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ローマ神話

ルーナとは何の神様か|家系図・物語・祀った神殿

Luna  / ルーナ

天体の神

ローマの月の女神。アウェンティーノの神殿と、夜に灯る社で祀られた。

ルーナとは何の神様か

ルーナはひとことで言えばローマの夜を照らす神です。名はラテン語で「光るもの」を意味する古い語から来ています。

ソールと同じく、物語ではなく祭壇と祭日を持った神でした。

アウェンティーノの丘の神殿は、王セルウィウス・トゥッリウスが建てたと伝えられます。祭日は3月31日

この神殿は64年のネロの大火で焼けました。

パラティウムにはルーナ・ノクティルーカ、すなわち「夜に光るルーナ」の社があり、夜のあいだ灯がともされたとされます。神殿そのものが、夜に光っていたわけです。

キルクス・マクシムスにはソールとルーナの神殿があり、競走場が大きくなるにつれて観客席に取り込まれていきました。

やがてディアーナや、外から入ってきたヘカテーと重ねられます。

月の三つの相で語る形は、ギリシャ側から入ってきたもので、古いローマの祭祀にはさかのぼりません。

ルーナのローマ名・ギリシャ名と読み方

日本語では「ルーナ」と長音で書く形と、「ルナ」と短く書く形の両方が使われます。天体としての月を指す言い方では、短い形のほうが広く通じます。

名は、光るものを意味するラテン語の古い語から来ているとされます。同じ語根から、光や明かりを表す語も生まれています。

月そのものと、月の女神が、同じ一語で呼ばれていました。

ルーナ・ノクティルーカのノクティルーカは「夜に光るもの」という意味です。この呼び名は、パラティウムにあった社の祭神名として伝わります。

なお、ローマの月の祭祀とギリシャの月の女神は、同一視されはしましたが、別々に育った信仰です。 ローマ側で問われたのは神殿の場所と祭日で、物語はほとんど語られませんでした。

Luna(ルーナ)

ラテン語の主格。光るものを意味する古い語から来たとされる。月そのものを指す普通名詞でもあり、天体の名と神の名が同じ語になっている。

Luna Noctiluca(ルーナ・ノクティルーカ)

夜に光るルーナの意。パラティウムにあった社の祭神名で、夜のあいだ灯がともされたと伝えられる。

Sol et Luna(ソールとルーナ)

キルクス・マクシムスの神殿で二柱を並べて呼んだ形。競走場では、この対で語られた。

ルーナの物語

  1. アウェンティーノの神殿 ─ 3月31日の祭
  2. ルーナ・ノクティルーカ ─ 夜に灯がともる社
  3. 競走場のソールとルーナ ─ 観客席に取り込まれた神殿
  4. ディアーナとヘカテーとの重なり ─ 三つの相

アウェンティーノの神殿 ─ 3月31日の祭

ルーナの神殿は、アウェンティーノの丘にありました。

建てたのは第六代の王セルウィウス・トゥッリウスと伝えられます。この王には、他にもいくつもの神殿の創建が帰されています。

祭日は3月31日。年のはじまりに近い時期です。

王政期にさかのぼる古い神殿とされました。

アウェンティーノの丘は長く市壁の外に置かれ、平民の拠点となった丘です。国家の中枢ではなく、民の側の丘に月の神殿が置かれていました。

この神殿は64年のネロの大火で焼けます。大火はキルクス・マクシムスの一角から出て、市の大部分を焼きました。

建て直された記録がはっきり残っていないため、その後どうなったかはわかっていません。

神殿の正確な位置も特定されていません。丘のどこかにあったことまでが確かめられています。

ルーナ・ノクティルーカ ─ 夜に灯がともる社

パラティウムには、もう一つの社がありました。

ルーナ・ノクティルーカ、すなわち「夜に光るルーナ」です。

夜のあいだ、この社には灯がともされていたと伝えられます。

古代の書き手は、この社が夜どおし明るかったことを書き残しています。建物そのものが、月の代わりに光っていたという形です。

ホラーティウスは、この呼び名を詩のなかで用いています。

夜の照明が乏しい時代に、灯のともる建物は目印になりました。祭祀と、実際の役に立つ明かりが重なっていたとみることもできます。

ただし、この社の場所も特定されていません。 パラティウムのどこかにあったことまでしかわかりません。

ローマの月の祭祀は、こうして「神殿の名は伝わるが、場所は失われた」という形で残っています。

競走場のソールとルーナ ─ 観客席に取り込まれた神殿

キルクス・マクシムスには、ソールとルーナの神殿がありました。

太陽と月を並べて祀る形です。競走に出る四つの組が太陽に結びつけて説明されたことと合わせて、競走場そのものを天の運行の模型と見る読み方が古代からありました。

長い直線を往復する競走を、日と月の巡りになぞらえる見方です。

この神殿は、競走場が拡張されていくうちに観客席の側に取り込まれました。 建物が席の一部になったということです。

数万人が座る場所の一角に、月の神殿が組み込まれていました。祭祀の建物が、日常の見物の場に溶け込んでいたわけです。

いまキルクス・マクシムスは細長い公園になっていますが、この神殿の位置は特定されていません。

ローマの月の祭祀は、こうして人の集まる場所のただ中にありました。

ディアーナとヘカテーとの重なり ─ 三つの相

ルーナは、やがて他の女神と重ねられていきます。

一つはディアーナです。森と狩りの女神ですが、月と結びつけて語られるようになりました。

もう一つが、外から入ってきたヘカテーです。境と呪術に関わる女神で、三つの顔を持つ姿で表されました。

天のルーナ、地のディアーナ、冥界のヘカテー。

この三つを重ねる語り方が生まれ、さらに月の新月・満月・欠けゆく月という三つの相と結びつけられます。

一柱の女神が、三つの姿を持つという形です。

ただし、この三相の語り方はギリシャ側から入ったもので、古いローマの祭祀にはさかのぼりません。 アウェンティーノの神殿も、ノクティルーカの社も、三つの姿とは関係のない祭祀でした。

後世の魔術書や文学作品では、この三相の姿のほうが有名になりました。もとの祭祀が見えにくくなっている理由の一つです。

ルーナの家系図と家族

ルーナのきょうだい: ソールキルクス・マクシムスに並んで祀られる

ルーナの性格と人物像

ルーナには、物語がほとんど残っていません。

恋の話も争いの話も、ローマ側の資料には出てきません。伝わっているのは神殿の場所と祭日、そして夜に灯がともされたという記述です。

姿の目印は、二頭立ての車と、額につけた三日月の頭飾りです。

太陽が四頭立ての車で描かれるのに対し、月は二頭立てで表されました。速さの違いを、馬の数で示していたという説明がされます。

研究上の位置づけとしては、どこまでがローマ固有で、どこからがギリシャ由来かを分ける作業が中心になります。

神殿・祭日・夜の灯はローマ側の記録です。三つの相や呪術との結びつきは、後から重なった層とみられています。

ルーナを祀った神殿と遺跡

ルーナの祭祀の場は、三つ伝えられています。

アウェンティーノの丘の神殿パラティウムのルーナ・ノクティルーカの社、そしてキルクス・マクシムスのソールとルーナの神殿です。

このうち、丘までたどれるのはアウェンティーノの一つだけです。

ノクティルーカの社と競走場の神殿は、名が伝わるだけで場所が特定されていません。 そのため欄には入れず、本文で触れるにとどめました。

なお、アウェンティーノの神殿についても、丘のどこにあったかはわかっていません。欄に示した座標は丘そのものの位置であり、神殿の位置ではありません。

ルーナ神殿(Templum Lunae)

ルーナを祀った古い神殿

地図で開く

ルーナ神殿の住所: イタリア ローマ アウェンティーノの丘(北緯41.8833 東経12.4833)

ルーナ神殿の祀られた神: ルーナ

ルーナ神殿に残るもの: 地上に残っていない

ルーナ神殿のご利益: 夜の守り

アウェンティーノの丘にあった神殿です。第六代の王セルウィウス・トゥッリウスが建てたと伝えられます。

祭日は3月31日でした。年のはじまりに近い時期にあたります。

この神殿は64年のネロの大火で焼けました。建て直された記録がはっきり残っていないため、その後の姿はわかっていません。

丘のどこにあったかも特定されていません。ここに示した座標は、丘そのものの位置です。

丘の上は住宅地と教会が並ぶ一帯で、古代の神殿の跡は見えない。

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ルーナが現代に残した痕跡

ルーナの名は、月そのものを指す語として、いまも各国語に残っています。

月を指す語: ラテン語のルーナが、イタリア語・スペイン語の月の意味の語になっている。

月曜日: ヨーロッパの諸言語で、月曜日の名が月の日という言い方から来ている。

三日月の頭飾り: 額に三日月をつけた姿は、後世の絵画で月の擬人像の決まった目印になった。

月に関わる語: 暦や潮汐を表す言葉に、この語から派生した形が各国語に残っている。

ルーナが司るもの

夜の守り

夜に灯がともされる社を持ち、暗い時刻を照らす神とされた。

暦の巡り

月の満ち欠けは日を数える基準であり、暦そのものと結びついた。

実りの助け

月の満ち欠けが作物の育ちに関わるという考えから、農の折々に意識された。

ルーナが登場するゲーム・アニメ

作品でのルーナは、ギリシャの月の女神と区別されずに描かれることがほとんどです。

三日月の頭飾りという図像が強いため、名前だけが入れ替わって使われます。

ローマ側の特徴は、神殿と祭日と、夜の灯です。

夜どおし灯をともす社という話は、絵になりにくいためほとんど描かれませんが、ローマの月の祭祀を知るうえでは大事な記録です。

ルーナが登場するゲーム

神話を扱う対戦型ゲーム

月の女神として、三日月の頭飾りとともに描かれることがあります。

ローマを扱う歴史戦略ゲーム

神殿や祭日を建てる要素として、月の神殿が現れることがあります。

ルーナが登場する絵画・彫刻

二頭立ての車を駆る月

石棺や貨幣に、二頭の馬に引かれる月の女神の姿が繰り返し表されています。

昼と夜を対にした天井画

太陽と月を左右に配する構図が、後世の天井画で広く用いられました。

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ルーナについてよくある質問

ルーナとギリシャの月の女神は同じですか。

同一視はされましたが、育ちが違います。ローマのルーナは神殿と祭日を持つ神で、物語をほとんど持ちません。アウェンティーノの神殿や夜に灯がともる社が、ローマ側の記録です。

ルーナの祭日はいつですか。

アウェンティーノの丘の神殿の祭日が3月31日と伝えられます。この神殿は王セルウィウス・トゥッリウスが建てたとされ、64年のネロの大火で焼けました。

ルーナ・ノクティルーカとは何ですか。

夜に光るルーナという意味の呼び名です。パラティウムにこの名の社があり、夜のあいだ灯がともされたと伝えられます。ただし社の場所は特定されていません。

月の三つの相という説明はローマ由来ですか。

ギリシャ側から入った層とみられています。天のルーナ、地のディアーナ、冥界のヘカテーを重ねる語り方で、アウェンティーノの神殿の祭祀そのものとは別のものです。

ルーナの神殿はいま見られますか。

地上に残っていません。アウェンティーノの丘のどこにあったかも特定されておらず、パラティウムの社と競走場の神殿も位置がわかっていません。