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ローマ神話

フローラとは何の神様か|家系図・物語

Flora  / フローラ

大地 ローマ固有の神

花と春の女神。その祭は演劇と踊りを伴い、卑猥だと非難された。

フローラとは何の神様か

フローラはひとことで言えば咲いている段階の女神です。

ケレースが実った穀物を司るのに対し、この女神は花が咲くことを司ります。

咲かなければ実らない。

農耕の神として、はっきりした役目を持っていました。

4月28日から5月3日までのフロラリアは、ローマの祭のなかでもとりわけ賑やかなものでした。

- 色とりどりの衣を着る(ふだんは白い衣)
- 豆と羽豆を撒く
- 山羊と兎を放つ
- 芝居と踊りが夜まで続く

この祭は、後の著述家から繰り返し非難されました。 踊り手が衣を脱ぐ場面があったためです。

前173年、花が咲かずに終わる年が続いたため、元老院はこの祭を毎年行うと定めました。

専属の神官フラーメン・フロラーリスが置かれています。古い神である証拠とされます。

フローラのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「フローラ」「フロラ」が使われます。

を意味する語からできた名です。ここから、ある地域の植物全体を指す学術用語が生まれました。

ある土地に生える植物のまとまり。

いまも生物学で使われる言葉です。腸内に住む細菌のまとまりを指す言い方も、この語から広がりました。

サビニ人の神で、王ティトゥス・タティウスがローマに持ち込んだという伝えがあります。ただし、ローマの古い神の多くにこの説明が付けられており、そのまま受け取ることはできません。

Flora(フローラ)

ラテン語。花を意味する語からできている。

Floralia(フロラリア)

4月28日から5月3日まで行われた祭の名。

フローラの物語

  1. フロラリア ─ 色を着てよい数日
  2. 花が咲かなければ ─ 前173年の決定
  3. 花から生まれた神 ─ オウィディウスの語り

フロラリア ─ 色を着てよい数日

4月28日から5月3日まで、フロラリアが行われました。

ローマ人はふだん白い衣を着ます。公の場ではとくにそうです。

この祭のあいだだけ、色とりどりの衣を着てよい。

花の女神の祭にふさわしい決まりです。

祭では、豆と羽豆が観客に撒かれました。穀物ではなく豆である点に、実りの祭とは違う性格が出ています。

山羊と兎も放たれます。どちらも繁殖の力が強い獣とされました。

夜には芝居が行われ、踊り手が舞台に立ちます。

ここで衣を脱ぐ場面があったため、後代の著述家がこの祭を強く非難しました。

一方、ローマ人自身がこれを異常と考えていた形跡はありません。咲くことと産むことを結びつける祭として、そのまま受け入れられていました。

祭は前238年に始まり、はじめは不定期でした。前173年に毎年行われるようになります。

花が咲かなければ ─ 前173年の決定

前173年、元老院がこの祭を毎年行うと決めました。

理由が記録されています。

花が咲いても実らず、風と雹で落ちる年が続いたため。

ローマの祭は、災いが続いたときに新しく作られたり、回数が増やされたりします。

- 疫病が出れば、新しい神を迎える
- 実らなければ、実りの祭を増やす

災厄への対処として宗教が動いていました。

この祭が咲く段階を司るという理解も、ここではっきりします。ケレースの祭は4月の中ごろ、フロラリアはその後です。

穀物の祭のあとに、花の祭が来る。

ローマの祭の暦は、農事の順番に沿って組まれていました。

花が咲かないという事態は、その年の食糧が失われることを意味しました。 祭の増設は、切実な対応でした。

花から生まれた神 ─ オウィディウスの語り

オウィディウスの『祭暦』は、この女神に直接語らせる形をとっています。

そこで語られる話の一つが、マールスの誕生です。

ユーピテルが頭からミネルウァを生んだと知って、ユーノーは腹を立てました。

私も、夫なしで子を生んでみせる。

そこでフローラのもとを訪ねます。

女神は、触れただけで身ごもらせる花を持っていました。ある野に咲く花です。

私はその花に触れさせた。触れたユーノーは身ごもった。

こうして生まれたのがマールスだとされます。

この話は、他の資料には見えません。 オウィディウス自身が「誰にも言うなと言われたが」と前置きしています。

もう一つ、ニンフクローリスが西風に攫われ、その妻となって花の女神フローラになったという話も語られます。

ギリシャの名を持つニンフが、ローマの女神に変わる。 二つの神話体系がつなぎ合わされる場面です。

フローラの家系図と家族

フローラのきょうだい: ポーモーナ咲く段階と実る段階ディアーナともに森と野を司るケレース咲く段階と実る段階

フローラの性格と人物像

フローラは、ローマの神々のなかでもっとも「明るい」神です。

祭は色と芝居と踊りに満ち、身分を問わず人が集まりました。

一方で、この明るさは切実さの裏返しでもあります。

花が咲かなければ、その年は飢える。

祭が毎年行われるようになったのは、実らない年が続いたためでした。

専属の神官が置かれていることから、ローマのごく古い神であることが分かります。 神官が置かれた神は十五柱ほどしかいません。

ボッティチェッリの『春』には、花をまとった女性が描かれています。オウィディウスが語ったクローリスの変身を、そのまま絵にしたものです。

ローマの農耕の神が、ルネサンスの絵の中で最も知られる姿になりました。

フローラを祀った神殿と遺跡

フローラの神殿は、住所を確かめられませんでした。

記録によれば、神殿は二か所ありました。

一つはクイリナーレの丘。もう一つは大競技場のそば。

しかし、どちらも位置が特定されていません。 古代の地区目録に名が残るだけです。

あったことは分かっている。どこにあったかが分からない。

確かめられないものを、確かめたことにはしません。

フローラが現代に残した痕跡

フローラの名は、植物を指す学術用語として残りました。

植物相: ある地域に生える植物全体を指す学術用語。この女神の名から生まれた。

腸内細菌のまとまりを指す語: 植物相を指す語が転用され、体内の細菌のまとまりを指す言い方になった。

ボッティチェッリの春: 花をまとった女性が描かれる。オウィディウスが語ったクローリスの変身を絵にしたもの。

人名としてのフローラ: ヨーロッパで広く使われる女性名。

フローラが司るもの

花と実り

花が咲き、実になるまでを司る。

子宝

祭では繁殖の力が強いとされる獣が放たれた。

春の訪れ

4月末から5月にかけての祭で祝われた。

フローラが登場するゲーム・アニメ

この女神は、絵画を通して知られています。

とくにボッティチェッリの『春』の図像が定着しました。

一方、ローマ側の特徴であるフロラリアの芝居と踊りは、作品にはほとんど出てきません。

賑やかすぎて、絵にすると別のものになる。

代わりに、植物相を指す学術用語として、この名は毎日使われています。

フローラが登場する美術

春(プリマヴェーラ)

ボッティチェッリの絵画。花をまとった女性としてこの女神が描かれます。

フローラの王国

ティエポロの絵画。花の女神の場面が主題になっています。

フローラが登場するゲーム・アニメ

花を扱う作品

花の女神の名として、人物名に広く用いられます。

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フローラについてよくある質問

フローラは何の女神ですか。

花の女神です。ケレースが実った穀物を司るのに対し、フローラは花が咲く段階を司ります。咲かなければ実らないという考え方によります。

フロラリアとはどんな祭ですか。

4月28日から5月3日まで行われた祭です。色とりどりの衣を着て、豆を撒き、山羊と兎を放ち、夜まで芝居と踊りが続きました。

なぜこの祭は非難されたのですか。

踊り手が衣を脱ぐ場面があったためです。ただし、ローマ人自身がこれを異常と考えていた形跡はありません。

植物相を指す語はこの女神に由来しますか。

そうです。ある地域に生える植物全体を指す学術用語になりました。腸内細菌のまとまりを指す言い方も、ここから広がっています。

フローラと併せて覚えたい言葉・用語

ニンフ(Νύμφη)

山・森・泉・木に宿る若い女神たち。神ではあるが不死ではなく、宿る木や泉が滅べば死ぬとされた。ギリシャ神話で最も数の多い存在。