フテミミの父。布の綱を神格化したとする説がある。
フノヅノとは何の神様か
フノヅノの漢字表記と読み方
読みは「ふのづの」、現代仮名遣いでは「ふのずの」です。
名義には、三つの説があります。
備後国三次郡の地名「布努郷」と関連づける説。
「フノ」を「クナ(曲)」の音転、「ヅノ」を葛とみて、くねくねと這う葛の類とする説。
「ヌノヅナ(布綱)」が誤写されて「ヌノヅノ」となり定着したとする説。
三つ目の説に立てば、布製の綱の神格化になります。
布怒豆怒神(ふのづののかみ)
古事記での表記。
布努都弥美(ふのつみみ)
粟鹿大明神元記での表記。
フノヅノの物語
布の三代
この神を含む三代は、布の名で並んでいます。
フノヅノ(布怒豆怒神) ─ 布の綱。
娘 フテミミ(布帝耳神) ─ 布の帯。
孫 アメノフユキヌ(天之冬衣神) ─ 天の冬の衣。
綱、帯、衣。太いものから細かいものへと進みます。
出雲の系譜のなかで、この部分だけが織物にまとまっています。
繊維を扱う一族の記憶が、神名として残ったのではないかと考えられます。
葛から繊維を取る
二つ目の説は、具体的な作業を指しています。
「ヅノ」は葛(つた)。
水にさらして、衣類の繊維を取る材料。
古代の布は、麻や葛の繊維から作られました。
葛の蔓を刈り、水に浸けて腐らせ、繊維だけを取り出します。葛布(くずふ)と呼ばれ、いまも静岡県掛川市などで作られています。
木綿が広まるのは、はるか後の時代です。それまで、日本の衣は山野の草木から作られていました。
布野という地名
一つ目の説は、地名に注目します。
布努郷 ─ 備後国三次郡。いまの広島県三次市布野町。
この神を祀る知波夜比売神社が、まさにその布野町にあります。
三次は、江の川の上流域にあたります。江の川は中国山地を貫いて島根県江津市で日本海に注ぐ、中国地方最大の川です。
出雲と備後は、この川で結ばれていました。出雲の系譜の神が備後に祀られていることには、地形上の理由があります。
誤写かもしれない神
三つ目の説は、書き間違いを想定します。
本来 ─ ヌノヅナ(布綱)。
誤写 ─ ヌノヅノ → フノヅノ。
娘のフテミミにも、同じく誤写説があります。
もとは布帯御霊(ヌノオビミミ)だったとする説です。
親子そろって誤写から生まれた名かもしれない、ということになります。
古事記は漢字で日本語の音を写した書です。写本を重ねるうちに字が変わり、もとの言葉が分からなくなることは避けられませんでした。
フノヅノの家系図と家族
フノヅノの性格と人物像
フノヅノは、綱の神です。
事績はありません。性別も明示されていません。あるのは、布や繊維に関わる名という、それだけです。
しかもその名は、書き間違いから生まれたかもしれません。
それでも、この神を祀る社が備後の布野町に残っています。地名と神名が一致しているという事実が、この名にわずかな確かさを与えています。
フノヅノを祀る神社
この神を祀るのは、広島県三次市布野町下布野の知波夜比売神社です。
社のある布野という地名は、名義の一説に挙げられる布努郷にあたります。
三次は江の川の上流域で、この川は中国山地を貫いて島根県江津市で日本海に注ぎます。出雲の系譜の神が備後に祀られていることには、地形上の理由があります。
フノヅノが現代に残した痕跡
フノヅノの名は、布野という地名に残りました。
布野: 広島県三次市の地名。名義の一説に挙げられる布努郷にあたる。
葛布: 葛の繊維で織った布。名義の一説と結びつく。
十七世神: この神の孫が属する出雲の系譜。
フノヅノのご利益
衣類守護
名が布と繊維に関わることによる。
子孫繁栄
アメノフユキヌの祖父にあたることによる。
フノヅノについてよくある質問
フノヅノとはどんな神様ですか。
古事記の大国主の系譜に登場する神です。フテミミの父で、その娘とオミヅヌの間にアメノフユキヌが生まれました。
名前の意味は何ですか。
備後の地名「布努郷」と関連づける説、葛の類とする説、もとは「布綱」で誤写により定着したとする説があります。
祀っている神社はありますか。
広島県三次市布野町の知波夜比売神社です。名義の一説に挙げられる布努郷にあたる土地です。