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北欧神話

ラグナル・ロズブロークとは何の神様か|家系図・物語

Ragnarr Loðbrók  / ラグナルロズブローク

英雄

蛇の穴で死んだ伝説の王。息子たちがイングランドへ復讐した。

ラグナル・ロズブロークとは何の神様か

ラグナル・ロズブロークはひとことで言えばヴァイキングの伝説を一身に負った王です。名の「ロズブローク」は「毛羽立ちズボン」を意味します。

九世紀にフランスとイングランドを襲ったとされ、骨無しのイーヴァル、剛勇のビョルン、ハールヴダンら、名高い息子たちの父とされます。妻はソーラ、そしてアスラウグ。楯の乙女ラゲルタを加えて三度結婚したとも伝えられます。

最期は、ノーサンブリアのアエラ王に捕らえられ、蛇の牢に投げこまれて死にました。息子たちは大軍を率いてイングランドへ渡り、父の復讐を果たしたと伝えられます。

実在したかどうかは定まっていません。同時代の記録に現れる複数の首領が、一人の英雄にまとめられたとみる説が有力です。

ラグナル・ロズブロークの名前の表記と読み方

古ノルド語では Ragnarr loðbrók。前半の Ragnarr は「神々の軍勢」に通じる名で、ラグナロク(Ragnarǫk)と同じ語根の regin(統べる力・神々)を含みます。

後半の loðbrók は「毛の付いたズボン」。由来はサガに書かれています。毒蛇の巣に棲む大蛇を討つため、松脂で固めた毛皮のズボンを履いて出向いた、という話です。

日本語ではロズブローク、ロドブロークと表記が分かれます。

Ragnarr loðbrók(ラグナル・ロズブローク)

古ノルド語の表記。loðbrók は「毛羽立ちズボン」を意味する。

Regnar Lodbrog(レイナル・ロズブロー)

デンマーク語の表記。

Ragnar Lothbrok(ラグナル・ロスブロック)

英語圏の綴り。映像作品を通じてこの形が広まった。

ラグナル・ロズブロークの物語

  1. 毛皮のズボン ─ 名の由来
  2. アスラウグ ─ 英雄の血を継ぐ妻
  3. 蛇の牢 ─ 最期と復讐

毛皮のズボン ─ 名の由来

『ラグナル・ロズブロークのサガ』によれば、イェータランドの伯がおり、娘ソーラに一匹の蛇を与えました。蛇は黄金の上で育ち、やがて館を取り巻くほどの大きさになります。

伯は、蛇を討った者に娘を与えると触れを出しました。

ラグナルは、毛皮のズボンを松脂で固め、砂に埋めて凍らせてから身につけ、蛇に向かいました。毒は布を通らず、槍で貫きます。

人々はその姿を見て、この男を「毛羽立ちズボン」と呼びました。異名がそのまま名として残り、本名より広く知られることになります。

アスラウグ ─ 英雄の血を継ぐ妻

二人目の妻となったのがアスラウグです。

サガは、この女性をシグルズブリュンヒルドの娘とします。両親の死後、竪琴の中に隠されて運ばれ、貧しい老夫婦に育てられ、クラーカ(鴉)と名乗っていました。

ラグナルは謎かけを出します。「着物を着ず、しかし裸でもなく、食べず、しかし空腹でもなく、供を連れず、しかし一人でもなく来い」。

アスラウグは網をまとい、玉ねぎを噛み、犬を連れて現れました。

この一場面によって、ヴァイキングの伝説と竜殺しの英雄譚が一本につながります。 別々の物語だったものが、婚姻でつなぎ合わされているわけです。

蛇の牢 ─ 最期と復讐

ラグナルは二隻の船だけでイングランドへ渡り、ノーサンブリア王アエラに捕らえられました。

投げこまれたのは、毒蛇の穴です。死にぎわの歌が伝えられています。

子豚たちは、老いた猪がどう死んだかを聞けば、うなり声をあげるだろう。

子豚とは息子たちのことです。

知らせを受けた息子たちは大軍を率いて海を渡りました。年代記が「大異教軍」と呼んだ軍勢です。イングランドの諸王国は次々に倒れ、アエラは討たれました。

八六五年に実際にイングランドを襲った軍勢が、この伝説と結びつけられています。物語と歴史の境目が、この一点で溶けています。

ラグナル・ロズブロークの家系図と家族

ラグナル・ロズブロークの妻・夫: アスラウグ

ふつうのつながり きょうだい 敵対・国ゆずり 本によって話がちがう

ラグナル・ロズブロークの性格と人物像

ラグナルは、まとめられた英雄です。

蛇退治、王女との結婚、遠征、捕縛、死にぎわの歌。ひとつひとつは別々の物語の型で、それが一人の名の下に集められています。

同時代の年代記には、パリを襲ったレグネル、イングランドで戦ったロズブロークといった名が別々に現れます。研究者の多くは、複数の首領の事績が、二百年ほどかけて一人の英雄に集約されたとみています。

それでもこの人物が愛されるのは、死にぎわの一行のためでしょう。自分の死が終わりではなく、次の始まりだと言い切っている。 復讐が名誉である社会の価値観が、これ以上ないほど短く言い表されています。

ラグナル・ロズブロークゆかりの地と遺跡

ラグナルを祀った場所はありません。 神ではなく、伝説の王だからです。

イングランドとデンマークには、この王や息子たちに結びつけて語られる塚がいくつかありますが、いずれも後世の言い伝えで、被葬者を特定できるものではありません。 蛇の牢の場所も、ノーサンブリアのどこかとされるだけで、位置は特定されていません。

ラグナル・ロズブロークが現代に残した痕跡

この王の名は、年代記と現代の映像作品の双方に残っています。

大異教軍: 八六五年にイングランドを襲った軍勢。年代記はその指導者をラグナルの息子たちとする。

『ラグナル・ロズブロークのサガ』: 十三世紀のアイスランドで書かれたサガ。この人物の生涯をまとめて語る中心的な資料である。

テレビ作品での再話: 二十一世紀の映像作品によって世界的に知られるようになった。ただし史実とサガの区別は作品内では曖昧である。

ラグナル・ロズブロークが司るもの

勝利

遠征と征服によって名を上げた王として語られる。

勇気

毒蛇に立ち向かい、二隻の船で敵地へ渡った人物とされる。

復讐

死にぎわに息子たちの復讐を予告し、そのとおりになったと伝えられる。

ラグナル・ロズブロークについてよくある質問

ラグナル・ロズブロークは実在した人物ですか。

定まっていません。同時代の年代記に似た名の首領が複数現れ、それらが一人の英雄にまとめられたとみる説が有力です。

「ロズブローク」とはどういう意味ですか。

「毛羽立ちズボン」です。松脂で固めた毛皮のズボンを履いて大蛇を討ったことに由来するとサガが伝えます。

ラグナルはどうやって死にましたか。

ノーサンブリアのアエラ王に捕らえられ、毒蛇の牢に投げこまれて死にました。死にぎわに息子たちの復讐を予告する歌を残したとされます。

ラグナルは北欧神話の人物ですか。

神々の物語ではなく、サガに語られる伝説上の王です。ただし妻アスラウグを通じて、竜殺しシグルズの一族と結びつけられています。

ラグナル・ロズブロークと併せて覚えたい言葉・用語

ラグナロク(Ragnarök)

北欧神話の終末。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅して世界が焼け落ち、海に沈む。そののち新しい大地が浮かび上がる。