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日本神話

ウケモチ(保食神)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

保食神  / ウケモチノカミ

大地 国津神

日本書紀の食物の神。ツクヨミに斬られる。

ウケモチの姿を描いた図

「保食神社(鹿児島神宮 境内)」 / CC0 出典

ウケモチとは何の神様か

ウケモチはひとことで言えば食物の神です。名の「ウケ」は食べ物を意味し、「モチ」は保つことを表します。食を保つ神という意味になります。

日本書紀に登場し、アマテラスの命で訪ねてきたツクヨミをもてなしました。陸を向いて口から飯を、海を向いて魚を、山を向いて獣を出します。

ところがツクヨミはこれを汚らわしいとして斬り殺してしまいました。 その死体から牛馬、蚕、粟、稲、麦、大豆小豆が生まれ、日本の農業と養蚕の起源となります。

この話を知ったアマテラスは激怒し、日と月は昼夜に分かれて二度と会わなくなりました。

古事記ではまったく同じ筋を、スサノオオオゲツヒメが演じます。

ウケモチの漢字表記と読み方

読みは「うけもち」です。「ウケ(食)」は食べ物を意味する古語で、豊受大神の「ウケ」、宇迦之御魂神の「ウカ」と同じ語です。

この語の共通性から、食物に関わる神々が後世に混同・同一視されていきました。 ウケモチ、オオゲツヒメ、トヨウケ、ウカノミタマ別の神なのか、同じ神の別名なのかが判然としないのが、日本の食物神の特徴です。

保食神(うけもちのかみ)

日本書紀での表記。古事記には登場しない。

大気都比売神(おおげつひめのかみ)

古事記における対応する神。名は異なるが同じ筋の話に登場する。

宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)

稲荷の祭神。「ウケ」と「ウカ」が通じることから、後世に同一視された。

豊受大神(とようけのおおかみ)

伊勢神宮外宮の祭神。「ウケ」が共通することから、同一視する説がある。

ウケモチの物語

  1. アマテラスがツクヨミを遣わす
  2. もてなす ─ 体から食物を出す
  3. 斬られる ─ そして日と月が分かれる
  4. 死体から五穀が生まれる ─ 農業と養蚕の起源

アマテラスがツクヨミを遣わす

日本書紀の一書に、こう記されます。

アマテラスがツクヨミに言った。「葦原中国にウケモチという神がいると聞いている。 行って見てきなさい」

ツクヨミは命を受けて地上へ降ります。

ツクヨミが動く、数少ない場面です。この神には物語がほとんどなく、事績と呼べるものはこの一件だけといえます。

もてなす ─ 体から食物を出す

ウケモチはツクヨミを迎え、もてなそうとしました。

陸を向くと、口から飯が出てきた。海を向くと、口から大小の魚が出てきた。山を向くと、口から毛の粗い獣と毛の柔らかい獣が出てきた。

それらをすべて並べ、百の机に載せてふるまいました。

体から食物を出すという行為は、この神が食物そのものであることを示しています。最大限のもてなしだったはずです。

斬られる ─ そして日と月が分かれる

ツクヨミは激怒しました。

汚らわしい。卑しい。口から吐き出したものを、私に食べさせようというのか。

そう言って剣を抜き、ウケモチを斬り殺してしまいます。

報告を受けたアマテラスは、激しく怒りました。

おまえは悪い神だ。もう会わない。

そして日と月は、一日一夜を隔てて離れ住むことになりました。

昼と夜が分かれた理由が、この一件に求められています。日食や、太陽と月が同時に見えないことを説明する神話です。

死体から五穀が生まれる ─ 農業と養蚕の起源

アマテラスは別の使者を遣わし、ウケモチの様子を見に行かせました。

すでに死んでいましたが、その体からは──

頭に牛馬、額に粟、眉に蚕、目に稗、腹に稲、陰に麦と大豆小豆が生じていた。

アマテラスは喜び、こう言いました。

これらは人民が生きていくために食べるものである。

そして粟・稗・麦・豆を畑の種とし、稲を水田の種としました。さらに蚕を口に含んで糸を引き出し、養蚕が始まったとされます。

日本の農業と養蚕は、この神の死体から始まりました。

ウケモチの家系図と家族

ウケモチの性格と人物像

ウケモチは、最大限のもてなしをして殺された神です。

アマテラスの使者を迎え、体のすべてを使って食物を差し出しました。台詞は一言も記されていません。抵抗も弁明もありません。

殺した側にも悪意はありませんでした。ツクヨミは汚いものを出されたと本気で思ったのです。双方に悪意がないのに、最悪の結果になる。

そして死体から五穀と養蚕が生まれ、日と月は永久に分かれました。

一度の誤解が、農業の起源と、昼夜の別れという二つの結果を同時に生んでいます。 日本神話のなかでも、これほど大きな帰結を持つ短い話は他にありません。

古事記と日本書紀でウケモチの記述が異なるところ

日本神話は一冊にまとまっていません。ウケモチについても、 古事記と日本書紀で記述が分かれる箇所が1件あります。 どちらか一方に決めず、両方を出典つきで載せています。

食物の女神を斬ったのは、スサノオかツクヨミか

古事記712年

上巻・大気都比売の段

  • スサノオ ─ 斬る ─ オオゲツヒメ

古事記では、食物を体から出してもてなしたオオゲツヒメをスサノオが斬る。その亡骸から五穀が生まれた。

日本書紀720年

巻第一・第五段 一書

  • ツクヨミ ─ 斬る ─ ウケモチ

日本書紀では同じ話をツクヨミが行う。これを知ったアマテラスが怒り、日と月は昼夜に分かれて出会わなくなった。

ウケモチを祀る神社

ウケモチを主祭神とする社は多くありません。 日本書紀の一書にしか登場せず、しかも殺される役だからです。

代わりに、名の「ウケ(食)」が共通するトヨウケウカノミタマと同一視され、伊勢の外宮や全国の稲荷社で祀られる形になりました。

各地の稲荷社で祭神が「保食神」と記されている場合、この同一視によるものです。別の神なのか同じ神なのかは、はっきりしていません。

豊受大神宮(伊勢神宮 外宮)(とようけだいじんぐう げくう)

伊勢神宮の外宮

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豊受大神宮(伊勢神宮 外宮)の住所: 三重県伊勢市豊川町279

豊受大神宮(伊勢神宮 外宮)の御祭神: 豊受大御神

豊受大神宮(伊勢神宮 外宮)のご利益: 五穀豊穣・産業守護・開運

伊勢神宮の外宮で、豊受大御神を祀ります。アマテラスの食事を司る神として、雄略天皇の代に丹波から迎えられたと伝わります。

「ウケ」が共通することから、ウケモチと同一視する説があります。ただし記紀の系譜では別の神であり、同一視は後世の解釈です。

伊勢神宮の参拝は、外宮を先に、内宮を後にという順序が古くからの習わしです。

食を司る神であることから、飲食業や農業の関係者の参拝が多い社です。

内宮とは約6キロ離れている。20年ごとの式年遷宮が続く。

周辺の宿をさがす

豊受大神宮(伊勢神宮 外宮)へ参拝するときの、三重県伊勢市の宿を探せます。

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伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)

全国約3万社の稲荷神社の総本宮

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伏見稲荷大社の住所: 京都府京都市伏見区深草薮之内町68

伏見稲荷大社の御祭神: 宇迦之御魂大神ほか

伏見稲荷大社のご利益: 五穀豊穣・商売繁盛・産業興隆

全国の稲荷神社の総本宮です。主祭神は宇迦之御魂大神で、「ウカ」は「ウケ」と同じく食物を意味します。

この語の共通性から、ウケモチと宇迦之御魂神は後世に同一視されました。 各地の稲荷社で「保食神」を祭神とする例があるのはこのためです。

山全体に約一万基の千本鳥居が連なる景観で知られ、外国人観光客に最も人気のある日本の観光地とされます。

もとは稲作の神でしたが、商業の発展とともに商売繁盛の神として広がりました。

山頂まで約2時間の「お山めぐり」ができる。JR稲荷駅からすぐ。

周辺の宿をさがす

伏見稲荷大社へ参拝するときの、京都府京都市の宿を探せます。

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ウケモチが現代に残した痕跡

ウケモチの名は、稲荷信仰と昼夜の別れに残りました。

稲荷神との習合: 食物の神として、のちにウカノミタマ(稲荷神)と重ねられた。全国約3万社の稲荷社はこの系譜。

昼と夜が分かれた理由: ツクヨミがこの神を斬ったことに怒ったアマテラスが、二度と会わないと言った。太陽と月が同時に空にいない理由を説明する物語。

外宮の豊受大神: 伊勢神宮外宮の豊受大神も食物の神で、同系統として語られることがある。

ウケモチのご利益

五穀豊穣・農業守護

死体から五穀が生じたことによる。

養蚕・織物守護

眉から蚕が生じ、養蚕が始まったことによる。

食物守護・飲食業

食物そのものを司る神であることによる。

商売繁盛

稲荷信仰と習合した流れによる。

ウケモチが登場するゲーム・アニメ

ウケモチが登場するゲーム・アニメ

女神転生シリーズ

食物の神として登場します。

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日本神話を題材にした作品

ツクヨミの唯一の事績として、この場面が描かれることがあります。

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ウケモチについてよくある質問

ウケモチは何の神様ですか。

食物の神です。死体から五穀と蚕が生まれ、日本の農業と養蚕の起源とされます。

ウケモチを殺したのは誰ですか。

ツクヨミです。体から食物を出してもてなされたことを汚らわしいと考え、剣で斬り殺しました。

なぜ日と月は分かれたのですか。

ツクヨミがウケモチを殺したことを知ったアマテラスが激怒し、「もう会わない」と告げたためです。以来、日と月は一日一夜を隔てて離れ住むことになりました。

オオゲツヒメと同じ神ですか。

同じ筋の話に登場する神ですが、名も書物も異なります。古事記ではスサノオがオオゲツヒメを斬り、日本書紀ではツクヨミがウケモチを斬ります。担い手と被害者の名が入れ替わっています。

ウケモチを祀る神社はどこですか。

単独で祀る社は多くありません。名の「ウケ」が共通する豊受大神や宇迦之御魂神と同一視され、伊勢神宮外宮や全国の稲荷神社で祀られる形になっています。

ウケモチと併せて覚えたい言葉・用語

一書(あるふみ)

日本書紀が本文とは別に併記する異伝。「一書に曰く」の形で複数載る。

葦原中国(あしはらのなかつくに)

高天原と黄泉の国の間にある地上の世界。のちの日本の国土にあたる。