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北欧神話

ヴェルンドとは何の神様か|家系図・物語

Vǫlundr  / ヴェルンド

英雄

足の腱を切られた鍛冶。復讐を果たし、自ら作った翼で飛び去る。

ヴェルンドとは何の神様か

ヴェルンドはひとことで言えば捕らわれた職人です。ゲルマンの伝承に広く現れる鍛冶師で、どの伝えでも並ぶ者のない腕前として語られます。

英語圏ではウェーランド、ドイツ語圏ではヴィーラントと呼ばれます。北欧では、アールヴの長と呼ばれる場面もあります。

古エッダヴェルンドの歌』の筋は容赦がありません。妻に去られた鍛冶が王に捕らえられ、足の腱を切られて島に閉じ込められ、来る日も来る日も宝を作らされます。

そして復讐します。王の息子二人を殺し、その頭蓋を杯に、目を宝石に、歯を胸飾りに変えて、それと知らせずに王家へ届けました。

最後は、自ら作った翼で空へ舞い上がります。すべてを王に告げてから飛び去る場面で、歌は終わります。

作る力そのもので自由を取り戻した職人の物語です。

ヴェルンドの名前の表記と読み方

古ノルド語では Vǫlundr(ヴェルンド)。ヴォルンド、ヴェルントとも書かれます。

この人物は、ゲルマン語圏のほぼ全域で名を知られていました。 北欧でヴェルンド、イングランドでウェーランド、ドイツでヴィーラント。名の形は違いますが、同じ一人を指します。

古い伝承がどれだけ広く共有されていたかを示す、よい例です。 神々の名が地域ごとに大きく変わるのに対し、この鍛冶の名は形を保ったまま各地に残りました。

語源ははっきりしません。「巧みな者」「作る者」に通じるとする説があります。

Vǫlundr(ヴェルンド)

古ノルド語の表記。古エッダ『ヴェルンドの歌』の主人公である。

Wayland(ウェーランド)

英語圏の呼び名。ウェーランド・スミス(鍛冶のウェーランド)と呼ばれる。

Wieland(ヴィーラント)

ドイツ語圏の呼び名。中世の物語に鍛冶の名手として現れる。

ヴェルンドの物語

  1. 白鳥の乙女 ─ 妻を得て、失う
  2. 腱を切られる ─ 王の鍛冶場で
  3. 復讐 ─ 頭蓋の杯、目の宝石、歯の飾り
  4. 翼で去る ─ 空へ

白鳥の乙女 ─ 妻を得て、失う

『ヴェルンドの歌』は、静かな場面から始まります。

三人の兄弟が狩りに出て、水辺で乙女たちに出会いました。乙女たちは白鳥の衣を脱いで亜麻を紡いでいます。歌の散文の前書きは、この乙女たちをワルキューレと呼んでいます。

三人はそれぞれ乙女を妻にし、七年を共に暮らしました。

八年目、乙女たちは去ります。戦の場へ戻る心を抑えきれなかったのだと歌われます。

兄二人は妻を探しに出ました。ヴェルンドだけが残り、指輪を作り続けて待ちます。 その指輪の数が、後に彼を捕らえる者への手がかりになりました。

腱を切られる ─ 王の鍛冶場で

ヴェルンドの噂を聞いたニーズズ王は、兵を送って眠っている鍛冶を捕らえました。

王は宝を奪い、剣を取り上げ、指輪の一つを自分の娘ベズヴィルドに与えます。

そして王妃の入れ知恵で、足の腱を切りました。逃げられないようにするためです。

ヴェルンドは島の鍛冶場に据えられ、王のためだけに宝を作り続けることになります。

王のためにだけ、彼は宝を鍛えた。

腕を惜しんだ王は、その腕を持つ人間ごと不具にしました。 職人の技だけを取り出して所有しようとする、いちばん残酷な形です。

ヴェルンドは眠らず、槌を打ち続けたと歌われます。

復讐 ─ 頭蓋の杯、目の宝石、歯の飾り

ある日、王の二人の息子が宝を見たさに鍛冶場を訪れました。

ヴェルンドは、明日また来い、誰にも言うなと告げます。二人は言われたとおりに戻ってきました。

そして殺されます。

ヴェルンドは、その頭蓋を銀で覆ってにし、目玉を磨いて宝石にし、歯を胸飾りに仕立てました。杯は王へ、宝石は王妃へ、胸飾りは王女へ。誰も、それが何でできているかを知りません。

さらに王女ベズヴィルドが、割れた指輪を直してもらいに一人で訪れます。ヴェルンドは酒を飲ませ、辱め、身ごもらせました。

息子を殺し、娘を奪う。 王の家系そのものを断ったうえで、自分の血を残しています。

翼で去る ─ 空へ

復讐を終えたヴェルンドは、自ら作った翼を身につけて空へ舞い上がりました。

王の館の塀の上に降り立ち、そこで初めて、何をしたかを告げます。息子たちがどこにいるか。杯が何でできているか。娘に何をしたか。

王は動けません。腱を切られた男は逃げられないはずでした。歩けなくされた者が、飛んで去ります。

そして、こう誓わせてから飛び去りました。

妻を傷つけず、腹の子を害さないと誓え。

生まれてくる子は、王の孫であり、ヴェルンドの子です。 復讐した相手の血に、自分の血を混ぜて残していく。この歌の最後は、単純な勝利では終わりません。

ヴェルンドの家系図と家族

ヴェルンドの妻・夫: ヴァルキュリャ白鳥の衣をまとった乙女を妻とする

ヴェルンドの性格と人物像

ヴェルンドは、壊れた人です。

最初の姿は静かでした。妻を待ちながら指輪を作り続ける鍛冶。ここには何の悪意もありません。

変えたのは王です。宝を奪い、剣を取り上げ、足の腱を切り、島に閉じ込めた。技を持つ者を、技だけの道具にしようとしました。

復讐は、その扱われ方をそのまま返しています。人を材料にして工芸品を作る。 頭蓋を杯に、目を宝石に、歯を飾りに。職人としての腕を、いちばんおぞましい形で使いました。

読後に残るのは、爽快さではありません。気の毒な男が、取り返しのつかないところまで行ってしまったという感触です。

それでもこの物語が千年語られたのは、作る力は誰にも奪えないという一点が、はっきり示されているからでしょう。飛び去る翼も、彼自身が作ったものです。

ヴェルンドゆかりの地と遺跡

ヴェルンドを祀った場所はありません。 神ではなく、伝承上の職人だからです。

かわりに、この人物の名を負った土地がイングランド南部にあります。オックスフォードシャーにある新石器時代の墳墓が、古くから「鍛冶のウェーランドの塚」と呼ばれてきました。馬を置いて銭を添えると、朝までに蹄鉄が打たれているという言い伝えが残ります。

墳墓そのものは神話よりはるかに古く、後の時代の人々がこの名を当てはめたものです。この記事では住所を一次情報で確かめられたものだけを扱う方針のため、欄は空けています。

ヴェルンドが現代に残した痕跡

この鍛冶の名は、地名と、中世の工芸品に残りました。ゲルマン語圏の広い範囲で共有された数少ない人物です。

鍛冶のウェーランドの塚: イングランド南部にある新石器時代の墳墓の通称。馬を置くと蹄鉄が打たれているという言い伝えが残る。

中世の箱に彫られた場面: ヨーロッパに伝わる古い工芸品に、鍛冶場と杯、翼といった要素を含む場面が彫られたものがある。この物語を表すとされる。

各地に残る名: 北欧でヴェルンド、イングランドでウェーランド、ドイツでヴィーラント。名の形を保ったまま、ゲルマン語圏の全域に伝わった。

ヴェルンドが司るもの

拘束からの解放

足の腱を切られて閉じ込められながら、自ら作った翼で飛び去った。

復讐

自分を捕らえた王の家に、最も重い形で報いを返した。

ものづくり

ゲルマン語圏の全域で名を知られた、並ぶ者のない鍛冶である。

ヴェルンドについてよくある質問

ヴェルンドとは誰ですか。

ゲルマンの伝承に広く現れる鍛冶師です。ニーズズ王に捕らえられ、足の腱を切られて宝を作らされましたが、復讐を果たして自ら作った翼で飛び去りました。

なぜ足の腱を切られたのですか。

逃げられないようにするためです。王はこの鍛冶の腕を独り占めしようとして、島の鍛冶場に閉じ込めました。

どんな復讐をしたのですか。

王の息子二人を殺し、頭蓋を杯に、目を宝石に、歯を胸飾りに変えて、それと知らせずに王家へ届けました。さらに王女を辱めています。

ウェーランドやヴィーラントと同じ人ですか。

同じです。イングランドではウェーランド、ドイツではヴィーラントと呼ばれます。名の形を保ったままゲルマン語圏の全域に伝わりました。

ヴェルンドと併せて覚えたい言葉・用語

古エッダ(こエッダ)

詩の形で伝わる北欧神話の歌謡集。13世紀の写本に収められたが、成立はさらに古い。作者は不明。