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ローマ神話

クピードーとは何の神様か|家系図・物語

Cupido  / クピードー

ローマ固有の神

ウェヌスの子で、矢で恋を起こす神。プシューケーとの物語で知られる。

クピードーとは何の神様か

クピードーはひとことで言えば恋の欲そのものです。ギリシャ名はエロス

もう一つの呼び名はアモル。どちらも「欲する」「愛する」を意味する語からできています。

ローマではウェヌスの子として定まり、翼を持つ子どもの姿で描かれるようになりました。ギリシャの初期のエロスが青年の姿だったのと比べると、若返っています。

矢は二種類あります。

金の矢を受けた者は恋に落ちる。
鉛の矢を受けた者は相手を厭う。

オウィディウスの『変身物語』は、アポロとダプネーの話をこの二本の矢で説明しました。

2世紀のアプレイウスが書いた『黄金のろば』には、クピードーとプシューケーの長い物語が入っています。

矢を持つ翼の子どもという図像は、現代の恋の記号としてそのまま残りました。

クピードーのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「クピド」「クピードー」「キューピッド」が使われます。キューピッドは英語読みで、こちらが広く通じます。

アモルという呼び名も同じ神です。美術の題名では両方が使われます。

ローマという語を逆から読むとアモルになる。

この語呂合わせは古代から知られており、ハドリアヌス帝の建てた神殿の名にも仕掛けとして使われました。

プットーと呼ばれる、翼を持つ裸の幼児の像は、この神の図像から生まれました。ルネサンス以降の絵画に数えきれないほど描かれています。

Cupido(クピードー)

ラテン語。「欲する」を意味する語から。

Amor(アモル)

「愛」。同じ神を指すもう一つの呼び名。

Eros(エロス)

ギリシャ名。

クピードーの物語

  1. 二本の矢 ─ 恋と嫌悪
  2. プシューケーとの物語 ─ 灯りで顔を見る
  3. プットーになる ─ 図像が独り歩きする

二本の矢 ─ 恋と嫌悪

オウィディウスの『変身物語』は、この神の矢に二種類あることを書いた最初の記録の一つです。

アポロが、この神を子ども扱いして笑いました。

そんな弓は大人の武器だ。おまえには似合わない。

怒ったクピードーは、二本の矢を抜きます。

金の矢はアポロへ。鉛の矢はニンフのダプネーへ。

アポロは激しく恋をし、ダプネーは激しく厭いました。追われたダプネーは月桂樹に変わります。

恋が成り立たないのは、二人が別の矢を受けているから。

この説明は、後の文学と美術に大きな影響を与えました。

一方通行の恋が起きる理由を、神の気まぐれではなく道具の違いで説明している点が新しいところです。

ベルニーニはこの場面を大理石で彫りました。指先が葉に変わる瞬間を捉えた彫刻です。

プシューケーとの物語 ─ 灯りで顔を見る

2世紀のアプレイウスが書いた『黄金のろば』の中ほどに、長い物語が挟まっています。

クピードーとプシューケーです。

王女プシューケーは、あまりの美しさゆえにウェヌスの怒りを買います。ウェヌスは息子に、この娘を醜いものと恋に落とすよう命じました。

ところが、この神自身が娘に恋をしてしまいます。

プシューケーは人里離れた館に住まわされ、夜だけ夫が訪れます。

ただし、決して私の姿を見てはならない。

姉たちにそそのかされた娘は、ある夜、灯りをかざして夫の顔を見ました。

そのとき、灯りの油が一滴落ちます。

目を覚ました夫は去っていった。

娘は夫を探して各地をさまよい、ウェヌスから無理な仕事を課されます。最後にユーピテルの取りなしで二人は結ばれ、娘は神々の列に加えられました。

プシューケーは「魂」を意味する語です。 魂が愛を求めてさまよう話として、長く読まれてきました。

プットーになる ─ 図像が独り歩きする

この神の姿は、時代とともに若返り続けました。

ギリシャの初期のエロスは、翼を持つ青年です。原初の力として、世界の始まりに置かれることもありました。

ローマでは、ウェヌスの子として少年になります。

そしてルネサンス以降、翼を持つ裸の幼児の像が大量に描かれるようになりました。

プットーと呼ばれます。

- 絵の隅で花輪を持つ
- 天井から見下ろす
- 弓を持たないものも多い

もはや神ではなく、装飾の一部です。

一方で、弓と矢を持つ姿は記号として定着しました。

心臓に矢が刺さった図。

現代の恋の記号として、世界中で通じます。

神が装飾になり、装飾が記号になった。 図像だけが独立して広がった珍しい例です。

クピードーの家系図と家族

クピードーの親: ウェヌス

クピードーのきょうだい: バックスともにユーピテルの血筋

クピードーの性格と人物像

クピードーは、ローマで「若返った」神です。

ギリシャの初期のエロスは、世界を動かす原初の力でした。ヘシオドスは、カオスガイアに続いて生じた神として挙げています。

ローマでは、そうした重さがなくなります。

ウェヌスの子。いたずら好きな少年。

矢を放って人を恋に落とし、その結果に責任を持ちません。気まぐれで無責任な子どもとして描かれます。

しかし、アプレイウスの物語だけは違います。ここでのクピードーは、妻を思って苦しみ、母と対立し、最後は自分から取り持ちを頼みに行きます。

神としては軽く、物語の中では重い。 この落差が、この神の面白さです。

目隠しをした姿で描かれることもあります。恋が盲目であることを表す図像で、中世以降に生まれました。

クピードーを祀った神殿と遺跡

クピードーを単独で祀った神殿は、確かめられませんでした。

この神は、母ウェヌスと一緒に祀られるのが普通でした。単独の祭日も、専属の神官もありません。

概念を神にしたものだから。

ローマには、こうした神が多くいます。恐れ、勝利、希望、誠実。いずれも概念に姿を与えたものです。

そのうち国家の祭に組み込まれたものには神殿が建ちましたが、この神はそうなりませんでした。

代わりに、美術の中で最も多く描かれる神になりました。

クピードーが現代に残した痕跡

クピードーの図像は、恋の記号として世界中に広がりました。

矢の刺さった心臓の図: 恋を表す記号として世界中で通じる。この神の弓矢から生まれた。

プットー: 翼を持つ裸の幼児の像。ルネサンス以降の絵画と彫刻に数えきれないほど描かれた。

恋は盲目: 目隠しをしたこの神の図像から生まれた言い回し。中世以降に定着した。

バレンタインの意匠: 弓を持つ翼の幼児が、恋の日の飾りとして世界各地で使われている。

クピードーが司るもの

恋愛成就

矢で人を恋に落とす神。

結婚

プシューケーとの物語が、婚礼の主題として好まれた。

魂の導き

プシューケー(魂)と結ばれる物語から、魂の遍歴の主題になった。

クピードーが登場するゲーム・アニメ

この神は、神としてより「図像」として広まりました。

矢の刺さった心臓、翼のある幼児、目隠し。どれも神話の筋とは関係なく、記号として独立しています。

名前を知らなくても、絵を見れば意味が分かる。

神話の中でもっとも成功した図像といえます。

一方、アプレイウスの物語は、児童文学と舞踊の主題として繰り返し取り上げられてきました。

クピードーが登場する美術

アモルとプシュケ

カノーヴァの彫刻をはじめ、この物語は繰り返し造形されました。

眠るアモル

カラヴァッジョの絵画。弓を投げ出して眠る姿が描かれます。

クピードーが登場するゲーム・アニメ

恋愛を扱う作品

矢で恋を起こす設定が、繰り返し使われています。

女神転生シリーズ

愛の神として登場します。

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クピードーについてよくある質問

クピードーとエロスは同じ神ですか。

同一視されます。ただしギリシャの初期のエロスは世界を動かす原初の力とされ、青年の姿でした。ローマではウェヌスの子として少年の姿になっています。

キューピッドと同じですか。

同じです。キューピッドは英語読みで、日本ではこちらのほうが広く通じます。

二本の矢とは何ですか。

金の矢と鉛の矢です。金の矢を受けた者は恋に落ち、鉛の矢を受けた者は相手を厭います。オウィディウスがアポロとダプネーの話でこれを用いました。

プシューケーの物語はどこにありますか。

2世紀のアプレイウスが書いた『黄金のろば』の中に挟まれています。プシューケーは「魂」を意味する語で、魂が愛を求めてさまよう話として読まれてきました。

なぜ目隠しをしているのですか。

恋が盲目であることを表す図像です。古代のものではなく、中世以降に生まれました。

クピードーと併せて覚えたい言葉・用語

ニンフ(Νύμφη)

山・森・泉・木に宿る若い女神たち。神ではあるが不死ではなく、宿る木や泉が滅べば死ぬとされた。ギリシャ神話で最も数の多い存在。