黄泉の坂で夫婦を仲裁した女神。白山の神。
ククリヒメとは何の神様か
ククリヒメの漢字表記と読み方
読みは「くくりひめ」です。「ククリ」は括る、つまり結ぶ・まとめることを指します。
「くくる」は、いまも紐でくくるという形で使われます。
争っていた二柱の間を取りまとめたことから、この名になったとされます。
そのため縁を結ぶ神として信仰されました。
社名の「白山比咩(しらやまひめ)」は、白山そのものを指す別の名です。
菊理媛神(くくりひめのかみ)
日本書紀での表記。
白山比咩大神(しらやまひめのおおかみ)
白山比咩神社での表記。
ククリヒメの物語
たった一度の登場
日本書紀の一書(あるふみ)に、この記述があります。
イザナギがイザナミと黄泉比良坂で言い争っていたとき、
時に菊理媛神、亦白す事有り。伊奘諾尊聞きて、善しと褒めたまひて、乃ち散去けぬ。
菊理媛神が何か申し上げた。イザナギはそれを聞いて「善し」と褒め、去っていった。
これがすべてです。
古事記には登場しません。日本書紀の本文にもなく、参考として併記された一書にだけ現れます。
何を言ったのか
内容が書かれていないことが、この神の最大の特徴です。
「亦白す事有り」 ─ また申し上げることがあった。
何を言ったのかは記されません。
しかしその一言で、イザナギは争いをやめて去りました。
死んだ妻と、生きた夫。二度と交わらない二人の間に立って、何かを言った。
その空白が、後世にさまざまな解釈を呼びました。「二人を和解させた」「別れを受け入れさせた」など、読み方は定まっていません。
白山という山
白山は、石川・岐阜・福井にまたがる標高2,702メートルの山です。
富士山・立山と並ぶ日本三名山。
山頂に一年の大半、雪が残ることから「白い山」と呼ばれました。
奈良時代に泰澄という僧が開いたとされ、修験の山として栄えます。
山から流れ出る水が、手取川・九頭竜川・長良川となって四方の平野を潤しました。水の神としての信仰が篤いのはそのためです。
なぜ縁結びなのか
ククリヒメが縁結びの神とされる理由は、二つあります。
名の意味 ─ 「ククリ」は括る、結ぶ。
物語 ─ 夫婦の間を取りもった。
どちらも「結ぶ」に通じます。
ただし、この神が取りもったのは円満な夫婦ではありません。死んだ妻と、逃げた夫です。
和解させたのか、きれいに別れさせたのか。
そのため近年は、縁切りと縁結びの両方を担う神として語られることもあります。
ククリヒメの家系図と家族
ククリヒメの性格と人物像
ククリヒメは、言葉の内容が残らなかった神です。
何かを言い、褒められ、それで場が収まりました。しかし何を言ったかは記録されていません。
神話における最大の空白のひとつです。
それでいて、全国約2,000社の白山神社の祭神として、広く信仰されています。
書かれなかったからこそ、誰もが自分の願いを重ねられる。この神の人気の理由は、その空白にあるといえます。
ククリヒメを祀る神社
ククリヒメを祀る社は、全国に約2,000社あるとされます。総本社は白山比咩神社です。
白山から流れる川の流域、つまり北陸から東海にかけて分布が濃くなります。
白山信仰は修験道と深く結びつき、山伏によって各地へ広められました。白山神社という名の社が、いまも全国に残ります。
白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)
加賀国一宮
全国に約2,000社ある白山神社の総本社。白山を神体とする。
北陸鎮護の大社とされる。
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ククリヒメが現代に残した痕跡
ククリヒメの名は、白山の信仰に残りました。
白山: 石川・岐阜・福井にまたがる山。富士山・立山と並ぶ日本三名山。
くくる: 結ぶ・まとめること。この神の名の由来。
白山神社: 全国に約2,000社ある。修験者によって各地へ広められた。
ククリヒメのご利益
縁結び
名の「ククリ(括る)」と、夫婦を取りもった伝えによる。
和合
争いを収めたことによる。
水の恵み
白山から流れる水が平野を潤したことによる。
ククリヒメについてよくある質問
ククリヒメとはどんな神様ですか。
日本書紀の一書に一度だけ登場する女神です。黄泉比良坂で争うイザナギとイザナミの間に立ち、何かを言って場を収めました。
何を言ったのですか。
書かれていません。「また申し上げることがあった」とだけ記され、内容は記録されていません。
なぜ縁結びの神なのですか。
名の「ククリ」が「括る=結ぶ」を意味することと、夫婦の間を取りもった伝えによります。
ククリヒメと併せて覚えたい言葉・用語
一書(あるふみ)
日本書紀が本文とは別に併記する異伝。「一書に曰く」の形で複数載る。