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ギリシャ神話

ペルセポネとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Περσεφόνη  / ペルセポネ

冥界 オリュンポス十二神

冥界の王妃。ザクロを口にしたため、地上と地下を行き来する。

ペルセポネの姿を描いた図

「ペルセポネ(オルソープ邸収蔵図録)」 1822年 / パブリックドメイン 出典

ペルセポネとは何の神様か

ペルセポネはひとことで言えば二つの顔を持つ女神です。

地上ではコレー(乙女)と呼ばれ、花を摘む少女として描かれます。冥界では威厳ある王妃として振る舞います。

花を摘んでいたところをハデスに攫われ、母デメテルが世界を枯らしたため返還が命じられました。しかし──

去り際に、ザクロの実を口にしていた。

冥界の食べ物を口にした者は、完全には戻れない。そのため一年の一部を地下で過ごすことになります。

春に地上へ戻り、秋に地下へ降りる。 季節の巡りは、この往復です。

重要なのは、さらわれた娘のままではないことです。オルフェウスの願いを聞き入れて妻の返還を認めたのも、アドニスを巡ってアフロディーテと争ったのも、王妃としての判断でした。

ペルセポネのギリシャ名・ローマ名と読み方

古代ギリシャ語では Περσεφόνη。日本語では「ペルセポネ」で定着しています。

特徴的なのは、古代における表記の揺れの多さです。ペルセポネイア、ペルセパッサ、ペルソパッサなど、記録に残る形が十以上あります。ギリシャ語で説明できない古い名であることの表れとされます。

もうひとつ重要なのが、呼び名の使い分けです。

地上で母とともにいるときは「コレー(乙女)」。冥界の王妃としては「ペルセポネ」。

同じ神を、いる場所によって別の名で呼びました。 二つの顔が名前の上でも分かれています。

Περσεφόνη(ペルセポネ)

古代ギリシャ語の表記。語源は不明で、ギリシャ語以前の言語に由来する可能性が高い。表記の揺れが非常に多い神名でもある。

Κόρη(コレー)

「乙女」を意味する。地上にいるとき、母デメテルとともに祀られるときの呼び名。

Proserpina(プロセルピナ)

ローマ名。英語では Proserpine。

Δέσποινα(デスポイナ)

「女主人」の意。名を直接呼ぶことを避けた婉曲表現。

ペルセポネの物語

  1. 水仙に手を伸ばす ─ 罠だった花
  2. ザクロを食べる ─ 自分の意思かどうか
  3. 王妃になる ─ さらわれた娘ではなくなる
  4. 往復する ─ 季節という形

水仙に手を伸ばす ─ 罠だった花

ペルセポネは友のニンフたちと、野原で花を摘んでいました。薔薇、クロッカス、菫、ヒヤシンス。

そのなかにひとつ、異様に美しい水仙が咲いていました。

『ホメロス風讃歌』は、この花について重要なことを記します。

ガイアが、ハデスを喜ばせるために生やした罠であった。 百の花が一本の茎から咲き、その香りは天も地も海も笑うほどだった。

大地の女神が、共謀していました。

娘が両手を伸ばした瞬間、

大地が裂け、黄金の馬車に乗った冥界の王が現れ、娘を攫って地下へ消えた。

娘は叫びました。しかし──

誰も聞かなかった。 ただヘカテが洞窟のなかで声を聞き、ヘリオスが空から見ていた。

ゼウスは許可していました。 母デメテルにだけ、知らされていませんでした。

ザクロを食べる ─ 自分の意思かどうか

母が世界を枯らし、ゼウスが折れ、ヘルメスが冥界へ迎えに来ました。

ハデスは従います。逆らっていません。ただし、去り際に──

ザクロの粒を、こっそり食べさせた。

ここには解釈が分かれる点があります。

『ホメロス風讃歌』は「こっそり食べさせた」と書きます。 騙されたのです。

一方で、後世の解釈には自分の意思で食べたとするものがあります。冥界の掟を知らなかったはずはない、という読みです。

戻りたくなかったのではないか。

母と再会したとき、デメテルは真っ先に尋ねました。

地下で、何か食べたか。

ペルセポネは答えます。食べたと。

粒の数は伝えによって四粒とも七粒ともされ、それが地下で過ごす期間を決めました。

王妃になる ─ さらわれた娘ではなくなる

ペルセポネの物語で見落とされがちなのが、冥界での立場です。

『オデュッセイア』でこの女神は、恐るべき王妃として登場します。死者の魂を送り出すのも、留めるのも、この女神の判断です。

もっとも明確なのがオルフェウスの場面です。

竪琴の音に心を動かされたのはハデスだけではありませんでした。

王妃が取りなした。 それでハデスは条件付きで許した。

返還を認めたのは、実質的にペルセポネです。

もうひとつがアドニスの一件です。美しい若者を巡ってアフロディーテと争い、

一年の一部ずつを分け合うという裁定になった。

自分と同じ形の取り決めです。愛の女神と正面から張り合っています。

さらわれた少女が、判断する王妃になった。 これがこの女神の物語です。

往復する ─ 季節という形

取り決めの期間は、書物によって異なります。三分の一とも、半分とも伝えられます。

いずれにせよ、

娘が地下にいるあいだ、母は嘆き、大地は実らない。
戻れば、大地に花が咲く。

古代ギリシャの農事暦を考えると、興味深い点があります。ギリシャの夏は乾燥して作物が育ちません。 種を蒔くのは秋で、収穫は初夏です。

つまり地中海では、作物が育たないのは冬ではなく夏です。

ペルセポネが地下にいるのは、冬ではなく夏だった可能性がある。

穀物の種を地下の貯蔵穴(ピトス)にしまう時期と重なる、という解釈もあります。

現在は「冬=地下」で説明されることがほとんどですが、これは北ヨーロッパ的な読み替えかもしれません。

ペルセポネの家系図と家族

ペルセポネの親: ゼウスデメテル

ペルセポネのきょうだい: プルートスともにデメテルの子

ペルセポネの妻・夫: ハデス連れ去って妃とするアドニス預かった子を返さず、一年の一部をともに過ごす

ペルセポネの子・子孫: メリノエオルフェウス教の讃歌が伝える母子

ペルセポネの性格と人物像

ペルセポネは、変わった神です。文字どおりの意味で。

物語の前半では、名前すら「コレー(乙女)」という一般名詞で呼ばれます。個人としての名がありません。 母の娘であり、花を摘む少女です。

後半では違います。ペルセポネという名で、冥界を治めます。 死者の運命を左右し、オルフェウスの願いを裁定し、愛の女神と対等に争います。

注目すべきは、戻ってこられるのに、戻り続けないことです。掟に従っているのは事実ですが、

ザクロを食べたという一点が、解釈を分けます。

騙されたのか、選んだのか。原典は「こっそり食べさせた」と書きますが、後世の読者はここに意思を読み取ってきました。

二つの世界のどちらにも属し、どちらにも完全には属さない。 ギリシャの女神のなかで、これほど立場の変わる神はいません。

ペルセポネを祀った神殿と遺跡

ペルセポネは単独で祀られることが少なく、多くは母デメテルと一組で祀られました。「二柱の女神」という呼び方が使われます。

例外が南イタリアのロクリです。ここではペルセポネ単独で、婚姻の守り手として信仰されました。

同じ神が、土地によって別の意味を持つ。

ギリシャの信仰が地域ごとに違っていたことを示す好例です。

エレウシスの聖域(Eleusis)

母娘の物語を核とする秘儀の地

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エレウシスの聖域の住所: ギリシャ アッティカ地方 エレフシナ

エレウシスの聖域の祀られた神: デメテル・ペルセポネ

エレウシスの聖域に残るもの: テレステリオンの基壇、プルートニオンの洞窟

エレウシスの秘儀は、この母娘の物語を再現する儀式でした。

聖域の入口近くに「プルートニオン」と呼ばれる洞窟があります。ハデスが娘を連れて地下へ消えた場所、そして娘が戻ってきた場所とされました。

秘儀の中心は、娘の帰還だったと考えられています。参加者は暗闇のなかで何かを見せられ、

死は終わりではないと確信して帰りました。

内容は現在も分かっていません。

アテネから電車とバスで行ける。併設博物館がある。

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ロクリの聖域(Locri Epizephyrii)

ペルセポネ単独で祀られた稀な聖域

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ロクリの聖域の住所: イタリア カラブリア州ロクリ

ロクリの聖域の祀られた神: ペルセポネ

ロクリの聖域に残るもの: 聖域跡と大量の奉納板

南イタリアのギリシャ植民市にあった聖域です。ここではペルセポネが単独で、しかも婚姻の女神として祀られました。

大量のテラコッタの奉納板(ピナケス)が出土しています。そこに描かれているのは──

略奪の場面ではなく、王妃として座る姿、婚礼の支度をする場面。

さらわれた娘としてではなく、結婚した女性の守り手として信仰されていました。

ギリシャ本土とは違う信仰の形が残る、重要な遺跡です。

奉納板はレッジョ・カラブリア国立考古学博物館に多数展示されている。

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ペルセポネが現代に残した痕跡

ペルセポネの名は、季節の説明と天文に残りました。

季節の由来: 娘が地下にいるあいだ大地が実らないという説明。季節の交替を語る神話として世界的に知られる。

ザクロの象徴性: 「食べたら戻れない」という掟から、ザクロは冥界・誘惑・不可逆の象徴として西洋美術と文学に繰り返し現れる。

小惑星ペルセポネ・プロセルピナ: 小惑星399番プロセルピナなど、複数の天体にこの女神の名が付けられている。

ベルニーニ「プロセルピナの略奪」: 1622年の彫刻(ボルゲーゼ美術館)。ハデスの指が娘の腿に食い込む表現で知られ、大理石とは思えない質感が評価されている。

ペルセポネが司るもの

季節・再生

地上へ戻れば春が来る。植物の再生を司る。

死者の統治

冥界の王妃として死者を治める。魂を送り出す判断もこの女神が下す。

通過儀礼

少女から妻へ移る境目を表す。エレウシスの秘儀の中心に置かれた。

ペルセポネが登場するゲーム・アニメ

近年、扱いが大きく変わった神です。かつては「さらわれた被害者」として描かれるのが常でしたが、現在は冥界の王妃として主体的に振る舞う姿が描かれることが増えました。

原典を読むと、後者のほうが実態に近いことが分かります。オルフェウスへの裁定も、アドニスを巡る争いも、この女神自身の判断です。

ペルセポネが登場するゲーム

Hades(ハデス)

物語の中心人物です。原典の「冥界と地上を行き来する」設定が、ゲーム全体の構造そのものになっています。

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女神転生シリーズ

冥界の女王として登場します。

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ペルセポネが登場するアニメ・漫画・映像

西洋絵画・彫刻

ベルニーニ、ルーベンス、レイトンなど、略奪と帰還の場面が繰り返し描かれました。

児童向け神話絵本

季節の由来を説明する話として、必ず収録されます。

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ペルセポネについてよくある質問

ペルセポネは何の神様ですか。

冥界の王妃です。地上では「コレー(乙女)」と呼ばれ、春に戻ることで季節をもたらします。

ペルセポネのローマ名は何ですか。

プロセルピナ(Proserpina)です。

ペルセポネはなぜ冥界へ行ったのですか。

花を摘んでいたところをハデスに攫われました。ゼウスは許可していましたが、母デメテルには知らされていませんでした。

ザクロを食べたのは自分の意思ですか。

原典『ホメロス風讃歌』は「こっそり食べさせた」と記します。ただし後世には、掟を知りながら自ら食べたとする解釈もあります。

ペルセポネはいつ地上にいますか。

一般には春から秋とされます。ただし地中海では夏に作物が育たないため、地下にいるのは冬ではなく夏だったとする解釈もあります。

コレーとペルセポネは同じ神ですか。

同じ神です。地上で母とともにいるときは「コレー(乙女)」、冥界の王妃としては「ペルセポネ」と、いる場所によって呼び名が変わります。

ペルセポネと併せて覚えたい言葉・用語

ニンフ(Νύμφη)

山・森・泉・木に宿る若い女神たち。神ではあるが不死ではなく、宿る木や泉が滅べば死ぬとされた。ギリシャ神話で最も数の多い存在。

エレウシスの秘儀(エレウシスのひぎ)

デメテルとペルセポネの物語を核とする儀式。約二千年続き、身分や国籍を問わず参加できた。口外は死罪で、内容は現在も分かっていない。