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ローマ神話

フェブルウスとは何の神様か|家系図・物語

Februus  / フェブルウス

冥界 エトルリア由来の神

2月の名の由来とされる神。清めと死者の月を司ると説明された。

フェブルウスとは何の神様か

フェブルウスはひとことで言えば2月の名の神です。

ラテン語で2月をフェブルアーリウスといい、その名の由来とされます。エトルリア由来の清めと冥界の神とする説があります。

古いローマの暦で、2月は年の終わりの月でした。だからこの月には、清めと死者の祭が集まっています。

2月15日のルペルカーリア。2月13日から21日までのパレンターリア。2月21日のフェラーリア。

パレンターリアの期間は、家ごとに先祖の墓へ供え物を運びました。

フェブルア」は清めに使う道具を指す語です。山羊の皮の鞭、羊毛、塩を混ぜた麦。いずれも身や場を清めるために用いられました。

ここに、この神をめぐるいちばん大きな問いがあります。

神の名が先か、清めを指す語が先か。決着がついていません。 オウィディウスは語のほうが先だと説明しています。

フェブルウスのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「フェブルウス」「フェブルス」の表記が使われます。ラテン語の母音の重なりをどう写すかで揺れています。

この名で気をつけたいのは、神の名と、月の名と、清めの道具の名が、同じ語根で結ばれていることです。

フェブルウス、フェブルアーリウス、フェブルア。

三つは互いに近い形をしています。そのため、どれが最初にあったのかが決着していません。

オウィディウスは『祭暦』で、清めを指す語のほうが先だったと説明しました。清めの月だから2月がその名で呼ばれ、そこから神の名も生まれた、という順序です。

一方で、エトルリア由来の神の名が先にあったとする説も出されています。

わかっていないことを、わかっていないまま知っておくのが正確です。 2月という月の名が、清めと結びついていることだけは確かです。

Februus(フェブルウス)

ラテン語の主格。2月を指す語フェブルアーリウスと同じ語根を持つが、どちらが先かは決着していない。

Februa(フェブルア)

清めに使う道具を指す語。中性の複数形で、山羊の皮の鞭や羊毛、塩を混ぜた麦などを指した。

Februarius(フェブルアーリウス)

2月を指す語。清めの月という意味に取る説明が古くから行われている。

フェブルウスの物語

  1. 年の終わりの月 ─ なぜ清めが2月に集まるのか
  2. フェブルアという語 ─ 清めに使う道具
  3. 神が先か、語が先か ─ 決着していない問い
  4. なぜ記録が少ないのか ─ 神殿も祭日も無い神

年の終わりの月 ─ なぜ清めが2月に集まるのか

古いローマの暦では、一年は3月から始まりました。

そのため2月は、年の終わりの月にあたります。

9月から12月までの月の名が、七から十を意味する数の語であることが、その名残です。

年の終わりには、その年の汚れを落とさなければなりません。だから清めの祭が、この月に集まりました。

同じ時期に、死者の祭も置かれています。年の切れ目は、生きている者と死んだ者の境が薄くなる時期と考えられたためです。

清めと死者。この二つが2月という一つの月に重ねられていました。

第二代の王ヌマ・ポンピリウスが、それまで10か月だった一年に2つの月を加えて12か月にしたと伝えられます。加えられたのがヤーヌアーリウスとフェブルアーリウスです。

やがて年の始まりが1月に移り、2月は年の二番目の月になりました。しかし祭のほうは動きませんでした。 清めと死者の祭は2月に残り続けます。

フェブルアという語 ─ 清めに使う道具

フェブルア」は、清めに使う道具を指す語です。

具体的には次のようなものが挙げられます。

山羊の皮を細く切った鞭。羊毛。塩を混ぜた麦。

いずれも、身体や場所を清めるために用いられました。

山羊の皮の鞭は、2月15日のルペルカーリアで使われます。裸の若者がこの鞭を持って走り、道で会った女を打ちました。打たれると子を授かると信じられていました。

羊毛は、身を拭って汚れを移すために使われます。塩を混ぜた麦は、犠牲の獣の頭に振りかけられました。

ローマの清めは、水で洗うより、こすって移す形が中心です。汚れを何かに移し、それを捨てる。

道具の名が、そのまま月の名になり、神の名にもなった。 そう考えるのがオウィディウスの説明です。

一方で、この語自体をエトルリア語から入ったものとみる説もあります。

神が先か、語が先か ─ 決着していない問い

フェブルウスをめぐる最大の問いが、これです。

神の名が先にあったのか、清めを指す語が先にあったのか。

オウィディウスは『祭暦』の第2巻で、この問題を扱いました。彼の答えは、語のほうが先というものです。

我らの祖先はフェブルアと呼んだ、清めを行うものを。

清めの道具があり、その名から清めの月の名が生まれ、月を司る神の名も後から作られた、という順序です。

しかし、これが正しいという確証はありません。

反対の順序を採る説もあります。エトルリア由来の冥界の神フェブルウスが先にあり、その名から月の名が生まれたという見方です。

エトルリアには冥界の神々の名が多く伝わっており、そのなかにこの名に近い形があるとする指摘があります。

どちらの説も決め手を欠いています。 ローマ人自身が、自分たちの月の名の由来を説明できなくなっていました。

なぜ記録が少ないのか ─ 神殿も祭日も無い神

フェブルウスには、神殿も祭日も記録されていません。

これはかなり異例です。2月という月の名の由来とされながら、その神自身を祀る場も日も伝わっていません。

名だけが、月の名を通じて残りました。

理由として考えられるのは、この神が語の説明として後から立てられた可能性です。月の名の由来を尋ねられたローマ人が、その名を持つ神を想定した、という順序です。

もう一つは、エトルリアの神がローマに入りきらなかったという見方です。名は伝わったが、祭祀は移らなかった。

どちらにしても、この神は「祭祀の無い神」として記録されています。

そのかわり、2月の祭そのものは詳しく伝わっています。ルペルカーリア、パレンターリア、フェラーリア。神は薄いのに、月は濃い。

こうした形は、月や暦に名を残した神ではしばしば見られます。名が制度に組み込まれると、祭祀が無くても消えないのです。

フェブルウスの家系図と家族

フェブルウスの性格と人物像

フェブルウスには、姿も物語も伝わっていません。

像も記録されておらず、何をした神かという逸話もありません。

残っているのは、月の名と、語の説明だけです。

それでもこの神が語られ続けるのは、2月という月の名が、いまも世界中で使われているためです。名の由来をたどると、必ずこの神に行き当たります。

ディス・パテルやプルートーと重ねられることもありました。 清めと死者が同じ月に重なっていたためです。

研究上の位置づけとしては、語源から神が作られる過程の例として扱われます。名の由来を説明するために神を立てるという手続きは、古代にはよくありました。

実在の祭祀を持つ神と、説明のために立てられた神を見分けるのは、ローマ神話でつねに難しい作業です。

フェブルウスは、その境目にいる神といえます。

フェブルウスを祀った神殿と遺跡

フェブルウスを祀った神殿も聖域も、記録に残っていません。

祭日も伝わっていません。2月という月の名の由来とされながら、この神自身の祭祀は確かめられないという形です。

名だけが、月の名を通じて残りました。

そのため、ここでは住所を挙げる欄を空けています。確かめられた場所が無いためです。

一方で、2月の祭そのものは詳しく伝わっています。2月15日のルペルカーリアはルペルカールという洞で始まり、2月13日から21日のパレンターリアでは家ごとに先祖の墓へ供え物を運びました。

こうした祭の場は伝わっていますが、そこで祀られたのはこの神ではありません。

フェブルウスが現代に残した痕跡

フェブルウスの名は、2月という月の名として世界中に残っています。

2月の名: ラテン語のフェブルアーリウスが、英語をはじめとする各国語の2月の名になっている。

清めを表す語: 同じ語根から、清めや浄化を表す語が各国語に受け継がれている。

パレンターリア: 2月13日から21日まで先祖の墓に供え物を運ぶ祭。死者を家の側から祀る形として知られる。

閏日: 2月に閏日が置かれるのは、この月が古い暦で年の終わりだったことによる。

フェブルウスが司るもの

清め

身や場の汚れを落とす祭の月を司る神として、清めと結びつけられた。

先祖の供養

2月の死者の祭と重なり、先祖に供え物を運ぶ月の神とされた。

年の切り替え

古い暦で年の終わりにあたる月を司り、区切りの神として語られた。

フェブルウスが登場するゲーム・アニメ

作品でのフェブルウスは、名前が出ること自体がまれです。

姿も物語も伝わっていないため、描く手がかりがありません。

かわりに描かれるのは、2月の祭のほうです。

ルペルカーリアの場面は近世の絵画で好まれ、パレンターリアは古代の暮らしを扱う本で紹介されます。神ではなく月が主役になるのが、この神の作品での扱われ方です。

フェブルウスが登場するゲーム

神話を扱う対戦型ゲーム

清めと冥界に関わる神として、名前が登場することがあります。

暦や季節を扱うゲーム

2月の名の由来として、この神の名が説明に現れます。

フェブルウスが登場する絵画・彫刻

月の擬人像を並べた図

一年の各月を人の姿で表す図で、2月が清めの道具とともに描かれます。

ルペルカーリアを描いた絵画

山羊の皮の鞭を持って走る若者の場面が、近世に繰り返し描かれました。

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フェブルウスについてよくある質問

フェブルウスはどんな神ですか。

2月の名の由来とされる神です。エトルリア由来の清めと冥界の神とする説がありますが、神殿も祭日も記録に残っていません。

2月の名はこの神から来ているのですか。

決着していません。オウィディウスは、清めの道具を指す語フェブルアのほうが先で、そこから月の名が生まれたと説明しています。逆に神の名が先とする説もあります。

なぜ2月に清めと死者の祭が集まるのですか。

古いローマの暦で2月が年の終わりの月だったためです。年の汚れを落とす清めと、生死の境が薄くなる時期の死者の祭が、この月に重なっています。

フェブルアとは何ですか。

清めに使う道具を指す語です。山羊の皮を切った鞭、羊毛、塩を混ぜた麦などを指しました。ローマの清めは水で洗うより、こすって汚れを移す形が中心でした。

この神を祀る場所はありますか。

記録に残っていません。2月の祭が行われた場所は伝わっていますが、そこで祀られたのはこの神ではありません。

フェブルウスと併せて覚えたい言葉・用語

カー(kꜣ/生命力)

人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。