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北欧神話

トロールとは何の神様か|家系図・物語

Troll  / トロール

大地 精霊

北欧の山と岩に住む怪異。もとは巨人と地続きの存在だった。

トロールとは何の神様か

トロールはひとことで言えば巨人の子孫です。北欧、とくにノルウェーの伝承に登場する怪異で、デンマーク語で trold、スウェーデン語で troll と綴られます。

重要なのは、神話の巨人ヨトゥンと地続きだったことです。エッダにも、女巨人を指して「トロールの女」と呼ぶ言い方が出てきます。キリスト教が広まって古い神々が語られなくなったあと、巨人についての古い考え方を引き継いだのが、この呼び名でした。

民間伝承では、山・岩・橋の下・森に住み、日の光を浴びると石になるとされます。人をさらい、家畜を盗み、鉄と教会の鐘を嫌う。

小柄で滑稽な姿に描かれるようになったのは十九世紀以降で、原典にそのような描写はありません。

トロールの名前の表記と読み方

古ノルド語の troll は、もとは「魔力を持つもの」を広く指す語でした。特定の種族を指す名ではありません。

そのため範囲が広く、巨人も、魔女も、正体の知れないものも、この語で呼ばれます。種族の名ではなく、恐ろしさの呼び名だったと考えるほうが実態に近いようです。

日本語ではトロール、トロル、トロールドと表記が揺れます。漁法の「トロール」とは無関係の別語です。

Troll(トロール)

スウェーデン語・古ノルド語の綴り。

Trold(トロル)

デンマーク語の綴り。

Tröllkona(トロールコナ)

「トロールの女」。エッダで女巨人を指すのに使われる語。

トロールの物語

  1. 日に当たると石になる
  2. 教会の鐘と鉄
  3. 近代がつくった姿

日に当たると石になる

トロールのもっとも有名な性質が、日の光で石になることです。

この性質は、エッダにすでに現れています。『アルヴィースの言葉』で、トールは小人アルヴィースを問答で引き止め続けます。

日が昇った。おまえは今、日に照らされている。

小人はそのまま石になりました。問い続けることが、そのまま武器になっている珍しい戦い方です。

ノルウェー各地には、この言い伝えから名づけられた岩があります。トロールの姿をした岩、というより、岩の形が先にあって物語が付いたのでしょう。

教会の鐘と鉄

民間伝承のトロールは、教会の鐘の音を嫌います。

鐘の音が届く範囲には近づけない、という話が北欧中に残ります。これはキリスト教が広まる過程で生まれた語りで、古い信仰の存在が新しい信仰に追い払われる姿がそのまま形になっています。

鉄を嫌うのは、鉄器がまだ新しかった時代の記憶とみる説があります。刃物を揺りかごに入れて子どもの取り替えを防ぐ、という習わしが北欧各地で記録されています。

近代がつくった姿

いま思い浮かぶトロールの姿は、十九世紀の絵が作りました。

スウェーデンの画家ヨン・バウエルが描いた、鼻の大きな、苔むした森の住人。ノルウェーのテオドール・キッテルセンが描いた、山ほどもある老いた怪物。

この二人の絵が、北欧の子ども向けの本を通じて広まり、世界の共通像になりました。

原典の巨人には、姿の描写がほとんどありません。 いま知られている姿は、ほとんどすべて近代の画家が与えたものです。

ノルウェーの観光地では、この姿を象った人形が土産物として売られています。

トロールの家系図と家族

ふつうのつながり きょうだい 敵対・国ゆずり 本によって話がちがう

トロールの性格と人物像

トロールは、神話が民話へ落ちていくときの姿です。

エッダの巨人は、神々と結婚し、宝を持ち、知恵比べをする相手でした。それが民話のトロールになると、山の中で人をさらい、鐘の音に怯え、日に当たって石になります。

恐ろしさが残り、対等さが失われました。 神々が語られなくなっても、山に何かがいるという感覚だけは残ったわけです。

そして近代の画家が姿を与え、いまは土産物の人形になっています。千年かけて、敵から隣人へ、隣人から人形へ変わった存在といえます。

同じ北欧の民間伝承には、家に住みつくトムテや、水辺に現れるノッケンもいます。人と一緒に暮らす者と、山へ追いやられた者に分かれました。

トロールゆかりの地と遺跡

トロールを祀った場所はありません。 避けるべきものであって、祀る相手ではありませんでした。

かわりに残ったのが地名です。ノルウェーには「トロールの〜」を含む地名が数多くあり、山道や岩壁の名として使われています。ただし、これらの多くは近代に観光のために名づけられたもので、どれが古い伝承にさかのぼるかは特定されていません。

トロールが現代に残した痕跡

この名は、北欧の土地と近代の絵を通じて、世界中に知られるようになりました。

ヨン・バウエルの挿絵: スウェーデンの画家。『トムテとトロール』の挿絵で、森に住む苔むした姿を定着させた。

テオドール・キッテルセンの絵: ノルウェーの画家。山ほどの大きさの老いたトロールを描き、北欧の風景と結びつけた。

ノルウェーの地名: トロールの階段、トロールの壁など、山道や岩壁にこの名が付けられている。

トロールが司るもの

厄除け

鉄と教会の鐘を嫌うとされ、それらを用いてトロールを避ける習わしが各地に残った。

土地の守り

山や岩に宿り、その場所と結びついて語られた。

トロールについてよくある質問

トロールと巨人は違いますか。

もとは地続きです。エッダでは女巨人を「トロールの女」と呼ぶ言い方があり、キリスト教化のあと巨人観を引き継いだのがこの呼び名とされます。

トロールはなぜ日光で石になるのですか。

古い伝承からある性質で、エッダでも小人アルヴィースが日の出とともに石になります。理由は語られていません。

トロールは大きいのですか、小さいのですか。

伝承によって違います。山ほどの大きさに描かれることも、人間より少し大きい程度に描かれることもあります。

いまのトロールの姿は原典どおりですか。

違います。鼻が大きく毛深いという姿は、十九世紀のヨン・バウエルやキッテルセンの絵によって広まったものです。