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日本神話

アメノホヒ(天菩比神)とは何の神様か|家系図・物語

天菩比神  / アメノホヒノカミ

大地 天津神

国譲りの最初の使者。三年たっても復命しなかった。

アメノホヒとは何の神様か

アメノホヒはひとことで言えば裏切った使者です。

アマテラススサノオ誓約で生まれた五男神の一柱で、アメノオシホミミの弟にあたります。

葦原中国を平定するため最初の使者として降されましたが、オオクニヌシに媚びへつらい、三年たっても復命しなかったと古事記は記します。それでいて出雲国造の祖とされます。

アメノホヒの漢字表記と読み方

読みは「あめのほひ」です。「ホ」は穂を指すとする説があります。稲穂です。

日本書紀が「天穂日」という字を当てていることが、その根拠です。稲の神としての性格を持つと解釈されます。

もうひとつ、「火」とする説もあります。誓約の場面で生まれた五男神には、火に関わる名が並びます。

天菩比神(あめのほひのかみ)

古事記での表記。

天穂日命(あめのほひのみこと)

日本書紀での表記。「穂」の字が当てられる。

アメノホヒの物語

  1. 誓約で生まれる
  2. 最初の使者として降される
  3. 出雲国造の祖となる
  4. アメノホヒは裏切り者なのか
  5. 出雲国造の祖とされる理由
  6. アメノホヒとニギハヤヒの違い

誓約で生まれる

スサノオが高天原に上ったとき、アマテラスは弟の心を疑いました。

互いの持ち物を噛み砕いて神を生むという誓約が行われます。スサノオがアマテラスの勾玉を噛んで吐いた息から、五柱の男神が生まれました。

アメノオシホミミ → アメノホヒアマツヒコネイクツヒコネクマノクスビ

アメノホヒは二番目にあたります。長兄のアメノオシホミミはニニギの父です。

最初の使者として降される

葦原中国を平定するため、高天原は使者を選びました。

最初に選ばれたのがアメノホヒです。ところが降ってすぐ、オオクニヌシに媚びへつらいました

三年に至るまで、復奏さざりき。

三年たっても報告しない。任務を放棄したわけです。

次に遣わされたアメノワカヒコも同様に戻らず、二度の失敗を経て、ようやくタケミカヅチが降ることになります。

出雲国造の祖となる

ところがこの神は、出雲国造の祖とされます。

国譲りののち、出雲大社に仕える一族の始まりとなりました。千家(せんげ)氏が現代までその系統を伝えています。

裏切ったはずの神が、出雲の祭祀を継いだ。

この矛盾は、出雲側の伝承と大和側の伝承が混ざった結果と解釈されます。大和から見れば裏切り者ですが、出雲から見ればこの地に留まって祀り続けた神です。

アメノホヒは裏切り者なのか

古事記・日本書紀の本書では、葦原中国へ最初の使者として遣わされ、大国主に媚びて三年復命しなかったと描かれます。この筋だけ見れば任務を果たさない使者です。

一方、日本書紀の一書では国譲り後に大己貴神を祀る祭祀者として指名されます。背信者の物語と祭祀者の系譜は異なる伝承層であり、後世に汚名を晴らしたと一本の物語に作り替えません。

出雲国造の祖とされる理由

アメノホヒは出雲国造・土師氏など複数氏族の祖神とされます。国譲りの相手であるオオクニヌシを祀る者に、天上から派遣された神の子孫を位置づける構造です。

出雲国造が新任時に奏上した神賀詞にも系譜が関わります。三年復命しなかった話だけでは、この神の歴史的な重要性を説明できません。

アメノホヒとニギハヤヒの違い

名前の響きが似て検索されますが、別の神です。アメノホヒは誓約で生まれたアマテラスの御子で、国譲りの使者・出雲国造の祖として現れます。ニギハヤヒは天磐船で降り、物部氏の祖とされる神です。

また、菅原道真は土師氏の系譜につながるため遠い祖神として関連づけられますが、アメノホヒ本人と同一ではありません。

アメノホヒの家系図と家族

アメノホヒの親: アマテラス誓約で成るスサノオ玉から成る

アメノホヒのきょうだい: オシホミミ五男神アマツヒコネ五男神

アメノホヒの子・子孫: イサガタケヒラトリ

アメノホヒの性格と人物像

アメノホヒは、立場によって評価が反転する神です。

古事記は「媚びて三年戻らなかった」と記します。しかし出雲では祭祀を継いだ祖神です。

同じ行動が、裏切りとも定住とも読める。記紀が大和の側から書かれた書物であることを、この神の扱いがよく示しています。

アメノホヒを祀る神社

美保神社の祭神は三穂津姫命と事代主神で、天之菩卑能命本人ではありません。出雲との関係だけを根拠に代表社として載せないため、従来の神社カードを外しました。

アメノホヒが現代に残した痕跡

アメノホヒの名は、家系に残りました

出雲国造家(千家氏): アメノホヒを祖とし、出雲大社の祭祀を現代まで伝える。

アメノホヒのご利益

五穀豊穣

「穂」の字が当てられ、稲の神とされることによる。

産業繁栄

出雲国造の祖として、土地を治める神とされることによる。

アメノホヒについてよくある質問

アメノホヒとはどんな神様ですか。

アマテラスとスサノオの誓約で生まれた五男神の一柱です。国譲りの最初の使者として降されましたが、三年たっても復命しなかったと古事記は記します。

なぜ裏切ったのに出雲の祖なのですか。

出雲側と大和側の伝承が混ざった結果と解釈されます。大和から見れば裏切りですが、出雲から見ればこの地に留まって祀り続けた神です。

出雲国造とは何ですか。

出雲大社の祭祀を司る家柄です。アメノホヒを祖とし、千家氏が現代までその系統を伝えています。

アメノホヒとニギハヤヒは同じ神ですか。

別の神です。アメノホヒは国譲りの使者・出雲国造の祖、ニギハヤヒは天磐船で降った物部氏の祖として語られます。

アメノホヒと菅原道真の関係は。

菅原氏の前身である土師氏がアメノホヒの後裔とされるため、系譜上の遠い祖神にあたります。同一人物ではありません。

アメノホヒと併せて覚えたい言葉・用語

誓約(うけい)

神意を問うための占い。あらかじめ結果の意味を決めておき、どちらが起きるかで是非を判断する。

葦原中国(あしはらのなかつくに)

高天原と黄泉の国の間にある地上の世界。のちの日本の国土にあたる。

高天原(たかまがはら)

天上にある神々の国。アマテラスが治める。

国譲り(くにゆずり)

オオクニヌシが葦原中国の統治権を天津神に明け渡した出来事。

一書(あるふみ)

日本書紀が本文とは別に併記する異伝。「一書に曰く」の形で複数載る。

カー(kꜣ/生命力)

人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。