国譲りの最初の使者。三年たっても復命しなかった。
アメノホヒとは何の神様か
アメノホヒの漢字表記と読み方
読みは「あめのほひ」です。「ホ」は穂を指すとする説があります。稲穂です。
日本書紀が「天穂日」という字を当てていることが、その根拠です。稲の神としての性格を持つと解釈されます。
もうひとつ、「火」とする説もあります。誓約の場面で生まれた五男神には、火に関わる名が並びます。
天菩比神(あめのほひのかみ)
古事記での表記。
天穂日命(あめのほひのみこと)
日本書紀での表記。「穂」の字が当てられる。
アメノホヒの物語
誓約で生まれる
最初の使者として降される
出雲国造の祖となる
ところがこの神は、出雲国造の祖とされます。
国譲り?ののち、出雲大社に仕える一族の始まりとなりました。千家(せんげ)氏が現代までその系統を伝えています。
裏切ったはずの神が、出雲の祭祀を継いだ。
この矛盾は、出雲側の伝承と大和側の伝承が混ざった結果と解釈されます。大和から見れば裏切り者ですが、出雲から見ればこの地に留まって祀り続けた神です。
アメノホヒは裏切り者なのか
古事記・日本書紀の本書では、葦原中国へ最初の使者として遣わされ、大国主に媚びて三年復命しなかったと描かれます。この筋だけ見れば任務を果たさない使者です。
一方、日本書紀の一書?では国譲り後に大己貴神を祀る祭祀者として指名されます。背信者の物語と祭祀者の系譜は異なる伝承層であり、後世に汚名を晴らしたと一本の物語に作り替えません。
出雲国造の祖とされる理由
アメノホヒは出雲国造・土師氏など複数氏族の祖神とされます。国譲りの相手であるオオクニヌシを祀る者に、天上から派遣された神の子孫を位置づける構造です。
出雲国造が新任時に奏上した神賀詞にも系譜が関わります。三年復命しなかった話だけでは、この神の歴史的な重要性を説明できません。
アメノホヒの家系図と家族
アメノホヒの性格と人物像
アメノホヒは、立場によって評価が反転する神です。
古事記は「媚びて三年戻らなかった」と記します。しかし出雲では祭祀を継いだ祖神です。
同じ行動が、裏切りとも定住とも読める。記紀が大和の側から書かれた書物であることを、この神の扱いがよく示しています。
アメノホヒを祀る神社
美保神社の祭神は三穂津姫命と事代主神で、天之菩卑能命本人ではありません。出雲との関係だけを根拠に代表社として載せないため、従来の神社カー?ドを外しました。
アメノホヒが現代に残した痕跡
アメノホヒの名は、家系に残りました。
出雲国造家(千家氏): アメノホヒを祖とし、出雲大社の祭祀を現代まで伝える。
アメノホヒのご利益
五穀豊穣
「穂」の字が当てられ、稲の神とされることによる。
産業繁栄
出雲国造の祖として、土地を治める神とされることによる。
アメノホヒについてよくある質問
アメノホヒとはどんな神様ですか。
アマテラスとスサノオの誓約で生まれた五男神の一柱です。国譲りの最初の使者として降されましたが、三年たっても復命しなかったと古事記は記します。
なぜ裏切ったのに出雲の祖なのですか。
出雲側と大和側の伝承が混ざった結果と解釈されます。大和から見れば裏切りですが、出雲から見ればこの地に留まって祀り続けた神です。
出雲国造とは何ですか。
出雲大社の祭祀を司る家柄です。アメノホヒを祖とし、千家氏が現代までその系統を伝えています。
アメノホヒとニギハヤヒは同じ神ですか。
別の神です。アメノホヒは国譲りの使者・出雲国造の祖、ニギハヤヒは天磐船で降った物部氏の祖として語られます。
アメノホヒと菅原道真の関係は。
菅原氏の前身である土師氏がアメノホヒの後裔とされるため、系譜上の遠い祖神にあたります。同一人物ではありません。
アメノホヒと併せて覚えたい言葉・用語
誓約(うけい)
神意を問うための占い。あらかじめ結果の意味を決めておき、どちらが起きるかで是非を判断する。
葦原中国(あしはらのなかつくに)
高天原と黄泉の国の間にある地上の世界。のちの日本の国土にあたる。
高天原(たかまがはら)
天上にある神々の国。アマテラスが治める。
国譲り(くにゆずり)
オオクニヌシが葦原中国の統治権を天津神に明け渡した出来事。
一書(あるふみ)
日本書紀が本文とは別に併記する異伝。「一書に曰く」の形で複数載る。
カー(kꜣ/生命力)
人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。