アマテラスの孫。稲穂を携えて地上へ降りる。

「神々と歴代天皇図」 / パブリックドメイン 出典
ニニギとは何の神様か
ニニギはひとことで言えば稲の神です。名の「ニニギ」は稲穂がにぎにぎしく実る様子を表すとされ、正式名の「天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命」も豊かな実りを讃える言葉が連なっています。
そして日本神話における役割は天孫、つまりアマテラスの孫として地上へ降りることです。この出来事を天孫降臨?といい、日本神話の折り返し点にあたります。
ニニギが降りたことで、神々の物語は天上から地上へ移ります。そして彼の曾孫が初代天皇となるため、神代と人代をつなぐ位置に立つ神でもあります。
もうひとつ重要なのが、人に寿命が生まれた理由がこの神の選択に求められる点です。美しい姉妹のうち一方を返したことで、天孫の子孫は永遠の命を失いました。
ニニギの漢字表記と読み方
読みは「ににぎのみこと」です。正式名は極めて長く、古事記では二十文字を超えます。名前そのものが豊かな実りを祈る言葉になっているのが特徴で、稲作を担う神であることが名から読み取れます。
邇邇芸命(ににぎのみこと)
古事記での表記。稲穂が賑わしく実る意とされる。
瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)
日本書紀での表記。神社の由緒書ではこちらが多い。
天津彦彦火瓊瓊杵尊(あまつひこひこほのににぎのみこと)
日本書紀に見える長い正式名。
天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命(あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)
古事記が記す正式名。天も国も賑わい栄えるという意味の言葉が連なる。
ニニギの物語
- 誕生 ─ 父が降臨を辞退したため役目が回る
- 天孫降臨 ─ 三種の神器を携えて高千穂へ
- サルタヒコとの遭遇 ─ 道を塞ぐ異形の神
- コノハナサクヤヒメとの出会い
- イワナガヒメを返す ─ 人に寿命が生まれる
- 疑いと、燃える産屋
- その後 ─ 曾孫が初代天皇となる
誕生 ─ 父が降臨を辞退したため役目が回る
ニニギは、アマテラスの子オシホミミの子として生まれました。つまりアマテラスの孫にあたります。
国譲り?が成立したとき、アマテラスは息子オシホミミに「地上へ降りて治めよ」と命じました。ところがオシホミミは天の浮橋から下を覗いて「ひどく騒がしい」と言い、引き返してしまいます。
二度目に命じられたとき、オシホミミはこう願い出ました。
ちょうど子が生まれました。この子を降ろしてください。
こうして役目はニニギに移ります。本人が望んだわけではなく、父が辞退した結果でした。
天孫降臨 ─ 三種の神器を携えて高千穂へ
サルタヒコとの遭遇 ─ 道を塞ぐ異形の神
降臨の途中、道が塞がれました。
天の八衢に、上は高天原?を、下は葦原中国?を照らす神が立っていたのです。鼻の長さは七咫、背丈は七尺あまり、目は八咫鏡のように赤く輝いていたと描かれます。
その威容に神々は誰も近づけません。そこでアマテラスはアメノウズメを呼び、こう命じました。「おまえは女だが、相手に負けない神だ。行って素性を問いただしなさい」
ウズメが進み出て名を問うと、その神は答えます。
私はサルタヒコ。天孫が降ると聞いて、先導するために待っていた。
こうしてニニギ一行は無事に地上へ降りることができました。敵ではなく案内役だったという展開です。
コノハナサクヤヒメとの出会い
イワナガヒメを返す ─ 人に寿命が生まれる
ニニギは姉イワナガヒメを見て、容姿が良くないという理由で父のもとへ送り返してしまいます。妹のコノハナサクヤヒメだけを留めました。
これを知ったオオヤマツミは、深く恥じてこう告げます。
私が二人揃えて差し上げたのには理由があります。イワナガヒメを召せば、天孫の命は岩のように揺るがぬものとなり、コノハナサクヤヒメを召せば、木の花のように栄えるはずでした。今、姉を返して妹だけを留めたので、天孫の御命は木の花のように儚いものとなるでしょう。
これによって歴代の天皇は、永遠の命ではなく限りある寿命を持つことになりました。
美と永遠のどちらを選ぶかという場面が、そのまま人の寿命の起源として語られています。日本神話のなかでも屈指の重い一節です。
疑いと、燃える産屋
ニニギの家系図と家族
ニニギの妻・夫: コノハナサクヤヒメ
ニニギの性格と人物像
ニニギは、日本神話の主要な神のなかでもっとも人間的な弱さを見せる神です。
自ら望んで地上へ降りたわけではありません。父が辞退したために役目が回ってきました。降臨の道が塞がれれば近づけず、代わりにアメノウズメが交渉に立ちます。
決定的なのは姉妹の場面です。容姿を理由に姉を送り返すという選択をし、その結果として子孫が永遠の命を失いました。さらに妻が一夜で身ごもると不貞を疑い、姫に火中で出産させることになります。
英雄的な行いはほとんどありません。それでもこの神は日本神話の中心に置かれています。天孫という立場そのものが役割であり、個人の資質は問われていないという構図が、ここには表れています。
ニニギを祀る神社
ニニギを祀る社は南九州に集中しています。 天孫降臨の地とされる高千穂、そして陵墓の伝承地がいずれも鹿児島・宮崎にあるためです。
関東では箱根神社が代表で、こちらは親子三代をまとめて祀る形をとっています。
霧島神宮(きりしまじんぐう)
天孫降臨の伝承地
天孫降臨の地とされる高千穂峰のふもとに鎮座します。もとは山頂近くにありましたが、霧島山の噴火で何度も焼失し、現在地へ移りました。
現在の社殿は正徳5年(1715年)に島津氏が寄進したもので、朱塗りの豪壮な造りから「西の日光」とも呼ばれます。国宝に指定されています。
高千穂峰の頂上には天逆鉾と呼ばれる鉾が突き立っており、天孫降臨の際に突き立てられたものと伝わります。坂本龍馬が新婚旅行でこの鉾を引き抜いた逸話が知られています。
社殿は国宝。高千穂峰への登山口としても知られる。
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新田神社(にったじんじゃ)
薩摩国一宮/ニニギの陵墓伝承地
ニニギが葬られた可愛の山陵の伝承地とされる社です。神亀山という小高い丘の上に鎮座し、社殿の背後に陵墓とされる場所があります。
宮内庁が管理する「可愛山陵」がここにあたり、神話の人物の陵墓として正式に治定されている数少ない例です。
参道は「降来(ふりくる)橋」から始まり、長い石段を上って社殿に至ります。
天孫降臨の地とされる高千穂と、ニニギの終焉の地が、いずれも南九州にある。
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箱根神社(はこねじんじゃ)
関東を代表する箱根権現
ニニギとその妻コノハナサクヤヒメ、そして子のホオリという親子三代を並べて祀る社です。三柱をあわせて箱根大神と称します。
奈良時代の創建と伝わり、源頼朝をはじめ多くの武将が篤く信仰しました。関東における開運と勝負の神として広く知られます。
芦ノ湖に立つ平和の鳥居は湖上に浮かぶ姿で知られ、箱根を代表する景観になっています。
境内の九頭龍神社は縁結びで名高い。関東で「ニニギを祀る社」といえばまずここ。
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ニニギが現代に残した痕跡
ニニギの名は、三種の神器と天皇の系譜に残りました。
三種の神器: 降臨に際して八咫鏡・八尺瓊勾玉・天叢雲剣を授かった。いまも皇位の証とされる。
天孫降臨の地: 宮崎県高千穂と鹿児島県霧島に候補地があり、確定していない。
寿命の起源: イワナガヒメを返したため、天皇の寿命が木の花のように短くなったとされる。
新嘗祭: 稲穂を授かって降りた神として、収穫を感謝する新嘗祭と結びつけて語られる。
ニニギのご利益
五穀豊穣・農業守護
稲穂の実りを名に持ち、稲作を地上にもたらした神とされることによる。
国家安泰
天孫として地上の統治を委ねられた神であることによる。
開運・繁栄
「賑わい栄える」という名の意味に由来する。
家内安全・夫婦円満
コノハナサクヤヒメとの婚姻譚による。
ニニギが登場するゲーム・アニメ
ニニギはスサノオやアマテラスに比べると作品での露出は多くありません。物語上の役割が大きい一方、キャラクターとしての個性が薄いためと考えられます。
ニニギが登場するアニメ・漫画
天孫降臨を扱った各種作品
日本神話を題材にした作品では、神代から人代への転換点として繰り返し描かれます。
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ニニギについてよくある質問
ニニギは何の神様ですか。
稲穂の実りを司る神であり、アマテラスの孫として地上を治めるために降りた天孫です。
天孫降臨とは何ですか。
アマテラスの孫ニニギが三種の神器と五柱の伴神を伴い、高天原から日向の高千穂峰へ降りた出来事です。神々の物語が天上から地上へ移る転換点にあたります。
なぜ人には寿命があるのですか。
ニニギがイワナガヒメを容姿を理由に送り返し、コノハナサクヤヒメだけを妻としたためです。父オオヤマツミは「天孫の命は木の花のように儚いものとなる」と告げました。
ニニギと神武天皇の関係は。
ニニギの曾孫が神武天皇です。ニニギ、ホオリ、ウガヤフキアエズ、そして神武という三代を経て人代に移ります。
ニニギを祀る神社はどこですか。
鹿児島の霧島神宮と新田神社、神奈川の箱根神社が代表です。
ニニギと併せて覚えたい言葉・用語
天孫降臨(てんそんこうりん)
アマテラスの孫ニニギが高天原から地上へ降りたこと。
国譲り(くにゆずり)
オオクニヌシが葦原中国の統治権を天津神に明け渡した出来事。
三種の神器(さんしゅのじんぎ)
八咫鏡・草薙剣・八尺瓊勾玉の三つ。天孫降臨の際にニニギへ授けられた。
草薙剣(くさなぎのつるぎ)
ヤマタノオロチの尾から出た剣。三種の神器のひとつ。天叢雲剣ともいう。
葦原中国(あしはらのなかつくに)
高天原と黄泉の国の間にある地上の世界。のちの日本の国土にあたる。
高天原(たかまがはら)
天上にある神々の国。アマテラスが治める。
国津神(くにつかみ)
もともと地上にいた神々。出雲の神々が代表。
天津神(あまつかみ)
高天原に生まれた、あるいは高天原から降りてきた神々。