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ローマ神話

プロセルピナとは何の神様か|家系図・物語

Proserpina  / プロセルピナ

冥界 冥界の神

冥界の后。世紀の変わり目の祭で、夜のうちに黒い犠牲を捧げられた。

プロセルピナとは何の神様か

プロセルピナはひとことで言えば冥界の后です。ギリシャ名はペルセポネ

ケレースの娘で、冥界の王に連れ去られ、一年の一部を地の下で過ごします。この筋はギリシャから受け継いだものです。

ローマ独自なのは、この女神が国家の祭に組み込まれた点です。

前249年、ローマは戦況の悪化を受けてルーディー・サエクラーレース(世紀の祭)を始めました。

カンプス・マルティウスの一角で、夜のうちに、
冥界の王とこの女神へ黒い獣が捧げられた。

昼の神々に捧げる祭とは、時刻も獣の色も逆になっています。

名の由来ははっきりしません。芽を出すという意味の語につなげる説がありますが、ギリシャ名がなまった形とする見方も強くあります。

近代の絵画では「プロセルピナの略奪」の場面が繰り返し描かれました。

プロセルピナのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「プロセルピナ」「プロセルピネ」が使われます。プロサーピンは英語読みです。

由来については二つの見方があります。

芽を出すことを意味する語から生まれたとする説。
ギリシャ名ペルセポネがラテン語でなまった形とする説。

後者のほうが有力です。

ローマの古い女神リーベラと重ねられることもありました。アウェンティーノの丘の神殿に、ケレース・リーベルと並んで祀られた女神です。

ただし、この重なりも一定していません。ローマの神の対応関係は、しばしば揺れています。

Proserpina(プロセルピナ)

ラテン語。ギリシャ名がなまった形とする説が強い。

Persephone(ペルセポネ)

ギリシャ名。

Libera(リーベラ)

ローマの古い女神。この女神と重ねられることがあった。

プロセルピナの物語

  1. 世紀の祭 ─ 夜に黒い獣を捧げる
  2. 略奪の場面 ─ 絵画になった一瞬
  3. 呪いの板 ─ 名を刻まれる女神

世紀の祭 ─ 夜に黒い獣を捧げる

前249年、ローマは第一次ポエニ戦争で苦しんでいました。

このとき、シビュラの書が参照されます。ローマが危機のたびに開いた予言書です。

その指示により、新しい祭が始まりました。

ルーディー・サエクラーレース。世紀の祭。

場所はタレントゥムと呼ばれた、カンプス・マルティウスの一角です。地下から蒸気の出る場所があり、冥界への口とされていました。

儀式はに行われました。

冥界の王ディース・パテルと、后プロセルピナへ。
黒い牡牛と黒い牝牛を捧げる。

ローマの祭では、天の神には白い獣を昼に捧げます。この祭はすべてが逆です。

祭は百年に一度、あるいは110年に一度とされました。

誰も二度は見ることのできない祭。

そう呼ばれています。アウグストゥスは前17年にこれを行い、そのときの記録が石に刻まれて残りました。

略奪の場面 ─ 絵画になった一瞬

プロセルピナの物語は、一つの場面に集約されます。

野で花を摘んでいたところを、地が裂けて冥界の王に連れ去られる。

オウィディウスは『変身物語』と『祭暦』の両方でこの話を書きました。二つの記述には違いがあります。

『変身物語』では、シチリアのエンナの野。
『祭暦』では、同じシチリアだが叙述が異なる。

同じ作者が、同じ話を二通りに書いています。

ローマの詩人は、物語を固定するより語り直すことに関心がありました。

この場面は、近代の美術で繰り返し扱われます。ベルニーニの彫刻は、つかまれた腿に指が食い込む様子まで大理石で彫っています。

ラファエル前派の画家も、柘榴の実を持つ姿を描きました。

柘榴の種を食べたために、冥界に戻らなければならなくなる。 この一点が、物語の要になっています。

呪いの板 ─ 名を刻まれる女神

ローマ帝国の各地から、呪いを刻んだ鉛の板が数多く見つかっています。

薄い鉛の板に文字を刻み、丸めて釘を打ち、井戸や墓に投げ込むものです。

そこに呼び出される神の名の一つが、プロセルピナでした。

冥界の女神よ、この者を渡します。

盗まれた品を取り返したい、競技で相手に勝ちたい、恋敵を退けたい。願いはさまざまです。

国家の祭に組み込まれた女神が、個人の呪いにも呼ばれています。

板は使い捨ての文書であり、正式な記録には残らない信仰の姿を伝えます。

ブリタンニアのバースの温泉からは、こうした板が130枚以上見つかりました。冥界の神々の名が繰り返し現れます。

公の祭祀と、個人の願い。ローマの宗教は、この二つの層を持っていました。

プロセルピナの家系図と家族

プロセルピナの親: ケレースユーピテル

プロセルピナの妻・夫: オルクス冥界の后として連れ去る

プロセルピナの性格と人物像

プロセルピナには、ローマ独自の物語がありません。

連れ去られ、柘榴を食べ、季節とともに行き来する。すべてギリシャのペルセポネから来たものです。

ローマ側にあるのは、祭の形です。

夜に行うこと。黒い獣を捧げること。百年に一度であること。

ローマ人はこの女神に、触れてはならないものとしての性格を与えました。

名を呼ぶこと自体を避ける場面もあります。冥界の神々は「あの神々」と婉曲に呼ばれました。

一方で、呪いの板には名が繰り返し刻まれます。

公には遠ざけ、私には呼び出す。 冥界の神に対するローマ人の態度が、そこに出ています。

プロセルピナを祀った神殿と遺跡

プロセルピナの神殿は、住所を確かめられませんでした。

理由があります。この女神を祀ったタレントゥムは、カンプス・マルティウスの一角にあった祭場で、神殿の形をしていませんでした。

地下から蒸気の出る場所に祭壇を築き、祭が終われば埋め戻す。

百年に一度の祭のためだけに開かれる場所でした。

そのため、正確な位置は特定されていません。近くで前17年の祭の記録を刻んだ石柱が見つかっていますが、祭場そのものは確かめられていません。

確かめられないものを、確かめたことにはしません。

プロセルピナが現代に残した痕跡

プロセルピナの名は、美術の主題植物の名に残りました。

プロセルピナの略奪: ベルニーニの大理石像。つかまれた腿に指が食い込む様子まで彫られており、彫刻の技巧の代表例とされる。

プロセルピナ: ロセッティの絵画。柘榴の実を持つ姿で描かれ、ラファエル前派の代表作の一つとされる。

柘榴の実: 冥界の食べ物として、この女神の物語から死と再生の象徴になった。

プロセルピナが司るもの

死者の安寧

冥界の后として、死者の世界を治める。

種と芽吹き

地の下から戻ることが、春の芽吹きと重ねられた。

呪詛

鉛の板に名を刻んで、願いを託す相手とされた。

プロセルピナが登場するゲーム・アニメ

美術では、ローマ名で題名が付けられるのが習わしです。

ベルニーニの彫刻もロセッティの絵画も、描かれているのはギリシャのペルセポネですが、題名はプロセルピナになります。

一方、ローマ側の特徴である世紀の祭は、作品にはまず出てきません。

百年に一度、夜だけ行われる祭。

記録が乏しく、描きようがないためです。

プロセルピナが登場する美術

プロセルピナの略奪

ベルニーニの彫刻。ローマのボルゲーゼ美術館にあります。

プロセルピナ

ロセッティの絵画。柘榴を持つ姿で描かれました。

プロセルピナが登場するゲーム・アニメ

女神転生シリーズ

冥界の女神として登場します。

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冥界を扱う作品

季節とともに行き来する設定の下敷きに使われます。

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プロセルピナについてよくある質問

プロセルピナとペルセポネは同じ神ですか。

同一視されます。名もギリシャ名がなまった形とする見方が有力です。物語はギリシャから受け継いだものですが、ローマでは国家の祭に組み込まれた点が独自です。

世紀の祭とは何ですか。

百年に一度(あるいは110年に一度)行われた祭です。前249年に始まり、夜のうちに冥界の王とこの女神へ黒い獣が捧げられました。誰も二度は見られない祭と呼ばれました。

なぜ夜に黒い獣を捧げたのですか。

天の神への祭とすべてを逆にするためです。ローマの祭では天の神に白い獣を昼に捧げるのが決まりでした。

プロセルピナの神殿は残っていますか。

確かめられませんでした。祭場は神殿の形をしておらず、祭が終われば埋め戻されたためです。正確な位置は特定されていません。

プロセルピナと併せて覚えたい言葉・用語

バー(bꜣ/人格・魂)

人の頭を持つ鳥の姿で描かれる、その人の人格にあたる部分。昼は墓を出て動き、夜は遺体へ戻るとされた。