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日本神話

ヨモツシコメ(予母都志許売)とは何の神様か|家系図・物語・ゆかりの地

予母都志許売  / ヨモツシコメ

冥界 黄泉

黄泉の追手。イザナギを追いかけた鬼女。

ヨモツシコメとは何の神様か

ヨモツシコメはひとことで言えば日本最初の鬼です。イザナギが黄泉から逃げるとき、イザナミが差し向けた追手にあたります。

名は黄泉の恐ろしい女を意味します。

イザナギは髪飾りを山ぶどうに、櫛を筍に変えて投げ、追手がそれを食べる間に逃げました。後世の鬼女の原型とされます。

ヨモツシコメの漢字表記と読み方

読みは「よもつしこめ」です。「ヨモツ」は黄泉の「メ」は女を指します。

「シコ」が難しい語です。醜(しこ)の字を当てますが、古語の「シコ」は「醜い」だけでなく「強い・頑丈な」という意味を持ちます。

大国主の別名葦原色許男神(あしはらしこおのかみ)にも同じ語が入っており、そちらは強い男の意味です。

つまり黄泉の強い女とも読めます。恐ろしさは、醜さよりも力にあったことになります。

予母都志許売(よもつしこめ)

古事記での表記。

泉津醜女(よもつしこめ)

日本書紀での表記。

黄泉醜女(よもつしこめ)

一般に用いられる表記。

ヨモツシコメの物語

  1. 見てはならないものを見る
  2. 髪飾りと櫛を投げる
  3. 桃で追い払う
  4. 鬼女の原型として

見てはならないものを見る

イザナギは、死んだ妻イザナミを連れ戻そうと黄泉の国へ行きました。イザナミは言います。

黄泉の食べ物を食べてしまいました。しかし帰れるよう相談してみます。その間、決して私を見ないでください。

待ちきれなくなったイザナギは、櫛の歯を折って火をともし、中を見ました。

蛆たかれころろぎて。

体に蛆がわき、雷神が生じていました。イザナギは逃げ出します。

髪飾りと櫛を投げる

恥をかかされたイザナミは、ヨモツシコメを差し向けました。

イザナギは、頭の黒御鬘(くろみかづら)を投げます。落ちたところから山ぶどうが生えました。追手はそれを食べます。

その隙に逃げますが、また追いつかれます。今度は櫛の歯を折って投げました。落ちたところからが生えます。追手はそれを抜いて食べました。

投げた物が食べ物に変わり、追手を足止めする。この筋は、世界各地の逃走譚に共通する型です。

桃で追い払う

さらにイザナミは、八柱の雷神と千五百の黄泉軍を差し向けました。

イザナギは剣を後ろ手に振りながら逃げ、黄泉比良坂のふもとに至ります。そこに桃の実が三つなっていました。

これを投げると、追手はことごとく逃げ帰りました。

イザナギは桃に名を与えます。

意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)

桃が魔除けになるという考えは中国から入ったもので、この場面がその古い例です。桃太郎にもつながります。

鬼女の原型として

ヨモツシコメは、後世の鬼女の原型とされます。

般若 ─ 能面。嫉妬に狂った女の顔。
山姥 ─ 山に住む恐ろしい老女。
鬼婆 ─ 各地の昔話。

いずれも「女性」「恐ろしい」「食べる」という要素を共有します。

ヨモツシコメも、投げられた物を食べて足を止めました。食への執着が足止めになるという描かれ方は、後世の鬼にも受け継がれています。

日本の怪異の系譜が、記紀のこの場面から始まっているといえます。

ヨモツシコメの家系図と家族

ヨモツシコメの性格と人物像

ヨモツシコメは、命じられて動く存在です。

意思も台詞もありません。イザナミが差し向け、追い、食べ物に気を取られ、また追う。それだけです。

しかしこの単純さが、かえって恐ろしさを生んでいます。交渉できず、止まらず、ただ追ってくる。

名の「シコ」が強いという意味も持つことを考えれば、この存在の本質は醜さではなく執拗さにあります。日本の怪異が持つ性格の、最初の形といえます。

ヨモツシコメゆかりの地と遺跡

ヨモツシコメを祀る社はありません。追手として描かれる存在であるためです。

島根県松江市の揖夜神社の近くに、黄泉比良坂と伝える地があります。イザナギが逃げ切り、大岩で塞いだ場所とされます。

この物語にゆかりの地はありますが、この存在自体を祀る形は残っていません。

大和神社(おおやまとじんじゃ)

二十二社

地図で開く

大和神社の住所: 奈良県天理市新泉町306

大和神社の御祭神: 日本大国魂大神ほか

大和神社のご利益: 国土安泰

ヨモツシコメを祀る社ではない。国土の神を祀る古社として並べた。

周辺の宿をさがす

大和神社へ参拝するときの、奈良県天理市の宿を探せます。

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ヨモツシコメが現代に残した痕跡

ヨモツシコメの物語は、魔除けの習慣に残りました

桃の魔除け: イザナギが桃を投げて追手を退けた場面による。桃太郎にもつながる。

黄泉比良坂: 島根県松江市に伝承地がある。生と死の境とされる。

般若・山姥: 後世の鬼女。恐ろしい女性という型の系譜にあたる。

ヨモツシコメのご利益

厄除け

黄泉の存在を退けた場面にちなむ。桃による魔除けの信仰。

ヨモツシコメについてよくある質問

ヨモツシコメとはどんな存在ですか。

イザナギが黄泉から逃げる際、イザナミが差し向けた追手です。名は「黄泉の恐ろしい女」を意味します。

なぜ食べ物で足止めできたのですか。

理由は記されていません。投げた物が食べ物に変わって追手を足止めするという筋は、世界各地の逃走譚に共通する型です。

桃で追い払ったというのは本当ですか。

古事記にそう記されています。イザナギは桃に「意富加牟豆美命」という名を与えました。桃が魔除けになるという考えの古い例です。

ヨモツシコメと併せて覚えたい言葉・用語

黄泉の国(よみのくに)

死者が行く地下の国。イザナミが去った先。