若さの女神。テルミヌスとともに、最高神殿の中から動かなかった。
ユウェンタースとは何の神様か
ユウェンタースはひとことで言えば若さです。ギリシャ名はヘーベー。
ローマでこの女神が担ったのは、若者が大人になる場面です。
少年は、成人の衣トガ・ウィリーリスを着るとき、この女神に献金しました。
子どもの衣を脱ぎ、その衣を家の神に納め、
大人の衣を着て、広場へ出る。
この一日で、少年はローマ市民になります。
カピトリウムの丘の神殿を建てるとき、この女神はテルミヌスとともに動かなかったとされます。
境と、若さ。この二つだけが場所を譲らなかった。
後の世は、ローマの領土は減らず、ローマは老いないと読み解きました。
前191年、大競技場のそばに独立した神殿が奉献されました。ただし位置は特定されていません。
祭日は12月19日です。
ユウェンタースのローマ名・ギリシャ名と読み方
日本語では「ユウェンタス」「ユウェンタース」が使われます。
ラテン語では若さを意味する普通名詞でもあります。
もう一つの形ユウェントゥスは、若者たちの集まりを指す語としても使われました。
十七歳から四十六歳までの、兵役に就く年齢の男たち。
イタリアの著名なサッカー?クラブの名も、この語です。
青年・若年を意味する語も、同じ系統から生まれています。
Iuventas(ユウェンタース)
ラテン語。若さを意味する普通名詞でもある。
Iuventus(ユウェントゥス)
同じ語の別の形。若者たちの集まりも指す。
Hebe(ヘーベー)
ギリシャ名。
ユウェンタースの物語
大人の衣を着る日 ─ 献金という手続き
ローマの少年は、十四歳から十七歳のあいだのある日に、大人になりました。
決まった年齢はありません。父親が判断します。
その日、少年は子どもの衣を脱ぎます。
紫の縁取りのあるトガ・プラエテクスタを脱ぎ、
首から下げていたブッラという護符を外す。
どちらも、家の神に納められました。
そして、真っ白なトガ・ウィリーリス(男の衣)を着ます。
一行はカピトリウムの丘へ上り、ユウェンタースの祠に献金しました。
この献金が、成人の手続きの一部でした。
その後、フォルムへ下りて名簿に登録されます。
子どもの衣を脱いだ日に、ローマ市民になる。
多くの場合、3月17日のリーベラーリアの日が選ばれました。リーベルの祭の日です。
若さの女神への献金と、自由の神の祭日が重なっています。
動かなかった女神 ─ ローマは老いない
カピトリウムの丘に最高神殿を建てるとき、先にあった聖所を移す必要がありました。
占いによって、神々に場所を譲ってもらいます。
テルミヌスとユウェンタースだけが承知しませんでした。
やむなく、二柱をそのままにして神殿が建てられます。
ローマ人はこれを吉兆と受け取りました。
境が動かないのだから、ローマの領土は減らない。
若さが動かないのだから、ローマは老いない。
この読み解きは、後から付けられたものです。 しかし、繰り返し語られました。
若さが動かないという言い方には、切実さがあります。
ローマ人は、自分たちの都市が老いて滅びることを恐れました。歴史家たちは、繁栄が贅沢を生み、贅沢が国を弱らせると繰り返し書いています。
老いないという保証を、神殿の中の祠に読んだ。
不安の裏返しとしての吉兆でした。
ヘーベーとの重なり ─ 神々の酌をする娘
役目は、神々の酒を注ぐことでした。
オリュンポスの宴で、杯に神酒を満たして回る。
後にガニュメデスがその役を継ぎ、ヘーベーはヘラクレスの妻になります。
ローマのユウェンタースと重ねられたのは、若さを表す名が共通していたためです。
しかし、役目はまったく違います。
ギリシャ … 神々の宴の給仕。
ローマ … 少年が市民になる場面の手続き。
物語と制度の違いが、ここにも出ています。
ローマでこの女神が扱われるのは、つねに「成人」という手続きの中でです。
カノーヴァはヘーベーの像を彫り、ヨーロッパの庭園に多くの模作が置かれました。
杯を持つ若い娘の姿として知られているのは、ギリシャ側の役目のほうです。
ユウェンタースの家系図と家族
ユウェンタースの性格と人物像
ユウェンタースには、物語がありません。
ギリシャのヘーベーの話は、すべて向こうから来たものです。
ローマ側にあるのは、成人の日の献金と、動かなかったという伝えだけです。
しかし、この二つはよくつながっています。
少年が大人になる。しかし、若さそのものは動かない。
人は年を取るが、若さという状態は都市に残り続ける。
ローマ人が「ローマは老いない」と読んだのは、この理屈です。
一方、この女神には祈る人が少なかったようです。神殿の位置も分からず、独自の祭も知られていません。
成人の手続きの一部として、名前だけが制度に残った女神です。
ユウェンタースを祀った神殿と遺跡
ユウェンタースの独立した神殿は、住所を確かめられませんでした。
前191年、大競技場のそばに神殿が奉献されたと記録されます。前207年に立てられた誓いを果たしたものでした。
しかし、位置は特定されていません。
ここに挙げたのは、この女神の祠が中に残されたと伝えられるカピトリウムの神殿です。
カピトリウムのユーピテル神殿(Templum Iovis Optimi Maximi)
この女神の祠が中に残された神殿
カピトリウムのユーピテル神殿の住所: イタリア ローマ カピトリーノの丘(北緯41.8922 東経12.4817)
カピトリウムのユーピテル神殿の祀られた神: ユーピテル・ユーノー・ミネルウァ、テルミヌス、ユウェンタース
カピトリウムのユーピテル神殿に残るもの: 基礎と壁体の一部
カピトリウムのユーピテル神殿のご利益: 若さ・成人
ローマ国家の最高神殿です。この中に、ユウェンタースの祠が残されました。
丘の上の他の神々は占いによって場所を譲りましたが、この女神とテルミヌスだけが動かなかったとされます。
少年が大人の衣を着る日には、この丘に上って献金しました。
ローマ人はこの一件を、ローマが老いない証拠として語り継ぎました。
カピトリーニ美術館の地下で基礎を見ることができる。
ユウェンタースが現代に残した痕跡
ユウェンタースの名は、若さを意味する語として残りました。
青年・若年を意味する語: ヨーロッパの諸言語で、若さや青年期を指す語がこの名から生まれた。
イタリアのサッカークラブの名: 「若者たち」を意味するラテン語が、そのままクラブ名になっている。
少年法に関わる語: 少年・未成年を指す法律用語も、同じ系統から出ている。
ユウェンタースが司るもの
若さ
少年が大人になるとき、この女神に献金した。
成人
大人の衣を着る日の手続きに組み込まれていた。
国の若さ
動かなかったことが、ローマが老いない証拠とされた。
ユウェンタースが登場するゲーム・アニメ
作品に出るのは、ギリシャ名のヘーベーのほうです。
杯を持って神々に酒を注ぐ姿が、美術の主題として定着しました。
一方、ローマ側の特徴である成人の日の献金は、制度の記録にしか残っていません。
手続きは、絵にならない。
代わりに、若さを意味する語として、この名は各国語に生きています。
ユウェンタースが登場する美術
ヘーベーの像
カノーヴァの彫刻をはじめ、杯を持つ若い娘の姿が繰り返し造られました。ギリシャ側の役目によるものです。
ユウェンタースが登場するゲーム・アニメ
若さを扱う作品
青春や若さを表す名として用いられます。
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ユウェンタースについてよくある質問
ユウェンタースは何の女神ですか。
若さの女神です。ローマでは、少年が大人の衣を着て市民になる日に、この女神へ献金する決まりがありました。
ヘーベーと同じ神ですか。
同一視されますが、役目が違います。ギリシャのヘーベーは神々の宴で酒を注ぐ娘であり、ローマのユウェンタースは成人の手続きに関わる女神です。
なぜ最高神殿の中に祠があるのですか。
カピトリウムの神殿を建てるとき、テルミヌスとともに場所を譲らなかったとされるためです。ローマ人はこれを、ローマが老いない証拠として語り継ぎました。
サッカークラブの名と関係がありますか。
あります。この女神の名のもう一つの形が「若者たち」を意味し、それがそのままクラブ名になっています。
ユウェンタースと併せて覚えたい言葉・用語
カー(kꜣ/生命力)
人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。