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エジプト神話

シューとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

šw  / シュー

大地 ヘリオポリス九柱神

大気の神。天と地のあいだに立って、二人を引き離し続ける。

シューの姿を描いた図

「シュー(ウォルターズ美術館 蔵)」 / パブリックドメイン 出典

シューとは何の神様か

シューはひとことで言えば空を支えている神です。

羽根を頭に載せた男性の姿。両腕を上げて、天を持ち上げる姿勢で描かれます。

アトゥムが一人で生んだ最初の子で、大気・空間・乾いたものを司ります。

決定的な仕事があります。

抱き合っていた天(ヌト)と地(ゲブ)のあいだに割って入り、天を持ち上げた。

それによって、

世界に「あいだ」ができた。

空間が生まれ、光が入り、生き物が住めるようになります。

世界を作ったのではなく、隙間を作った神。

そして、この姿勢を

やめることができません。

手を離せば、天が地に落ちて世界が終わります。

にこの神の像が彫られたのは、頭を支える形が同じだからです。

シューのヒエログリフの表記と読み方

エジプト語では šw。意味については、

「空虚」「空いていること」

とする説と、

「乾いたもの」

とする説があります。テフヌト(湿気)と対になるため、後者も有力です。

名の表記にはダチョウの羽根が使われます。

軽さ、空気を表す記号。

マアトの羽根と同じ記号ですが、意味は異なります。

ギリシャ人はこの神をアトラスと重ねることがありました。

天を支えているから。

ただし、アトラスが罰として支えているのに対し、

シューは、世界の構造としてそうしている。

罰ではありません。

šw(シュウ)

ヒエログリフの転写。「空虚」「乾いた」を意味する語に由来するとされる。

Σῶς(ソス)

ギリシャ語形の一つ。

šwt(シュウト)

「羽根」。この神の頭上の記号であり、名の書き方でもある。

シューの物語

  1. 天と地を引き離す ─ 世界に隙間を作る
  2. 手を離せない ─ 終わらない仕事
  3. 妹と行方不明になる ─ ラーの目の物語
  4. 王として統治し、去る ─ 神々の時代の終わり

天と地を引き離す ─ 世界に隙間を作る

エジプト神話でもっとも有名な図像の一つが、この場面です。

ゲブ(大地)とヌト(天)は、抱き合っていました。

あいだに、何もない。

光も、空気も、生き物の住む場所もありません。

そこへシューが割って入り、

両腕を上げて、ヌトを持ち上げた。

ゲブは下に残り、

世界に、上下ができた。

この構図は、パピルスと棺に何度も描かれています。

下に横たわるゲブ。
上に弓なりに反り返るヌト。
中央で腕を上げるシュー。

離された理由は、記録によって異なります。

ゲブとヌトが交わり続けるのをラーが怒った

とも、

世界に空間が必要だった

とも語られます。

引き離しは、悲しい話でもあります。 二柱は互いを求め続け、ヌトの涙が雨になるとされました。

手を離せない ─ 終わらない仕事

シューの役目には、終わりがありません。

持ち上げ続けなければ、天が落ちる。

この神が疲れて手を離すことが、

世界の終わり

を意味しました。

支えるのを助けるため、

八柱の「ヘフ神」

が配置されたとも語られます。また、四方の柱(天の四本の支柱)という発想もありました。

ピラミッド・テキストや棺文書には、

シューを讃え、その力が弱まらないよう祈る

文言が含まれます。

興味深いのがです。

エジプトの枕は、

木や石を、頭の形にくぼませて、脚をつけた形

をしています。

この側面に、シューが天を支える図が彫られました。

頭を支えるものと、天を支える神を、同じ形と見た。

寝るあいだも守られるという発想です。

妹と行方不明になる ─ ラーの目の物語

シューとテフヌトは、アトゥムが一人で生んだ最初の男女です。

生まれてすぐ、

原初の水ヌンのなかで、行方が分からなくなりました。

アトゥムは、自らの目を外して探させます。

目は二柱を見つけて連れ帰りました。

しかし戻ると、

アトゥムはすでに別の目をつけていた。

元の目は怒り、涙を流します。

そこでアトゥムは、その目を額に置き、コブラ(ウラエウス)としました。

王の額のコブラの起源。

そして再会したとき、

アトゥムが流した喜びの涙から、人間が生まれた

とされます。

もう一つ、別の物語もあります。

テフヌトがラーと喧嘩してヌビアへ去り、シューとトートが迎えに行った。

連れ戻す過程で、トートが物語を語って機嫌を直させたという筋です。

「遠くへ行った目」の神話として、複数の版が伝わっています。

王として統治し、去る ─ 神々の時代の終わり

エジプトには、

神々が、順に地上を統治した

という歴史観がありました。

トリノ王名表などの記録では、

プタハ → ラー → シュー → ゲブ → オシリスセトホルス

と続き、そのあと人間の王(ファラオ)の時代になります。

シューは、ラーの次に地上を治めた神でした。

しかし、統治は平穏ではありません。

アペプの一党(異国の勢力とも解される)が攻め込み、大乱が起きた。

シューは戦いに勝ちますが、病を得ます。

そして、

九日間の嵐のあと、天へ去った。

記録には、

その嵐のあいだ、誰も宮殿を出られなかった。

とあります。

次にゲブが王位を継ぎました。

神が統治し、老い、去っていく。

エジプト人は、自分たちの王朝の前史として、こうした年表を持っていました。

シューの家系図と家族

シューの親: アトゥムひとりで生むネベトヘテペトアトゥムの手として生み出す

シューの妻・夫: テフヌト夫婦(兄妹)

シューの子・子孫: ゲブヌト

シューの性格と人物像

シューは、仕事を続けている神です。

手を離せない。

世界が存在するかぎり、この神は同じ姿勢のままです。

注目すべきは、この神がしたことが

「作る」ではなく「離す」

だったことです。

アトゥムが世界を生み、シューがそこに隙間を作りました。

空間がなければ、何も置けない。

創造には、分けることが必要だという発想です。

そして、引き離しは幸福な話ではありません。

ゲブとヌトは、互いを求め続けている。

ヌトの涙が雨になるとされました。

世界が成り立つために、誰かが引き裂かれている。

エジプト神話の宇宙観は、この一場面に凝縮されています。

シューを祀った神殿と遺跡

シュー専用の大神殿は、ほとんどありません。

この神は、

世界の構造そのもの

であり、特定の場所に限定されないためです。

レオントポリスでテフヌトと対で祀られたほか、

ヘリオポリスの九柱神の一柱

として各地の神殿に名が刻まれています。

実物として最も身近だったのは、

枕。

毎晩、この神の図に頭を載せて眠ったわけです。

レオントポリス(テル・エル・ムクダム)(Leontopolis / Taremu)

シューとテフヌトを祀った都市

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レオントポリス(テル・エル・ムクダム)の住所: エジプト ダカリーヤ県 テル・エル・ムクダム

レオントポリス(テル・エル・ムクダム)の祀られた神: シュー・テフヌト

レオントポリス(テル・エル・ムクダム)に残るもの: 都市址・墓

ギリシャ語名レオントポリス(ライオンの町)。エジプト語名はタレム

ここでは、

シューとテフヌトが、一対のライオンの姿で祀られました。

アケル」と呼ばれる、二頭のライオンが背中合わせに座り、そのあいだから太陽が昇る図像とも結びつきます。

昨日と明日を見る二頭のライオン。

第23王朝の王都だった時期もあります。

遺跡はデルタ地帯の常で保存が悪く、地表に残るものは限られます。発掘では王妃の墓などが見つかっています。

ナイル・デルタ中部。観光整備はされていない。

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ダカリーヤの現地ツアーや入場券を探せます。

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ツタンカーメンの枕(大エジプト博物館)(Headrests of Tutankhamun)

シューの図が彫られた枕

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ツタンカーメンの枕(大エジプト博物館)の住所: エジプト ギザ県 大エジプト博物館

ツタンカーメンの枕(大エジプト博物館)の祀られた神: シュー

ツタンカーメンの枕(大エジプト博物館)に残るもの: 象牙・木・鉄製の枕

ツタンカーメンの墓からは、

複数の枕(ヘッドレスト)

が出土しました。

そのうち象牙製のものには、

シューが両腕を上げて天を支える姿

が彫られています。両脇にはライオンが控えます。

エジプトの枕は、木や石を頭の形にくぼませ、脚をつけた形です。

頭を支える道具と、天を支える神を、同じものと見た。

寝ているあいだも、世界が保たれているという発想です。

もう一点、

鉄製の小さな枕

もあり、当時きわめて貴重だった鉄の使用例として注目されています。

大エジプト博物館のツタンカーメン展示。ギザのピラミッドに隣接。

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シューが現代に残した痕跡

シューの姿勢は、エジプト美術の基本構図の一つになりました。

天地分離の図: 横たわるゲブ、弓なりに反るヌト、中央で腕を上げるシュー。パピルスと棺に繰り返し描かれた代表的な構図。

枕(ヘッドレスト)の意匠: 側面にこの神が天を支える図を彫った。頭を支える形と天を支える姿を重ねている。

アケル(背中合わせの二頭のライオン): シューとテフヌトと結びつく図像。「昨日と明日」を見るとされ、そのあいだから太陽が昇る。

神々の王朝表: トリノ王名表などで、ラーの次に地上を統治した王として記録される。神が統治し老いて去るという歴史観を示す。

シューが司るもの

大気・空間

天と地のあいだの空間を司る。世界が存在するための隙間そのもの。

天を支える

両腕でヌトを持ち上げ続ける。手を離せば世界が終わるとされた。

生き物が呼吸する空気を司る。死者に息を与える神ともされた。

枕の守護

エジプトの枕にこの神の図が彫られた。頭を支える形が天を支える姿と重なるため。

シューが登場するゲーム・アニメ

図像だけがよく知られている神です。

天地分離の絵は誰もが見たことがあるのに、中央の人物の名前は知られていない。

物語が少ないこともあり、創作で主役になることはまずありません。

シューが登場するゲーム

女神転生シリーズ

大気の神として登場します。

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Assassin's Creed オリジンズ

天地分離の図像が壁画などに登場します。

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シューが登場するアニメ・漫画・映像

エジプト神話の入門書

天地分離の図が必ず掲載されますが、この神が主役として扱われることはまれです。

Amazonで本・漫画を探す

古代エジプト展

枕(ヘッドレスト)は生活用品の展示として定番です。

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シューについてよくある質問

シューは何の神様ですか。

大気と空間の神です。アトゥムが一人で生んだ最初の子で、天(ヌト)と地(ゲブ)のあいだに割って入り、両腕で天を持ち上げ続けています。

シューが手を離すとどうなるのですか。

天が地に落ちて世界が終わるとされました。この神の役目に終わりはなく、支えを助けるため八柱のヘフ神が配置されたとも語られます。

なぜ天と地は引き離されたのですか。

記録によって異なります。ゲブとヌトが交わり続けるのをラーが怒ったとも、世界に空間が必要だったとも語られます。二柱は互いを求め続け、ヌトの涙が雨になるとされました。

エジプトの枕にシューが彫られているのはなぜですか。

頭を支える形が、天を支える姿と同じだからです。寝ているあいだも世界が保たれているという発想で、ツタンカーメンの象牙製の枕にもこの図があります。

シューとアトラスは同じですか。

ギリシャ人は重ねることがありましたが、性格は異なります。アトラスは罰として天を支えているのに対し、シューは世界の構造としてそうしています。

シューは地上を統治したのですか。

トリノ王名表などの記録では、ラーの次に地上を治めたとされます。アペプの一党の侵攻を退けたあと病を得て、九日間の嵐のあと天へ去り、ゲブが王位を継ぎました。

シューと併せて覚えたい言葉・用語

ウラエウス(jꜥrt/額のコブラ)

王冠の額に立つコブラ。敵に炎を吐いて王を守る。アトゥムが自分の目を額に置いたことが起源とされる。

九柱神(きゅうちゅうしん/エネアド)

ヘリオポリスの神学における九柱の系譜。アトゥム、シュー、テフヌト、ゲブ、ヌト、オシリス、イシス、セト、ネフティス。ただしメンフィスやヘルモポリスには別系統の創世神話があり、併存していた。

カー(kꜣ/生命力)

人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。