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ギリシャ神話

エピメテウスとは何の神様か|家系図・物語

Ἐπιμηθεύς  / エピメテウス

大地 ティタン神族

「後で考える者」。兄の忠告を忘れ、パンドラを家に迎えた。

エピメテウスとは何の神様か

エピメテウスはひとことで言えば手遅れになってから気づく神です。

イアペトスクリュメネの子で、プロメテウス(先に考える者)の弟。名は後で考える者を意味します。

この兄弟は、二度そろって失敗します。

一度目は、生き物に能力を配る仕事です。エピメテウスは獣に爪と牙と毛皮と速さを配りきり、人間の分を残しませんでした。 兄が火を盗んだのは、この穴を埋めるためです。

二度目は、ゼウスからの贈り物です。兄は「受け取るな」と念を押していました。それでも弟は、送られてきたパンドラを妻に迎えます。

受け取ってから、言われていたことを思い出した。

名前がそのまま失敗の理由になっている神は、他にほとんどいません。

兄弟は、人間の二つの構えを分け持っています。

エピメテウスのギリシャ名・ローマ名と読み方

古代ギリシャ語では Ἐπιμηθεύς。日本語では「エピメテウス」で定着しています。

この名は、兄プロメテウスと対になるように作られています。「前もって考える者」と「後から考える者」。同じ語幹に、向きの違う接頭語を付けただけです。

ギリシャ語で「後で」を意味する接頭語は、現代の学術語のなかにも数多く残っています。何かの後に来るもの、上に重なるものを指す語がそれにあたります。

二十世紀の思想家のなかには、この神の名を使って先を読みすぎる社会への批判を書いた人がいます。すべてを計画で押さえようとする態度に対して、後から気づく力を置き直す議論です。

失敗の代名詞だった名前が、別の読み方を得た例と言えます。

Ἐπιμηθεύς(エピメテウス)

古代ギリシャ語の表記。「後で」を意味する接頭語と、「考える」を意味する語から作られた名。「後知恵の者」の意。

エピメーテウス(エピメーテウス)

長音を残した学術的な表記。

エピメテウス(エピメテウス)

土星の衛星の名としても使われる。もう一つの衛星と軌道を入れ替えながら回ることで知られる。

エピメテウスの物語

  1. 配り忘れ ─ 人間だけが裸で残った
  2. パンドラを迎える ─ 忠告を思い出せなかった
  3. 兄と弟 ─ 人の二つの構え
  4. 後知恵という力 ─ 名前の読み直し

配り忘れ ─ 人間だけが裸で残った

プラトンの対話篇『プロタゴラス』に、この兄弟の分担が書かれています。

神々が生き物を作ったあと、能力を配る仕事を任されたのは兄弟でした。エピメテウスが兄に頼みます。

配るのは私にやらせてほしい。 終わったら見てくれればよい。

エピメテウスは順に配っていきました。ある者には速さ、ある者には力、ある者には厚い毛皮、ある者には硬い甲羅。強い獣には数を少なく、弱い獣には数を多く。釣り合いは、よく取れていました。

ところが、全部配り終えてから人間の番が来ました。残っているものが何もありません。

人間だけが、爪も牙も毛皮も持たずに残されます。

兄プロメテウスが見に来たとき、事は既に終わっていました。そこで兄は、鍛冶の技と火を盗んで人間に与えます。

弟の配り忘れが、人間に技術をもたらした。 この物語は、そういう筋になっています。

パンドラを迎える ─ 忠告を思い出せなかった

火を盗まれたゼウスは、人間への報いとして最初の女パンドラを作らせました。

ヘパイストスが土から形を作り、アテナが技を教え、アフロディテが美しさを与え、ヘルメスが偽りの言葉を吹き込みます。神々の贈り物という名の、災いの器でした。

プロメテウスは弟に念を押していました。

ゼウスから何かが送られてきても、決して受け取るな。 そのまま送り返せ。

それでもエピメテウスは、パンドラを妻として迎えます。

受け取ってから、言われていたことを思い出した。

忠告を忘れていたのではなく、受け取ったあとで思い出した。ここがこの神の名の意味そのものです。

パンドラは壺の蓋を開け、あらゆる災いが世に広がりました。壺の底に希望だけが残ります。

この一件で、人間の暮らしは病と苦しみを抱えることになりました。弟の一度目の失敗が技術を生み、二度目の失敗が苦しみを生んだことになります。

兄と弟 ─ 人の二つの構え

プロメテウスとエピメテウスは、一組で読むべき神々です。

兄は先を読み、火を盗み、岩に縛られました。弟は後から気づき、パンドラを迎え、罰は受けませんでした。

先を読んだ者は罰せられ、 読まなかった者は罰せられなかった。

この対比は、ギリシャ神話のなかでもとりわけ皮肉が効いています。

しかし、二人の失敗はどちらも人間に関わります。兄がいなければ人間は火を持たず、弟がいなければ人間は災いを知りませんでした。

そして、洪水を生き延びたデウカリオンは兄の子、その妻ピュラは弟とパンドラの娘です。人類は、この兄弟の血が合わさったところから続いています。

先を読む力と、後から気づく力。人間はその両方を、両親から受け継いだという筋書きになります。

古代の読み手にとって、この兄弟は性格の類型でした。どちらか一方だけでは、人間になりません。

後知恵という力 ─ 名前の読み直し

エピメテウスは、長いあいだ愚かさの代名詞として扱われてきました。名前の意味がそのまま失敗を指しているためです。

ところが二十世紀に入ると、別の読み方が現れます。

先を読み、計画し、管理する。そうした態度が行き過ぎたとき、社会はどうなるか。すべてを前もって決めようとする世界への批判として、後から気づく力の側が見直されました。

起きてから受け止める。 起きる前に押さえ込むのではなく。

失敗してから学ぶという構えは、失敗を許さない構えより人間的だ という議論です。

この読み替えは、原典の記述に根ざしたものではありません。ヘシオドスもプラトンも、エピメテウスを愚かな者として書いています。

それでも、名前だけを残した神が二千数百年後に別の意味を与えられたことは、記録しておく価値があります。神話の名は、読み手の時代とともに動きます。

エピメテウスの家系図と家族

エピメテウスの親: イアペトス四人の息子の一人。パンドラを妻に迎えた

エピメテウスのきょうだい: プロメテウス「後で考える者」と「先に考える者」の兄弟

エピメテウスの妻・夫: パンドラ兄の忠告を忘れ、送られてきたパンドラを妻に迎えた

エピメテウスの性格と人物像

エピメテウスは、悪意の無い神です。

企みも、恨みも、貪欲もありません。獣に能力を配ったときも、公平に釣り合いを取ろうとしています。パンドラを迎えたときも、疑うことを知らなかっただけです。

この神の失敗は、すべて間に合わなかったことから起きています。悪いことをしたのではなく、気づくのが遅れただけです。

もう一つの特徴は、罰を受けていないことです。兄プロメテウスは岩に縛られ、兄弟メノイティオスは雷に撃たれました。アトラスは天を担ぎ続けています。四人のなかで、エピメテウスだけが罰の記録を持ちません。

ゼウスから見れば、この神は敵ではなかったことになります。贈り物を受け取ってしまう相手を、罰する理由がありません。

性格として語れることは多くありませんが、人間に近い神という印象は一貫しています。先を読めず、疑えず、後から悔やむ。

古代の読み手が、この神に自分たちの姿を見たとしても不思議はありません。

エピメテウスゆかりの地と遺跡

エピメテウスを祀った神殿は確かめられませんでした。

この神には独立した祭祀の記録がありません。ティタンの子ではありますが、都市の守り神になった形跡も、祭りの名も見つかりませんでした。

兄プロメテウスには、アテナイの郊外に祭壇があり、松明を持って走る競技が行われたと伝えられます。火を与えた兄には祭りがあり、災いを受け取った弟にはありません。

ゆかりの地を挙げるとすれば、洪水の物語に結びついた場所になります。エピメテウスとパンドラの娘ピュラは、デウカリオンとともに舟で生き延び、パルナソス山に流れ着いたとされます。デルフォイのすぐ上にある山です。

ただし、そこにこの神の名を持つ場所はありません。分からないところは、分からないままにしておきます。

エピメテウスが現代に残した痕跡

エピメテウスの名は、天体の名と、後知恵を指す言葉として残りました。

土星の衛星エピメテウス: もう一つの衛星とほとんど同じ軌道を回り、近づくたびに互いの軌道を入れ替える。二つで一組のように振る舞う珍しい衛星である。

後知恵を指す言葉: 先を読む態度を「プロメテウス的」、後から気づく態度を「エピメテウス的」と呼ぶ言い方がある。二十世紀の思想の議論で使われた。

パンドラの夫としての位置: 最初の女パンドラを妻に迎えた神。その娘ピュラは、洪水を生き延びたデウカリオンの妻になった。

プラトンが語った分配の物語: 対話篇『プロタゴラス』で、能力を配り忘れて人間を裸のまま残した神として語られる。人間の技術の起源を説明する筋になっている。

エピメテウスが司るもの

やり直し

配り忘れも、忠告を忘れたことも、取り返しのつかない失敗として語られる。

失敗からの立て直し

弟の配り忘れを埋めるために、兄が火を盗んだ。失敗が技術を生んだ形になる。

過ちを繰り返さないこと

二度そろって同じ形の失敗をした。後知恵の神として語り継がれる。

野生動物の保護

獣に爪と牙と毛皮と速さを配ったのはこの神。釣り合いはよく取れていた。

変化への備え

起きてから受け止める構えとして、後世に読み直された。

エピメテウスが登場するゲーム・アニメ

創作でのエピメテウスは、兄の引き立て役になることがほとんどです。先を読む兄と、読めない弟という対比が分かりやすいためです。

ただし近年は、後から気づく力の側に光を当てる扱いも見られます。原典の記述に根拠はありませんが、名前の意味が読み替えを許す形をしています。

エピメテウスが登場する絵画・彫刻

パンドラを迎える場面

壺を持つ女性を迎える男として描かれます。近世ヨーロッパの絵画に例があります。

古代の壺絵に残るパンドラの誕生

地から立ち上がるパンドラを神々が囲む図像があり、そこに立ち会う姿が描かれることがあります。

エピメテウスが登場するゲーム・創作

ギリシャ神話を題材にした作品

プロメテウスの弟として登場し、うかつな役回りを与えられることが多くなっています。

宇宙を扱う作品

土星の衛星の名として出てくることがあります。

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エピメテウスについてよくある質問

エピメテウスはどんな神ですか。

イアペトスとクリュメネの子で、プロメテウスの弟です。名は「後で考える者」を意味します。生き物に能力を配る仕事で人間の分を残さず、さらに兄の忠告を忘れてパンドラを妻に迎えました。

プロメテウスとはどう違うのですか。

名前が対になっています。プロメテウスは「先に考える者」、エピメテウスは「後で考える者」です。兄は先を読んで火を盗み罰を受け、弟は後から気づいて災いを招きましたが罰は受けませんでした。

人間だけが弱いのはなぜですか。

プラトンの『プロタゴラス』によれば、エピメテウスが獣たちに能力を配りきってしまい、人間の番になったとき何も残っていなかったためです。これを埋めるために、兄プロメテウスが火と技術を盗んで与えました。

パンドラとの間に子はいますか。

娘ピュラがいます。ピュラはプロメテウスの子デウカリオンの妻となり、大洪水を舟で生き延びました。洪水のあとの人類は、この夫婦から出たとされます。

エピメテウスを祀った神殿はありますか。

確かめられませんでした。兄プロメテウスにはアテナイに祭壇があり、松明を持って走る競技も行われたと伝えられますが、弟に同様の記録は見つかっていません。