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ギリシャ神話

メノイティオスとは何の神様か|家系図・物語

Μενοίτιος  / メノイティオス

冥界 ティタン神族

驕りのために雷で撃たれ、闇の底へ落とされたイアペトスの子。

メノイティオスとは何の神様か

メノイティオスはひとことで言えば二行で消された神です。

イアペトスクリュメネの子で、アトラスプロメテウスエピメテウスの兄弟。

ヘシオドス『神統記』の記述は短いものです。

驕り高ぶり、力を誇ったので、 ゼウスは煙る雷でこれを撃ち、エレボスへ送った。

これだけです。何をして驕ったのか、どんな力を誇ったのかは書かれていません。

兄弟のうち、ただ一人その場で消されています。 天を担ぐ罰も、肝を啄まれる罰も与えられていません。アトラスもプロメテウスも、罰を受けながら生き続けました。

名は「定めに耐える力」と読める語で、同時に「驕り」を意味する語にも通じます。

罰の重さではなく、罰の速さが際立つ神です。『イリアス』のパトロクロスの父も同じ名ですが、別人です。

メノイティオスのギリシャ名・ローマ名と読み方

古代ギリシャ語では Μενοίτιος。日本語では「メノイティオス」と書きます。

名は二つの語を合わせたものと考えられています。「留まる」「耐える」を意味する語と、「定め」「勢い」を意味する語です。合わせると「定めに耐える者」と読めます。

ところが物語のうえで、この神は耐えていません。驕り高ぶって雷に撃たれました。名前と結末が食い違っている という点で、兄弟ペルセスと同じ問題を抱えています。

もう一つ、この名は驕りを意味する語にも近いところにあります。ヘシオドスがこの神を「驕り高ぶった」と書いたのは、名前からの連想かもしれません。

注意が要るのは、『イリアス』のパトロクロスの父メノイティオスです。人間で、アキレウスの父ペレウスの友人にあたります。血のつながりはありません。

Μενοίτιος(メノイティオス)

古代ギリシャ語の表記。「留まる」「耐える」を意味する語と、「定め」「勢い」を意味する語から成るとされる。「定めに耐える者」と読める。

メノイティオース(メノイティオース)

長音を残した学術的な表記。

メノイティウス(メノイティウス)

ラテン語読みに近い形。西欧の文献ではこの形で記されることがある。

メノイティオスの物語

  1. 二行の死 ─ 雷に撃たれた兄弟
  2. なぜ記録が少ないのか ─ 罰の速さ
  3. 名の食い違い ─ 耐える者か、驕る者か
  4. 同名の別人 ─ パトロクロスの父

二行の死 ─ 雷に撃たれた兄弟

ヘシオドス『神統記』は、イアペトスの四人の子を並べたあと、それぞれの行く末を書きます。

アトラスには長い記述があります。西の果てで天を支え続ける罰です。プロメテウスにはもっと長い記述があります。火を盗み、岩に縛られ、鷲に肝を啄まれる話です。

メノイティオスについては、こうあります。

驕り高ぶり、力を誇ったので、 ゼウスは煙る雷でこれを撃ち、エレボスへ送った。

それで終わりです。

何をしたのかは書かれていません。ティタノマキアで戦ったとも、ゼウスに逆らったとも書かれていません。「驕った」という一語だけがあります。

罰を受けたのではなく、除かれたと読めます。 他の兄弟の罰は続いています。天を担ぐことも、肝を啄まれることも、終わりのない状態です。

メノイティオスだけが、一撃で場面から消えました。

なぜ記録が少ないのか ─ 罰の速さ

この神の記録が二行しかない理由は、その二行の内容自体にあります。

物語が生まれるためには、状態が続く必要があります。天を担ぎ続けるアトラスには、ヘラクレスが訪ねてくる場面が生まれました。縛られたプロメテウスには、解放の物語が生まれました。

撃たれて闇に落ちた者には、続きがありません。

もう一つ、この神が何をしたのかが書かれていないことも効いています。罪の中身が分からなければ、そこから話を膨らませることもできません。

後の時代の書き手たちは、この空白を埋めようとしました。ティタノマキアでティタン側の先鋒だったという解釈や、人間の側に立ったという解釈が現れます。いずれも原典の記述ではありません。

ヘシオドスが書いたのは、驕りが即座に罰せられたという一点だけです。その一点を伝えるために置かれた神なのかもしれません。

名の食い違い ─ 耐える者か、驕る者か

メノイティオスの名は、「留まる」「耐える」を意味する語を含みます。耐える力を持つ者と読むのが自然です。

ところが、この神は耐えていません。驕り、誇り、撃たれました。

名は耐える者を指し、行いは驕る者を示す。

同じことが、兄弟ペルセスにも起きています。 名は「破壊する者」でありながら、形容は「知恵に傑出した」でした。

イアペトスの家系には、こうした食い違いが目立ちます。アトラスの名は「耐える者」と読まれ、こちらは行いと一致しています。プロメテウスとエピメテウスは、名前どおりに動きます。

四人のうち二人は名前どおりで、二人は違う。 そう整理できます。

もう一つの読み方として、この名を「驕り」を意味する語に近づける立場もあります。この読みに立てば、名前と行いは一致します。どちらが正しいかは決められていません。

同名の別人 ─ パトロクロスの父

『イリアス』には、メノイティオスという名の人物が出てきます。パトロクロスの父です。

ロクリスの人で、アキレウスの父ペレウスの友人でした。息子パトロクロスが幼いころに人を殺めてしまい、親子でペレウスのもとへ身を寄せます。そこで二人の少年は育ちました。

息子を託すとき、父は言った。 アキレウスは家柄が上だ。だが年上はおまえだ。よく言い聞かせよ。

パトロクロスはトロイアでヘクトルに討たれ、その死がアキレウスを戦場に戻します。『イリアス』全体の折り返し点を作った人物の父が、この名を持っています。

ティタンのメノイティオスとは、血のつながりも物語のつながりもありません。

ギリシャ神話では、神の名が人間の名として使い回されることがよくあります。同名が出てきたら、どちらの物語に属するかを確かめる必要があります。

メノイティオスの家系図と家族

メノイティオスの親: イアペトス四人の息子の一人。雷に撃たれて闇の底へ送られた

メノイティオスのきょうだい: アトラス同じ日に罰を受けた兄弟。片方は担ぎ、片方は消された

メノイティオスの性格と人物像

メノイティオスの性格は、ヘシオドスの一語に集約されています。

驕り高ぶり、力を誇ったので。

他に記述はありません。台詞も、姿の描写も、誰かとの関わりもありません。

この一語から読み取れるのは、抑えのきかない力という性質です。イアペトスの四人の子のなかで、この神だけが力そのものを誇りました。

アトラスは黙って天を担ぎます。プロメテウスは知恵で立ち回ります。エピメテウスは考えるのが遅れます。メノイティオスは、力を見せつけて撃たれました。

耐える、企む、間に合わない、そして誇る。四つの構えが、四人に振り分けられているという読み方ができます。

もう一つ気になるのは、この神が罰を受けたのではなく、除かれたことです。ゼウスは他のティタンを縛り、閉じ込め、担がせました。生かしています。

メノイティオスだけが、一撃で闇へ送られました。その差が何から来たのかは、書かれていません。

メノイティオスゆかりの地と遺跡

メノイティオスを祀った神殿は確かめられませんでした。

この神には独立した祭祀の記録がありません。都市との縁も、祭りの名も見つかりませんでした。

理由は分かりやすいところにあります。撃たれて闇の底へ送られた神には、祈る相手としての性格が残らないからです。 天を担ぐアトラスには山の名が残り、プロメテウスにはアテナイに祭壇がありましたが、この神にはどちらもありません。

ゆかりの地を挙げるとすれば、送られた先のエレボス、すなわち闇そのものになります。地上の場所ではありません。

同名のパトロクロスの父については、ロクリスの出とされる伝えがありますが、それは別の人物の話です。混ぜて書くことはしません。

メノイティオスが現代に残した痕跡

メノイティオスの名は、驕りへの戒めを語る一節として残りました。

ヘシオドスの二行: 驕り高ぶったために雷で撃たれ、闇の底へ送られたという記述。この神について残っているのは、ほぼこの二行だけである。

パトロクロスの父との同名: 『イリアス』に出てくる同じ名の人物は、アキレウスの盟友パトロクロスの父にあたる。血のつながりはない。

小天体の名としての用例: 太陽系の小天体のなかに、パトロクロスとメノイティオスの名を対にして付けられた例がある。名の由来は『イリアス』の親子のほうである。

四兄弟の対比: アトラスは担ぎ、プロメテウスは縛られ、エピメテウスは罰を受けず、メノイティオスだけが一撃で消された。罰の形が四通りに分かれている。

メノイティオスが司るもの

驕りへの戒め

力を誇ったために即座に雷で撃たれた。驕りが罰を招く例として置かれている。

戒め

ヘシオドスは何をしたかを書かず、驕ったという一語だけを残した。

イアペトスの四人の子のうち、力そのものを誇ったのはこの神だけである。

冥界の守り

雷に撃たれてエレボス、すなわち闇の底へ送られた。

権力への戒め

罰を受けて生き続けた兄弟と違い、この神だけが一撃で場面から除かれた。

メノイティオスが登場するゲーム・アニメ

この神が創作に出るとき、荒々しい力の象徴として描かれるのが通例です。原典の記述が「驕り高ぶり、力を誇った」の一語しかないため、そこから造形が組み立てられます。

二行しか書かれていないことが、かえって使いやすさになっている 面もあります。矛盾させる材料が無いためです。

メノイティオスが登場する絵画・彫刻

ティタノマキアの図像

雷に撃たれて落ちる神を描いた場面がありますが、この神と特定できる作品は確かめられませんでした。

パトロクロスを描いた図像

同名の人物の子を描いた作品は数多く残ります。ティタンとは別の物語です。

メノイティオスが登場するゲーム・創作

ギリシャ神話を題材にした作品

イアペトスの子の一人として名が挙がります。力を誇る役を与えられることがあります。

ティタンを敵役にする作品

真っ先に倒される存在として置かれることがあります。原典の書かれ方をなぞった形です。

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メノイティオスについてよくある質問

メノイティオスはどんな神ですか。

イアペトスとクリュメネの子で、アトラス・プロメテウス・エピメテウスの兄弟です。驕り高ぶって力を誇ったため、ゼウスの雷に撃たれて闇の底エレボスへ送られたと『神統記』は記します。

何をして罰せられたのですか。

書かれていません。ヘシオドスは「驕り高ぶり、力を誇った」とだけ記し、具体的な行いには触れていません。後の時代にさまざまな解釈が現れましたが、いずれも原典の記述ではありません。

他の兄弟との違いは何ですか。

罰の続き方です。アトラスは天を担ぎ続け、プロメテウスは岩に縛られ続けました。どちらも生きています。メノイティオスだけが一撃で場面から除かれ、続きがありません。

パトロクロスの父と同じですか。

別の存在です。『イリアス』に出てくるメノイティオスはロクリスの人で、アキレウスの盟友パトロクロスの父にあたります。血のつながりも物語のつながりもありません。

メノイティオスを祀った神殿はありますか。

確かめられませんでした。撃たれて闇の底へ送られた神には、祈る相手としての性格が残りません。都市との縁も祭りの名も見つかっていません。

メノイティオスと併せて覚えたい言葉・用語

ティタノマキア(Titanomachia)

ゼウス率いるオリュンポスの神々と、クロノス率いるティタン神族の戦争。十年続き、解放されたキュクロプスとヘカトンケイルの加勢で決着した。