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ギリシャ神話

ポセイドンとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Ποσειδῶν  / ポセイドン

オリュンポス十二神

海を支配する神。三叉の矛を振るい、地震と馬をも司る。

ポセイドンの姿を描いた図

「万民の神話事典」 1874年 / パブリックドメイン 出典

ポセイドンとは何の神様か

ポセイドンはひとことで言えば揺らす神です。海・地震・馬を司ります。

ゼウスの兄で、くじ引きによってを得ました。ローマ名はネプトゥーヌス(海王星 Neptune)。

武器は三叉の矛トリアイナキュクロプスが作ったもので、これで海を荒らし、岩を割り、大地を揺らします。

地震の神でもあり、「大地を揺るがす者」という枕詞で呼ばれました。古代ギリシャ人にとって、地震はこの神の仕業でした。

もうひとつ意外なのがです。ポセイドンが最初の馬を作ったとされ、競馬の守護神でもありました。

性格は荒く、執念深い。『オデュッセイア』では、自分の子を傷つけた英雄の帰還を十年にわたって妨げ続けます。

ポセイドンのギリシャ名・ローマ名と読み方

古代ギリシャ語では Ποσειδῶν。日本語では「ポセイドン」で定着しています。

注目すべきは語源です。「ポシス(主・夫)」+「ダ(大地)」と分解し、「大地の主」と解する説が有力です。

つまりもとは海の神ではなく、大地の神だった可能性があります。地震を司ること、馬を作ったこと、大地を揺るがす者と呼ばれることは、いずれも海より大地に近い性格です。

くじ引きで海を得たという話も、後から海の神になった痕跡と読めます。

Ποσειδῶν(ポセイドン)

古代ギリシャ語の表記。語源は「大地の夫」「大地の主」を意味するとする説が有力で、もとは大地の神だった可能性がある。

Neptunus(ネプトゥーヌス)

ローマ名。英語では Neptune(ネプチューン)。海王星の名でもある。

Ἐννοσίγαιος(エンノシガイオス)

「大地を揺るがす者」の意。ホメロスが繰り返し用いる枕詞。

ポセイドンの物語

  1. くじで海を得る ─ 望んだわけではない
  2. アテナに敗れる ─ 都市の名を失う
  3. 馬を作る ─ 海とは別の顔
  4. オデュッセウスを追う ─ 十年の妨害
  5. トロイアの城壁を築く ─ 報酬を踏み倒される

くじで海を得る ─ 望んだわけではない

ティタノマキアに勝ったあと、三兄弟は世界を分けました。話し合いではなくくじ引きです。

『イリアス』でポセイドン自身が語ります。

我らは三兄弟。くじを引いて、それぞれの領分を得た。 私は白く泡立つ海を、ハデスは霧深い闇を、ゼウスは広い天を得た。

そして、こう続けます。

ゼウスは私と同じ取り分を持つにすぎない。 言葉で私を脅すな。

弟に従う気はまったくありません。

この態度は物語を通じて変わりません。ヘラアテナに誘われてゼウスを縛る計画に加わり、トロイア戦争でも独自に動きます。

最高神の兄でありながら、対等だと主張し続ける神です。

アテナに敗れる ─ 都市の名を失う

アッティカ地方に新しい都市ができたとき、ポセイドンとアテナが守護神の座を争いました。

決着の方法は、どちらが人間に有用な贈り物をするかでした。

ポセイドンは三叉の矛でアクロポリスの岩を突きます。

塩水の泉が湧き出した。

続いてアテナが槍を突き立てると、

オリーブの木が生えた。

判定は住民(あるいは神々)に委ねられ、オリーブを選びました。 実も油も木材も採れるからです。

都市の名はアテネになりました。 勝者の名です。

敗れたポセイドンは怒り、アッティカ平野を水浸しにしたと伝えられます。

それでもアクロポリスには、この神を祀るエレクテイオンが建てられました。塩水の泉の跡も、そこに残されていたとされます。

馬を作る ─ 海とは別の顔

ポセイドンは最初の馬を作った神とされます。

伝えられ方は複数あります。アテナとの争いのときに馬を出したとも、岩を突いて生み出したとも、大地から生じさせたともいいます。

メドゥーサとの間には、

天馬ペガサスが生まれた。

ペルセウスがメドゥーサの首を斬ったとき、その血から飛び出したとされます。

競馬と馬術の守護神でもあり、コリントスのイストミア競技祭はこの神への祭礼でした。オリンピア(ゼウス)、デルフォイ(アポロン)と並ぶ四大競技祭のひとつです。

海の神が、なぜ馬なのか。 波が白い馬の群れに見えるからだとも、もとが大地の神だったからだとも説明されます。

オデュッセウスを追う ─ 十年の妨害

『オデュッセイア』の物語を動かしているのは、この神の怒りです。

トロイア戦争の帰路、オデュッセウスは一つ目の巨人ポリュペモスの洞窟に閉じ込められました。仲間を食われた彼は、

巨人に酒を飲ませ、焼いた杭で唯一の目を潰して脱出した。

そのポリュペモスが、ポセイドンの子でした。

逃げる船からオデュッセウスは名を名乗ってしまいます。巨人は父に祈りました。

あの男を故郷に帰らせないでください。 帰るとしても、遅く、みじめに、仲間をすべて失って。

祈りは聞き届けられます。

嵐に遭い、仲間を失い、島から島へ流され、帰郷まで十年かかりました。仲間は一人も残りませんでした。

神の怒りが、そのまま物語の長さになっています。

トロイアの城壁を築く ─ 報酬を踏み倒される

ポセイドンには、働いた分をもらえなかった話があります。

ゼウスに反抗した罰として、アポロンとともに人間に仕えることになりました。命じられたのは、トロイア王ラオメドンの城壁を築くことです。

二神は働き、難攻不落の城壁を完成させました。 ところが──

ラオメドンは約束の報酬を払わず、二神を追い返した。

激怒したポセイドンは海の怪物を送り、王は娘を生贄に差し出す羽目になります。

そしてトロイア戦争では、この恨みからギリシャ側に立ちました。

自分が築いた城壁を、自分が壊す側に回る。 戦後、ギリシャ軍が築いた防壁を海で洗い流したのもこの神です。

ポセイドンの家系図と家族

ポセイドンの親: クロノス呑まれた子レア

ポセイドンのきょうだい: ゼウス世界を三分する

ポセイドンの妻・夫: メドゥーサ交わるアムピトリテ

ポセイドンの子・子孫: オリオン海の上を歩く力を与えるトリトン

ポセイドンの性格と人物像

ポセイドンは、荒れる神です。

海が荒れ、大地が揺れ、怒れば都市を水没させる。制御されない力そのものです。

同時に、執念深さが際立ちます。オデュッセウスへの妨害は十年に及び、アテナに敗れた恨みで平野を水浸しにし、報酬を踏み倒されたトロイアには戦争で報いました。

興味深いのは、弟ゼウスに従わないことです。くじで分けた以上は対等だと主張し、反乱にも加わります。

そして多産です。ペガサス、ポリュペモス、テセウス、そして数多くの海の怪物。この神の子には怪物が多いという特徴があります。

海に出る民にとって、この神はなだめるべき相手でした。祈るのではなく、怒らせないようにする。ギリシャ人が海へ出る前に必ず捧げ物をしたのは、そのためです。

書物によってポセイドンの記述が異なるところ

ギリシャ神話は一冊にまとまっていません。ポセイドンについても、 書物によって記述が分かれる箇所が1件あります。 どちらか一方に決めず、両方を出典つきで載せています。

記述が分かれるところ

神統記紀元前700年頃

第139〜146行

  • ウラノス ─ 三兄弟として生まれる ─ キュクロプス

ヘシオドス『神統記』のキュクロプスは、ウラノスとガイアの子である三兄弟である。ブロンテス、ステロペス、アルゲスといい、腕のよい鍛冶としてゼウスの雷霆を鍛えた。

イリアス・オデュッセイア紀元前8世紀頃

オデュッセイア 第9歌

  • ポセイドン ─ ポリュペモスの父 ─ キュクロプス

ホメロス『オデュッセイア』のキュクロプスは、法も掟も持たない羊飼いの一族として描かれる。その一人ポリュペモスはポセイドンの子であり、鍛冶とはまったく結び付かない。同じ名で別の一族が語られている。

ポセイドンを祀った神殿と遺跡

ポセイドンの聖域は海に面した岬か、地峡にあります。スニオン岬もイストミアも、海を見渡す位置です。

船乗りが出発前と帰還後に立ち寄る場所として作られており、実用の信仰だったことが立地から分かります。

スニオン岬のポセイドン神殿(Temple of Poseidon, Sounion)

海を見下ろす断崖の神殿

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スニオン岬のポセイドン神殿の住所: ギリシャ アッティカ地方 スニオン岬

スニオン岬のポセイドン神殿の祀られた神: ポセイドン

スニオン岬のポセイドン神殿に残るもの: ドーリア式の柱16本

アテネから南へ約70km、海に突き出した断崖の上に建っています。紀元前444年頃の建立。

船乗りにとっては、アッティカへ帰る目印でした。海から見上げる位置にあり、遠くからでも白い柱が見えます。

柱の一本には、詩人バイロンが1810年に刻んだ署名が残っています。

夕日の名所として知られ、日没に合わせて訪れる人が多い場所です。

アテネから路線バスで行ける。閉門時間が日没前後で季節により変わる。

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イストミアの聖域(Isthmia)

四大競技祭のひとつが開かれた地

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イストミアの聖域の住所: ギリシャ コリントス地峡

イストミアの聖域の祀られた神: ポセイドン

イストミアの聖域に残るもの: 神殿の基壇と競技場跡

イストミア競技祭が二年ごとに開かれた聖域です。オリンピア(ゼウス)、デルフォイ(アポロン)、ネメア(ゼウス)と並ぶ四大競技祭のひとつでした。

勝者に与えられたのは松の冠です。

コリントス地峡という、二つの海に挟まれた場所にあります。海の神の聖域として理にかなった立地です。

近くに古代コリントス遺跡があり、あわせて回れる。

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エレクテイオン(Erechtheion)

アテナとポセイドンを同時に祀る神殿

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エレクテイオンの住所: ギリシャ アテネ アクロポリス

エレクテイオンの祀られた神: アテナ・ポセイドン

エレクテイオンに残るもの: カリアティード(少女像の柱)

アクロポリスの北側に建つ神殿で、アテナとポセイドンの両方を祀ります。争った二神が同じ建物に祀られている珍しい例です。

ポセイドンが三叉の矛で突いた跡と、そこから湧いた塩水の泉があったとされます。アテナのオリーブの木も、この神殿のそばに植えられていました。

六人の少女像が屋根を支えるカリアティードで知られます(現在立っているのは複製で、実物は博物館にあります)。

アクロポリスの入場券で見学できる。実物のカリアティードはアクロポリス博物館。

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ポセイドンが現代に残した痕跡

ポセイドンの名は、惑星と海の言葉に残りました。

海王星 Neptune: ローマ名ネプトゥーヌスによる。太陽系でもっとも外側の惑星に海神の名が与えられた。

ネプツニウム(元素93番): ウラン(天王星)の次の元素として、海王星にちなんで命名された。

ボスポラス/イオニア海など: ギリシャの海の地名の多くが、この神にまつわる神話に由来する。

「三叉の矛」という図像: 海の力を表す記号として、旗章や紋章に広く使われる。バルバドスの国章などに見られる。

ポセイドンが司るもの

航海安全

海を支配する。船出の前に必ず犠牲が捧げられた。

地震

「大地を揺るがす者」と呼ばれ、地震はこの神の仕業とされた。鎮めるための祭礼が行われた。

馬・競技

最初の馬を作った神とされ、競馬と馬術を司る。イストミア競技祭はこの神への祭礼。

泉・水源

三叉の矛で岩を突いて泉を湧かせる。淡水の水源も司った。

ポセイドンが登場するゲーム・アニメ

「海の支配者」という一点で使われる神です。荒々しさと強大さが描きやすく、敵役として登場することが多くあります。

一方で「馬を作った神」「もとは大地の神だった可能性」といった側面は、ほとんど描かれません。

ポセイドンが登場するゲーム

God of War シリーズ

ギリシャ編で強大な敵として登場します。海と地震を操る戦いが描かれます。

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Hades(ハデス)

恩恵を与える神の一柱として、明るい性格で登場します。

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女神転生シリーズ

海の神として登場します。

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ポセイドンが登場するアニメ・漫画・映像

聖闘士星矢 海皇編

海界の支配者として物語の中心に据えられます。日本でこの神が広く知られた大きな要因です。

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パーシー・ジャクソン シリーズ

主人公の父として登場します。

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ポセイドンについてよくある質問

ポセイドンは何の神様ですか。

海を支配する神です。あわせて地震と馬を司り、「大地を揺るがす者」と呼ばれました。

ポセイドンのローマ名は何ですか。

ネプトゥーヌス(Neptunus)です。英語ではネプチューン。海王星の名もこれによります。

ポセイドンはなぜアテナに負けたのですか。

アテネの守護神を争い、ポセイドンは塩水の泉を、アテナはオリーブの木を贈りました。実も油も木材も採れるオリーブが有用と判断され、都市の名はアテネになりました。

ポセイドンとオデュッセウスの関係は何ですか。

オデュッセウスがポセイドンの子である巨人ポリュペモスの目を潰したためです。巨人の祈りを聞き入れたポセイドンは、彼の帰郷を十年にわたって妨げました。

ポセイドンの武器は何ですか。

三叉の矛トリアイナです。ティタノマキアの際、解放されたキュクロプスが作りました。海を荒らし、岩を割り、大地を揺らします。

ペガサスはポセイドンの子ですか。

そうです。ポセイドンとメドゥーサの子で、ペルセウスがメドゥーサの首を斬ったときにその血から生まれたとされます。

ポセイドンと併せて覚えたい言葉・用語

ティタノマキア(Titanomachia)

ゼウス率いるオリュンポスの神々と、クロノス率いるティタン神族の戦争。十年続き、解放されたキュクロプスとヘカトンケイルの加勢で決着した。

トロイア戦争(トロイアせんそう)

ギリシャ軍とトロイアの十年に及ぶ戦争。パリスがスパルタ王妃ヘレネを連れ去ったことから始まった。ホメロス『イリアス』はその十年目を描く。