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ローマ神話

アンゲローナとは何の神様か|家系図・物語

Angerona  / アンゲローナ

冥界 ローマ固有の神

冬至のころに祀られ、口を布で塞がれた像で知られる女神。

アンゲローナとは何の神様か

アンゲローナはひとことで言えば沈黙の姿で祀られた女神です。

祭日は12月21日。一年でもっとも日の短い、冬至のころにあたります。この日の祭をアンゲローナーリアと呼びました。

像の姿がよく知られています。

口を布で塞がれ、封をされ、指を唇にあてていた。

黙れ、と身ぶりで示す像です。ローマの神像のなかでも、これほど特徴のはっきりしたものはほかにありません。

像は快楽の女神ウォルピアの社に置かれ、そこで神官が犠牲を捧げました。

名の意味には二つの説明があります。「苦しみ」を意味する語に結びつけて苦しみを取り除く女神とする説明と、姿のとおり沈黙を命じる女神とする説明です。

マクロビウスは、ローマには口に出してはならない秘密の名があり、この女神はその名を守る者だと述べました。

神殿の位置は、いまも特定されていません。

アンゲローナのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「アンゲローナ」「アンゲロナ」の表記が使われます。長音を書き分けない形もよく見かけます。

名の由来には、二つの説明が並んでいます。ひとつは「苦しみ」や「胸のつかえ」を意味する語に結びつけるもので、その苦しみを取り除く女神とします。

もうひとつは、像の姿から沈黙を意味する語に結びつけるものです。

どちらが正しいのかは、わかっていません。 古代の著述家自身が両方を並べており、当時すでに由来が忘れられていたことがうかがえます。

祭の名アンゲローナーリアは暦に記されており、実際に行われていた行事であることが確かめられます。名の意味は失われても、日付は残りました。

Angerona(アンゲローナ)

ラテン語の主格。碑文や暦では、この形で記される。

Angeronalia(アンゲローナーリア)

12月21日に行われた祭の名。ローマの暦にこの日として記されている。

Diva Angerona(ディーウァ・アンゲローナ)

「女神アンゲローナ」の意。マクロビウスがこの形で呼んでいる。

アンゲローナの物語

  1. アンゲローナーリア ─ 冬至の日の祭
  2. 口を封じた像 ─ ローマでもっとも特徴のある神像
  3. 名の二つの説明 ─ 苦しみを取る神か、黙らせる神か
  4. 秘密の名を守る者 ─ マクロビウスの説明

アンゲローナーリア ─ 冬至の日の祭

12月21日、ローマの暦にはアンゲローナーリアと記されています。

一年でもっとも日が短くなるころです。この位置づけは、古くから重んじられてきました。

光がいちばん細る日に、口を閉じた女神が祀られる。

太陽が力を失う時期に、都の守りにかかわる祭を置いたと読む説明があります。ただし古代の資料にその読み方が書かれているわけではありません。

祭の内容として伝わっているのは、神官が犠牲を捧げたという点だけです。行列も競技も伝えられていません。

同じ12月には、17日から続くサートゥルナーリアという大きな祭がありました。無礼講で知られる賑やかな祭です。その騒ぎのただ中に、沈黙の女神の日が置かれていました。

対比が意図されたものかどうかは、確かめられません。ただ、暦のうえでこの二つが隣り合っていたことは事実です。

口を封じた像 ─ ローマでもっとも特徴のある神像

アンゲローナの像は、ローマの神像のなかでも際立っています。

口を布で塞がれ、その布に封をされ、指を唇にあてていました。

黙れ、と示す身ぶりそのものが像になっている。

伝えているのはプリニウスとマクロビウスです。二人とも、この姿を強く印象づける形で書き残しました。

像が置かれたのは、快楽の女神ウォルピアの社です。沈黙の女神が快楽の女神の社にいるという取り合わせは、古代の著述家自身が説明を試みています。

苦しみを黙って耐えれば、やがて喜びに変わる。

そうした教えを読み取る説明が伝えられています。ただし、これも後からの解釈とみられます。

像そのものは残っていません。近世以降に作られた挿絵は、文章の記述をもとに描かれたものであって、古代の作例を写したものではありません。

名の二つの説明 ─ 苦しみを取る神か、黙らせる神か

この女神の名の意味については、古代から二つの説明が並んでいました。

第一に、「苦しみ」「胸のつかえ」を意味する語に結びつける説明です。その苦しみを取り除く女神とされます。喉の病を治す女神だという伝えもあり、犠牲を捧げて病から救われた話が語られました。

第二に、像の姿から沈黙を命じる女神とする説明です。

名が先か、像が先か。

どちらが先だったのかは、わかっていません。 名の説明が像から作られたのか、像が名の説明から作られたのか、順序を決める資料がありません。

ローマの神には、この形の問題がしばしば起こります。祭祀だけが受け継がれ、意味の説明が後から立てられるためです。

由来が二つ並んでいること自体が、この祭の古さを示しているとみることもできます。

祭は続いていたのに、なぜ祀るのかは忘れられていた。ローマ人自身が、自分たちの古い祭を説明しかねていました。

秘密の名を守る者 ─ マクロビウスの説明

5世紀の著述家マクロビウスは、この女神について踏み込んだ説明を残しました。

ローマには、口に出してはならない秘密の名があるというのです。

都そのものの、隠された名。

その名を敵に知られると、敵はその名で神を呼び出し、都から連れ去ることができる。だから名は伏せられ、口にすることが固く禁じられていた、という説明です。

アンゲローナは、その名を守る者とされました。口を封じられた像は、秘密が漏れないことを示す姿だというわけです。

ローマには、敵の都の守り神を呼び出して自分の側に招くエウォカーティオーという儀式が実際にありました。同じことを自分たちがされないよう用心するという考え方は、この儀式と裏表になっています。

ただし、マクロビウスは祭のはるか後の時代の人です。この説明が古い時代からあったものか、後に立てられたものかは確かめられません。

それでも、ローマ人が名前の力を強く信じていたことは、ほかの資料からも読み取れます。

アンゲローナの家系図と家族

アンゲローナの性格と人物像

アンゲローナには、物語がまったくありません。

伝わっているのは、祭日と像の姿と、名の由来をめぐる二つの説明だけです。神としての行いは、一つも語られていません。

それでも、この女神は忘れられませんでした。

理由は像の強さにあります。口を封じられ、指を唇にあてた姿は、一度読めば忘れられません。説明を必要としない図像が、記録を生き延びさせました。

研究のうえでは、この女神はローマ人と名前の関係を考えるときに引かれます。名を知ることが力を持つという考え方、名を伏せることで守るという考え方。それらが一つの像に集まっています。

祭日が冬至に置かれている点も重んじられます。 太陽が細る日と、口を閉じる女神。この結びつきを説く資料は古代にありませんが、後世の研究が繰り返し取り上げてきました。

わからないことが多いまま、印象だけが残った女神です。

アンゲローナを祀った神殿と遺跡

アンゲローナを祀った神殿の位置は、特定されていません。

伝えられているのは、像が快楽の女神ウォルピアの社に置かれ、そこで神官が犠牲を捧げたということだけです。

ウォルピアの社の位置も、確かめられていません。

古代の著述家は社の存在を書いていますが、場所を細かく記した文が残っていません。発掘でそれと確かめられた遺構もありません。

そのため、この節に挙げられる場所はありません。推し量って座標を書くことはしません。

12月21日という祭日が暦に記されている点は確かです。場所はわからなくても、行事として実際に行われていたことは資料から確かめられます。

アンゲローナが現代に残した痕跡

アンゲローナの名は、沈黙をあらわす図像として残りました。

12月21日: アンゲローナーリアの日。ローマの暦にこの祭の名が記されており、行事の実在が確かめられる。

口に指をあてる図像: 沈黙を示す身ぶりとして、近世の寓意画や紋章に受け継がれた形の一つとされる。

ローマの秘密の名: 都には口にしてはならない名があったという伝えが、この女神とともに語られてきた。

マクロビウスの著作: サートゥルナーリアと題された書物のなかに、この女神をめぐる説明が残されている。

アンゲローナが司るもの

苦しみを取り除く

名を「苦しみ」に結びつける説から、胸のつかえや喉の病を癒すとされた。

秘密を守る

口に出してはならない都の名を守る者とされ、秘密の守りに結びつけられた。

冬至の折り返し

一年でもっとも日の短い日の祭であり、光が戻る節目に置かれた。

アンゲローナが登場するゲーム・アニメ

アンゲローナを主題にした作品は、ほとんどありません。

使われるのは、姿のほうです。

口に指をあてて沈黙を示す身ぶりは、寓意画や紋章に広く見られます。そのすべてがこの女神に由来するわけではありませんが、古代の像として引き合いに出されることがあります。

近世の神話事典に載る挿絵は、古代の作例を写したものではなく、文章の記述から描き起こされたものです。像そのものは残っていません。

アンゲローナが登場するゲーム

神話を題材にしたカードゲーム

沈黙や封印にかかわる役として名が使われることがあります。

古代を舞台にした探索ゲーム

秘密の名を守る女神として設定に取り入れられる例があります。

アンゲローナが登場する絵画・彫刻

沈黙の寓意像

口に指をあてる姿が、沈黙をあらわす像として近世に描かれました。

近世の神話事典の挿絵

古代の記述をもとに、封をされた口の姿が描き起こされています。

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アンゲローナについてよくある質問

アンゲローナはどんな女神ですか。

12月21日のアンゲローナーリアで祀られた女神です。口を布で塞がれ、封をされ、指を唇にあてた像で知られます。苦しみを取り除く女神とする説と、沈黙を命じる女神とする説が古代から並んでいます。

なぜ口を塞がれているのですか。

マクロビウスは、ローマには口に出してはならない秘密の名があり、この女神がその名を守る者だからだと説明しました。ただし彼は祭のはるか後の時代の人で、この説明が古くからあったかは確かめられません。

アンゲローナの神殿はどこにありますか。

位置は特定されていません。像は快楽の女神ウォルピアの社に置かれ、そこで神官が犠牲を捧げたと伝えられますが、その社の場所も確かめられていません。

なぜ冬至のころに祀られたのですか。

はっきりした理由はわかっていません。一年でもっとも日の短い日にあたるため、光が戻る節目に置かれたとみる説明があります。ただし古代の資料にその読み方は書かれていません。

アンゲローナと併せて覚えたい言葉・用語

カー(kꜣ/生命力)

人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。