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ローマ神話

ディアーナとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Diana  / ディアーナ

十二の主神

森と狩りの女神。ネミ湖の聖域では、祭司の座が決闘で受け継がれた。

ディアーナとは何の神様か

ディアーナはひとことで言えば森の女神です。ギリシャ名はアルテミス

ローマでのこの女神には、ギリシャに無い二つの顔があります。

一つはラテン人の共同の神です。アウェンティヌスの丘の神殿は、王セルウィウス・トゥッリウスがラテン諸都市の共同の聖所として建てたと伝えられます。

8月13日の祭日は、奴隷の休日だった。

外から来た者、身分の低い者を受け入れる女神でした。

もう一つがネミ湖畔の聖域です。ここの祭司は「森の王」と呼ばれました。

逃亡奴隷でもなることができます。ただし条件がありました。

前任者を討ち取った者だけが、その座に就ける。

三叉路に立つ姿はトリウィアと呼ばれ、月・地上・冥界の三つの顔を持つ女神として語られました。

ディアーナのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「ディアナ」「ディアーナ」「ダイアナ」が使われます。ダイアナは英語読みです。

名は輝くものを意味する語につながるとされ、ユーピテルの名と同じ語幹から出ているという見方があります。

昼の光の神と、夜の光の女神。

そう説明されることがありますが、確かめられてはいません。

ネミ湖畔での呼び名はディアーナ・ネモレンシス。「森の」という意味で、この聖域を指す言葉です。

Diana(ディアーナ)

ラテン語。輝くものを意味する語につながるとされる。

Diana Nemorensis(ディアーナ・ネモレンシス)

「森のディアーナ」。ネミ湖畔の聖域での呼び名。

Artemis(アルテミス)

ギリシャ名。

ディアーナの物語

  1. 森の王 ─ 前任者を殺して継ぐ祭司
  2. 奴隷の女神 ─ 8月13日の休日
  3. 三つの顔 ─ 月と地上と冥界

森の王 ─ 前任者を殺して継ぐ祭司

ネミ湖のほとりの聖域には、異様な習わしがありました。

祭司の位をレクス・ネモレンシス(森の王)といいます。

この座に就くには、まず聖域の木から枝を折り取り、
そのうえで現職の祭司を討ち取らなければならない。

そして就いたあとは、次に来る者に討たれるまで、剣を手にして木のまわりを歩き続けます。

眠ることも許されない。

しかも、この位に就けるのは逃亡奴隷だけとされました。

2世紀のパウサニアス、1世紀のストラボン、そしてオウィディウスの『祭暦』が、この習わしを伝えています。

ローマ帝国の時代になっても続いていたと記録されており、皇帝カリグラが、年老いた祭司を討たせるために刺客を送ったという話まで残っています。

近代になって、この一点の習わしから神話研究の大著が一冊書かれました。 王が殺されて交代する形を、世界中の信仰に探した仕事です。

奴隷の女神 ─ 8月13日の休日

アウェンティヌスの丘の神殿は、ローマ市内でのディアーナの中心でした。

伝えでは、王セルウィウス・トゥッリウスが建てたとされます。

ラテン諸都市が共同で祀る聖所として。

ローマがラテン人の盟主であることを示す施設でした。

この神殿の祭日は8月13日です。この日は奴隷の休日とされ、女性は髪を洗って身を清めました。

セルウィウス・トゥッリウス自身が奴隷の子であったという伝えと、この習わしは結びつけて語られます。

ネミ湖の聖域でも、同じ8月13日に松明の行列が行われました。

湖の岸に、灯の列が連なった。

オウィディウスがその情景を書き残しています。

外から来た者、下に置かれた者を受け入れる。 ローマのディアーナには、その性格が一貫してありました。

三つの顔 ─ 月と地上と冥界

ディアーナは、しばしば三つの姿を持つ女神として語られます。

天にあってはルーナ(月)。
地上にあってはディアーナ(狩り)。
冥界にあってはヘカテー

この三つを合わせてトリウィア(三叉路)と呼びました。

三叉路は、ローマ人にとって境目の場所でした。どちらへ行くか決まらない場所であり、死者が現れる場所でもあります。

ネミ湖の聖域でも、この女神はウィルビウスという男神とエーゲリアというニンフとともに祀られていました。

ウィルビウスは、ギリシャの英雄ヒッポリュトスが生き返った姿だとされます。聖域には馬を入れてはならないという禁忌があり、この英雄が馬に引き裂かれて死んだためと説明されました。

ローマの聖域は、こうした土地ごとの禁忌を抱えていました。 ギリシャの物語を借りて、あとから理由が付けられていったものも多くあります。

ディアーナの家系図と家族

ディアーナのきょうだい: フローラともに森と野を司る

ディアーナの子・子孫: ユーピテル

ディアーナの性格と人物像

ディアーナは、ローマの神々のなかでもっとも「野生」に近い女神です。

市の中心ではなく森に祀られ、奴隷を受け入れ、祭司の座が殺し合いで受け継がれる。

国家の秩序の外にある聖域。

ローマの他の神々が手続きと役所に結びついているのに対し、この女神だけは違う場所に立っています。

一方で、アウェンティヌスの神殿はラテン同盟の象徴でもありました。政治の道具でもあったのです。

ギリシャのアルテミスから受け継いだ処女神としての性格は、ローマでも保たれました。ただし、出産を助ける女神でもあります。

近づけないのに、産む者を助ける。 この矛盾は、ギリシャのアルテミスにも共通するものです。

ディアーナを祀った神殿と遺跡

ディアーナの中心の神殿は、アウェンティヌスの丘にありました。ラテン諸都市が共同で祀る聖所とされ、8月13日が祭日です。

しかし、この神殿の正確な位置は特定されていません。 記録には残りますが、遺構が確かめられていないためです。

丘のどこかにあったことは分かっている。

そのため、ここには住所を確かめられた場所だけを挙げました。

ネミのディアーナ聖域(Templum Dianae Nemorensis)

「森の王」がいた聖域

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ネミのディアーナ聖域の住所: イタリア ラツィオ州 ネミ湖畔(北緯41.7241 東経12.7100)

ネミのディアーナ聖域の祀られた神: ディアーナ・ネモレンシス、ウィルビウス、エーゲリア

ネミのディアーナ聖域に残るもの: 神殿の基壇、柱廊、聖なる林の跡

ネミのディアーナ聖域のご利益: 狩り・出産

火口湖の岸にある聖域です。祭司の座が決闘で受け継がれたことで知られます。

祭司レクス・ネモレンシス(森の王)は逃亡奴隷でもなることができました。ただし、前任者を討ち取ることが条件でした。

ローマ帝国の時代まで、この習わしが続いていたと記録されています。

8月13日には、湖の岸に松明の行列が連なりました。

ネミの町から湖畔へ下る。発掘された品はネミ湖船博物館などに分けて収蔵されている。

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アリキア(Aricia)

ネミの聖域を管理したラテン人の町

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アリキアの住所: イタリア ラツィオ州 アリッチャ(北緯41.7214 東経12.6733)

アリキアに残るもの: 市街の下に古代の遺構

ネミの聖域を管理していたラテン人の都市です。アッピア街道沿いにあり、ローマから最初の宿場でした。

聖域そのものは湖畔にありますが、行政上はこの町に属していました。

ホラティウスの詩に、ローマを出て最初に泊まる町として名が出てきます。

アッピア街道を南下してすぐの町。橋の上に市街がある。

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ディアーナが現代に残した痕跡

ディアーナの名は、人名と地名として広く残りました。

人名としてのダイアナ: 英語圏で広く使われる女性名。ローマの女神の名がそのまま人名になった例。

金枝篇: ネミの「森の王」の習わしを出発点として書かれた大著。王殺しと再生の主題を世界中の信仰に探した。

ネミ湖の船: 1930年代にネミ湖から引き上げられた二隻の巨大な船。カリグラ帝が造らせたもので、聖域と結びつけて語られる。

ディアーナが司るもの

狩りと森

森と獣を司る。狩人が祈った。

出産

処女神でありながら、産む女性を助ける女神とされた。

身分の低い者の守り

8月13日は奴隷の休日。逃亡奴隷が祭司になれる聖域もあった。

ディアーナが登場するゲーム・アニメ

美術では、ローマ名で題名が付けられるのが習わしです。描かれているのはギリシャのアルテミスであっても、題名はディアナになります。

一方、ローマ側の特徴であるネミの「森の王」は、近代の神話研究を通して知られるようになりました。

物語ではなく、研究書を経由して有名になった。

珍しい経路です。

ディアーナが登場するゲーム・アニメ

女神転生シリーズ

月と狩りの女神として登場します。

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弓を使う人物の名

狩りの女神の名として、人物名に広く用いられます。

ディアーナが登場する美術

ディアナとアクタイオン

水浴を見られた女神が狩人を鹿に変える場面。ティツィアーノをはじめ多くの画家が描きました。

ディアナとエンデュミオン

眠る若者に月の女神が近づく場面。月の女神としての図像です。

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ディアーナについてよくある質問

ディアーナとアルテミスは同じ神ですか。

同一視されますが、ローマ独自の要素があります。とくにネミ湖畔の聖域で祭司の座が決闘で受け継がれた習わしは、ギリシャには見られません。

「森の王」とは何ですか。

ネミのディアーナ聖域の祭司です。逃亡奴隷でもなることができましたが、前任者を討ち取ることが条件でした。就いたあとは、次の挑戦者に討たれるまで剣を持って木のまわりを歩き続けたとされます。

なぜ8月13日が奴隷の休日なのですか。

アウェンティヌスの神殿を建てたとされる王セルウィウス・トゥッリウスが奴隷の子だったという伝えと結びつけて語られます。この女神には、身分の低い者を受け入れる性格が一貫してありました。

トリウィアとは何ですか。

三叉路を意味する呼び名です。天では月、地上では狩り、冥界ではヘカテーという三つの顔を持つ女神として語られました。

ネミの聖域は見学できますか。

できます。ネミ湖の岸に神殿の基壇と柱廊の跡が残っています。ローマから南へおよそ30キロメートルです。

ディアーナと併せて覚えたい言葉・用語

ニンフ(Νύμφη)

山・森・泉・木に宿る若い女神たち。神ではあるが不死ではなく、宿る木や泉が滅べば死ぬとされた。ギリシャ神話で最も数の多い存在。