本文へ移動

日本神話

オモイカネ(思金神)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

思金神  / オモイカネノカミ

大地 天津神

知恵の神。岩屋戸を開かせる計略を立てた。

オモイカネの姿を描いた図

ウィリアム・アストン 「思金神(アストン『神道』挿図)」 / パブリックドメイン 出典

オモイカネとは何の神様か

オモイカネはひとことで言えば知恵の神です。名は「多くの思慮を兼ね備える」を意味し、複数の人が考えたことを一柱で兼ねられる神とされます。

日本神話における役割は一貫しています。困難な場面で、策を立てることです。

天の岩屋戸アマテラスが隠れたとき、八百万の神が集まって諮ったのがこの神でした。鏡を作らせ、勾玉を連ね、鶏を鳴かせ、ウズメに舞わせるという段取りは、すべてオモイカネの発案です。

国譲りの交渉でも、誰を使者に送るかを繰り返し諮問されました。二度失敗したあと、三度目にタケミカヅチを推したのもこの神です。

自分では動かず、考えるだけ。 それでも物語の要所すべてに関わっています。

オモイカネの漢字表記と読み方

読みは「おもいかね」です。「思い」を「兼ねる」、すなわち大勢が考えることを一柱で兼ねられるという意味です。

八意」という称号が付くこともあります。「八」は多いことを表す語で、多くの思慮を持つ神という意味になります。父はタカミムスヒで、生成の力を司る神の子として知恵を担っています。

思金神(おもいかねのかみ)

古事記での表記。

思兼神(おもいかねのかみ)

日本書紀での表記。「兼ねる」の字が意味をよく表す。

八意思兼神(やごころおもいかねのかみ)

戸隠神社などで用いられる称え名。「八意」は多くの思慮を表す。

常世思金神(とこよのおもいかねのかみ)

古事記の天孫降臨の段に見える表記。

オモイカネの物語

  1. 岩屋戸の策 ─ 八百万の神が諮った相手
  2. 段取り ─ すべてを設計する
  3. 国譲りの人選 ─ 二度の失敗を経て
  4. 天孫降臨に随伴 ─ そして戸隠へ

岩屋戸の策 ─ 八百万の神が諮った相手

アマテラスが天の岩屋戸に隠れ、世界が闇に沈んだとき、八百万の神々は天の安河の河原に集まりました。

古事記はこう記します。

高御産巣日神の子、思金神に思わせて──

八百万の神が集まって、まず「この神に考えさせた」のです。日本神話で、思考そのものが役割として明示される唯一の神です。

段取り ─ すべてを設計する

オモイカネが立てた策は、順序立った段取りでした。

1. 常世の長鳴鳥を集めて鳴かせる(夜明けを演出する)
2. 天の金山の鉄でイシコリドメ八咫鏡を作らせる
3. タマノオヤ八尺瓊勾玉を作らせる
4. アメノコヤネフトダマ鹿の骨で占いをさせる
5. 榊に鏡と勾玉と布を掛け、フトダマが捧げ持つ
6. アメノコヤネが祝詞を唱える
7. タヂカラオを戸の脇に隠す
8. アメノウズメが舞う

すべてに役割が割り振られています。 誰が何を作り、誰がどこに立ち、誰が何を言うか。

そしてアマテラスが顔を出した瞬間、タヂカラオが引き出す。最初から最後まで計算されていました。

国譲りの人選 ─ 二度の失敗を経て

アマテラスが地上の統治権を求めたとき、誰を使者に送るかを諮られたのもオモイカネでした。

最初に推したアメノホヒは、オオクニヌシに心服して三年報告しません。次に推したアメノワカヒコは、地上の姫を妻にして八年報告せず、催促の雉を射殺したあげく、その矢が返って死にました。

二度続けて人選を誤っています。

三度目、オモイカネと八百万の神はタケミカヅチを推しました。これが成功します。

知恵の神も間違える。 そして三度目でようやく当てる。日本神話は、知恵の神にすら完璧さを与えていません。

天孫降臨に随伴 ─ そして戸隠へ

天孫降臨の際、オモイカネはニニギに随伴して地上へ降りました。

古事記は「この神は、祭祀のことを取り仕切る神である」と記します。

その後、この神は信濃の戸隠に鎮まったと伝えられます。理由については、タヂカラオが投げ捨てた岩戸が信濃に落ちて戸隠山になったという伝承と結びついています。

岩屋戸の策を立てた神と、岩戸を開けた神が、同じ山に祀られている。 戸隠神社では、オモイカネを中社に、タヂカラオを奥社に祀ります。

オモイカネの家系図と家族

オモイカネの親: タカミムスヒ

オモイカネの性格と人物像

オモイカネは、日本神話でもっとも近代的な役割を持つ神です。

戦いません。呪いません。踊りもしません。考えて、段取りを決め、人に割り振る。 現代でいえば計画立案の担当です。

注目すべきは、この神が間違えることです。国譲りの使者は二度失敗しました。それでも三度目に推した人選で成功します。

完璧な知恵ではなく、試して直す知恵として描かれているわけです。日本神話には全知の神がおらず、知恵を司る神ですら手探りで進みます。

自分では何も実行しないのに、要所すべてに名が出る。設計する者の存在が、これほど早い時代の物語に明示されているのは注目に値します。

オモイカネを祀る神社

オモイカネを祀る社は、信濃(長野県)に集中しています。この神が信濃に降ったという伝承によるものです。

学業成就の祈願先として知られますが、菅原道真を祀る天満宮とは系統が異なります。知恵そのものの神である点が特徴です。

戸隠神社 中社(とがくしじんじゃ ちゅうしゃ)

戸隠五社の中心

地図で開く

戸隠神社 中社の住所: 長野県長野市戸隠3506

戸隠神社 中社の御祭神: 天八意思兼命

戸隠神社 中社のご利益: 学業成就・知恵・仕事運

戸隠神社は奥社・中社・宝光社・九頭龍社・火之御子社の五社からなり、その中心が中社です。オモイカネを祀ります。

戸隠山は、タヂカラオが投げ捨てた岩戸が落ちてできたという伝承を持ちます。岩屋戸の策を立てたオモイカネが中社に、岩戸を開けたタヂカラオが奥社に祀られており、あの場面の主要な神が同じ山に揃っています。

樹齢800年を超える三本杉や、社殿の天井に描かれた龍の絵が知られます。

学業成就の信仰が篤く、受験期には多くの参拝者が訪れます。

奥社の参道は約2キロの杉並木で名高い。五社すべてを巡る参拝が行われている。

周辺の宿をさがす

戸隠神社 中社へ参拝するときの、長野県長野市の宿を探せます。

広告を含みます

阿智神社(あちじんじゃ)

信濃国二之宮

地図で開く

阿智神社の住所: 長野県下伊那郡阿智村智里489

阿智神社の御祭神: 天八意思兼命・天表春命

阿智神社のご利益: 学業成就・知恵・開運

オモイカネとその子を祀る古社です。この神が信濃に降りて開拓を行ったという伝承が残り、地名の「阿智」も関わるとされます。

周辺は日本一の星空として知られる地域で、環境省の調査で星の観察に適した場所に選ばれたことがあります。

本社と奥宮があり、奥宮は山中に鎮座します。

昼神温泉から近い。夜の星空観察とあわせて訪れる人が多い。

周辺の宿をさがす

阿智神社へ参拝するときの、長野県下伊那郡阿智村の宿を探せます。

広告を含みます

オモイカネが現代に残した痕跡

オモイカネの名は、知恵の神としての信仰に残りました。

「思ひ兼ね」: 多くの人の思慮を一身に兼ね備えるという意味。合議で決める日本神話の性格を体現する神。

戸隠神社: 長野県長野市。天岩戸を投げ飛ばした戸が落ちた地とされ、この神も祀られる。

学業成就の信仰: 知恵の神として、受験の祈願に訪れる人がある。菅原道真の天神信仰とは別系統。

オモイカネのご利益

学業成就・合格祈願

知恵の神であることによる。受験生の参拝が多い。

知恵・思慮

多くの思慮を兼ね備える神とされることによる。

仕事運・企画成就

段取りを立てて成功に導いた故事による。

開運・厄除け

闇を晴らす策を立てた故事による。

オモイカネが登場するゲーム・アニメ

オモイカネが登場するゲーム

女神転生シリーズ

知恵の神として登場します。

Amazonでゲームを探す

東方Project

「八意」の名を持つ登場人物があり、この神を知るきっかけになっている例があります。

Amazonで探す

オモイカネが登場するアニメ・漫画

天岩戸を扱った作品

策を立てる役として登場します。目立ちませんが、この神がいなければ物語が動きません。

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

オモイカネについてよくある質問

オモイカネは何の神様ですか。

知恵の神です。天の岩屋戸を開かせる策を立て、国譲りの使者を人選しました。

オモイカネの名前の意味は。

「多くの思慮を兼ね備える」という意味です。大勢が考えることを一柱で兼ねられる神とされます。

オモイカネは間違えたことがありますか。

あります。国譲りの使者としてアメノホヒとアメノワカヒコを推しましたが、いずれも失敗しました。三度目にタケミカヅチを推して成功しています。

なぜ戸隠に祀られているのですか。

タヂカラオが投げ捨てた岩戸が信濃に落ちて戸隠山になったという伝承によります。策を立てた神と岩戸を開けた神が、同じ山に祀られています。

オモイカネを祀る神社はどこですか。

長野市の戸隠神社中社が代表です。長野県阿智村の阿智神社にも祀られています。

オモイカネと併せて覚えたい言葉・用語

天の岩屋戸(あまのいわやと)

アマテラスが閉じこもった岩の洞窟。太陽が隠れて世界が闇になった。

国譲り(くにゆずり)

オオクニヌシが葦原中国の統治権を天津神に明け渡した出来事。

天孫降臨(てんそんこうりん)

アマテラスの孫ニニギが高天原から地上へ降りたこと。