鳥海山の神。噴火を朝廷への警告として記録された。
大物忌神とは何の神様か
大物忌神はひとことで言えば鳥海山そのものです。山形と秋田にまたがる鳥海山に祀られます。
名の「モノイミ(物忌)」は、穢れを避けて身を慎むことを指します。触れてはならない神という意味を含みます。
平安時代の記録に、この神が噴火を起こしたという記述が繰り返し現れます。朝廷はそのたびに神階を上げて鎮めようとしました。
大物忌神の漢字表記と読み方
読みは「おおものいみ」です。「モノイミ(物忌)」は、神事の前に穢れを避けて身を慎むことを指します。
伊勢神宮にも物忌という役職があり、祭祀に仕える童女を指しました。神に近づくために身を清めるという意味です。
神の名に「物忌」が付くのはめずらしく、この神が特に厳しく忌むべき存在とされたことを示すと考えられています。
大物忌神(おおものいみのかみ)
一般的な表記。
大物忌大神(おおものいみのおおかみ)
尊称を付けた表記。
倉稲魂命(うかのみたまのみこと)
同一とする説がある。食物の神。
大物忌神の物語
噴火は神の怒りだった
平安時代の記録には、鳥海山の噴火が繰り返し記されています。
出羽国の大物忌神の山が焼けた。
朝廷はこれを神の怒りと受け取りました。そして対応をとります。
神階を上げるのです。位を授けることで、神をなだめようとしました。
噴火のたびに位が上がり、大物忌神は最終的に正二位という高い位を得ています。
山が噴けば、位を上げる
この対応は、現代の感覚では奇妙に見えます。
災害が起きる → 原因を調べる(現代)
災害が起きる → 神に位を与える(当時)
しかし当時としては合理的でした。自然現象の原因が分からない以上、意思を持つ何かの仕業と考えるほかないからです。
意思があるなら、交渉できます。位を与え、祭祀を厚くすることで、態度を和らげてもらう。
これは日本の神祇制度の基本的な考え方でした。
災害史の資料になる
興味深いのは、この記録が現代の役に立っていることです。
朝廷は噴火のたびに日付と内容を記録しました。地質学の調査結果と照らすと、記録の年代と噴火の痕跡が一致することが確かめられています。
神話が、災害の記録になっている。
鳥海山はいまも活火山です。過去の噴火の頻度と規模を知る手がかりとして、平安時代の記録が使われています。
出羽国一宮
鳥海山大物忌神社は、出羽国一宮です。
社は三つに分かれています。
山頂の御本社 ─ 鳥海山の頂上
吹浦口ノ宮 ─ 麓の里宮
蕨岡口ノ宮 ─ もう一つの里宮
山頂の社は、冬の間は雪に閉ざされて参れません。山そのものが神である社に共通する形です。
国指定史跡に指定されています。
大物忌神の家系図と家族
大物忌神の性格と人物像
大物忌神は、恐れられた神です。
名に「物忌」を含み、噴火を起こし、そのたびに位を上げてなだめられました。恵みではなく、災いによって存在を示した神です。
ただし、噴火を起こす山は同時に豊かな水と土をもたらします。鳥海山の湧水は麓の稲作を支えてきました。
災いと恵みが同じ場所から来るという、火山の神に共通する性格を持っています。
大物忌神を祀る神社
大物忌神を祀るのは、鳥海山大物忌神社です。出羽国一宮にあたります。
社は山頂の御本社と、麓の吹浦口ノ宮・蕨岡口ノ宮の三つからなります。山頂の社は冬の間、雪に閉ざされます。
山そのものを神とする形で、社殿より山が先にあった信仰の姿を残しています。
大物忌神が現代に残した痕跡
大物忌神の記録は、災害史の資料になりました。
鳥海山: 山形・秋田にまたがる活火山。標高2,236メートル。
出羽富士: 鳥海山の別称。日本海から見える姿による。
神階の記録: 噴火のたびに位を上げた朝廷の記録。噴火年代の資料として使われる。
大物忌神のご利益
厄除け
災いをもたらす神をなだめるという考え方による。
五穀豊穣
鳥海山の湧水が麓の稲作を支えてきたことによる。
海上安全
日本海から見える山として航行の目印になったことによる。
大物忌神についてよくある質問
大物忌神とはどんな神様ですか。
鳥海山の神です。名の「物忌」は穢れを避けて身を慎むことを指し、触れてはならない神という意味を含みます。
なぜ噴火のたびに位を上げたのですか。
噴火を神の怒りと受け取り、位を授けることでなだめようとしたためです。当時は自然現象の原因が分からず、意思を持つ存在の仕業と考えられていました。
その記録はいまも使われているのですか。
朝廷の記録に残る噴火の年代と、地質調査で分かる噴火の痕跡が一致することが確かめられており、災害史の資料として扱われています。