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ローマ神話

ウェスタとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Vesta  / ウェスタ

十二の主神

国家の竈の火を守る女神。神殿に像は無く、消えない火そのものが祀られた。

ウェスタとは何の神様か

ウェスタはひとことで言えば国家の火です。ギリシャ名はヘスティア

ギリシャのヘスティアは、十二神に数えられながら物語をほとんど持ちません。ローマのウェスタは違います。

国家そのものの火を預かる女神。

フォルム・ロマーヌムの円い神殿には、神像が置かれませんでした。 燃え続ける火そのものが女神だったためです。

火を守ったのはウェスタの巫女です。6人が選ばれ、30年のあいだ務めました。

- 火を絶やせば鞭で打たれる
- 貞潔の誓いを破れば生き埋めにされる

一方で、巫女は女性としては例外的な権利を持っていました。父の権力から離れ、自分の財産を持ち、遺言を書くことができました。

6月7日から15日のウェスターリアの間だけ、女性が神殿の奥に入ることを許されました。

ウェスタのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「ウェスタ」「ヴェスタ」の両方が使われます。

を意味する語につながるとされますが、語源は完全には分かっていません。

巫女はウェスタの処女と訳されることもあります。正式にはウィルゴ・ウェスターリスです。

神殿には像がない。

このことは古代の著述家も繰り返し書いています。オウィディウスは、自分も長らく像があると思い込んでいたと『祭暦』に記しています。

火そのものが女神である以上、姿を刻む必要がありませんでした。

Vesta(ウェスタ)

ラテン語。竈を意味する語につながるとされる。

Virgo Vestalis(ウィルゴ・ウェスターリス)

ウェスタの巫女の正式な呼び名。

Hestia(ヘスティア)

ギリシャ名。

ウェスタの物語

  1. 像のない神殿 ─ 火そのものが女神
  2. ウェスタの巫女 ─ 30年と生き埋めの罰
  3. ウェスターリア ─ 驢馬が休む日

像のない神殿 ─ 火そのものが女神

フォルム・ロマーヌムの東寄りに、円い神殿が建っていました。

ローマの神殿はふつう長方形です。この神殿だけが円い形をしています。

原始の小屋の形を残したもの。

そう説明されます。草葺きの丸い小屋が、石で写し取られた姿だという見方です。

神殿の中には、神像がありませんでした。

代わりにあるのは炉の火です。この火は絶やしてはならないとされ、消えれば国家の危機と受け取られました。

3月1日には、新しい年の火を起こす儀式が行われます。火は木をこすって新しく取り出されました。 他の火から移すことは許されません。

神殿の奥にはペヌスと呼ばれる部屋があり、外から見ることのできない品が納められていました。

その中にパラディウムがあったとされます。トロイアから運ばれた女神の像で、これがある限りローマは滅びないと信じられていました。

ウェスタの巫女 ─ 30年と生き埋めの罰

火を守ったのはウェスタの巫女です。

6歳から10歳の少女のうちから、家柄と体に欠けのない者が選ばれました。定員は6人です。

務めは30年

最初の10年は学び、次の10年は務め、最後の10年は教える。

その間、結婚は許されません。務めを終えれば結婚できましたが、実際にする者は少なかったと伝えられます。

罰は重いものでした。

- 火を絶やせば、大神官に鞭で打たれる
- 貞潔の誓いを破れば、生き埋めにされる

生き埋めにするのは、巫女の体に手を下して血を流すことが許されなかったためです。市壁の内側の一角へ地下室を掘り、わずかな食物とともに閉じ込めました。

一方で、巫女は当時の女性としては例外的な立場にありました。

父の権力から外れ、財産を持ち、遺言を書ける。
劇場では特別な席に座り、道で会えば執政官も道を譲る。

そして、刑場へ向かう囚人に偶然出会えば、その者を赦すことができました。

ウェスターリア ─ 驢馬が休む日

6月7日から15日まで、ウェスターリアが行われました。

この期間だけ、神殿の奥に女性が入ることを許されます。 ふだんは巫女以外、誰も入れません。

女たちは裸足で神殿へ向かい、供え物を捧げました。

祭のあいだ、驢馬は仕事を休みます。 首に花輪とパンを掛けてもらいました。

粉を挽く仕事をする獣だから。

オウィディウスは、驢馬が鳴いてウェスタを危機から救ったという話も伝えています。

最終日の6月15日、神殿の掃除が行われました。掃き出したごみはティベリス川へ流されます。

この日までは不吉な日とされ、結婚も公の仕事も避けられました。掃除が終わってはじめて、日常が戻ります。

神殿の火は、394年に消されました。 キリスト教が国教となり、異教の祭祀が禁じられたときです。

ウェスタの家系図と家族

ウェスタの親: サートゥルヌスオプス

ウェスタのきょうだい: ユーピテルヤーヌス祈りの最初と最後に呼ばれるマートゥータともに一度だけ結婚した女が祀る

ウェスタの性格と人物像

ウェスタには、物語がまったくと言ってよいほどありません。

恋も争いもしません。姿もありません。

ローマの神々の中で、この女神だけが行為ではなく状態として存在しています。

燃え続けていること。それがこの女神のすべて。

ただ一つ伝わる話があります。プリアポスに襲われかけたとき、驢馬の鳴き声で目を覚まして難を逃れたというものです。オウィディウスの『祭暦』にあります。

この話は、驢馬を祭に加える理由として作られたものとみられています。

ローマ人にとってウェスタは、家の竈と国家が同じものだという考えを形にした女神でした。家の火を守ることが、そのまま国を守ることだったのです。

ウェスタを祀った神殿と遺跡

ウェスタの信仰は、神殿だけのものではありませんでした。

家ごとに竈があり、そこにもこの女神がいるとされます。

国家の火と、家の火は同じもの。

食事のときには、竈の火に少しの食べ物を投げ入れる習わしがありました。

レギアと呼ばれる建物も神殿のすぐ隣にあり、大神官の役所として使われました。ウェスタの祭祀と深く結びついた場所です。

ウェスタ神殿(Aedes Vestae)

国家の火を納めた神殿

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ウェスタ神殿の住所: イタリア ローマ フォロ・ロマーノ東端(北緯41.8917 東経12.4862)

ウェスタ神殿の祀られた神: ウェスタ

ウェスタ神殿に残るもの: 円形の基壇と柱の一部(一部復元)

ウェスタ神殿のご利益: 国家の存続

ローマ国家の火を納めた円い神殿です。

神像はありませんでした。 燃え続ける炉の火そのものが女神です。

奥のペヌスと呼ばれる部屋には、外から見ることのできない品が納められていました。トロイアから運ばれたパラディウムもその中にあったとされます。

火は394年に消されました。 異教の祭祀が禁じられたときです。

フォロ・ロマーノの入場券で見学できる。一部が復元されている。

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アトリウム・ウェスタエ(Atrium Vestae)

ウェスタの巫女の館

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アトリウム・ウェスタエの住所: イタリア ローマ パラティーノの丘北西斜面(北緯41.8914 東経12.4866)

アトリウム・ウェスタエに残るもの: 中庭・水盤・巫女の像の台座

ウェスタの巫女が住んだ館です。神殿のすぐ隣にあります。

長い中庭に沿って部屋が並び、中央に水盤がありました。

中庭には歴代の大巫女の像が並べられていました。台座の一部がいまも残っています。

ある台座は、名前の部分だけが削り取られています。 キリスト教に改宗した巫女のものではないかと推測されていますが、確かめられてはいません。

フォロ・ロマーノの中にあり、神殿と続けて見学できる。

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ティヴォリのウェスタ神殿(Templum Vestae Tiburtinum)

崖の上に建つ円形神殿

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ティヴォリのウェスタ神殿の住所: イタリア ラツィオ州 ティヴォリ ヴィラ・グレゴリアーナ(北緯41.9666 東経12.8008)

ティヴォリのウェスタ神殿の祀られた神: ウェスタ

ティヴォリのウェスタ神殿に残るもの: 円形の神殿(柱が多く残る)

ティヴォリのウェスタ神殿のご利益: 家庭の安泰

前1世紀の初めごろに建てられた円い神殿です。

アニエーネ川の滝を見下ろす崖の上に立っています。

ローマの神殿より保存がよく、柱と屋根の一部が残っています。

18世紀以降、この景色は多くの画家に描かれ、ヨーロッパの庭園に模造の神殿が造られるきっかけになりました。

ヴィラ・グレゴリアーナの敷地内。滝と合わせて見学できる。

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ウェスタが現代に残した痕跡

ウェスタの名は、天体・マッチ・語彙に残りました。

小惑星ベスタ: 1807年に発見された小惑星。小惑星帯で最も明るく、条件がよければ肉眼でも見える。

マッチの商標: 19世紀のイギリスで、蝋を芯にしたマッチがこの女神の名で売られた。

円形神殿の意匠: ティヴォリの神殿が描かれたことから、ヨーロッパの庭園に円形の模造神殿が数多く造られた。

ウェスタが司るもの

家庭の安泰

家の竈の火を司る。家ごとの祭りでも名が呼ばれた。

国家の存続

神殿の火が絶えれば国家の危機とされた。

火の管理

火を絶やさないこと自体が信仰の中心だった。

ウェスタが登場するゲーム・アニメ

作品に出るのは、女神そのものより「ウェスタの巫女」の制度です。

6人の乙女、30年の務め、破れば生き埋め。

この条件がそのまま物語の仕掛けとして使われます。

女神自身は姿も物語も持たないため、描きようがないという事情もあります。

ウェスタが登場するゲーム・アニメ

女神転生シリーズ

炉の火の女神として登場します。

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巫女を扱う作品

ウェスタの巫女の制度が、聖なる乙女の設定の下敷きに使われます。

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

ウェスタについてよくある質問

ウェスタの神殿に像がないのはなぜですか。

燃え続ける火そのものが女神だからです。オウィディウスも、自分は長らく像があると思い込んでいたと書いています。

ウェスタの巫女はどんな人たちですか。

6歳から10歳の少女から選ばれた6人です。30年務め、その間は結婚できません。火を絶やせば鞭で打たれ、貞潔の誓いを破れば生き埋めにされました。

巫女には特権がありましたか。

ありました。父の権力から離れ、自分の財産を持ち、遺言を書くことができました。刑場へ向かう囚人に偶然出会えば、その者を赦すこともできました。

ウェスタの火はいつ消えたのですか。

394年です。キリスト教が国教となり、異教の祭祀が禁じられたときに消されました。

ウェスタ神殿は見学できますか。

できます。ローマのフォロ・ロマーノ東端に円形の基壇と柱が一部復元されています。隣の巫女の館も続けて見学できます。