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ローマ神話

アマータとは何の神様か|家系図・物語

Amata  / アマータ

大地 アエネーイスの人々

ラティーヌスの妃。娘の縁組に反対し、狂って自ら死んだ。

アマータとは何の神様か

アマータはひとことで言えば娘の縁組に抗って壊れた王妃です。ラティウムの王ラティーヌスの妃であり、ラーウィーニアの母にあたります。

娘は、甥のトゥルヌスに嫁がせるつもりでした。母方の血がつながっており、王家の跡取りとしても申し分ありません。

ところが神託が下ります。娘は外から来る者と結べ、と。

ユーノーの命を受けた復讐の女神アッレクトーが、王妃の胸に一匹の蛇を投げ込みました。毒は髪飾りとなって首を巻き、静かに正気を溶かしていきます。

はじめは涙で夫に訴えました。聞き入れられないと知ると、娘を連れて山へ走り、バックスの祭を装って森に隠します。ラティウムの女たちも後に続きました。

戦が始まってからも、彼女はトゥルヌスの側に立ち続けます。

やがて城外の混乱を見て、甥が討たれたと思い込みました。自らを戦の原因と責め、部屋の梁に首をくくって死にます。

アマータのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「アマータ」と書かれます。表記の揺れはほとんどありません。

この名は、ラテン語で「愛された女」を意味する語と同じ形です。

そのため、個人の名ではなく称号ではないかという議論があります。ローマではウェスタの巫女を迎えるときの決まり文句に、同じ語が用いられました。巫女に選ばれた少女を、この語で呼びかけたと伝えられます。

祭祀の言葉と同じ形の名を、詩人がわざと選んだとみる説があります。ただし確かなことはわかっていません。

作中で名が呼ばれる回数は多くありません。王妃という語で示される場面のほうが目立ちます。

日本語の書物では、トゥルヌスやラーウィーニアの説明の中で触れられることが多く、単独の項目が立つことは多くありません。

Amata(アマータ)

ラテン語で「愛された女」を意味する語と同じ形。個人の名か称号かをめぐって議論がある。

Allecto(アッレクトー)

王妃を狂わせた復讐の女神。蛇の髪を持ち、地の底から呼び出されて争いをまき散らす。

Lavinia(ラーウィーニア)

娘の名。母は甥に嫁がせようとし、父は神託に従わせようとして、両親の意向が正面から割れた。

アマータの物語

  1. 王妃の望み ─ 娘と甥
  2. 蛇と狂気 ─ アッレクトーの仕業
  3. 山へ走る ─ 祭を装う母
  4. 自ら首をくくる ─ 第12巻の死

王妃の望み ─ 娘と甥

ラティーヌス王には、跡を継ぐ男子がいませんでした。娘ラーウィーニアと結ぶ者が、そのまま土地を継ぐことになります。

王妃が望んだのは、甥のトゥルヌスでした。母方からつながる血筋であり、ラティウム中でもっとも力のある若い王です。

縁組は、ほとんど決まっていました。

そこへ神託が下ります。娘を土地の者に嫁がせてはならない、外から来る者と結べ。さらに外来のアエネーアースが着き、王は使者を迎えて娘と土地を約束しました。

王妃にとっては、二重の裏切りに見えたはずです。 決まっていた縁組が覆り、甥が退けられ、素性の知れない漂泊者が跡取りになる。

彼女は泣いて夫に訴えました。神託は外国の者を指しているのではない、トゥルヌスとて祖をたどれば外から来た家ではないか、と。

筋の通った反論を、詩はきちんと書き残しています。 王妃の主張は、狂う前から一貫していました。

蛇と狂気 ─ アッレクトーの仕業

ユーノーは、地の底から復讐の女神アッレクトーを呼び出しました。争いと嘆きをまき散らす、蛇の髪を持つ女神です。

女神が最初に向かった先が、王妃でした。

青黒い髪から一匹の蛇を抜き取り、女の胸に投げ込んだ。

蛇は肌の上をすべり、首を巻くねじれた金の飾りに姿を変え、長い髪紐となって体をめぐります。本人は何も気づきません。

毒は少しずつまわりました。はじめは母らしい涙と言葉で夫に訴えます。それが通らないと知ると、言葉は激しくなり、やがて理を失いました。

詩人は、独楽にたとえます。子どもが鞭で打つ独楽が、床の上を狂ったように回り続けるように、彼女は町中を駆け回った、と。

狂気は外から入りました。人の弱さではなく、神の仕掛けとして書かれています。

この描き方が、王妃を単なる悪役から外しています。 ローマの読者は、彼女を憎むよりも憐れむように導かれます。

山へ走る ─ 祭を装う母

正気を失った王妃は、娘を連れて町を出ました。

向かった先は森と山です。彼女はバックスの祭を装いました。酒の神を祀る秘儀は、女たちが町を離れて山に入り、髪をふり乱して歌い踊るものです。

祭の名を使えば、誰も止められません。

彼女は娘を木立の奥に隠し、婚礼の松明はここにあると叫びました。ラティウムの女たちも、噂を聞いて次々に家を出ます。機織りの道具を捨て、子を置いて、山へ向かいました。

これは反乱に近い出来事です。都から女たちが消え、王家の娘の行方がわからなくなりました。

祭祀を口実に使った点が重く受け取られてきました。ローマでは、バックスの秘儀は共和政期に厳しく取り締まられた対象です。詩の読者は、その記憶と重ねてこの場面を読んだとみられます。

神の祭が、政治の手段として使われる場面です。 王妃はここで、母から扇動者へと変わりました。

自ら首をくくる ─ 第12巻の死

戦は続き、やがて一騎討ちで決着をつけることになりました。

しかし妹ユートゥルナの仕掛けで和議が破れ、戦が再開します。アエネーアースは方針を変え、都そのものを攻めることにしました。

城壁に火矢が飛び、市街に炎が上がります。宮殿から外を見た王妃は、どこにもトゥルヌスの姿を見つけられませんでした。

甥は討たれた。そう思い込みます。

彼女は、この戦のすべての原因が自分にあると口にしました。娘の縁組を覆そうとしたこと、甥をあおったこと、女たちを山へ導いたこと。

そして髪をかきむしり、紫の衣を裂き、部屋の高い梁に縄をかけて首をくくりました。

知らせは市中に広がります。娘は髪を裂いて泣き、老王は衣を土にまみれさせました。

トゥルヌスは、この報せを戦場で聞きます。彼が一騎討ちに戻ることを決めたのは、この直後です。

母の死は、娘に嫁ぐ日ではなく喪の日をもたらしました。 詩は、王妃の死を戦の終わりの引き金として置いています。

アマータの家系図と家族

アマータの妻・夫: ラティーヌス

アマータの子・子孫: ラーウィーニア

アマータの性格と人物像

アマータは、筋の通った反対者として登場し、狂気に押し流される人物です。

最初の訴えには理があります。決まっていた縁組を覆す理由が神託だけでは、母として納得できません。その主張は、正気のうちに述べられています。

狂ったのは、そのあとです。

蛇を投げ込まれてからの彼女は、町を駆け、祭を装い、女たちを率いて山へ入ります。行動は激しくなりますが、目的は変わりません。 娘を甥に嫁がせること、その一点だけです。

狂気が目的を変えず、手段だけを狂わせていく点が、この人物の描かれ方の要です。

死に方にも意味が置かれています。剣ではなく縄を選び、部屋の中で果てました。古代の物語では、この死に方は不名誉なものとされます。

一方、詩人は彼女に責めを負わせきってもいません。狂気は神が持ち込んだものであり、本人の落ち度としては書かれていません。憐れむように読ませる書き方が、最後まで保たれています。

アマータゆかりの地と遺跡

アマータを祀った場所は、記録に残っていません。 神ではなく、叙事詩の登場人物だからです。

住所を確かめられる場所も見つかっていません。そのため、この節には何も挙げていません。無いものを書かないためです。

舞台となった土地は、いくつか分かっています。

夫の都ラウレントゥムは、ローマの南の海沿いにあったとされますが、正確な位置は特定されていません。

娘を隠した森と山も、作中では具体的な地名が与えられていません。ラティウムの山地とだけ書かれています。

近くのラーウィーニウムは位置が判明しており、祭壇群と英雄廟の遺構が残ります。ただし、これらはいずれもこの王妃と結びつけられた施設ではありません。

ゆかりの地として案内できる確かな地点が無いことを、そのまま記しておきます。

アマータが現代に残した痕跡

この王妃の名は、狂気の場面として残りました。

独楽の比喩: 鞭で打たれた独楽が回り続ける姿にたとえた一節。古代から名高い比喩として引かれてきた。

バックスの祭を装う話: 秘儀を口実に女たちを山へ導いた場面。祭祀が政治に使われる例として読まれてきた。

アマータという語: ウェスタの巫女を迎える儀式の決まり文句と同じ形。名と称号の関係が議論されている。

母親という役どころ: 娘の縁組に抗う母の型。後世の物語で繰り返し用いられる形になった。

アマータが司るもの

母の情

娘の縁組をめぐって最後まで抗った母として描かれた。

狂気の由来

外から持ち込まれた狂気の例として、その筋書きが語られた。

戦の転機

その死が一騎討ちを引き寄せ、物語の終わりを早めた。

アマータが登場するゲーム・アニメ

この王妃が単独で描かれることは、ほとんどありません。 場面としては、アッレクトーが蛇を投げ込むところが選ばれます。

眠る女と、蛇を持つ女神という構図です。

写本の挿絵や近世の版画に、この場面が繰り返し現れます。狂気が外から入る様子を一枚で示せるためです。

近年では、娘の側から物語を語り直す小説のなかで、娘を強く支配しようとする母として厚みを与えられています。

日本では、『アエネーイス』の紹介の中でトゥルヌスやラーウィーニアの説明に添えて触れられる程度で、単独で取り上げられる機会は限られています。

アマータが登場する古典の記述

アエネーイス

第7巻で狂わされ、第12巻で自ら死ぬまでが描かれます。

ウェルギリウス注釈

古代の注釈書。名の意味と儀式の言葉との関係が論じられています。

アマータが登場する絵画・小説

アッレクトーの場面を描いた図

蛇を投げ込む女神と、眠る王妃という構図で描かれます。

ラウィニア

ル=グウィンの小説。娘の目から見た母として描かれます。

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アマータについてよくある質問

アマータはどんな人物ですか。

ラティウムの王ラティーヌスの妃で、ラーウィーニアの母です。娘を甥のトゥルヌスに嫁がせようとしましたが、神託によって外来のアエネーアースが婿と定まったため、最後まで反対しました。

なぜ狂ったのですか。

ユーノーの命を受けた復讐の女神アッレクトーが、王妃の胸に一匹の蛇を投げ込んだためです。蛇は首を巻く金の飾りと髪紐に姿を変え、本人が気づかないまま毒が回っていったと描かれます。

バックスの祭を装ったとはどういうことですか。

酒の神の秘儀は、女たちが町を離れて山に入るものでした。王妃はこれを口実に娘を連れ出し、木立の奥に隠しました。ラティウムの女たちも家を捨てて続いたと描かれ、事実上の反乱に近い場面になっています。

どのように死にましたか。

城外の混乱を見てトゥルヌスが討たれたと思い込み、戦の原因は自分にあると口にして、部屋の高い梁に縄をかけて首をくくりました。アエネーイス第12巻の場面です。

アマータを祀った場所はありますか。

ありません。叙事詩の登場人物であり、祭祀の対象ではないためです。舞台とされるラウレントゥムも位置が特定されておらず、ゆかりの地として案内できる確かな地点は見つかっていません。