にどめのし)

心臓を食われて存在そのものが消えること。エジプト人が最も恐れた事態で、墓に名を刻み続けた理由でもある。

ヴァルハラ(Valhöll)

オーディンの館。「戦死者の館」の意。選ばれた戦士が毎日戦い毎晩よみがえって、ラグナロクに備える。

シャブティ(šwbtj/代わりに働く人形)

来世で死者の代わりに農作業をする小さな人形。「呼ばれたら、私が行きます」と答える呪文が刻まれた。来世(アアルの野)にも労働があると考えられていたことを示す。