オオクニヌシと八上比売の子。木の股に挟まれて置き去りにされた。
木俣神とは何の神様か
木俣神の漢字表記と読み方
読みは「きまたのかみ」です。「木俣」は木の股、幹が二つに分かれる部分です。
別名の「御井(みい)」は井戸を指します。生まれたときに産湯を使った井戸に由来するとされ、こちらの名で祀られることが多くあります。
木俣神(きまたのかみ)
古事記での表記。木の股に挟まれたことによる。
御井神(みいのかみ)
古事記に併記される別名。井戸を意味する。
木俣神の物語
木の股に挟まれる
八上比売はオオクニヌシの子を産みました。
ところが正妻スセリビメを恐れ、因幡へ帰ることにします。このとき、生んだ子を木の股に挟んで置いていきました。
その生める子は、木の俣に刺し挟みて返りたまひき。
古事記は理由を「畏みて」と記すだけです。恐れたから置いていった。それ以上の説明はありません。
井戸の神として祀られる
別名の御井神は、井戸を意味します。
生まれたときに産湯を使った井戸に由来するとされます。この名で祀られる社が各地にあり、水の神としての性格を持ちます。
捨てられた子が、水を守る神になる。
木の股に挟まれた話より、井戸の神としての信仰のほうが広がりました。
捨てられた子が神になる型
日本神話には、置き去りにされた子が祀られる例がいくつかあります。
ヒルコ ─ 葦の舟で流され、えびすとなった。
木俣神 ─ 木の股に挟まれ、井戸の神となった。
どちらも、捨てられたところから信仰が始まります。
弱い立場に置かれたものを祀るという発想は、祟る神を祀って守り神にする形とも通じています。
木俣神と御井神はなぜ同じ神なのか
古事記は、八上比売が子を木の俣に挟んだ直後に、「故、その子を名づけて木俣神と云ふ。亦の名は御井神と謂ふ」と続けます。したがって、木俣神と御井神は別々の神ではありません。
ただし二つの名が表すものは異なります。木俣は物語中の置かれた場所、御井は井戸を思わせる祭祀上の名です。國學院大學の神名解説では、延喜式神名帳に各地の御井神社が見えることや、宮中でも井戸の神々が祀られたことが確認できます。
御井神社の三つの井戸
御井神社の由緒では、八上比売がこの地で木俣神を産み、生井・福井・綱長井の水を産湯にしたと伝えます。現在の記事で地図を確認するときは、一般の大神神社ではなく、祭神が一致するこの御井神社を見るのが適切です。
古事記で確実:木俣神の別名は御井神
神社伝承:三つの井戸を産湯に用いた
二つを分けることで、古典と地域伝承の両方を無理なく読めます。
木俣神の家系図と家族
木俣神の性格と人物像
木俣神について古事記本文が伝えるのは、八上比売が木の俣に置いたことと、御井神という別名です。その後の成長や役割は語られません。
だからこそ、井戸と産湯をめぐる各地の祭祀伝承が重要です。ただし、本文にない事情を「捨てられた子が祟り神から守護神になった」と物語化することはできません。本文の空白は空白のまま示すのが、この神を正しく読む出発点です。
木俣神を祀る神社
木俣神を祭神として確認できる代表例が、島根県出雲市の御井神社です。母の八上比売も八上姫大神としてともに祀られています。
古事記本文は「木俣神、亦の名は御井神」と記すだけで、産湯の井戸の詳しい物語は書きません。三つの井戸の話は神社に伝わる由緒として、本文と分けて紹介するのが正確です。
木俣神が現代に残した痕跡
木俣神の名は、井戸の名に残りました。
御井(みい): 井戸を意味する古い語。地名にも残る。
木俣神のご利益
水利・井戸
御井神の名によることによる。
子育て
子の神であることによる。
木俣神についてよくある質問
木俣神とは誰ですか。
オオクニヌシと八上比売の子です。母が正妻を恐れて因幡へ帰るとき、木の股に挟んで置いていったことからこの名がつきました。
御井神と同じですか。
同じ神です。御井は井戸を意味し、生まれたときの産湯の井戸に由来するとされます。この名で祀られることが多くあります。
なぜ木の俣に置かれたのですか。
母ヤガミヒメが、正妻スセリビメを畏れて出雲を去るとき、子を木の俣に挟んで帰ったと古事記が記します。それが名の由来です。
木俣神と御井神は別の神ですか。
同じ神です。古事記が木俣神の別名を御井神と明記しています。木俣は物語上の名、御井は井戸と結びつく名として読めます。
木俣神の母と父は誰ですか。
母は八上比売、父はオオクニヌシです。古事記では、八上比売がスセリビメを畏れて因幡へ戻る際、子を木の俣に置いたとされます。