オオクニヌシの父。十七世神の第五代で、名に唯一「冬」を持つ神。
アメノフユキヌとは何の神様か
アメノフユキヌの漢字表記と読み方
読みは「あめのふゆきぬ」です。「アメノ」は天の、「フユ」は冬、「キヌ」は衣を指します。
名義は「天の冬の着物」とされますが、「冬衣」を「増ゆ衣」と読み、衣類が豊かに増えることを讃えた名とする説もあります。
もともとは「由布衣神(ゆふきぬのかみ)」、つまり木綿の衣の神だったという説もあります。
直前に並ぶフノヅノ・フテミミが衣に関わる神であるため、字が引きずられて入れ替わったのではないか、という見方です。
天之冬衣神(あめのふゆきぬのかみ)
古事記での表記。
天之葺根神(あめのふきねのかみ)
日本書紀で五世孫とされる神。同一かどうかは不明。
天布由伎奴(あめのふゆきぬ)
粟鹿大明神元記での表記。四世孫とする。
アメノフユキヌの物語
十七世神の第五代
古事記は、スサノオからオオクニヌシに至る系譜を五代で結びます。
一代 ヤシマジヌミ ─ スサノオとクシナダヒメの子。
二代 フハノモヂクヌスヌ
三代 フカブチノミズヤレハナ
四代 オミヅヌ
五代 アメノフユキヌ ─ この神。
そして オオクニヌシ。
五代のうち、事績が書かれている神は一柱もいません。
名と、誰を娶って誰を生んだかだけが並びます。日本書紀ではこの五代がなく、スサノオの直接の子をオオクニヌシとします。
なぜ五代も挟むのか
古事記と日本書紀で、世代の数が五つも違います。
古事記 ─ スサノオの六世孫がオオクニヌシ。
日本書紀 ─ スサノオの子がオオクニヌシ。
これは単純な誤差ではありません。出雲の系譜をどれだけ長く見せるかという判断の違いです。
長い系譜は、その一族が古くからその土地にいたことの証明になります。
五代の神々に事績がないのは、代を数えること自体が目的だったからだと考えられています。この神は、その五代目という位置にいます。
能登に来た神
石川県輪島市の重蔵神社の社伝は、この神が出雲からはるばる能登まで来て、その地を平定したと伝えます。
出雲から能登へ。
古事記に一行の事績もない神が、地方の社伝では開拓の主役になっています。
島根県出雲市斐川町の富神社でも主祭神とされます。
また日本書紀の天之葺根神は、神剣を天津神?に献上したと記され、日御碕神社の宮司家である小野氏はこの神の子孫を称します。同じ神かどうかは決まっていません。
冬という字
この神の名にある「冬」は、記紀のなかで特異な位置にあります。
春 ─ 神名に見えない。
夏 ─ 神名に見えない。
秋 ─ ハヤアキツヒコなどに見える。
冬 ─ この神の名だけ。
季節の名としての「冬」は、記紀神話でここにしか出てきません。
偶然かもしれません。しかし、オオクニヌシが生まれる直前の代にこの字が置かれていることは、しばしば注目されてきました。冬の次に来るものを思わせる配置だからです。
アメノフユキヌの家系図と家族
アメノフユキヌの性格と人物像
アメノフユキヌは、位置だけを与えられた神です。
何もしていません。誰とも争わず、どこへも行っていません。分かるのは、誰の子で、誰を娶り、誰を生んだかだけです。
それでも、この神がいなければオオクニヌシは生まれません。
系譜という装置のなかでは、事績のない神も欠かせない部品になります。名に「冬」を負ったことだけが、この神を他の四代と区別しています。
アメノフユキヌを祀る神社
アメノフユキヌを主祭神とする社は、石川県輪島市の重蔵神社と、島根県出雲市斐川町の富神社が知られます。
出雲からの距離があるほど、この神の役割が大きく語られる傾向があります。
能登の社伝では開拓の神とされ、古事記の一行の系譜からは想像できない姿を持ちます。地方の伝えが、記紀の空白を埋めた例です。
アメノフユキヌが現代に残した痕跡
アメノフユキヌの名は、系譜のなかに残りました。
十七世神: ヤシマジヌミからトオツヤマサキタラシまでの十五柱の総称。この神は第五代。
粟鹿大明神元記: 兵庫県朝来市の粟鹿神社に伝わる書。この神を四世孫とする。
アメノフユキヌのご利益
衣類守護
名に「衣」を含むことによる。
開拓
能登を平定したとする社伝による。
アメノフユキヌについてよくある質問
アメノフユキヌとはどんな神様ですか。
オオクニヌシの父です。古事記でスサノオの五世孫とされ、オミヅヌとフテミミの子として生まれました。事績は記されていません。
日本書紀にも出てきますか。
日本書紀ではスサノオの子がオオクニヌシとされ、この五代は挟まれません。五世孫として天之葺根神が挙げられますが、同じ神かどうかは決まっていません。
名前の「冬」に意味はありますか。
「天の冬の着物」と解されますが、はっきりしません。記紀の神名で季節としての「冬」が現れるのはこの神だけである点が注目されています。
アメノフユキヌと併せて覚えたい言葉・用語
天津神(あまつかみ)
高天原に生まれた、あるいは高天原から降りてきた神々。