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日本神話

イザナミ(伊邪那美命)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

伊邪那美命  / イザナミノミコト

冥界 神世七代

国生みの女神。火の神を生んで命を落とし、黄泉の国の主となる。

イザナミの姿を描いた図

小林永濯 「天瓊を以て滄海を探るの図」 明治期 / パブリックドメイン 出典

イザナミとは何の神様か

イザナミはひとことで言えば生と死の両方を司る神です。

イザナギとともに日本の国土と多くの神々を生みました。ところが火の神カグツチを生んだ際に身を焼かれ、神々のうちで最初に死を迎えます。 それまで世界に死は存在しませんでした。

黄泉の国へ去ったのち、変わり果てた姿を夫に見られたことで関係は決裂します。別れ際に「あなたの国の人を一日に千人殺す」と告げ、以後は黄泉津大神として死者の国を治めることになりました。

産む神が、そのまま死を司る神になる。 日本神話でもっとも激しい転換を経る神であり、生と死が背中合わせであることを一柱で体現しています。

イザナミの漢字表記と読み方

読みは「いざなみのみこと」です。注目すべきは、古事記が死を境に呼び名を変えていることです。生前は「伊邪那美命」、死後は「伊邪那美神」、そして黄泉の主となってからは「黄泉津大神」。名前の変化が、この神の立場の変化をそのまま記録しています。

伊邪那美命(いざなみのみこと)

古事記での表記。生きている間はこの名で記される。

伊邪那美神(いざなみのかみ)

古事記で死後に用いられる表記。命から神へ改まる。

伊弉冉尊(いざなみのみこと)

日本書紀での表記。花窟神社などの由緒書で用いられる。

黄泉津大神(よもつおおかみ)

黄泉の国を治める神としての称号。死者の国の主であることを示す。

道敷大神(ちしきのおおかみ)

夫を追いかけたことから付いた名。追いついた者の意とされる。

イザナミの物語

  1. 国生み ─ 声をかける順番をやり直す
  2. 神生み ─ 火の神を生んで身を焼かれる
  3. 黄泉の国へ ─ すでに戻れない身になっていた
  4. 見られる ─ 恥をかかされた怒り
  5. 黄泉比良坂 ─ 一日に千人殺すと告げる

国生み ─ 声をかける順番をやり直す

イザナミは、神世七代の最後にイザナギと一組で現れた女神です。

高天原の神々から国を固めるよう命じられ、二柱は天の浮橋から天の沼矛を下ろして海をかき回しました。滴った潮が積もって淤能碁呂島となります。

島に降りた二柱は太い柱を立て、互いに逆方向から回って出会いました。このときイザナミが先に「なんと立派な男でしょう」と声をかけます。

生まれたのは骨のない水蛭子でした。葦の舟に乗せて流します。次の淡島も子には数えられませんでした。

高天原に伺いを立てると「女が先に声をかけたのが良くない」との答えでした。やり直して男神から声をかけると、淡路島を皮切りに次々と島が生まれます。日本の国土である大八島です。

神生み ─ 火の神を生んで身を焼かれる

国を生み終えた二柱は、続けて神々を生みました。海、風、木、山、野。自然のあらゆる要素が神として次々に生まれます。

しかし火の神カグツチを生んだとき、イザナミは陰部を焼かれて病に伏しました。

苦しみのなかでも神は生まれ続けます。嘔吐からは金山毘古神と金山毘売神が、糞からは波邇夜須毘古神と波邇夜須毘売神が、尿からは弥都波能売神と和久産巣日神が生まれました。

苦痛と排泄物からさえ神が生まれる。 産む力が尽きるまで産み続けた末に、イザナミは息絶えました。神々のうちで最初の死者です。

黄泉の国へ ─ すでに戻れない身になっていた

イザナミは葬られ、黄泉の国へ去りました。

しばらくして夫イザナギが訪ねてきます。「国はまだ完成していない。帰ってきてほしい」と呼びかける夫に、イザナミは戸の中から答えました。

残念です。もっと早く来てくださればよかったのに。私は黄泉の国の食べ物を食べてしまいました。

黄泉戸喫といい、死者の国の火で調理したものを口にすると、もう戻れなくなるという考えです。

それでもイザナミは「黄泉の神と相談してみましょう」と言い、こう付け加えました。

その間、決して私を見ないでください。

見られる ─ 恥をかかされた怒り

待ちきれなかったイザナギは、櫛の歯を折って火を灯し、御殿の中へ入ってしまいます。

そこにあったのは、蛆がたかり、体の各所に八柱の雷神が生じている姿でした。頭に大雷、胸に火雷、腹に黒雷、陰部に拆雷。イザナギは恐れて逃げ出します。

イザナミは叫びました。

よくも私に恥をかかせましたね。

黄泉醜女を放ち、雷神と黄泉軍千五百を差し向け、最後には自ら追いかけます。

この場面のイザナミは、悲しむのではなく怒っています。 死んだこと自体ではなく、変わり果てた姿を見られたことに対する怒りです。「見るなの禁」を破られた者の反応として、日本神話に繰り返し現れる型の原型になっています。

黄泉比良坂 ─ 一日に千人殺すと告げる

黄泉比良坂でイザナギは千人がかりでなければ動かせない巨岩を置き、坂を塞ぎました。

岩を挟んで、二柱は最後の言葉を交わします。

愛しい夫よ。こうするのなら、私はあなたの国の人草を、一日に千人殺しましょう。
愛しい妻よ。おまえがそうするなら、私は一日に千五百の産屋を建てよう。

こうして人は一日に千人死に、千五百人生まれることになりました。人が死ぬ理由と、それでも人口が増える理由が、この一組のやりとりで説明されます。

以後イザナミは黄泉津大神と呼ばれ、死者の国を治める神となりました。古事記はこの坂を出雲国の伊賦夜坂であると記しています。

イザナミの家系図と家族

イザナミのきょうだい: オモダル・アヤカシコネ次に成る

イザナミの妻・夫: イザナギ

イザナミの子・子孫: カグツチヒルコシナツヒコククノチオオヤマツミカヤノヒメハヤアキツヒコ天鳥船オオゲツヒメ天石門別神ホムスビカナヤマヒコ吐いたものからハニヤスビコ・ハニヤスビメ大便からミズハノメ尿からワクムスヒ尿からライジン体に生じるイイヨリヒコ国生みで生まれるオオノデヒメ国生みで生まれるオオタマルワケ国生みで生まれるオオコトオシオ神生みの最初ホノイカヅチ体に生じる

イザナミの性格と人物像

イザナミは、日本神話のなかでもっとも扱いの重い神です。

産む神として登場し、産み続けた末に死に、死者の国の主となって「人を殺す」と宣言する。同じ一柱が、生命の源であり死の支配者でもあります。

注目すべきは、黄泉での怒りが死んだことではなく、見られたことに向いている点です。約束を破られ、恥をかかされたことへの怒りとして描かれます。夫婦の物語としても読める場面であり、単なる怪異譚ではありません。

そして重要なのは、イザナミが死ななければ日本神話は先へ進まないということです。彼女の死があったから黄泉の国が生まれ、イザナギがをし、三貴子が生まれました。死を引き受けた神として、物語全体の折り返し点に立っています。

古事記と日本書紀でイザナミの記述が異なるところ

日本神話は一冊にまとまっていません。イザナミについても、 古事記と日本書紀で記述が分かれる箇所が1件あります。 どちらか一方に決めず、両方を出典つきで載せています。

アマテラス・ツクヨミ・スサノオの三姉弟は、誰から生まれたのか

古事記712年

上巻・禊の段

  • イザナギ ─ 親子 ─ アマテラス
  • イザナギ ─ 親子 ─ ツクヨミ
  • イザナギ ─ 親子 ─ スサノオ

同じ禊のとき、鼻を洗って生まれた。

日本書紀720年

巻第一・第五段 一書

  • イザナミ ─ 親子 ─ アマテラス
  • イザナミ ─ 親子 ─ ツクヨミ
  • イザナミ ─ 親子 ─ スサノオ

同じ一書に見える系譜。

イザナミを祀る神社

イザナミを祀る社は、イザナギと夫婦で祀る社と、イザナミ単独で墓所や黄泉との関わりを祀る社に分かれます。前者は縁結びや延命長寿、後者は厄除けや境界の守護という性格を持ちます。

花窟神社と揖夜神社はいずれも後者にあたり、死者の国と接する場所として位置づけられています。

花窟神社(はなのいわやじんじゃ)

日本最古の神社と称される/世界遺産

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花窟神社の住所: 三重県熊野市有馬町上地130

花窟神社の御祭神: 伊弉冉尊・軻遇突智尊

花窟神社のご利益: 子授け・安産・厄除け

日本書紀にイザナミが葬られた地として記される社です。「紀伊国の熊野の有馬村に葬る」という記述がそのままこの地にあたります。

社殿を持たず、高さ約45メートルの巨岩そのものが御神体です。イザナミの墓所とされ、その傍らには彼女の命を奪った火の神カグツチも祀られています。母と、母を死なせた子が並んで祀られているという構えです。

2月2日と10月2日の例大祭では御縄掛け神事が行われます。日本一長いともいわれる約170メートルの大綱を、45メートルの御神体の頂上から境内へ渡すもので、日本書紀の記述をそのまま今に伝える神事です。

熊野古道の一部として世界遺産に登録されている。社殿を持たない古い自然崇拝の形を残す。

周辺の宿をさがす

花窟神社へ参拝するときの、三重県熊野市の宿を探せます。

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揖夜神社(いやじんじゃ)

黄泉比良坂の伝承地に近い古社

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揖夜神社の住所: 島根県松江市東出雲町揖屋字宮山2229

揖夜神社の御祭神: 伊弉冉命ほか

揖夜神社のご利益: 厄除け・縁結び

出雲国風土記や日本書紀に名が見える古社で、イザナミを主祭神とします。

社から東へ1キロほどの場所に、古事記が記す黄泉比良坂の伝承地があります。イザナギが巨岩で塞いだとされる坂で、現在も塞の神とされる大岩が置かれています。

生者の世界と死者の世界の境目とされる場所であり、日本神話の地理がそのまま地上に残っている数少ない例です。

「いや」の音が「揖屋」の地名として残る。黄泉比良坂伝承地には現在も案内板が立つ。

周辺の宿をさがす

揖夜神社へ参拝するときの、島根県松江市の宿を探せます。

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多賀大社(たがたいしゃ)

イザナギとともに祀られる

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多賀大社の住所: 滋賀県犬上郡多賀町多賀604

多賀大社の御祭神: 伊邪那岐大神・伊邪那美大神

多賀大社のご利益: 延命長寿・縁結び・夫婦円満

イザナギとイザナミを夫婦で祀ります。アマテラスの親にあたる二柱を祀ることから「お伊勢参らばお多賀へ参れ、お伊勢お多賀の子でござる」と謡われました。

延命長寿と縁結びの信仰で知られ、夫婦での参拝が古くから行われてきました。

名物の「お多賀杓子」がおたまじゃくしの語源という説がある。

周辺の宿をさがす

多賀大社へ参拝するときの、滋賀県犬上郡多賀町の宿を探せます。

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イザナミが現代に残した痕跡

イザナミの名は、黄泉にまつわる言葉と地名に残りました。

黄泉比良坂: 島根県松江市東出雲町。古事記が「今の出雲国の伊賦夜坂」と記した場所に、比定地として石碑が立つ。

「よもつへぐい」: 黄泉の food を口にすると戻れないという考え。異界のものを食べてはいけないという民話の型として広く残る。

花窟神社: 三重県熊野市。日本書紀が記すイザナミの葬地とされ、社殿を持たず巨岩そのものを拝む。

「一日に千人殺す」: 死者の数と生まれる数を定めた場面。人口の増減を神話で説明した例として引かれる。

イザナミのご利益

縁結び・夫婦円満

イザナギと日本最初の夫婦とされることによる。

子授け・安産

国と多くの神々を生んだ神であることによる。

厄除け

黄泉の国を治める神として、災厄を鎮める力があるとされる。

万物の生成

自然のあらゆる要素を神として生んだことによる。

イザナミが登場するゲーム・アニメ

イザナミが登場するゲーム

ペルソナ4

物語全体の鍵を握る存在として登場します。黄泉とイザナミの神話が作品の主題そのものになっています。

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女神転生シリーズ

イザナミとして繰り返し登場し、多くの場合は黄泉の側面が強調されます。

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モンスターストライク

日本神話シリーズの一柱として実装されています。

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イザナミが登場するアニメ・漫画

NARUTO -ナルト-

写輪眼の術「イザナミ」の名前の由来です。対になる術「イザナギ」とあわせて、神話の夫婦関係が術の関係に反映されています。

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イザナミについてよくある質問

イザナミは何の神様ですか。

国土と神々を生んだ女神であり、死後は黄泉の国を治める神となりました。生と死の両方を司る神です。

イザナミはなぜ死んだのですか。

火の神カグツチを生んだ際に身を焼かれたためです。神々のうちで最初の死者となりました。

イザナミはなぜ怒ったのですか。

見ないでほしいという約束を破られ、変わり果てた姿を夫に見られて恥をかかされたためです。死んだこと自体への怒りではありません。

黄泉比良坂はどこにありますか。

古事記は出雲国の伊賦夜坂と記します。島根県松江市東出雲町に伝承地があり、塞の神とされる大岩が置かれています。

イザナミの墓はどこですか。

日本書紀は紀伊国の熊野の有馬村に葬ったと記します。三重県熊野市の花窟神社がその地とされ、高さ45メートルの巨岩を御神体としています。

イザナミと併せて覚えたい言葉・用語

黄泉の国(よみのくに)

死者が行く地下の国。イザナミが去った先。

神世七代(かみよななよ)

天地の始まりに現れた七代の神々。最後がイザナギとイザナミ。

高天原(たかまがはら)

天上にある神々の国。アマテラスが治める。

三貴子(さんきし)

イザナギが最後に生んだ三柱、アマテラス・ツクヨミ・スサノオのこと。この三柱だけが特別に貴い神として扱われる。

(みそぎ)

水で身を洗い、穢れを落とすこと。イザナギはこれによって三貴子を生んだ。