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エジプト神話

メジェドとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

mḏd  / メジェド

冥界 守護と冥界の神

布をかぶり目だけを出した姿。日本でだけ突出して有名になった神。

メジェドの姿を描いた図

「メジェド(ボドマー・パピルス)」 / パブリックドメイン 出典

メジェドとは何の神様か

メジェドはひとことで言えば一行しか記録がない神です。

姿を見れば、なぜ話題になったか分かります。

全身を白い布で覆い、目だけを二つ出している。
布の下から、足が二本だけ突き出ている。

手も、顔も、体つきも描かれていません。

原典は『死者の書』第17章。記述はごくわずかです。

「目から光を放ち、歩き回る者」

これだけです。

物語がない。神殿がない。祭りの記録もない。

それでも、日本では2012年の大英博物館展をきっかけに一気に知られました。

「ゆるキャラみたいなエジプトの神がいる」

とSNSで広まり、ゲームやグッズに登場します。

エジプト本国では、ほとんど知られていません。

メジェドのヒエログリフの表記と読み方

エジプト語では mḏd。意味は、

「打ち倒す者」「打ちすえる者」。

見た目とかけ離れた、物騒な名前です。

日本語ではメジェド、メジェト、そしてメジェド様と表記されます。

「様」を付けて呼ぶのは、日本だけの習慣

です。

注意すべき点があります。

この神について確実に分かっているのは、名前と、一行の記述と、一枚の図像だけ。

インターネット上には「メジェドの能力」「メジェドの性格」といった説明が多くありますが、

原典にその根拠はありません。

本ページでは、確認できる範囲だけを書きます。

mḏd(メジェド)

ヒエログリフの転写。「打ち倒す者」「打ちすえる者」を意味する動詞に由来する。

メジェド様(メジェドさま)

日本での通称。SNSやゲームでこの形で呼ばれることが多い。

Medjed(メジェド)

英語表記。近年は日本での人気を受けて英語圏の記事も増えている。

メジェドの物語

  1. 一行だけの記述 ─ 死者の書 第17章
  2. グリーンフィールド・パピルス ─ 唯一の図像
  3. 日本で有名になる ─ 2012年の展覧会
  4. なぜ日本でだけ受けたのか ─ 受容の偏り

一行だけの記述 ─ 死者の書 第17章

メジェドが現れるのは、『死者の書』第17章のごく一部です。

第17章は、死者が冥界で唱える長大な呪文で、多くの神の名が列挙されます。そのなかに、

「メジェドという名の者。目から光を放ち、歩き回る」

という趣旨の一節があります。

記述はこれで終わりです。

何をする神なのか、書かれていません。

第17章の文脈から、

オシリスの領域にいる存在

であることは読み取れます。冥界で死者に関わる何らかの役目を持つ、という程度です。

研究者のあいだでも、

「機能が特定できない神」

として扱われてきました。エジプト神話事典で項目が立たないことも珍しくありません。

グリーンフィールド・パピルス ─ 唯一の図像

メジェドの姿が描かれているのは、

『グリーンフィールド・パピルス』

と呼ばれる一巻です。

紀元前950年頃アメン大司祭の娘ネシタネベトイシェルのために作られた死者の書で、

全長37メートル超。現存する死者の書のなかで最長。

大英博物館が所蔵しています。

この長大な巻物のなかに、

布をかぶり、目だけを出した小さな姿

が描かれています。

重要なのは、

この一点しか、確実な図像がないこと。

他の死者の書に同じ姿は見つかっていません。たった一枚の絵が、現在の知名度のすべての出発点です。

日本で有名になる ─ 2012年の展覧会

転機は2012年でした。

森アーツセンターギャラリーほかで開かれた「大英博物館 古代エジプト展」

で、グリーンフィールド・パピルスが日本で公開されます。

展示の目玉は当然、心臓の計量壮麗な神々の行列でした。

しかし、来場者が反応したのは別の箇所です。

布をかぶった、目だけの小さい奴。

写真がSNSで広まり、

「メジェド様」

という呼び名とともに一気に拡散しました。

その後、

ゲームのキャラクター、ぬいぐるみ、文具、ガチャガチャ。

次々と商品化されます。

現在の日本では、ラーやオシリスに次ぐ知名度を持つエジプトの神といえます。

なぜ日本でだけ受けたのか ─ 受容の偏り

メジェドの人気は、日本にほぼ限られています。

エジプト本国でも、欧米でも、

一般にはまず知られていません。

理由として、いくつかの点が指摘されます。

姿が、日本の「ゆるキャラ」の文法にきれいに当てはまった。

単純な形、目だけの表情、余白の多さ。キャラクターとして扱いやすい造形です。

さらに、

情報が一行しかない。

これが逆に働きました。設定が固まっていないため、自由に描ける。

原典が空白だから、創作が入り込めた。

他の神ではこうはいきません。アヌビスにもホルスにも、動かせない物語があります。

メジェドには、何もありませんでした。

メジェドの家系図と家族

メジェドの性格と人物像

メジェドには、性格がありません。

原典に、性格を書いた記述が存在しない。

これは正直に書いておくべきことです。

インターネット上では「いたずら好き」「最強」「ラーより強い」といった説明を見かけますが、

すべて創作です。

原典にあるのは、

名前(打ち倒す者)、一行の記述(目から光を放ち歩き回る)、一枚の図像。

これだけです。

それでも、この神には特異な意味があります。

三千年前の名もなき記述が、二十一世紀の日本でキャラクターとして生き返った。

神話の受容が、時代と場所によってどれほど変わるかを、これほど鮮明に示す例はありません。

空白だったからこそ、残った神です。

メジェドを祀った神殿と遺跡

メジェドを祀った場所は、確認されていません。

会えるのは、

大英博物館のパピルス、あるいはその複製図版だけ。

日本でエジプト展が開かれる際、この一節が展示されることがあります。図録に掲載されることも増えました。

大英博物館(グリーンフィールド・パピルス)(Greenfield Papyrus, British Museum)

メジェドが描かれた唯一の確実な図像

地図で開く

大英博物館(グリーンフィールド・パピルス)の住所: イギリス ロンドン グレート・ラッセル・ストリート 大英博物館

大英博物館(グリーンフィールド・パピルス)の祀られた神: メジェド・オシリス・ラー

大英博物館(グリーンフィールド・パピルス)に残るもの: パピルス(紀元前950年頃)

全長37メートル超。現存する死者の書のなかで最長とされます。

アメン大司祭の娘ネシタネベトイシェルのために作られました。

この巻物のなかに、

布をかぶり目だけを出した、小さな姿

が描かれています。

メジェドの確実な図像は、これ一点だけ。

1910年にエディス・グリーンフィールドが寄贈したことから、この名で呼ばれます。

展示は保存の都合で入れ替え制のため、常時見られるとは限りません。

大英博物館の公式サイトで画像が公開されています。

大英博物館は入館無料。パピルスの展示は入れ替わる。

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ロンドンの現地ツアーや入場券を探せます。

広告を含みます

(神殿・祭祀の記録なし)(No known cult site)

神殿・神官・祭りの記録が確認されていない

地図で開く

(神殿・祭祀の記録なし)の住所: エジプト(該当地なし)

(神殿・祭祀の記録なし)の祀られた神: メジェド

(神殿・祭祀の記録なし)に残るもの: (なし)

メジェドには、

神殿も、神官も、祭りの記録もありません。

奉納品も、護符も見つかっていません。

これは、

信仰の対象ではなかった

ことを意味します。『死者の書』の呪文のなかに名が挙がる存在の一つ、という位置づけです。

エジプトには、このような「名前だけ知られている存在」が多数います。

冥界の門の番人、十二の時間の神々、四十二柱の裁きの神々。

多くは名前と役目が一行あるだけです。メジェドもその一つでした。

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メジェドが現代に残した痕跡

メジェドが残したものは、現代日本にあります。

グリーンフィールド・パピルス: 全長37メートル超、現存最長の死者の書。大英博物館蔵。メジェドの確実な図像はこの一点のみ。

2012年「大英博物館 古代エジプト展」: 日本でこのパピルスが公開され、SNSで一気に広まった。現在の知名度の出発点。

「メジェド様」という呼び名: 日本だけの通称。ゲーム、ぬいぐるみ、文具、ガチャガチャなどに商品化されている。

受容の偏りの実例: エジプト本国でも欧米でもほぼ無名。原典が空白だったために創作が入り込めた、珍しい例。

メジェドが司るもの

(原典に記述なし)

司るものについて、確実な記録は残っていない。「目から光を放ち、歩き回る」とのみ記される。

メジェドが登場するゲーム・アニメ

原典に設定がないため、作品ごとに性格がまったく違います。

いたずら好き、無口、最強、マスコット。

どれも創作です。否定する根拠も、肯定する根拠も原典にありません。

本サイトでは、確認できる記述だけを本文に置き、創作由来の設定は書いていません。

メジェドが登場するゲーム

女神転生シリーズ

悪魔として実装されています。

Amazonでゲームを探す

パズル・ソーシャルゲーム各種

日本のゲームでキャラクターとして登場する例が複数あります。

ガチャガチャ・カプセルトイ

フィギュアやマスコットが繰り返し商品化されています。

メジェドが登場するアニメ・漫画・映像

エジプト神話を扱った漫画・イラスト

日本の作品では、他の神と並んでこの神が登場することが定番になりつつあります。

古代エジプト展の図録

近年の展覧会では、この一節が単独で紹介されることがあります。

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

メジェドについてよくある質問

メジェドとは何ですか。

『死者の書』第17章に一行だけ現れる神です。全身を布で覆い、目だけを出した姿で描かれます。名は「打ち倒す者」を意味します。

メジェドはなぜ日本で有名なのですか。

2012年の「大英博物館 古代エジプト展」でグリーンフィールド・パピルスが公開され、その姿がSNSで広まったためです。エジプト本国や欧米では、ほとんど知られていません。

メジェドはどんな能力を持つ神ですか。

原典に記述がありません。「目から光を放ち、歩き回る」という一行があるだけです。インターネット上で見かける「最強」「いたずら好き」といった説明は、すべて創作です。

メジェドの図像はどこで見られますか。

大英博物館蔵の『グリーンフィールド・パピルス』です。全長37メートル超で、現存する死者の書のなかで最長とされます。確実な図像はこの一点だけです。

メジェドの神殿はありますか。

ありません。神官も祭りの記録も、奉納品も確認されていません。信仰の対象ではなく、呪文のなかに名が挙がる存在の一つでした。

なぜ「メジェド様」と呼ばれるのですか。

日本だけの呼び方です。SNSで広まる過程で定着しました。原典にこの敬称はありません。

メジェドと併せて覚えたい言葉・用語

死者の書(ししゃのしょ)

正しくは「日のもとに出現するための書」。冥界を通るための呪文集で、パピルスに書いてミイラとともに納めた。名前の欄を空けた既製品が売られており、購入者の名を書き入れて使った。

心臓の計量(しんぞうのけいりょう)

死者の心臓とマアトの羽根を天秤にかける冥界の裁き。アヌビスが天秤を扱い、トートが記録する。釣り合えば来世へ、釣り合わなければアメミットが心臓を食い、存在そのものが消える。死者の書第125章。