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日本神話

タヂカラオ(天手力男神)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

天手力男神  / アメノタヂカラオノカミ

天津神

腕力の神。岩屋戸を開き、アマテラスを引き出した。

タヂカラオの姿を描いた図

春斎年昌 「天手力男神(春の岩戸開き)」 1889年 / パブリックドメイン 出典

タヂカラオとは何の神様か

タヂカラオはひとことで言えば力の神です。名は「手の力の強い男」をそのまま表しています。

役割は一点に集約されます。天の岩屋戸を開け、アマテラスを引き出したことです。戸の脇に隠れて待ち、アマテラスが顔を出した瞬間に手を取って引き出しました。

そして投げ捨てた岩戸は遠く飛んで、信濃の戸隠山になったと伝わります。地名がそのまま神話の証になっている例です。

天孫降臨にも随伴し、伊勢に鎮まったとされます。現在はスポーツ・力の神として、競技者の信仰を集めています。

タヂカラオの漢字表記と読み方

読みは「あめのたぢからお」です。「タヂカラ」は手の力、「」は男を表します。名前がそのまま能力を示している、日本神話でもっとも分かりやすい名です。

「手力」と書いて「たぢから」と読むのは古い読み方で、手に宿る力を意味します。

天手力男神(あめのたぢからおのかみ)

古事記での表記。

天手力雄神(あめのたぢからおのかみ)

日本書紀および多くの神社での表記。

手力雄命(たぢからおのみこと)

「天」を省いた形。各地の社で用いられる。

タヂカラオの物語

  1. 戸の脇で待つ ─ 隠れて機を待った神
  2. 引き出す ─ 一瞬の仕事
  3. 岩戸を投げる ─ 戸隠山になる
  4. 天孫降臨から伊勢へ

戸の脇で待つ ─ 隠れて機を待った神

アマテラスが天の岩屋戸に隠れ、世界が闇に沈んだとき、知恵の神オモイカネが策を立てました。

その段取りのなかで、タヂカラオに与えられた役割は明確です。

天手力男神を、戸の脇に隠し立たせて──

鏡を作る者、祝詞を唱える者、舞う者。それぞれが役目を果たすなか、この神だけは隠れて待ちます。

出番は一瞬しかありません。アマテラスが戸を開けた、その瞬間だけです。

引き出す ─ 一瞬の仕事

ウズメの舞に神々が沸き、不審に思ったアマテラスが戸を細く開けました。

差し出された鏡に映る自分の姿を、別の貴い神だと思ったアマテラスが、もっとよく見ようと身を乗り出します。

その瞬間──

天手力男神がその御手を取って引き出した。

直後、フトダマが背後に注連縄を張り「これより内へは戻れません」と告げました。

光が戻ります。

この神の記述は、これでほぼ全部です。一度きり、一瞬の仕事でした。

岩戸を投げる ─ 戸隠山になる

引き出したあと、タヂカラオは岩戸を投げ捨てたと伝えられます。

この岩戸が遠く飛んで落ちた場所が、信濃の戸隠山になったとされます。山の名がそのまま「戸を隠す」であり、伝承と地名が一致しています。

この伝承により、戸隠神社の奥社にタヂカラオが祀られました。策を立てたオモイカネは中社です。

岩屋戸の場面の中心人物が、同じ山に揃って祀られているという構図になっています。

なお、この投擲の記述は記紀の本文にはなく、後世に付け加わった伝承です。

天孫降臨から伊勢へ

タヂカラオは天孫降臨にも随伴しました。

古事記は「佐那那県に鎮座する」と記します。三重県多気郡の佐那神社がその地とされ、現在もこの神を祀っています。

また伊勢神宮の内宮には、手力男神を祀る相殿があります。アマテラスと同じ社殿に祀られているのは、岩屋戸で直接その手を取ったという関係によるものです。

太陽神に触れた唯一の神という位置づけが、この扱いに表れています。

タヂカラオの家系図と家族

タヂカラオの性格と人物像

タヂカラオは、待つことができる神です。

岩屋戸の場面で、他の神々は目に見える役割を果たしています。鏡を作り、祝詞を唱え、舞い、笑う。この神だけは何もせず、戸の脇で隠れています。

出番は一瞬でした。アマテラスが顔を出した、その瞬間だけ。早くても遅くても失敗します。

力の神でありながら、戦った記録はありません。誰かと力比べもしていません。ただ一度、正しい瞬間に手を伸ばした。 それだけで日本神話に名を残しています。

名前が能力そのものであり、行動が一つしかない。もっとも単純で、もっとも決定的な神です。

タヂカラオを祀る神社

タヂカラオを祀る社は、戸隠(長野)と佐那(三重)の二系統に分かれます。前者は岩戸の伝承地、後者は記紀が記す鎮座地です。

また伊勢神宮内宮の相殿にも祀られており、アマテラスと同じ社殿に鎮まる数少ない神のひとつです。

戸隠神社 奥社(とがくしじんじゃ おくしゃ)

戸隠五社の最奥/戸隠山の伝承

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戸隠神社 奥社の住所: 長野県長野市戸隠3690

戸隠神社 奥社の御祭神: 天手力雄命

戸隠神社 奥社のご利益: スポーツ上達・開運・必勝

投げ捨てた岩戸が落ちてできたとされる戸隠山に鎮座します。五社のなかで最も奥にあり、標高も最も高い場所です。

参道は約2キロメートル。中ほどの随神門から先は、樹齢400年を超える杉並木が続きます。この参道の景観は戸隠を代表する光景として広く知られています。

社殿は岩壁を背にして建ち、断崖の直下という厳しい立地です。冬季は積雪で参拝できません。

スポーツ選手の参拝が多い社としても知られます。

奥社まで徒歩約40分。冬季は閉鎖される。中社・宝光社とあわせて巡る参拝が一般的。

周辺の宿をさがす

戸隠神社 奥社へ参拝するときの、長野県長野市の宿を探せます。

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佐那神社(さなじんじゃ)

古事記が記す鎮座地

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佐那神社の住所: 三重県多気郡多気町仁田156

佐那神社の御祭神: 天手力男命・曙立王命

佐那神社のご利益: 開運・厄除け・スポーツ上達

古事記が「佐那那県に鎮座する」と記した、その地とされる社です。記紀に鎮座地が明記されている数少ない例にあたります。

延喜式にも名が見える古社で、静かな里に鎮まっています。

伊勢神宮からもほど近く、内宮の相殿にもこの神が祀られています。アマテラスと同じ社殿に祀られるのは、岩屋戸で直接その手を取ったという関係によります。

近鉄佐奈駅から徒歩圏。訪れる人が少なく静かに参拝できる。

周辺の宿をさがす

佐那神社へ参拝するときの、三重県多気郡多気町の宿を探せます。

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タヂカラオが現代に残した痕跡

タヂカラオの名は、力比べの信仰に残りました。

戸隠山: 投げ飛ばした岩戸が落ちて山になったという伝承から、長野県の戸隠山の名が生まれたとされる。

力士・力の神: 怪力の神として、力士や運送業から信仰される。

佐那神社: 三重県多気町。この神を祀る古社。

タヂカラオのご利益

スポーツ上達・必勝

力の神であることから、競技者の信仰を集める。

開運・厄除け

閉ざされた戸を開けた故事から、道を開く力があるとされる。

技芸上達

正確な一瞬の働きから、技を磨く者の信仰を集める。

五穀豊穣

太陽を取り戻した功績によるもの。

タヂカラオが登場するゲーム・アニメ

タヂカラオが登場するゲーム

女神転生シリーズ

力の神として登場します。

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モンスターストライク

日本神話シリーズの一柱として実装されています。

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タヂカラオが登場するアニメ・漫画

天岩戸を扱った作品

クライマックスで岩戸を開ける役として、必ず登場します。

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タヂカラオについてよくある質問

タヂカラオは何の神様ですか。

力の神です。天の岩屋戸を開け、アマテラスを引き出しました。現在はスポーツの神としても信仰されています。

戸隠山とタヂカラオの関係は。

投げ捨てた岩戸が信濃に落ちて戸隠山になったという伝承があります。ただしこの投擲の記述は記紀の本文にはなく、後世の伝承です。

なぜ伊勢神宮の相殿に祀られているのですか。

岩屋戸でアマテラスの手を直接取って引き出したという関係によります。太陽神に触れた唯一の神という位置づけです。

タヂカラオを祀る神社はどこですか。

長野市の戸隠神社奥社、三重県多気町の佐那神社が代表です。伊勢神宮内宮の相殿にも祀られています。

タヂカラオと併せて覚えたい言葉・用語

天の岩屋戸(あまのいわやと)

アマテラスが閉じこもった岩の洞窟。太陽が隠れて世界が闇になった。

天孫降臨(てんそんこうりん)

アマテラスの孫ニニギが高天原から地上へ降りたこと。