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北欧神話

スルトとは何の神様か|家系図・物語

Surtr  / スルト

巨人

炎の剣を持つ巨人。世界を焼き尽くして終わらせる。

スルトとは何の神様か

スルトはひとことで言えば世界を終わらせる者です。名は「」または「黒い者」を意味します。

世界の南の果て、火の国ムスペルヘイムの境に立ち、燃える剣を手に見張っているとされます。

ラグナロクの日、この巨人はムスペルの一族を率いて虹の橋ビフレストを渡り、神々の国へ攻め上がります。橋は軍勢の重みで砕けます。

倒す相手は豊穣神フレイです。フレイは求婚のために自らの剣を従者スキールニルへ与えてしまっており、武器を持たない神が、剣を持つ巨人に討たれます。

そして最後に、この巨人は世界そのものに火を放ちます。北欧神話の終末は、戦いの決着ではなく、この一人の炎で終わります。

スルトの名前の表記と読み方

古ノルド語では Surtr。「黒い者」を意味します。

炎の巨人でありながら、名が黒であることは、しばしば議論になります。焼けたあとの色を指すとする説、煤を指すとする説、そして溶岩が冷えて黒くなるアイスランドの風景を指すとする説があります。

最後の説を裏づけるように、アイスランドには Surtshellir(スルトの洞窟)という溶岩洞があり、この名が古くから土地に結びついていたことがわかります。

一九六三年の海底噴火で現れた島は、この巨人にちなんで Surtsey(スルツェイ)と名づけられました。

Surtr(スルト)

古ノルド語の表記。「黒い者」を意味する。

Surtur(スルトゥル)

現代アイスランド語の表記。

Svartr(スヴァルト)

「黒い」を意味する同語根の形容詞。地名にも見られる。

スルトの物語

  1. 南の果てで待つ
  2. ビフレストを砕く
  3. 剣を手放した神を討つ
  4. 焼いたあとに残るもの

南の果てで待つ

新エッダは、世界の始まりの説明のなかで、この巨人をこう置きます。

ムスペルという明るく熱い国がある。そこはスルトと呼ばれる者の領地で、彼は境に座り、燃える剣を手にしている。
世界の終わりに、彼はやって来て戦い、すべての神々を打ち破り、全世界を火で焼くだろう。

世界が始まる場面で、もう終わり方が告げられています。

北欧神話は、最初の一ページで結末を明かしてしまう神話です。 この構えを決めているのが、南の果てに座るこの巨人です。

ビフレストを砕く

『巫女の予言』は、この巨人の到来をこう歌います。

南からスルトが来る、枝を焼く炎とともに。戦の神々の剣から太陽が輝く。
岩山は崩れ、女巨人はよろめき、人は死出の道を行き、天は裂ける。

虹の橋ビフレストは、ムスペルの子らが渡るときに砕けます。ヘイムダルが眠らずに見張り続けたのは、この日のためでした。

神々の最大の防備が、この一度だけの通行で失われます。 橋は渡らせないためのものではなく、渡られたことを知らせるためのものだったことになります。

剣を手放した神を討つ

スルトが討つのは、豊穣神フレイです。

フレイは巨人の娘ゲルズに一目惚れし、求婚を成功させるために、従者スキールニル自らの剣を与えてしまいました。ひとりでに戦う剣でした。

フレイは、剣を手放したことをいつか悔やむだろう。

『スキールニルの歌』の一節です。そして、そのとおりになります。

恋のために手放した武器がないために、終末の日に討たれる。 北欧神話の因果は、こうして何百年もあとで回収されます。

焼いたあとに残るもの

戦いが終わったあと、この巨人は世界に火を放ちます。

スルトは大地に火を投げ、全世界を焼き払う。

大地は焼け落ち、海に沈みます。

しかし『巫女の予言』は、そこで終わりません。焼けた海から新しい大地が緑をたたえて浮かび上がり、麦は蒔かずに実り、生き延びた神々が野に集います。

焼き尽くすことが、更地にすることでもある。 この巨人は破壊者であると同時に、世界を作り直すための火でもあります。 火山の島に住む人々が語り継いだ神話らしい終わり方です。

スルトの家系図と家族

スルトの妻・夫: シンモラ伴侶とされる

スルトの性格と人物像

スルトには、動機がありません。

ロキのように恨みを述べることもなく、フェンリルのように縛られた経緯もない。神々と口をきく場面すらありません。世界の始まりから南の果てに座り、剣を持って、その日を待っています。

説得できる相手ではないという一点が、この巨人を他のどの敵とも違うものにしています。

神々が交渉し、結婚し、賭けをし、言い逃れをしてきた相手のなかで、この巨人だけが最後まで一言も交わしません。

伴侶は女巨人シンモラとされ、レーヴァテインという武器を預かっていると伝えられます。ただしこの記述は『フョルスヴィーズルの言葉』にしかなく、詳しいことはわかっていません。

スルトゆかりの地と遺跡

スルトを祀った場所はありません。 話しかける相手ですらありませんでした。

かわりに、アイスランドの土地の名に残っています。溶岩洞 Surtshellir(スルトの洞窟)は古い記録に現れ、この名が土地と結びついていたことを示します。一九六三年の噴火で生まれた島 Surtsey(スルツェイ)も、この巨人にちなんで名づけられました。ただしスルツェイは研究のために立ち入りが厳しく制限されており、一般には上陸できません。

スルトが現代に残した痕跡

この巨人の名は、火山の島の地名として、いまも増え続けています。

スルツェイ島: 一九六三年の海底噴火で現れたアイスランド沖の島。この巨人にちなんで名づけられた。研究のため立ち入りが制限されている。

スルトの洞窟: アイスランド西部の溶岩洞。古い記録にも現れ、この名が土地に古くから結びついていたことを示す。

「黒」を意味する語: 名と同じ語根の svartr(黒い)は、小人の国スヴァルトアールヴヘイムの名にも含まれている。

スルトが司るもの

燃える剣を持ち、世界を焼き払う存在とされる。

再生

焼き尽くしたあとに新しい大地が浮かび上がる。破壊と作り直しが一続きになっている。

境界

火の国ムスペルヘイムの境に座り、その日まで動かない見張りとされる。

スルトについてよくある質問

スルトはなぜ「黒い者」という名なのですか。

定説はありません。焼けたあとの色とする説、煤とする説、溶岩が冷えて黒くなるアイスランドの風景を指すとする説があります。

スルトは誰を倒しますか。

豊穣神フレイです。フレイは求婚のために剣を手放しており、武器を持たないまま討たれます。

スルトはラグナロクで死にますか。

討たれたという記述はありません。世界に火を放ったあと、その後どうなったかは語られていません。

スルトにちなむ地名はありますか。

アイスランドの溶岩洞スルツヘトリルと、一九六三年の噴火で現れた島スルツェイがあります。

スルトと併せて覚えたい言葉・用語

ラグナロク(Ragnarök)

北欧神話の終末。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅して世界が焼け落ち、海に沈む。そののち新しい大地が浮かび上がる。

ビフレスト(Bifröst)

地上と神々の国をつなぐ虹の橋。赤い部分は炎で、ヘイムダルが番人として守る。

新エッダ(しんエッダ)

1220年頃にアイスランドのスノッリ・ストゥルルソンが著した散文の書。神話を体系的に整理しており、現在の北欧神話の理解はこの書に多くを負う。