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ローマ神話

ヤーヌスとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Ianus  / ヤーヌス

大地 ローマ固有の神

前と後ろに顔を持つ、始まりと門の神。ギリシャに対応する神がいない。

ヤーヌスとは何の神様か

ヤーヌスはひとことで言えば始まりの神です。

ギリシャに対応する神がいません。

ローマの神の多くはギリシャの神と重ねられました。ユーピテルゼウスウェヌスはアプロディーテー。しかしこの神だけは、重ねる相手が見つかりませんでした。

ローマ固有の神。

前と後ろに顔を持ちます。過ぎたことと、これから来ることを同時に見る姿です。

祈りを捧げるとき、どの神より先にこの神の名を呼びました。始まりを司る神だからです。

フォルム・ロマーヌムには、両側に扉のある小さな建物がありました。

戦のあいだは扉を開き、平和になれば閉じる。

建国から数えて、閉じられた回数はごくわずかです。

1月の月名はこの神によります。年の入口の月です。

ヤーヌスのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「ヤヌス」「ヤーヌス」「ジャヌス」が使われます。ジャヌスは英語読みです。

1月を指す語は、この神の名です。年の入口の月であることによります。

門・扉を指す語も同じ語源から出ています。

ヤヌス的という言い方は、一つのものが相反する二つの顔を持つ状態を指す言葉として、いまも使われます。

ローマの家では、玄関の内側の扉を守る神ともされました。入口そのものが神格化された形です。

Ianus(ヤーヌス)

ラテン語。門・通り道を意味する語につながる。

Ianus Geminus(ヤーヌス・ゲミヌス)

「二重のヤーヌス」。フォルムの門の建物を指す呼び名。

Ianus Bifrons(ヤーヌス・ビフロンス)

「二つの額を持つヤーヌス」。二つの顔を持つ姿を指す。

ヤーヌスの物語

  1. 戦のあいだ開く門 ─ 閉じられた回数
  2. すべての祈りの最初に ─ 名を呼ぶ順序
  3. 1月と一年の始まり ─ 暦が動いたとき

戦のあいだ開く門 ─ 閉じられた回数

フォルム・ロマーヌムの北寄りに、小さな建物がありました。

神殿というより、両端に扉のある通路です。

ローマが戦っているあいだ、この扉は開いている。
国中に平和が戻れば、閉じられる。

伝えでは、ヌマ王がこの決まりを定めたとされます。

しかし、ローマはほとんどつねに戦っていました。

リウィウスによれば、建国から自分の時代までに閉じられたのは二度だけでした。ヌマの治世と、前235年です。

アウグストゥスは、自らの治世に三度閉じたと『業績録』に書いています。

扉が閉まっていること自体が、記録に値する出来事でした。

なぜ戦時に開くのか。軍を送り出した道が塞がらないように、という説明が伝わりますが、古代の著述家も理由を確かめられずにいます。

建物そのものは現存しません。貨幣に刻まれた図から、姿がおおよそ分かるだけです。

すべての祈りの最初に ─ 名を呼ぶ順序

ローマの祭祀には、神の名を呼ぶ順序がありました。

その最初が、ヤーヌスです。

どの神への祈りであっても、まずこの神の名を呼ぶ。

ユーピテルより先です。始まりを司る神であるため、祈りという行為の入口を開ける役目を持っていました。

そして、最後に呼ばれるのがウェスタです。

始まりのヤーヌス、終わりのウェスタ。

祭りは門で始まり、竈で終わる。ローマ人の祭祀の形が、この二柱に挟まれています。

家ごとの祭でも同じでした。食事の前には、まずこの神に酒を注ぎます。

神々の順位ではなく、手続きの順序でした。 ヤーヌスが最高神なのではありません。最初に来る神なのです。

専属の神官は置かれず、代わりにレクス・サクロールム(祭祀の王)が担当しました。王がいなくなったあと、その祭祀上の役目だけを引き継いだ職です。

1月と一年の始まり ─ 暦が動いたとき

ローマのもっとも古い暦では、一年は3月に始まりました。

軍を動かし始める月です。

1月と2月は、そもそも月として数えられていませんでした。冬のあいだは農事も戦もないためです。

のちに、この二か月が暦に加えられた。

そして前153年、執政官の就任日が1月1日に移されます。

これによって、1月が年の始まりとして定着しました。

ヤーヌスの名が付いた月が、年の入口になります。神の性格と月の位置が、あとから一致した形です。

1月1日には、縁起のよいことをする習わしがありました。

- 良い言葉だけを使う
- 少しだけ仕事をする
- 蜜と棗と無花果を贈り合う

一年の初めの日が、一年全体を決める。

そう考えられていたためです。この考え方は、いまも各地の年始の習わしに残っています。

ヤーヌスの家系図と家族

ヤーヌスのきょうだい: ウェスタ祈りの最初と最後に呼ばれる

ヤーヌスの妻・夫: ウェニーリア変身物語ではヤーヌスの妃とされる

ヤーヌスの性格と人物像

ヤーヌスは、ローマの神々のなかでもっとも「ローマらしい」神です。

物語がありません。恋も争いもしません。

代わりにあるのは、位置です。

入口にいる。始まりにいる。過去と未来の境にいる。

ローマ人は、こうした「あいだ」に神を置きました。境の神テルミヌス、門の神ヤーヌス、境を越える神メルクリウス

どこかとどこかの継ぎ目に、必ず神がいます。

伝えでは、この神は黄金時代のラティウムを治め、サートゥルヌスを迎え入れた王だったともされます。神と王のあいだが、ここでも曖昧です。

古代のローマ人自身、この神の由来を説明しきれていませんでした。 オウィディウスは『祭暦』で神に直接尋ねる形をとり、神に自分の由来を語らせています。

ヤーヌスを祀った神殿と遺跡

ヤーヌスの祀られ方は、神殿より門そのものでした。

ローマ市内には、この名で呼ばれるアーチ状の通路が各所にありました。市場の一角にもあり、両替商が集まる場所として知られています。

神殿ではなく、通り抜ける場所が聖域だった。

家の扉にも、この神がいるとされました。入口という機能そのものが神格化されています。

住所を確かめられたのは、フォルムの門の一か所だけです。

ヤーヌス神殿(Ianus Geminus)

戦時に開き、平時に閉じた門

地図で開く

ヤーヌス神殿の住所: イタリア ローマ フォロ・ロマーノ北寄り(北緯41.8933 東経12.4851)

ヤーヌス神殿の祀られた神: ヤーヌス

ヤーヌス神殿に残るもの: 現存しない

ヤーヌス神殿のご利益: 平和

両端に扉のある小さな建物です。神殿というより通路の形をしていました。

戦のあいだは開き、平和になれば閉じる。

ヌマ王が定めたと伝えられます。建国からリウィウスの時代までに閉じられたのは二度だけでした。

アウグストゥスは自らの治世に三度閉じたと記録しています。

建物は現存しません。 貨幣に刻まれた図から姿がおおよそ分かるだけです。

遺構は残っていない。位置はフォロ・ロマーノの中と推定されている。

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ヤーヌスが現代に残した痕跡

ヤーヌスの名は、1月・門を指す語・比喩に残りました。

1月: ヨーロッパの諸言語の1月は、いずれもこの神の名に由来する。年の入口の月であることによる。

門・扉を指す語: 守衛や管理人を指す語も、同じ語源から生まれた。

ヤヌス的: 一つのものが相反する二つの顔を持つ状態を指す比喩。社会や制度を論じる場面で使われる。

二面の顔の意匠: 古代の貨幣に刻まれた二つの顔の図像が、いまも記章や商標に用いられている。

ヤーヌスが司るもの

物事の始まり

すべての祈りの最初に名を呼ばれた。新しいことを始めるときに祈られた。

門と入口の守り

家の扉を守る神でもあった。

平和

門の扉が閉じることが、国中の平和を意味した。

ヤーヌスが登場するゲーム・アニメ

ギリシャに対応する神がいないため、この神だけはローマ名でしか呼ばれません。

作品では、二つの顔という視覚的な特徴がそのまま使われます。

表と裏、過去と未来、善と悪。

門の神・始まりの神という本来の役目より、二面性の記号として扱われることがほとんどです。

ヤーヌスが登場するゲーム・アニメ

女神転生シリーズ

二つの顔を持つ神として登場します。

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二面性を扱う作品

相反する二つの顔を持つ人物や組織の名として用いられます。

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ヤーヌスについてよくある質問

ヤーヌスに対応するギリシャの神はいますか。

いません。ローマの神の多くはギリシャの神と重ねられましたが、この神だけは対応する相手が見つかりませんでした。ローマ固有の神です。

なぜ祈りの最初にこの神を呼ぶのですか。

始まりを司る神だからです。祈りという行為の入口を開ける役目を持っていました。最後に呼ばれるのはウェスタです。

神殿の扉はいつ閉じられましたか。

リウィウスによれば、建国から彼の時代までに二度だけです。ヌマの治世と前235年でした。アウグストゥスは自らの治世に三度閉じたと記録しています。

1月の名はこの神に由来しますか。

そうです。ただし、ローマの古い暦では一年は3月に始まりました。前153年に執政官の就任日が1月1日に移り、1月が年の始まりとして定着しました。