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ローマ神話

メルクリウスとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Mercurius  / メルクリウス

十二の主神

商いの神。名は「商品」を意味する語から生まれ、商人たちに祀られた。

メルクリウスとは何の神様か

メルクリウスはひとことで言えば商人の神です。ギリシャ名はヘルメス

ギリシャのヘルメスは、伝令であり、旅人と盗人の守り手であり、死者を導く神です。

ローマのメルクリウスは、そこから一つの役目を選び取りました。

商い。

名そのものが商品を意味する語から生まれています。ローマでの役目が、名前に出ています。

前495年、アウェンティヌスの丘に神殿が奉献されました。同じ日に商人の組合が置かれ、5月15日が商人の祭日になります。

オウィディウスの『祭暦』は、この日の光景を伝えています。商人はカペーナ門の近くの泉へ行き、月桂樹の枝で水をかぶって商品と自分を清め、そのうえでこう祈りました。

これまでついた嘘を、どうか水に流してください。

翼のある帽子と靴、二匹の蛇が巻きついた杖は、ヘルメスから受け継いだ姿です。

メルクリウスのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「メルクリウス」「マーキュリー」が使われます。マーキュリーは英語読みです。

水星を指す語は、この神の名です。太陽のそばを素早く動くことから、足の速い神に結びつけられました。

水銀を指す語も同じです。

常温で流れる金属であることから、素早く動く神の名が与えられました。

水曜日を指す語も、多くのヨーロッパの言語でこの神の名です。ローマの曜日の名が、そのまま残っています。

Mercurius(メルクリウス)

ラテン語。商品を意味する語から生まれたとされる。

Hermes(ヘルメス)

ギリシャ名。

メルクリウスの物語

  1. 嘘を洗い流す ─ 5月15日の祭
  2. アウェンティヌスの神殿 ─ 平民の側の神
  3. 死者を導く神 ─ もう一つの顔

嘘を洗い流す ─ 5月15日の祭

5月15日が商人の祭日でした。

オウィディウスの『祭暦』に、その日の様子が細かく書かれています。

商人はカペーナ門の近くの泉へ行き、壺に水を汲みます。月桂樹の枝を浸し、売る品と自分の頭に水をかけました。

そして祈ります。

過ぎた日の偽りを洗い流してください。
過ぎた日の言葉を洗い流してください。
私が神々を証人に立てて嘘をついたとしても、
風がそれを運び去ってくれますように。

そのうえで、こう続けました。

どうか、私の商いに儲けをください。買い手を欺く喜びをください。

嘘をついたことを認めたうえで、これからも嘘をつけるように祈っている。

オウィディウスは笑いを取るために書いたのかもしれません。しかし、商いの神に何を求めたかは、この一節によく出ています。

アウェンティヌスの神殿 ─ 平民の側の神

前495年、アウェンティヌスの丘に神殿が奉献されました。

大競技場を見下ろす位置です。

この年、ローマは平民と貴族の対立が激しくなっていました。

神殿の奉献をめぐって、執政官が争います。元老院は判断を人民に委ね、一介の百人隊長が奉献役に選ばれました。

貴族はこれに強く反発した。

同じ日、商人の組合が公に認められます。

ローマの丘のうち、アウェンティヌスは平民の丘でした。ケレースリーベルリーベラの神殿もここにあります。

商いの神と穀物の神が、同じ丘に並んでいました。 どちらも貴族ではなく平民の側の神です。

神殿そのものの遺構は残っていませんが、位置は丘の斜面と特定されています。

死者を導く神 ─ もう一つの顔

メルクリウスには、死者を導くという役目もありました。

ギリシャのヘルメスから受け継いだものです。

杖で魂を呼び集め、冥界へ送り届ける。この姿はプシュコポンポス(魂の送り手)と呼ばれます。

ローマでは、ムンドゥスと呼ばれる穴が年に三度開かれました。冥界への口とされる穴です。

開いている日は、公の仕事をしてはならない。

商いの神が死者も導くという組み合わせは、奇妙に見えます。

しかし、どちらも「境を越えて行き来する」役目です。市場は外から来る者と取引する場であり、冥界は生者と死者の境です。

ヘルメスが境界の神であったことが、ローマでも受け継がれました。

杖に二匹の蛇が巻きついたカドゥケウスは、この神の持ち物です。医学の記号としてよく使われますが、これは別の杖との取り違えによるものです。

メルクリウスの家系図と家族

メルクリウスの親: ユーピテルラレースメルクリウスの子

メルクリウスのきょうだい: オプスともに富を司る

メルクリウスの妻・夫: ラールンダ冥界へ送る道中で交わる

メルクリウスの子・子孫: ラレース

メルクリウスの性格と人物像

メルクリウスは、ローマの神々のなかでもっとも実利的な神です。

祈られる内容がはっきりしています。儲けること。

ギリシャのヘルメスが持つ、いたずら好きで機転の利く性格は、ローマでもそのまま受け継がれました。生まれた日に牛を盗む話も知られています。

しかし、ローマでこの神に祈った人々が求めたのは、物語ではありません。

商いがうまくいくこと。

帝国の各地、とくにガリアで広く祀られました。カエサルは『ガリア戦記』で、ガリア人がもっとも崇める神はメルクリウスだと書いています。

ただし、それはガリアの神をローマ名で呼んだものです。同じ名で呼ばれていても、中身は土地ごとに違いました。

メルクリウスを祀った神殿と遺跡

メルクリウスの祀られ方は、神殿より街道沿いの祠が中心でした。

道の分かれ目や境の石に、この神の姿を刻んだ柱が立てられます。

行き来する者を守る神だから。

帝国の各地、とくにガリアとゲルマニアで広く祀られました。ただし、そこで祀られていたのは土地の神で、ローマ名で呼ばれていただけの場合が多くあります。

住所を確かめられたのは、ローマのアウェンティーノの丘の神殿だけです。

メルクリウス神殿(Aedes Mercurii)

商人の組合の拠り所

地図で開く

メルクリウス神殿の住所: イタリア ローマ アウェンティーノの丘(北緯41.8833 東経12.4833)

メルクリウス神殿の祀られた神: メルクリウスとマイア

メルクリウス神殿に残るもの: 地上に残っていない

メルクリウス神殿のご利益: 商売繁盛

前495年に奉献された神殿です。大競技場を見下ろす斜面にありました。

奉献の日、商人の組合が公に認められました。 5月15日が商人の祭日になります。

奉献役をめぐって執政官が争い、結局、一介の百人隊長が選ばれました。 貴族は強く反発したと記録されています。

母神マイアと合わせて祀られました。

地上に遺構はない。丘の斜面と位置が特定されている。

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メルクリウスが現代に残した痕跡

メルクリウスの名は、惑星・金属・曜日に残りました。

水星: 太陽のそばを素早く動くことから、足の速い神の名が与えられた。

水銀: 常温で流れる金属。素早く動くことからこの神の名で呼ばれた。元素記号は別の語に由来する。

水曜日: フランス語・イタリア語・スペイン語の水曜日は、いずれもこの神の名に由来する。

カドゥケウス: 二匹の蛇が巻きついた杖。商業の記号として用いられる。医学の記号とされることがあるが、それは別の杖との取り違えによる。

メルクリウスが司るもの

商売繁盛

5月15日に商品と自分を清め、儲けを祈った。

旅の安全

道と旅人の守り手。街道沿いに祠が置かれた。

弁舌

伝令の神として、言葉の巧みさを司る。

メルクリウスが登場するゲーム・アニメ

作品ではヘルメスの名のほうが使われることが多く、メルクリウスの名は惑星と金属の名として出てくる場合がほとんどです。

ローマ側の特徴である5月15日の祭は、まず作品に出てきません。

儲けを祈る神は、物語の主役になりにくい。

メルクリウスが登場するゲーム・アニメ

女神転生シリーズ

伝令と商いの神として登場します。

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水星を扱う作品

惑星の名を通して、この神の名が使われます。

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メルクリウスについてよくある質問

メルクリウスとヘルメスは同じ神ですか。

同一視されますが、ローマでは商いの神という役目が中心でした。名そのものが商品を意味する語から生まれています。

5月15日には何をしましたか。

商人が泉の水を汲み、月桂樹の枝で商品と自分に水をかけて清めました。これまでの嘘を洗い流し、これからの儲けを祈ったとオウィディウスが伝えています。

メルクリウスの神殿はどこにありましたか。

ローマのアウェンティーノの丘です。大競技場を見下ろす斜面にありました。地上に遺構は残っていません。

水星と水銀の名はこの神に由来しますか。

どちらもそうです。素早く動くことから、足の速い神の名が与えられました。