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ギリシャ神話

アテナとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Ἀθηνᾶ  / アテナ

オリュンポス十二神

知恵と戦略の女神。父ゼウスの頭から武装して生まれた。

アテナの姿を描いた図

「万民の神話事典」 1874年 / パブリックドメイン 出典

アテナとは何の神様か

アテナはひとことで言えば考えて勝つ神です。知恵・戦略・工芸を司ります。ローマ名はミネルウァ

生まれ方が異例です。ゼウスは知恵の女神メティスを身ごもらせたあと、「生まれる子が自分を超える」と予言され、メティスごと呑み込みました。

やがて頭が割れるように痛み、ヘファイストスに斧で割らせると──

武装した女神が、鬨の声をあげて飛び出した。

同じ戦の神でも、アレスとは正反対です。アレスが流血そのものであるのに対し、アテナは戦略・防衛・正しい戦いを司ります。二神は戦場で衝突し、アテナが勝ちます。

アテネの守護神の座をポセイドンと争い、オリーブの木を贈って勝ちました。都市の名はこの女神によります。パルテノン神殿はその社です。

処女神であり、生涯結婚しません。

アテナのギリシャ名・ローマ名と読み方

古代ギリシャ語では Ἀθηνᾶ。日本語では「アテナ」で定着していますが、「アテーナー」「アテネ」と表記されることもあります。

都市アテネと同じ名です。ただし「女神の名が都市名になった」のか「都市の名が女神名になった」のかは決着していません。女神のほうが後とする説も有力です。

「パラス・アテナ」のパラスについては、幼なじみを訓練中に誤って殺し、その名を自分に冠して悼んだという伝えがあります。

Ἀθηνᾶ(アテナ)

古代ギリシャ語の表記。都市アテナイ(アテネ)と同語源だが、どちらが先かは決着していない。

Minerva(ミネルウァ)

ローマ名。英語では Minerva(ミネルバ)。

Παλλὰς Ἀθηνᾶ(パラス・アテナ)

「パラスのアテナ」の意。誤って殺した友パラスの名を自らに冠したとされる。

Ἀθηνᾶ Γλαυκῶπις(グラウコピス)

「輝く目の」あるいは「梟の目の」を意味する枕詞。聖鳥である梟との結びつきを示す。

アテナの物語

  1. 父の頭から生まれる ─ 母を呑まれて
  2. アテネを得る ─ オリーブの一手
  3. アレスを二度倒す ─ 戦い方の違い
  4. アラクネを蜘蛛にする ─ 唯一の残酷さ
  5. 英雄を助ける ─ 誰よりも面倒見がよい

父の頭から生まれる ─ 母を呑まれて

ゼウスは、最初の妻メティス(知恵)を身ごもらせました。しかしガイアウラノスが予言します。

生まれる娘のあとに男児が生まれ、その子が父を超えて支配者になるだろう。

ゼウスの父も祖父も、子に倒されていました。同じ運命を避けるため、ゼウスはメティスを言葉巧みに小さくさせ、呑み込みました。

しかし胎児は消えませんでした。ゼウスの体内で育ち、メティスは腹の中で娘のために武具を鍛えます。

やがてゼウスは激しい頭痛に襲われました。ヘファイストス(あるいはプロメテウス)が斧で頭を割ると、

完全に武装した女神が、鬨の声をあげて飛び出した。 大地と海が震えた。

母を呑まれ、父の頭から生まれた。 アテナが「知恵の女神」であるのは、呑まれた母メティスの力を受け継いだからです。

予言された男児は、ついに生まれませんでした。世代交代の連鎖は、ここで止まります。

アテネを得る ─ オリーブの一手

アッティカ地方に新しい都市が生まれたとき、アテナとポセイドンが守護神の座を争いました。

決着は「どちらが有用な贈り物をするか」です。

ポセイドンが三叉の矛でアクロポリスの岩を突くと、塩水の泉が湧きました。海を制する力を示したのです。

アテナは槍を地に突き立てました。

オリーブの木が生えた。

判定は住民に委ねられ、オリーブが選ばれます。

理由は明快でした。塩水は飲めません。 オリーブは実が食べられ、油が採れ、材は道具になり、枝は勝者の冠になります。

戦略の女神らしい勝ち方です。力ではなく、役に立つかで勝ちました。

都市はアテネと名づけられ、アクロポリスにはパルテノン神殿が建てられました。オリーブは今もギリシャの主要産物です。

アレスを二度倒す ─ 戦い方の違い

『イリアス』で、アテナとアレスは二度ぶつかります。

一度目。アテナは人間の英雄ディオメデスの戦車に乗り込み、自ら手綱を取って槍を導きました。

槍はアレスの腹を貫いた。軍神は九千人か一万人が叫ぶほどの声で吼え、天へ逃げ帰った。

二度目は直接対決です。アレスが槍を突き出すと、アテナは後ろへ下がり、

地面から境界石を拾い上げ、アレスの首に叩きつけた。

アレスは倒れ、その体は七プレトロン(約200メートル)にわたって地を覆ったと記されます。

神々の戦いの決着が、石ひとつ。

この対比は明確です。アレスは暴力そのもの、アテナは戦い方を知っている。 同じ戦の神でも、勝つのは常に後者です。

アラクネを蜘蛛にする ─ 唯一の残酷さ

アテナは工芸と機織りの女神でもあります。その領分で挑まれた話が残っています。

人間の娘アラクネは機織りの名手で、「女神より上手い」と公言しました。

アテナは老婆に化けて忠告しますが、アラクネは引きません。そこで正体を現し、勝負となります。

アテナは神々の威光を織りました。アラクネが織ったのは──

神々が人間を騙し、辱めた場面の数々。 ゼウスが白鳥や雄牛に化けて娘たちに近づいた話が、すべて織り込まれていた。

その出来は完璧でした。 欠点を見つけられません。

アテナは布を引き裂き、アラクネを打ちました。娘は首を吊ります。

女神は縄を蜘蛛の糸に変え、アラクネを蜘蛛の姿にした。 永遠に糸を紡ぎ続けるように。

蜘蛛(arachnid)という語は、この娘の名に由来します。

知恵と公正の女神が見せた、数少ない不寛容な場面です。

英雄を助ける ─ 誰よりも面倒見がよい

アテナは、英雄を助ける神として繰り返し登場します。

ペルセウスにはメドゥーサを直視しないための磨いた盾を与え、討ち取った首を自らの胸当てに付けました(アイギス)。

ヘラクレスには十二の難業を通じて助言を与え続けます。

オデュッセウスには特別に肩入れしました。『オデュッセイア』で女神はこう言います。

おまえは知恵において人間のなかで最も優れ、私は神々のなかで知恵と策略で名高い。だから私はおまえを見捨てない。

姿を変えて助言し、変装させ、帰郷後は共に策を練りました。

アテナが好むのは、力の強い者ではなく頭の回る者です。

この選び方こそが、この女神の性格を最もよく表しています。

アテナの家系図と家族

アテナの親: ゼウス頭から生まれるメティスアテナの母。娘はゼウスの頭から生まれた

アテナの性格と人物像

アテナは、感情で動かない神です。

ゼウスのような恋愛も、ヘラのような嫉妬も、ポセイドンのような執念もありません。処女神であり、私的な関係を持ちません。

行動の基準は一貫して有用性です。オリーブを選び、策を授け、頭の回る英雄を助ける。

注目すべきは、父ゼウスとの関係です。アテナはゼウスの雷霆を持つことを許された唯一の存在であり、ゼウスが最も信頼する子でした。母を呑まれ、父の頭から生まれた娘が、父の右腕になっています。

例外がアラクネの一件です。技量で人間に並ばれたとき、この女神は容赦しませんでした。

知恵の神が、知恵で負けることだけは許さない。

パルテノン神殿の名は「処女の間」を意味します。この女神を表すのに、これ以上ふさわしい名はありません。

アテナを祀った神殿と遺跡

アテナの聖域はアクロポリスに集中しています。パルテノン、エレクテイオン、アテナ・ニケ神殿。いずれも同じ丘の上です。

都市そのものがこの女神の社だったと言えます。四年ごとのパンアテナイア祭では、市民が行列を組んで新しい衣を女神像へ捧げました。その行列がパルテノン神殿の帯状彫刻に刻まれています。

パルテノン神殿(Parthenon)

古代ギリシャ建築の最高峰

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パルテノン神殿の住所: ギリシャ アテネ アクロポリス

パルテノン神殿の祀られた神: アテナ・パルテノス

パルテノン神殿に残るもの: 列柱と基壇(修復継続中)

紀元前447〜438年に建てられた、アテナ・パルテノス(処女アテナ)の神殿です。名は「処女の間」を意味します。

内部には高さ約12メートルの黄金と象牙のアテナ像が立っていました。フェイディアスの作で、現存しません。

建築の精度で知られます。完全な直線がほとんどありません。 柱はわずかに膨らみ、基壇は中央が高い。遠くから見て歪んで見えないように、あらかじめ逆に歪ませてあります。

1687年、火薬庫として使われていたところへ砲弾が命中し、大破しました。

彫刻の多くは大英博物館にあり、返還を巡る議論が続いている。

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アテナ・ニケ神殿(Temple of Athena Nike)

翼をもがれた勝利の女神を祀った小神殿

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アテナ・ニケ神殿の住所: ギリシャ アテネ アクロポリス(入口の右手)

アテナ・ニケ神殿の祀られた神: アテナ・ニケ

アテナ・ニケ神殿に残るもの: イオニア式の小神殿

アクロポリスの入口を上がってすぐ右手にある小さな神殿です。勝利の女神ニケと一体化したアテナを祀ります。

内部の像には翼がありませんでした。

勝利が逃げていかないように、翼をもいだ。

そのため「アプテロス・ニケ(翼なき勝利)」と呼ばれました。

小さいながら、アクロポリスで最も美しい建築のひとつとされます。

アクロポリスの入場券で見学できる。

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アクロポリス博物館(Acropolis Museum)

神殿の彫刻と奉納品を所蔵

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アクロポリス博物館の住所: ギリシャ アテネ(アクロポリスの南麓)

アクロポリス博物館に残るもの: パルテノン彫刻・カリアティード実物

2009年に開館した博物館です。エレクテイオンのカリアティード実物5体、パルテノン神殿の破風彫刻、奉納された少女像(コレー)などを所蔵します。

最上階はパルテノン神殿と同じ向き・同じ大きさに作られており、ガラス越しに本物の神殿を見ながら彫刻を見られます。

大英博物館にある彫刻の位置は白い複製で示されており、返還を求める意思が展示そのものに込められています。

アクロポリスとは別料金。地下鉄アクロポリ駅すぐ。

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アテナが現代に残した痕跡

アテナの名は、都市・学問・言葉に残りました。

都市アテネ: ポセイドンとの争いに勝ち、都市の名になった。ギリシャの首都として現在も同じ名を持つ。

梟=知恵の象徴: アテナの聖鳥。「知恵の梟」という図像は、この女神に由来して西洋全体に広まった。

蜘蛛 arachnid: 機織りで女神に挑んで蜘蛛に変えられた娘アラクネの名による。クモ類の学術名はここから。

ミネルヴァの梟: ヘーゲルの「ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ」という言葉で知られる。知恵は事が終わってから訪れるという意味。

アテナが司るもの

知恵・学問

知恵の女神。梟が聖鳥であり、学問と思索の象徴になった。

戦略・勝利

戦の神だが、司るのは戦略と正しい戦い。アレスの暴力とは対極にある。

工芸・機織り

手仕事の守護神。織物、陶芸、造船の技術を人間に与えたとされる。

都市の守護

アテネをはじめ多くの都市の守護神。ポリアス(都市の)という呼び名を持つ。

アテナが登場するゲーム・アニメ

創作でもっとも扱いのよいギリシャの女神です。知恵と戦略という性格が現代の物語と相性がよく、導き手として描かれることが多くあります。

原典との落差が小さい神でもあります。ただしアラクネの一件のような不寛容さは、ほとんど描かれません。

アテナが登場するゲーム

God of War シリーズ

主人公を導く役として登場します。原典どおり「英雄を助ける神」として描かれています。

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Hades(ハデス)

恩恵を与える神の一柱。防御と反射に関わる力を与えます。

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Age of Mythology

ギリシャ勢力の主要な神として選択できます。

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女神転生シリーズ

女神として登場します。

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アテナが登場するアニメ・漫画・映像

聖闘士星矢

物語の中心に置かれる女神です。日本でこの神が広く知られた最大の要因といえます。

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パーシー・ジャクソン シリーズ

主要な神の一柱として登場します。

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アテナについてよくある質問

アテナは何の神様ですか。

知恵・戦略・工芸を司る女神です。戦の神でもありますが、司るのは暴力ではなく戦い方であり、アレスとは対極に置かれます。

アテナのローマ名は何ですか。

ミネルウァ(Minerva)です。英語ではミネルバ。

アテナはなぜ父の頭から生まれたのですか。

「生まれる子が父を超える」と予言されたゼウスが、母メティスを妊娠したまま呑み込んだためです。胎児は体内で育ち、頭を割ったときに武装した姿で飛び出しました。

アテナとアレスの違いは何ですか。

アレスは流血と暴力そのもの、アテナは戦略と正しい戦いを司ります。『イリアス』では二度衝突し、いずれもアテナが勝っています。

なぜ都市の名がアテネなのですか。

ポセイドンと守護神の座を争い、オリーブの木を贈って勝ったためです。ポセイドンが出した塩水の泉より有用と判断されました。

アテナは結婚しましたか。

していません。処女神であり、パルテノン神殿の名も「処女の間」を意味します。