本文へ移動

日本神話

ハヤタマノオ(速玉之男)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

速玉之男  / ハヤタマノオ

冥界 黄泉

離縁の言葉から生まれた神。熊野速玉大社の名の由来とされる。

ハヤタマノオとは何の神様か

ハヤタマノオはひとことで言えば別れの誓いです。イザナギイザナミが黄泉比良坂で別れるとき、吐いた唾から生まれました。日本書紀の一書に記されます。

離縁を告げる「事戸(ことど)を渡す」場面です。

言葉と唾に霊力があるという考えが、そのまま形になっています。熊野速玉大社の社名は、この神に由来するとされます。

ハヤタマノオの漢字表記と読み方

読みは「はやたまのお」です。「ハヤ」は速い・勢いが強い「タマ」は魂・霊力「オ」は男を指します。

勢いの強い霊力を持つ男神という意味です。

「ハヤ」は、ハヤアキツヒコやミカハヤヒにも含まれます。いずれも勢いの激しさを表します。

熊野速玉大社の社名は、この神の名によるとされます。ただし祭神の由来には諸説あります

速玉之男(はやたまのお)

日本書紀の一書での表記。

熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)

熊野速玉大社での表記。

ハヤタマノオの物語

  1. 事戸を渡す
  2. 唾から神が生まれる
  3. 熊野速玉大社
  4. 離縁の神が祀られる

事戸を渡す

イザナギは黄泉から逃げ、大岩で坂をふさぎました。岩をはさんで、二柱は向かい合います。

イザナミが言いました。

愛しき我が汝夫の命、かく為ば、汝の国の人草、一日に千頭絞り殺さむ。

イザナギが答えます。

愛しき我が汝妹の命、汝然為ば、吾一日に千五百の産屋立てむ。

一日に千人殺すなら一日に千五百人生ませる

これが事戸を渡す、つまり離縁を宣告する場面です。

唾から神が生まれる

日本書紀の一書は、この場面をこう記します。

乃ち唾を以て神を生む。号けて速玉之男と曰す。

唾を吐いて神を生んだというのです。

古代において、唾には霊力があると考えられていました。

傷に唾をつける、まじないに唾を使う。そうした習慣が各地にあります。

言葉を発するときに出る唾が、誓いを固めるものとされました。

唾を吐いて誓うという行為が、そのまま神になっています。

熊野速玉大社

熊野速玉大社は、和歌山県新宮市にあります。熊野三山のひとつです。

本宮・速玉・那智。

三社あわせて世界文化遺産の構成資産です。

速玉大社は、もともと神倉山のゴトビキ岩に神が降ったとされ、後にいまの場所へ遷りました。新宮(にいみや)という地名は、そこから来ています。

所蔵する古神宝類は国宝に指定されています。

離縁の神が祀られる

別れの場面から生まれた神が、なぜ広く祀られたのか。

熊野は、死者の国に近い場所とされました。

補陀落渡海(ふだらくとかい)── 生きたまま舟で海へ出て、浄土を目指す。

実際に行われた記録が残ります。

生と死の境に位置する土地です。その境で生まれた神が祀られるのは、筋が通っています。

別れを司る神は、同時に次へ進む力を持つとも読めます。

ハヤタマノオの家系図と家族

ハヤタマノオの親: イザナギ唾から

ハヤタマノオのきょうだい: コトサカノオ同じ場面で成る

ハヤタマノオの性格と人物像

ハヤタマノオは、別れの場面だけに現れる神です。

物語も台詞もありません。イザナギが唾を吐いた、そこから生まれた。それだけです。

日本書紀の一書にしか記されず、古事記には出てきません。

それでいて、熊野三山のひとつの社名になっています。

記述の少なさと、信仰の広さが食い違う。日本神話には、こうした神がしばしば現れます。

ハヤタマノオを祀る神社

ハヤタマノオを祀るのは、熊野速玉大社が中心です。

熊野三山を勧請した熊野神社は、全国に約3,000社あるとされます。

平安時代以降、上皇や貴族が繰り返し参詣し、蟻の熊野詣と呼ばれるほど人が続きました。熊野古道は世界文化遺産に登録されています。

熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)

熊野三山

地図で開く

熊野速玉大社の住所: 和歌山県新宮市新宮1番地

熊野速玉大社の御祭神: 熊野速玉大神・熊野夫須美大神

熊野速玉大社のご利益: 厄除け

社名はこの神に由来するとされる。世界文化遺産の構成資産。

所蔵の古神宝類は国宝。

周辺の宿をさがす

熊野速玉大社へ参拝するときの、和歌山県新宮市の宿を探せます。

広告を含みます

熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)

熊野三山

地図で開く

熊野本宮大社の住所: 和歌山県田辺市本宮町本宮

熊野本宮大社の御祭神: 家都美御子大神

熊野本宮大社のご利益: 所願成就

熊野三山の中心。全国に約3,000社ある熊野神社の総本宮。

旧社地の大斎原に日本一の大鳥居が建つ。

周辺の宿をさがす

熊野本宮大社へ参拝するときの、和歌山県田辺市の宿を探せます。

広告を含みます

ハヤタマノオが現代に残した痕跡

ハヤタマノオの名は、社名に残りました

新宮(しんぐう): 和歌山県の地名。神倉山から新しい宮へ遷したことによる。

事戸を渡す: 離縁を宣告すること。この神が生まれた場面。

熊野古道: 熊野三山へ至る参詣道。世界文化遺産。

ハヤタマノオのご利益

厄除け

穢れを断つ場面から生まれたことによる。

再生

熊野が浄土への入口とされたことによる。

所願成就

熊野三山への信仰による。

ハヤタマノオについてよくある質問

ハヤタマノオとはどんな神様ですか。

イザナギとイザナミが黄泉比良坂で別れる際、吐いた唾から生まれた神です。日本書紀の一書に記されます。

なぜ唾から生まれたのですか。

古代には唾に霊力があると考えられていました。言葉を発するときに出る唾が、誓いを固めるものとされたためです。

熊野速玉大社の祭神ですか。

社名はこの神に由来するとされます。ただし祭神の由来には諸説あります。

ハヤタマノオと併せて覚えたい言葉・用語

一書(あるふみ)

日本書紀が本文とは別に併記する異伝。「一書に曰く」の形で複数載る。